王土くんの攻撃、と呼べるかはっきりわからないあの出来事から早一日。僕はフラスコ計画が行われている時計塔の地下にいる。さらに詳しく言うと入口の門がある所である。
何故、この場所にいるかと話は簡単。主人公であるめだかちゃん達は昨日王土くんと出会って、そして、今朝がた再度王土くんと対面し、そして、もう少ししたらここに乗り込んでくるからだ。
目的がなければしっちゃかめっちゃかにかき回して原作を壊してみたいものだけど、目的はあるし、やはり原作の流れ、というものを追体験してみたい気持ちの方が強いみたい。
と、いう訳で目的を達する為に僕はめだかちゃん達が原作で戦う相手がしばらく再起不能になる前にどのような形でも戦いを経験しなければならない。まあ、戦う、という形さえとれば相手の技はスキル、人生経験段で会得できるのだけれど。でも、やっぱちゃんとした戦闘経験を積まないと人外な相手には確実に勝てないだろうし、ここはめんどくさくてもしっかりと戦うしかないだろう。
なんて考えながら、僕は門番の双子くん達が何か話しかけてくるのを華麗にスルーして、門の解除ボタンパスワードを適当に押す。すると、門はすんなりと開いた。
まあ、転生にスキルの複数所持なんてしてたら普通ではないからね、明らかに、なーんて。
さてさて、まず向かうは高千穂くんの所だっけ。反射神経が特化した異常、だよね、確か。これは早いとこ身につけたい異常である。目的の獅子目 言彦にはおそらく通用しないかもしれないが、覚えていれば普段の日常で怪我をする確率が大幅に少なくなる事間違いなしだし。
あ、そーそー。瞬間移動のスキル、足しげく通う、は思いのほか便利なスキルで瞬間移動に指定やら制限がない為、なんと自分の視界の外にいる物体の所にも瞬間移動できるみたいで。
要するに、何が言いたいか、ってーと。後々、めだかちゃん達と戦うであろう高千穂くんの目の前に僕は瞬間移動できる訳でして。というか、既にだけど。
「……!?」
「う……あっ……」
お、流石、反射神経が特化した異常の持ち主。瞬間移動による不意打ちに瞬間的に反応して、右ストレートを放ってるや。そして、僕はそれを顔面でまともに受けてしまってる訳でして。
あはは、失敗、失敗。ここまで反応が早いとは思ってなかったぜ。まあ、スキル、人間強度で身体能力が向上してて、ダメージも少ないし、さらにスキル、全治死の効果でダメージなんてものは受けても即座に超回復するからいいんだけどさ。
なーんて、強がるけど、何度も言ってるように痛みはあるんだよね。顔面パンチって普通に痛いよ。元々、普通の人間で身体能力向上のスキルで強化されてるだけだからね、僕。
まあ、そんな様子を相手に悟られるとあれなので、殴られた僕はその場で踏ん張って、にやりと悪どく笑ってみる。すると、何かを感じ取ったのか高千穂くんは後ろに飛び退く。何もする気まったくないんだけど、勝手に下がってくれたや。ま、この機会を逃す訳には行かないよね。
下がってくれた高千穂くん目掛けて、僕はその場で拳を振るう。拳なんてパッと見、この距離で当たるものでもないが、異常な反射神経を持つ高千穂くんは首を横にずらして瞬間的に僕が飛ばしたそれを回避した。
「拳と見せかけてのスーパーボール、ね。俺が相手じゃなければ当たってたかもしんねえな」
「ま、だろーね」
スキル、人生経験段にて会得した冥利くんの技、というか技術。スーパーボール飛ばしを回避して不敵に笑う高千穂くん。
「ならこれならどー?」
「!?」
笑う高千穂くんに僕は思いつきで三点同時攻撃を仕掛けてみる。まず、スーパーボールを先程と同じ要領で高千穂くん目掛け飛ばす。そして、スキル、幻の幻覚にて幻覚を作り出し、そのスーパーボールが無数に分裂したように演出する。無数の虚の中に潜む一つの実体。これをまず、幻覚と認識してない高千穂くんは全てを実体のスーパーボールと捉えて、その全てを無傷で回避した。
「はっ、そんなもんがこの俺に当た……」
不敵に笑い、得意気に喋る高千穂くんだったが、言葉は止まり、その表情は苦痛に歪んだ。何故なのかときかれればそれは至極簡単な事である。僕の右の拳が彼の腹部にめり込んでいるからだ。
「なるほど、なるほど。高千穂くんの反応が間に合わないなら大多数はついてこれないかな。まあ、やっぱ手持ちの能力がチートってやつだよね、僕ったら」
拳をひいて、悶絶している高千穂くんの顔面目掛けて、僕は左のハイキックを放つ。ちなみに幻覚のスキルも発動して幻覚の方では右のハイキックを放たせている。要するに左右のハイキック、どっちが本物でしょうかってやつだよ。
と、ここは流石、高千穂くん。持ち前の反射神経でハイキックを即座にしゃがんで回避する。ま、既にそこには僕の本命の追撃が来てるんだけどね。
しゃがんで左右のハイキックの両方を躱して、反撃に移ろうとする高千穂くんだったけど、その眼前には僕が計算して、飛ばしていたスーパーボールが視認が不可能な程近くに迫っていた。
「がっ……!?」
流石の高千穂くんでもこの連続攻撃に反応がやや遅れて、スーパーボールは彼の顔面を捉えた。ふーん、とりあえずはめだかちゃんと戦ってオンオフつく前はこんな感じなのかな。大体は把握できたや。
本当ならここでいろいろ試して、戦闘経験を積みたい所だけど、めだかちゃん達はいずれ、この時計塔に来る訳だから寄り道しすぎてもいけないよね。
と、いう訳で。例の如く、幻の幻覚を発動して、退避退避。スーパーボールをくらって苛ついた表情でこちらに拳を向けてくる高千穂くんだったけど、既にそれは幻覚であって、僕の姿をしたまやかしは煙となる。その隙に僕はこの階から瞬間移動で離脱する。文字の通り、煙に巻くってやつだねー、なんて考えながら僕はこの場を後にした。
今更ですが、スキルにつきましては原作で能力の明記がなかったのでめだかブックスの簡略なスキル詳細から、おおよその予測を立ててスキルとして、主人公に持たせてます。幻の幻覚については某忍者漫画や某マフィア漫画のものがイメージに近いです。あと、人生経験段についてはスキルのみならず、異常、技術も技として捉えてます。(例 冥利くんの乱反射の計算、スーパーボール飛ばし) まあ、なんというかそんな感じです。