球磨川くんが大嘘憑きを発動した直後。
教室の床から突き出された無数の螺子は、僕の全身を貫いた。
「っ……!!」
いや、全身と言ったら語弊があるかもしれない。大嘘憑きの発動を予測して、体を丸めて縮こまらせたお陰か、いくらかはましだ。
とはいえ……これだけの攻撃を受けて、これだけの出血もしていれば僕に立ち上がる力もないのは必然であって。
うつ伏せに倒れる僕。そして、それを見下ろすのは無傷で万全な体勢をとる球磨川くんだ。
『何か言い残す事があったりする?』『まあ』『言わせないけどさっ』
そう言うと球磨川くんは倒れ伏す僕の頭部目掛けて、螺子を投げつけたーー。
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なーんて、数十分前の事を思い返してると既に迫り来る螺子は眼前。
死ぬのは嫌だし、さくっと対処させてもらおうか。
「大嘘憑き」「僕の怪我をなかったことにした」「ってね!」
全身の怪我を大嘘憑きで瞬時にしてなかったことにする。ついでに向かい来る螺子はすぐさま立ち上がって反射的に手でたたき落とす。
勢いそのまま。虚をつけたのか、驚いたような表情をしている球磨川くんとの距離を一気に詰めると右拳を球磨川くんの腹部に強く打ち込んだ。しかも、王土くんのスキルを駆使して、電磁波を放出した状態で。
『なっ……!?』
驚きと痛みで表情を歪める球磨川くんに対し、更に電磁波の放出を強めつつ、床に押し倒し、しばらく放電を続ける。すると流石の球磨川くんも最後には意識を失った。
「悪いけど、いつものスキルがなくてね。不意打ちさせてもらったよ。まあ、聞こえてないだろうけど」
と、軽口を叩くも油断はしない。前回の失敗から学んでいる通り、甘さこそが僕の弱点であり克服しなければならないものだしね。
安心院さんにスキル交換で借りた、物質具現化のスキル 控え目に描いた勿論(ドローイングオフコース)、記憶のスキル 記憶操失(メモリーノート)。
この二つをスキル擬似合成して作っておいた、記憶具現化のスキル 憶実現出(メモリアルドロー)。僕の目的を済ませるよう、合成時にスキルの効果は改造してあるからおそらく問題ないだろう。
意識を失った球磨川くんの額に右手を当て、僕はそのスキルを発動する。すると、白く光り出した球磨川くんの額から四つの影が飛び出した。
転校する毎に前の学校の記憶をなかったことにする、球磨川くん。とはいえ、大嘘憑きは万能でも絶対でもない。本人の記憶からなくなろうが脳そのものに作用するようなスキルに改造しておけば……
「……あっという間に出来上がりー、ってね」
現れた五つの影。それらは水槽学園の制服を着た女子生徒達。原作知識で一人一人を細かく思い出したい所ではあるけど、球磨川くんがいつ起きるか分からないので省略。
「さて、と。お手柔らかに頼むよ、こっちは連戦続きなんでね」
「酸素を操るスキル 遊酸素運動(エアロバイカー)!」
「水量を操るスキル 四分の一の貴重(クオーターハザード)!」
「奇跡を操るスキル 賭博師の犬(ギャンブルドッグ)!」
「性欲を操るスキル 下劣な大道芸(エロティックピエロ)!」
「知能を操るスキル 退化論(ザッピングスタディ)!」
現れるやいなや、繰り出されようとする五つのスキル。一つでも食らってしまえば大変なスキル達に対し、僕はかつての球磨川くんと同じように、時間をなかったことにして、彼女達を瞬時に戦闘不能に陥らせた。
戦闘不能に陥ると同時、彼女達の姿は透けて消えた。勿論、僕がそういう風に作ったので当たり前だ。
ピンポイントで選び抜いた、スキル発動の瞬間を具現化させ、倒されると具現化が解除されるようにしてあった為、彼女達の姿はもうここにはない。
そこまで確認した後、大嘘憑きを発動し、教室の損傷をなかったことにする。目的のスキルは手に入れたし、過負荷のスキルも、一度受けた為、この先、僕には通用しない。
目的をやり遂げ、つい緩みそうになる気持ちを抑えて、球磨川くんが起きる前に僕は教室を後にした。