一年前のことさ、奴を追い詰めたハンターがいたんだとよ!

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アイアンズオラリオ

 ─ハンターとはなにか、モンスターとはなにか。

 この世界は神秘と未知に満ち溢れている。

 少年はハンターになり、オトモアイルーと共に世界へと旅立つ。

 そう、世界とはハンターにとっては即ち未知、未知のものを探求し世界と戦う者達のことを人々はハンターと呼ぶ。

 

 

 ※

 

 ウォウウォウウォォウウォォォゥ!

 ドスジャギィを中心に成した群れの中で大剣を振るう男、モンスターハンターと呼ばれる男は戦っている。 当たり前だ。

 

 「ブレイク! そっち行ったぞ!」

 「合点ニャ!」

 

 ブレイクと呼ばれた暖かそうなマフモフ装備を身につけたアイルーはモンスターハンターの男と共に戦っている、当たり前だ。

 彼らは二人一組で実力を開花させる。

 

 「兄貴! 増援ニャ!」

 「まずいな! 素材いっぱいでポーチが溢れちまうぜ!」

 「さすが兄貴ニャ! とても前向き!」

 「あたぼうよ!」

 

 勢いよくスイングされた、男の身の丈以上の長さを誇る大きな剣はジャギィの群れを吹き飛ばす。

 重さゆえに反動の多いのが大剣の特徴である、しかし、その一撃は岩をも砕き、時に鋼すらも粉砕する。

 

 「畳み掛けるぞブレイク!」

 「あいニャ、メタルの兄貴!」

 

 ドスジャギィが吠えることで群れは統率を成し、編隊を組んでくる。

 この陣形戦術とカリスマにより、群れの強さは変わってくる。

 鬣を立てて威嚇をするのに対抗し、ブレイクはフシャー! と威嚇し、メタルは大きな身体をより大きく見せるポーズを取る。 ナイスバルク。

 

 「そい!」

 

 群れをメタルが蹴散らし─

 

 「ハニャー!」

 

 会心の一撃をブレイクが叩き込む!

 

 「─ドスジャギィ! 討ち取ったりィ!」

 

 メタルの振り下ろした大剣はドスジャギィの鬣ごと頭をかち割った。

 統率の取れなくなった群れは崩壊し、襲ってくるもの、逃げ戸惑うもの、助けを呼ぶものとジャギィとジャギィノス達は大混乱である。

 

 「兄貴…」

 「深追いは不要だブレイク、向かってくるやつだけ叩くぞ。 あいつらの根性無駄にしてやるな!」

 「アイアイサー!」

 

 ─メタルとブレイク。

 今回は熱血漢とアイルーのちょっと変わったバディを見守らせていただこう。

 

 

 ※

 

 ドスジャギィの討伐、クエストをクリアしたメタルとブレイクはベースキャンプに戻り、疲れを取っていた。

 いくら回服薬を飲んだところで疲労そのものは回復しない、あくまでも体力を回復させ疲労は誤魔化すだけの代物だ。

 

 「ナイスアシストだったぜ、ブレイク!」

 「兄貴もナイスファイトだニャ!」

 「当たり前だっての、俺は力だけが自慢だからな!」

 

 その疲れを見せない辺りさすがと言える。

 

 「さて、迎えが来るまで腹筋でも鍛えておこうかね」

 「さすが兄貴! オトモするニャ!」

 

 この男にしてオトモありとはまさにこのことである。

 メタルも浪漫を求め、英雄のような冒険譚を酒の肴にするためにモンスターハンターとなり、日々を生きる人生を選択していた。

 同調したブレイクも同様である。

 

 未知への興味ももちろん、メタルには目指すべき場所がある。

 そこに至るまで止まるわけにはいかないのだ。

 

 「……迎えが来ない、場所間違えたか?」

 「それはないニャ、兄貴。 僕がしっかりと確認したから大丈夫だと言い切れるニャ」

 「そうか、疑って悪かったな」

 

 しかし、迎えが遅いのは事実。

 普段であれば時間にして一分ほどで来るはずなのだが、五分は経過している。

 メタルとブレイクはじっと待っていられるほど、我慢強い人間とアイルーではない。

 

