この花の主人(偽)に祝福を!   作:GU

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第四話 冒険者になりました

 

 

「……あら、クリスさんと仲直りは出来ましたか?」

 

「はい、おかげさまで!」

 

「それは良かった。では登録料で千エリス 頂きますね?」

 

「あれ? どうして私が冒険者になりたいって分かったんですか?」

 

「すぐそこで話していれば嫌でも聞こえますよ」

 

受付のお姉さんは苦笑いで言いました。

 

言われてみれば目と鼻の先でした。

 

「では、はい」

 

「はい、千エリス確かに頂きました。では冒険者に関して軽く説明を致します。まず、冒険者とは街の外に生息するモンスター、人に害を与えるモノの討伐を請け負う人の事です。とはいえ、基本は何でも屋みたいなものです。冒険者とはそれらの仕事を生業としている人たちの総称。そして、冒険者には各職業というものがあります」

 

「おお、職業ですか」

 

ダクネスさんが言っていたクラスってやつでしょうか? まるでドラ○エの様なシステムですね。その後にレベルについての説明もありましたが、概ねド○クエと同じでした。まるでゲームの様なシステムですが、本当にここは現実世界なのでしょうか? ボク、気になります!

 

レベルアップをする毎にポイントが手に入り、そしてポイントに応じてスキルを手に入れる事もできる様です。自分で選べるというのが良いですね。実に都合が良いです。

 

スキルについても、どうやらスキルというのは他人から教えてもらう事もできる様で、人によってはあからさまに不相応なスキルを覚える事もできる様です。まぁその場合はそれ相応の威力しか出ないようですが。例えるなら「今のはメラではない…メラゾーマだ…」と言ったところでしょうか。これだと大魔王の方が逃げられなさそうですね。

 

続いてボクは受付のお姉さんの指示に従って自分の身体的特徴を紙に書きました。読めていたので大丈夫だとは思っていましたが、書くのもサラッといけました。……自由に書いていいそうなので性別については敢えて明記しないでおく事にします。

 

そして次が最後。カードに触れることにより今のボクのステータスが明白になり、その数値によってボクが就ける職業が分かるとの事。

 

遂に来ました! 職業と聞いた瞬間から待ちかねてました! 冒険者といえばここが最初の山場です。内心ドキドキワクワクではありますが、ボクは現実を見据える男。過度な期待は抱いてません。

 

物語の主人公であればここで見た目にそぐわぬ高いステータスだったり、職業勇者だったりが発覚するのでしょうが、ボクは多分違います。

 

別に鍛えていたわけでもなく、かと言って頭が良い訳でもない。極々普通の日本人です。ボクの取り柄といえばお花に関する知識くらいでしょうか。それも完璧とは程遠い知識量ではありますけど。後は地味に動物に懐かれやすいとか、そのくらいです。自虐じゃないですよ? 大抵の人はそんなものでしょうし。

 

……まぁでも、出来るなら魔法とか使いたいですね! 大魔道師や滅竜魔導士(ドランゴンスレイヤー)魔導精霊力(エーテリオン)の使い手! あっ、聖石使い(レイヴマスター)なんてのもいいですね! 世代じゃないですけどボクは好きです! 後は魔法じゃないですけどかめはめ波! ファイナルフラッシュ! デスビーム! いやぁ、好きですねぇ!

 

あああーっ、なるべく考えないようにしてたのに! 期待なんてしてなかったのにぃ! やりたい事が沢山出てきちゃいました! こんな事を考えてる時間も惜しいです! 早く、早くボクのステータスを見せてください!

 

「……カザカミ ユウさんですね。知力が普通……筋力、敏捷性、幸運が結構低いですね。魔力と器用度がそこそこ高めで……あれ、生命力が恐ろしく高いですね……。これだけの生命力だと並大抵の攻撃ではやられる心配はありませんよ。それこそ、爆裂魔法でも撃ち込まないと致命傷にはならないかもしれませんね」

 

おお! 思っていたより良いステータスです! 筋力や幸運が低いのはなんとなく自覚してたのでなんとも思いませんが、知力が普通なのは地味に安心しました。知力が低いとか人に言われたら、なんか……嫌じゃないですか?

 

予想外だったのが魔力と生命力。これはすごく嬉しい! だって、魔力が高いって事は、魔法が沢山使えるって事で、高威力な魔法だって使えるんですよ! 極めたら極大消滅呪文(メドローア)だって夢ではないかもしれません!

