この花の主人(偽)に祝福を!   作:GU

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第二話なので初投稿です。


第二話 転移しました

 

 

 

前略、オフクロ様

 

ボクはどうやら無事に異世界に転移出来たようです。転移というのは中々不思議な感覚でした。

 

少し距離はありますが目の前には大きな壁と門が見えます。きっと中に街がある筈です。そして門の前には守衛と思わしき人物。まだ遠目からしか確認できませんが、鎧を着込んで槍を持っていてファンタジーのそれっぽく、ボクのテンションが上がります。

 

辺り一面は平原で草ばかりですが、お花もちらほら見え隠れしています。丁度良いのでこれから女神様より頂いた能力を試してみたいと思います! ひゃっほい!

 

まずは枯れたお花を探します。咲いていても蕾でもいいのですが、なるべく自然に咲き誇らせてほしいのです。そして枯れたらボクの能力で再び、という感じですね。もちろんボクが気に入ったお花に限りますけど。何でもかんでもやっていたらキリがありませんし。

 

気分が高まり、つい鼻唄を歌ってしまいます。……あっ! 枯れた花を発見しました! これは非常に良い枯れ具合です。ふふふ、ではやります!

 

「むむーん……えいっ!」

 

ボクが掛け声を上げると、枯れていた花は時間を巻き戻すかの様に美しい姿へと変貌しました。成功です。擬音で表すとパァァンといった感じでしょうか。

 

「や、やったー!」

 

ボクは今、究極のパワーを手に入れたのだーーっ!

 

長年望んでいた能力が本当に手に入った感動は如何ともし難いです。なんだか感覚がふわふわして現実味がありません。まるで夢の中にいる様です。

 

しかし今の状況が良い事なのかどうかはよくわかりません。ボクは、死んだ結果ここにいるのですから。しかも死因があまりにもアホらしすぎますし。親孝行の一つもしないで元の世界を去ったボクを両親や姉はどう思っているのでしょうか……ぐすっ……。

 

……さて、後悔はここまでにしておきましょうか。やるせない気持ちではありますが、夢に一歩どころか数十歩近付いたのも事実。大事なのはこれからです。ボクの使命は魔王を倒す事。それを成し遂げる事が出来たならば、ボクは元の世界に帰る事が出来るかもしれません。

 

その為には、目の前に見える壁の向こうにあるであろう街へと向かいましょう。実は先程から今すぐにでも枯れた花を掻き集めたい衝動に駆られていますが、どうにか耐えてみせます。……耐えて、みせ……ま──

 

……。

 

……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付いたら夕方になっていました。そして両手にはいつの間にか色とりどりの花が沢山ありました。どうやら本能には抗えなかったようですね(他人事)

 

手元は塞がってしまいましたが、日傘は腕に掛ければ問題ないのでこのまま街の中に入る事にします。

 

そう思った瞬間、突風がボクを襲いスカートがバサッと捲れ上がりました。しかし両手は花を抑えるので必死なので無様にパ……下着を晒すしかありません。人がいないから出来る芸当だと思います。そのままジッとしてると数秒後に突風は止み、無様にめくれたスカートは元に戻りました。

 

……何故かは分かりませんが、わざとスカートをめくられたように感じます。だって、ロングスカートなのに下から巻き上げるようにブワッと来たんですよ? どうにも今のが偶然だとは思えません。ボクの直感がそう言っています。

 

このあたりは先程の突風よりは弱いですが時々風が吹いてきます。ボクが履いているスカートもそれに合わせてなびくので、その下から僅かに覗く素足がちょっと冷たいです。このなんとも度し難い気持ちはどう言い表せばよいのでしょうか。少なくとも良い感情ではない事は確かです。

 

そんな事を考え始めると、今更ながらスカート自体にも不安を覚え始めました。ズボンならば素足が見える事など早々ありませんが、スカートならば先程のように素肌どころか下着まで見えてしまいます。女の子ならまだしも……という言い方は変ですが、ボクの場合は何がなんでもそれだけは阻止しなければならないというのに……この状況が不安でたまりません。

 

それ以外にも、外見でバレる可能性も大いにあります。……認めたくはありませんが、ボクは筋肉が付きにくく線が細いので体型は恐らく問題ないでしょう。しかし顔や声は素なので誤魔化しが効きません。女神様は絶対バレないと言っていましたが、彼女の言う事はいまいち信用出来ません。色々良くしてくださった恩があるのに……何故でしょうか?

 

……ふぅ、切り替えましょう。賽はとっくに投げられています。

 

さて、歩いていると門の前に着きました。するといかつい守衛さんがにこやかな表情でボクに声を掛けました。

 

「おうお嬢さん、気は済んだか?」

 

「えっ、あっあの……」

 

どうやら先程までの様子を見ていたようです。は、恥ずかしいです……。

 

しかし言葉が通じて安心しました。運が悪ければパーになると女神様は言っていたので。この分であれば文字の方も恐らく問題はないかと思われます。

 

……そして、お、お嬢さんと……呼ばれてしまいました……。覚悟はしていたつもりでしたが、いざそう呼ばれるとモヤモヤしてしまいます……。

 

ひ、ひとまずボクの外見からは男だと分からないという事が分かりましたので、前向きに考えましょう!

