さてさて、文字通り煙に巻いて、高千穂くんの所から離脱した僕な訳だけれど。どこにいるか、っていうと高千穂くんから宗像くんの所に行くまでの間の場所って所かな。いや、流石に僕もいきなり目の前への瞬間移動のメリットとデメリットは身をもって把握したよ。
メリットは不意打ち、移動の労力がゼロになる。デメリットは不意打ちより速く反応できる人にとってはただの的である事とあとは僕には遠くの場所で何が起きているかは把握できないので例えばもし、瞬間移動先で銃撃戦が行われていてその真っ只中に僕が現れたら、銃弾を受けた箇所によっては即死だろう。超回復なんて即死したらそれこそ無意味だしね。僕には死をなかったことにする過負荷なんてない訳だし。
と、いう事で視認できない所への瞬間移動は多大な危険が伴う訳だね。ただ、先程の戦闘で得たものはこの経験だけではない。高千穂くんの異常も既にもう僕のものだ。
どういう事かというと先程と同じように視認できない箇所にいる相手の目の前に瞬間移動して、僕より速く動かれて何かされても僕には今、自動操縦(オートパイロット)の異常があるのでおそらくそれを回避できるという事だ。おそらくとつけたのは反射神経にも限界があり例えば、瞬間移動を読まれていて、現れたその瞬間に黒神ファントム等のすごく速い技を打たれれば、おそらくは回避できないだろう。まあ、よほどの事がなければそこまで高度な戦闘は行われないのだろうけど。僕の今の所の目的はあくまで戦闘経験の取得、だからね。
しかし、あれだよね。瞬間移動で視認できない相手の所まで行けるのが分かってて、こちらが不意打ちを受けてもおおよそ自動操縦で回避できるんであれば、デメリットが分かってても瞬間移動がしたいよね。移動するのだるいし。
どうしようか、と少し考えるも実の所、何も考えてなかったらしく素振りだけで結論に至る。
「ま、大丈夫か」
そう、お気楽に判断した僕は瞬間移動のスキル、足しげく通うを使って、宗像くんの所へ瞬間移動する。もちろん、先程の事を踏まえて、少しだけ距離をとって。
そうして、瞬間移動した次の瞬間、僕の視界に入ったのは自分の階、ではなく、地下二階のビオトープの草木の手入れをする宗像くん。原作通り、特別殺気立ってる訳でもなく、見た目は大人しそうである。見た目は。
「……! 君は、確か霧島くん、だったかな」
「あ、うん。霧島 響弥、同級生ー。以後お見知りおきを、ってね」
突然現れた僕に宗像くんは少しだけ驚くもすぐに普段の落ち着いた様子で話しかけてきた。少しだけしか驚かない辺り、彼の性格が伺えるなぁ。ま、原作知識で知ってるけどね。
「ああ、うん。同級生だったね。よろしく」
そう言って宗像くんはすっと手を差し出してくる。あ、原作でこれと似たようなの見たな。あの時は善吉くんに刀を差し出してたんだっけ。つまりはこれも同じようなあれで握手したら何かしらの攻撃を受けるのだろう。
ま、原作知識がある僕からしたら、タネが見え透いたマジックだね。いやまあ、そんな事言ったら全部そうだけどさ。
分かり切ってるし、ここは握手なんかしない。なーんてのもつまらないし、あえて握手しよっと。高千穂くんの異常の見せ所ってやつさ。
こちらに向けて、伸ばされた宗像くんの手を僕はぎゅっと握る。そして、その瞬間、暗器として忍ばせていたであろう多刀がもう片方の空いていた手に現れ、そのまま僕を突き刺そうとこちらに向けて、伸びてくる。以前までの僕なら反応が間に合わず食らってしまい、距離をとってスキルによる超回復に頼る後手後手だったのだろうけど、悪いけど今の僕は自称十三人最強、の異常を手にしている。
なので、多刀が僕を突き刺すより先に僕は右足で前を思いっきり蹴り、そして、右足は見事、宗像くんの腹部を捉えた。ちなみに、スキルにより超強化された一般人の僕の一撃の威力は加減していても善吉くんの蹴りよりおそらく上だったりする。
まあでも、それを食らっても吹き飛んで距離が空いただけで平然で立ち上がる宗像くんっていう。
「……へえ、あれを躱すんだ。やるね、霧島くん」
「あは、まあ、そうじゃなきゃ、フラスコ計画なんかに参加できないでしょ?」
「……そうだね。それで今更だけど、そのフラスコ計画参加者の君は僕に何の用だい?」
「うーん、強いて言うなら、戯れ、かな。同じ計画の参加者だ。仲良く遊ぼうぜ?」
目的をそうそう悟らせる訳にも行かないので適当にはぐらかして答えると宗像くんはふうん、と呟き、一言。
「……僕は今作業中だ。君の相手をする暇はない。だから殺す」
「どうぞどうぞ。やれるものなら、ね」
かっこよく、だから殺す、なんて言ってる宗像くんの背後。そこへ既に瞬間移動していた僕はそう言うと右手を拳に握り、それを突き出す。まあ、流石に言葉を言い終えるまで待ってから仕掛けたのでこれには宗像くんも反応して、躱して反撃してくる。躱す際に距離をとって、早くも二丁拳銃を取り出している。
距離もとられていて、僕は善吉くんと違って銃の構造なんか知らないので解体もできない。これは困った状況だね、と思う程、窮地に感じない辺り、元は一般人たる転生者な僕もそろそろこの世界に馴染んできたじゃないかな。
なーんて事を銃弾を自動操縦による反射神経で躱しながら、考えてる辺り、ほんと馴染んでるよね。この世界というか、逸脱したものに対して。まあ、それも僕がかなり逸脱してるからだろうけど。
おっと、そろそろ弾切れかな? と言っても、あれなんだよね。あまり戦闘を長引かせて、後の善吉くん戦に支障をきたしてもいけないし、僕はスケジュールがつまっている。
ので、さっさと切り上げる事にしよう。ちなみに存在を示す為に僕は冥利くん戦で使っていた僕がまやかしか現実か~等のはぐらかし問答はもうしない。戦うだけ戦って、決着をつけないので有名な三年十三組の十三組の十三人予備候補、として名が広がるようにつとめてるよ。
つまりは原作の流れは汲むけど、ここいらで僕というイレギュラーの存在を広めていこうって訳さ。全く関わらないまやかしのような存在として、生きていくのも考えてたけど、やっぱりこんな楽しい物語に関われないなんて損だよ! まあ、大きなデメリットとして、僕というイレギュラーの存在で物語自体が変わる恐れがあるんだけどね。もっとも、既にこの世界は本当の歴史とは異なる分史の世界だけども。
「……どうしたの? もう遊びはこれまでなのかな」
「うん、飽きたー」
弾切れの二丁拳銃を横に投げ捨て、僕に問いかけてくる宗像くんに適当に言葉を返す。居場所を悟る事ができない僕にはめだかちゃん達の居場所は分からないからほんとそろそろ行かないと。
「ま、じゃあね。目的は終わったしこれにておひらき~ってね」
言いながら、瞬間移動のスキルを使い、僕は宗像くんの前から姿を消した。