 少しばかりおかしいと感じた二人は森丘地帯に来るためにやってきた道を辿る。

 辛うじてタイヤ痕が地面にまだ残っていたため、辿っていけば迎えがなくとも村には辿り着くと踏んだブレイクはそのまま進むことにした。

 

 一時間ほど歩いた先で見たものは迎えの車がバラバラになっている光景だった。

 

 「ニャ、これは…!?」

 「道理で来ないわけだ、おい、あんたら!? 息はあんのか!?」

 

 乗組員達の息を確認し、余った回服薬と応急薬で手当てをする。

 メタルの勘では、犯人がまだ近くにいる。

 だから、ブレイクが先に動いた。

 

 「─兄貴、あいつニャ」

 「……へっ、まじかよ…!」

 

 そこに佇むは天空の王者。

 蒼天の鱗を身に纏い悠々と佇む、その大きさはドスジャギィを軽く凌ぐ。

 

 リオレウス。

 原種ではなく亜種と呼ばれる似て非なる進化を遂げた種だ。

 しかし、厄介な相手であることに変わりない。

 

 「ブレイク、覚悟は?」

 「兄貴と、杯を交わした日に…!」

 「さすがだぜ、相棒!」

 

 それ以上、言葉を紡ぐのは無粋。

 王者を待たせてはいけないのがチャレンジャーたる礼儀、メタルは背負ったボーンスラッシャーを両手に構え、王者に刃を向ける。

 ブレイクも四肢で大地を握り、ピリピリとした緊張感に笑みを浮かべている。

 

 ─開戦の合図は王者の咆哮だった。

 思わず耳を塞いでしまうくらいの音量、しかしメタルは前へ進んだ。

 

 「お、おぉぉぉ!!」

 

 メタルに続くブレイク、俊敏な動きでリオレウスに一撃を叩き込む。

 身体回りを鬱陶しく走るブレイクにリオレウスは敵意を初めて向けた。

 彼の小さな身を噛み千切ろうと牙を剥き出しに首を動かす、近づくメタルに対しては同時並行で尾を払う。

 

 即座にガードをするも、また距離が遠ざかってしまう。

 反対方向に一時後退したブレイクも瞬時に体勢を整えるや否や、再特攻を試みる。

 リオレウスの火球がメタルとブレイクを襲う。

 重さと熱量がこれまで経験した威力と比べ物にならない、深刻なダメージだった。

 ─しかし、自分達が挑んでるのは天空の王者だ。

 簡単にいかないことは百も承知、リオレウスは自身のテリトリーである空中へと飛翔し、嘲るようにしてメタル達に襲いかかる。

 

 「兄貴! ボクを飛ばすニャ!」

 「おっしゃ、ブレイクの男気、俺が繋いでやる!」

 

 ボーンスラッシャーの上にブレイクが乗り、メタルが勢いよくスイングをする。

 勢いを利用したブレイクは空へ投げ出され、一直線にリオレウスへ向かって速度をつけて飛ぶ。

 

 「ニャー!」

 

 不意をつかれたリオレウスは思うように動けなくなったようでブレイクの攻撃を素直に受ける。

 体勢を崩した王者はそのまま低空飛行に切り替え、メタルに向けて火球を放つ。

 

 「兄貴!」

 「モーマンタイ!」

 

 反動で大地に身を落としたボーンスラッシャーをそのまま無理矢理、土塊と岩も巻き込む形で持ち上げリオレウスの火球を打ち消す。

 

 「重っ、熱!?」

 

 完全には打ち消せなかった。

 着地したブレイクはそのまま、回復笛を吹く。

 

 「ナイスアシスト、ブレイク!」

 

 尾を向けてくるリオレウスにメタルは逃げも隠れもせずに構え、力任せに振り下ろす。

 その重量でリオレウスの尾鱗に傷をつけることに成功した。

 

 しかし─

 

 「クソ! 今ので傷だけかよ!」

 

 そう、致命傷には至らなかったのである。

 

 「兄貴!」

 「ブレイク、この喧嘩勝つぞ!」

 「当たり前ニャー!」

 