 

「見たところテレポートが使えるみたいだし、冒険者か?」

 

「い、いえ、ボ……わ、私は冒険者ではありません。実は先程こちらに送ってもらったのですが……」

 

「ああ、もしかしてテレポート屋を使ったのか。まぁ流石にこんな小さい子が冒険者な訳がないか」

 

そのテレポート屋とやらを使用した訳ではないのですが、訂正する必要性が見当たらなさそうなのでそのままにしておきます。

 

小さな子というのも、確かにボクは小柄ですので取り敢えずツッコミはしません。これでももう13歳なのですが……。

 

「この付近はまだ安全だが、もう少し外に行くとモンスターが出るからな。やたらと出歩くのはやめとけよ? なにせ俺の二倍以上はあるミミズやカエルが出てくるんだからな」

 

大きな守衛さんの二倍以上という事はボクの三倍以上は大きなカエルとミミズという事ですね。そんなに大きいのであればボクなんてゆうに丸飲みされる事でしょう。転移して早々危ないところでした。

 

「まぁいい。もう日も暮れてるし、早く中へ入れ」

 

「分かりました。……ところで、冒険者とはなんですか?」

 

一つ気になる言葉があったので、ついでに聞いてみることにしました。

 

「なんだ嬢ちゃん。冒険者を知らないなんて、何処の田舎から来たんだ? その名の通り、冒険をする者たちさ。剣や魔法で魔王軍やモンスターを倒したり、遺跡やダンジョンを攻略して宝を見つけたり、そんな奴らの事だ」

 

「おおー!」

 

ある程度予測はしていましたが、まさに如何にもといった説明でした。しかも今、この守衛さんは冒険者は魔王軍と戦うと言いました。そしてボクの使命も魔王を討伐する事。つまりボクは冒険者になれと、そういう事でしょう!

 

「冒険者になるにはどうすればいいんですか?」

 

「冒険者になりたいのか!? いや、訳は聞かねぇよ。冒険者になるなら冒険者ギルドに行かねぇとな。あのデカい建物を右に曲がったら看板が見える筈だ。酒場も兼ねてるから飯もそこで済ませるといい」

 

「分かりました! ありがとうございます!」

 

ペコリと頭を下げてその場を後にしました。

 

大通りを歩きます。まるで中世ヨーロッパのような街並みはまるで海外旅行に来たかのような新鮮さがあります。何処に目を向けても歴史地区にあるような建物ばかりなのでとても楽しいです。

 

他にも、外見はほぼ人間なのに猫耳や犬耳だったり、尖ってる耳を持つ方などもいました。もしかしてハイリア人でしょうか。

 

そんな風にキョロキョロしていると、周りの方達から微笑ましいような目で見られている事に気付きました。今のボクは完璧におのぼりさん状態です。うぅ、手に持つお花のせいという事にしておきましょう。

 

守衛さんの言ってたように進むと冒険者ギルドという看板が見えてきました。恐らくここの事です。

 

ですが困った事にボクの両手は塞がっていますので、扉を開く事が出来ません。身体で押せば開く事はできますが、大切な一丁羅ですのでなるべく汚したくはありません。

 

「──ああ、クリス。また明日──むっ?」

 

「え? ……ふぉっ!」

 

扉の前で立ち止まっていたせいで中から出てきた人にぶつかり、尻餅をついてしまいました。

 

ボクにぶつかった──騎士のような金髪のお姉さんは少し慌てた様子でこちらへ駆け寄りました。

 

「す、すまない! 私の不注意だ。痛いところはないか?」

 

「だ、大丈夫です。ボクがこんなところで立ち止まっていたのが悪いんです」

 

「気にするな、怪我がないのならいいんだ」

 

そう言って騎士のお姉さんはボクの手を掴み立ち上げてくれました。その騎士然とした挙動があまりにも堂に入っていた為、思わず魅入ってしまいました。

 

「あれ? ダクネスの知り合い?」

 

すると中からもう一人、軽装の銀髪のお姉さんが出てきました。どうやら金髪のお姉さんはダクネスさんと言う名前のようです。

 

「……いや、違う。扉を開けたら目の前に立っていてな。それでぶつかってしまったんだ」

 

「そうなんだ。ところで落ちてる花って君のじゃない? 風に飛ばされちゃうから早く拾わないと!」

 

「あっ、お花……!」

 

そうでした! 魅入っている場合ではありません。このままではせっかく摘んだお花が何処かに飛ばされてしまいます。ああっ、風が吹いて花が……っ!

