そんなこんなで、次に気がついた時に僕がいたのは安心院さんが作った教室の空間、ではなく、どこかの部屋の中でして。細かく説明するなら、高級そうなマンションのきれいな部屋、って所かな。ちなみにこの場合、きれい、ってのは何一つ家具らしきものが存在しない事を表してたり。
家具がない部屋の床で横たわっていたので、体をゆっくりと起き上がらせてみる。特に動かすのに支障はなく、それどころか全身に何だかあらわしようもないくらい、力がみなぎっている。おそらく、人間強度の効果が既に発動しているのであろう。今なら、何でもできそう、と思えるくらいだ。
と、ここで床に一枚の書き置きらしきものを見つける。状況を把握する為に、とりあえず拾って読み上げる事にしてみた。
「霧島くんへ。やあやあ、元気かな? 特に希望がなかったんで君の記憶を少し覗かせてもらって、原作とやらの開始辺りに君を転生させちゃったぜ。とはいえ、転生は君の世界の神様がさせたようなものだけれども。あ、家は用意したけど、家具とか衣類、生活に必要な物は任せるね。ほら、僕が全部準備したら、つまらないでしょ。と、いう感じでまあ、転生ライフ気楽に楽しむんだぜ、わっはっは……」
全部読み終えて、ふーん、と僕は一言。そんなに特別気になる事は書いてなかったね。とりあえず、原作辺りで転生させてくれたのは感謝だけど。あまり小さい頃から転生されても原作スタートまでが遠くて嫌になるかもだしね。
と、ここで書き置きに裏面があるのに気づいて、読んでみるとそこにはスキルについて書いてあった。と、言ってもスキル一つ一つの詳細ではなく、スキルを扱う上での簡単な注意書きだったけど。スキルについての詳細は教えてくれないみたい。知ってるだろうと思ったのか、自分で体で覚えなさいなのか、は分からないが後者な気がするよ、うん。
「んー、まあ、家具も何もないここで試してくのが無難かなあ」
というわけで今使えそうなスキルを試していく事にする。まずは、えーっと、瞬間移動のスキル、足しげく通う、から使ってみるか。
とはいえ、イメージがわきにくいし、危険も高いのですぐ目の前をじーっと見つめながら、そこに瞬間移動するイメージを持ってみる。すると、体が一瞬浮遊感に包まれたと思ったら、すぐになくなった。
なんだろうか、と首を傾げてみると部屋の中での僕がいる位置が僅かに違う事に気づく。え、なに、瞬間移動したの、僕。
あまりに地味すぎて全然わからなかったが、まあ、スキル自体は使えたし、よし、としよう。んー、あと今使えそうなのは幻を操るスキル、幻の幻覚、か。
……なんか自分で選んだスキルだけども、二つとも集中力すごいいるよね、これ。
……とりあえず、家具とか想像してみよう。うん、買う前にイメージするのもいい事だし。
と、思っていざ挑戦してみるも思いのほか、難しくて、ベッドを一つ、幻として生み出すので一苦労して、断念。うーん、使い方があってるのかも分からないや。幻を対象にかけたりして使うのか、幻を生み出して、対象を惑わすのか。どちらかすら分からないし。
安心院さんがあれだけスキルたくさん持ってて使いこなせるのは経験とスキルを使いこなすスキル、とかが関係してるのかな、やっぱ。
……とまあ、何はともあれ、スキルがちゃんと使えるって事は確認できた。後は……というか、現状、最大の問題なんだけど、これ、食費やら家具どうするのさ。
うーん、とりあえず、家を探索してみますか。お金あるかもだし。
と、いうわけで原作スタート、の前にまずは住環境を作らなきゃらしい。一つ、安心院さんに言っていいなら、迷わず僕はこう言うよ。どうせなら家具とかも準備してよね! と。