 

 ※

 

 ─交戦開始から既に三十分が経過していた。

 リオレウスにも体力の限界が訪れているのが目に見える。

 しかし、それはメタルとブレイクにも言えることである。

 

 「ハァ、ハァ、ハァ…!」

 「兄貴、携帯食糧、ニャ」

 「助かるぜ」

 

 撤退、お互いにいつでもすることはできる。

 しかし、お互いに引くに引けないところまで来てしまっていたのだ。

 

 「─、ぉ、りゃあ!」

 

 一時的な膠着を破ったのはメタル、重い身体を引きずり、傷ついた左足が悲鳴を上げ、それでも尚、男は剣を振るう。

 

 「グォォォォォォォォォォ─!!」

 

 迎え撃つは天空の王者、本能が戦えと命じてるかのように彼もまた一匹の雄としてメタルに突進する。

 

 ─激突する力と力。

 お互いがむしゃらに、大剣と頭突きが激突し、大気が震える。

 

 「ぉ、おぉ!」

 

 唾競り合いを制したのはリオレウス。

 体勢を大きく崩し、後方へ吹き飛ばされたメタルはなす術もない。

 

 「兄貴!」

 

 リオレウスの追撃は止まらない。

 強靭な牙と顎でメタルの左腕に噛みつき、彼の身体を大地を駆け抜ける剛脚で押さえつける。

 

 「う、ぁ、がぁぁぁぁぁ!?」

 

 「─兄貴を、放せぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 激昂するブレイクの振るう剣先はリオレウスの左目を斬りつける。

 衝撃の瞬間、赤い閃光が迸り必要以上に強力な一撃が本来つくはずのない傷をつくり、王者の鱗に紅蓮の傷跡を残す。

 

 会心率強化。

 ブレイクは赤い閃光に愛されている。

 

 激痛に悶える王者の顎はメタルの左腕を噛み砕き、叫び声を上げることなくメタルは動く右腕のみで大剣を手に取る。

 本来であれば大剣は両手で持つように設計されている。

 しかし、メタルの火事場の馬鹿力は常識を凌駕する。

 

 「アニ─」

 「そのまま俺を押せブレイク!!」

 「ッ、あいニャ!!」

 

 右腕の血管が悲鳴を上げる、それでもメタルは相棒に背中を押されリオレウスの死角へと潜り込む。

 左脚の疲れは忘れた、左腕なんて初っ端から存在しなかった、メタルの強い意志がメタルの身体を動かす。

 

 ─スパン。

 

 赤い閃光。

 迸る一撃は天を突き、かの王者の尾の先端を断ち斬る。

 

 ガクガクになった右足を軸にメタルは身体を支える。

 痛みを自覚し、悲鳴を上げた後、王者はメタルを一瞥し、天空へと飛び去ってしまった。

 

 「へへ、あの野郎、逃げ、やがっ、た─」

 

 メタルの意識はそこで落ちた。

 

 

 ※

 

 「え、ハンターを続けるニャ!?」

 「当たり前だろ」

 

 メタルが目を覚ましたら村の医療所だった。

 左手は完全に切断、噛み千切られたため再生も見込めないとのことだ。

 右腕は大剣肩になってしまい、これまでの大振りはもちろんのこと、腕を頭の上にも上げることは困難。

 両足、特に左足は靭帯切断とボロボロである。

 

 「あいつは逃げた、けど決着自体はついてねぇ! 俺はあいつに勝つまでハンター続けるぞ!」

 「兄貴…!」

 「このくれぇ、どうってことないさ! とりあえず、腹筋してさっさと身体治さなきゃな!」

 「─オトモするニャ! 兄貴!!!」

 

 これは熱血漢とオトモアイルーの狩人日誌。

 二人の英雄譚。

 

 後に左目に大きな十文傷、尾のないリオレウス亜種は【黒鉄】と呼ばれるようになり、何かを探すように一帯を飛び回ってる姿が目撃されるとか。

 そして、大剣使いが襲われる事件も発生するが、彼らがそのことを知るのはもう少し後の話である。


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