 

ボクは慌てて拾い集めます。

 

「……ん、手伝おう。私にも責任がある」

 

「あたしも手伝ってあげるよ! 数も多いしね」

 

ボクは好意に甘えさせてもらい、三人で手分けして花を拾い集めます。手数が多いのですぐに集まりました。傷も付いてないみたいなので良かったです。

 

「手伝っていただきありがとうございます」

 

「いいよいいよ、気にしないで! ところで冒険者ギルドに何か用かな? これからはもう酒場の時間だし、依頼なら明日にした方がいいんじゃないかな?」

 

「いえ、冒険者になりに来ました」

 

「へぇ〜冒険者にってえええええ!? い、依頼しに来たとか知り合いに会いに来たとかじゃなくて!?」

 

「何故そんなに驚いているのですか?」

 

「や、そんな花いっぱい持っててオシャレな格好した町娘に、冒険者になるって言われても信じれないというか……」

 

「そう言われましても……」

 

本当の事なので仕方ありません。ボクにはどうしようもないことです。格好に関してもそうですが、お花も摘んだからには捨てる訳にはいきません。

 

「……まぁ待てクリス。この娘にも事情があるのだろう。……そういえば自己紹介がまだだったな。私はクルセイダーのダクネスだ。隣はクリスといって、クラスは盗賊だ」

 

「はーい、クリスだよー!」

 

ダクネスさんとクリスさんですか。クリスといえば花のクリスが連想されます。花言葉はなんでしたっけ?

 

「わ、私の名前は風神悠です。よろしくお願いします」

 

今まで一人称はボクだったので、私という言い慣れない言葉に思わず躓いてしまいます。しかし、これも女装だとバレない為に必要な事。先程も咄嗟だったのでついボクと言ってしまいましたので気をつけなければなりません。

 

「……ん、ではユウと呼ばせてもらうとしよう」

 

「あたしもユウって呼ぶね! ところでさ、なんでそんなに花を持ってるの? しかも両手に沢山。なんとなく飾りに来たのかなって思ってたんだけど違うみたいだし」

 

「うーん、何故でしょうか……?」

 

「いやあたしに聞かないでよ! ユウが分からないんだったらあたしにも分からないから!」

 

という事は誰にも分からないので迷宮入りですね。どうしましょうか、このお花。

 

「処理に困っているのだったら私が貰っても構わないだろうか。野生ながら見事な咲き方だし、ちょうど花を飾りたいと思っていたんだ」

 

「本当ですか? でしたら、この子達をよろしくお願いします」

 

ダクネスさんの言葉にボクはありがたく了承しました。

 

摘んだまでは良かったんですけど、よくよく考えると飾る場所がないなーって事に先程気が付きまして。でも捨てる訳にもいかないのでどうしようか悩んでたところだったんです。

 

「うむ。大事に飾るとしよう。すまないが、この後は少々用事があってな」

 

「あ、そ、そうでしたか。引き止めてしまいすみません……」

 

思わずシュンとなってしまいます。ぶつかった時にはもう帰ろうとしていたようなので、だいぶ引き止めてしまいました。

 

「気にするなと言っただろう。じゃあそういう事で、私は……」

 

「ああ、いいよいいよ。また明日ね、ダクネス!」

 

「うむ。ユウも、またな」

 

「は、はい。お花、受け取ってくださってありがとうございます」

 

「……」

 

ダクネスさんはコクリと頷くと、ボクのお花を受け取って帰っていきました。

 

「あの子無愛想だけど、とってもいい子だから仲良くしてあげてね?」

 

「な、仲良く……が、頑張ります」

 

仲良く、その言葉を聞いて少しだけドキッとしました。ダクネスさんが良い方なのは先の間だけでも分かります。

 

……分かりますが、ダクネスさんやクリスさんは、とても美人です。今の数分だけでも実は少し緊張していた、というか今でも緊張しているというのに、仲良くと言われると尚のこと気恥ずかしい感じがします。

 

それに二人とも年上で冒険者の先輩で、どう接すれば良いのやら……。

 

そんな事を考えていると、ボクの肩をクリスさんがパンパンと叩きました。

 

「あっはっは! 別に頑張る必要はないんだよ? 冒険者になれば年の差や先輩後輩なんて関係ないのさ! みんな同僚でありライバルであり、同じ釜の飯を食べる仲間だよ! 気遣いは大事だけど、遠慮のしすぎにも気を付けなくちゃね!」

 

「クリスさん……はい! ありがとうございます!」

 

恐らくクリスさんはボクがダクネスさんという先輩に対して気遅れしてると思い、今の言葉をくれたのでしょう。そうとも言えるし、そうでないとも言えますが、ボクはクリスさんの気遣いが非常に嬉しく思います。

 

歳や性別は違えど立場は同じ。先輩への敬意は忘れてはいけませんが、同僚として気安い立場でもあるという事を教えてくれたのです。

 

先程出会ったばかりのボクに対して朗らかに接してくれるクリスさん。なんて優しくて、人の出来た方なのでしょうか!

 

それだけに、ボクが女装しているだけで実は男だという事実を隠している事に、少し胸が痛みます。

 

「ふふっ、それじゃあ行ってみよう!」

 

その言葉を合図に、クリスさんはボクを連れて冒険者ギルドの中へと入りました。

 

 

 

 




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