 

生命力も、健康で丈夫な身体だと保証されたみたいで嬉しいです。つまり死ぬ可能性が低いという事ですからね! 言われてみればボクはこれまで病気という病気を患った事がありません。きっと生まれた時に沢山注射をされて抗体をいっぱい持っているのでしょう。

 

「これだけの魔力や生命力だとあらゆる攻撃魔法を自在に使いこなす魔法使い《ウィザード》や最高の防御力を誇る聖騎士《クルセイダー》をお勧めしたいのですが、知力と筋力が足りませんし……となると就ける職業は回復魔法や支援魔法を使いこなす僧侶《プリースト》、ゴーレムを作成したり魔法陣で罠を設置できる《クリエイター》と、後は……ってあれ、なんですかこの職業は!?」

 

「どうかしましたか……?」

 

しれっと魔法使いにはなれないと言われて割とがっかりしていると受付のお姉さんから驚愕の声が上がりました。ボクとカードを見比べられるとなんだか不安になってきます。も、もしかして……男だってバレた!?

 

「い、いえ、覚えのない職業が表示されていましたので、どう説明すれば良いかと……」

 

ゆ、許された……!

 

どうやらバレた訳ではないみたいです。

 

「よく分かりませんが、どんな職業ですか?」

 

「《フラワーマスター》……という職業なのですが……」

 

「なります」

 

「えぇ!? 即決ですか!?」

 

「…………って、えぇ!? ふ、フラワーマスターですか!?!?!?」

 

「あ、あれ!? い、今返事しましたよね!?」

 

いやいや、え? え? え? フラワー、マスター……? フラワーマスターってあれですよね。風見幽香の二つ名ですよね? 本当は前に“四季の”が付きますけど些細な問題です。

 

なりましょう

 

だってフラワーマスターですよ? 直訳したら花の主人ですよ? なりたいじゃないですか、花の主人。ボクにお誂え向きな職業ですよ。まるでボクの為にあるような気さえします。

 

今まで考えてた事が全て吹っ飛びました。躊躇する理由がありせん。いえ無くなりました。もう魔王なんてどうでもいい! ボクは四季のフラワーマスターになるんだい! そして世界最大級のフラワーガーデンを経営するんだい! やがて世界中のありとあらゆる四季折々の花を育ててギネスブックに載るんだい!

 

…………はっ! いけません。意識がつい嬉しい楽しい方向へ流れてしまいました。ボクの使命は魔王を討伐する事! この世界は、ボクが守護(まも)なればならぬ……。夢を追い掛けるのはそれからでも遅くはない筈です。

 

「フラワーマスターとはどのような職業なのでしょう……」

 

「うーん、私共にもよく分かりませんね……。これから王都の冒険者ギルドにも問い合わせを行う予定ですが、恐らく情報はない物と考えてください。何しろ前例を聞いた事がありませんので。とりあえず言えるのは紛う事なき超超レア職業ではあるという事ですね!」

 

なるほど、つまり今分かっていることはフラワーマスターという言葉が実に華麗で優雅で大胆な響きだという事だけな訳です。まぁなるのは別に構いません。どうせ魔法使いにもなれないようですし。

 

しかし、ボクは既に『花を操る程度の能力』を女神様から頂いてます。この職業になるメリットが思い付きません。何かないものでしょうか。

 

うぅん……フラワーマスターフラワーマスター……あっ! 風見幽香の二つ名なんだからもしかしたら風見幽香の他の能力が使えるのかもしれません!

 

いや、空想と現実をごっちゃにしてはいけませんね……。そもそもボク自身が東方をほとんど知らない、ニワカどころか素人な訳でして。名前を知ってるキャラも風見幽香とメディスン・メランコリーだけですし、その二人でさえかるーく流し読みしたWikiやイラスト(風見幽香withお花畑)を知ってるだけです。

 

つまり他の能力なんて一つも知りません。この話はこれで終わり!

 

「もしもフラワーマスターになって頂ければ、前例のない職業の為、規定として情報を提供していただく形になりますので冒険者ギルドも全霊でバックアップさせていただきます。つきましては税金の免除及び毎月一定額の給付金を配当致します」

 

「……一定額っていくらですか?」

 

「占めて三十万エリスです」

 

「三十万エリスですか」

 

「ええ、三十万エリスです」

 

「三十万エリスかぁ」

 

三十万エリス……多いのか少ないのか全く分かりません! エリスが単位なのは流れで分かってはいましたが、価値がどれほどの物なのか……。ちょっと調べなければいけませんね。

 

受付のお姉さんに聞くのもどうかと思ったので、ボクはキョロキョロとクリスさんを探しました。……あっ、見つけました! どうやら冒険者の方達と話しているみたいです。

 

「クリスさん!」

 

「……あっ、ユウ。もう終わった? 結構長かったね。クラスは何にしたの?」

 

「あ、いえ、まだ終わってはいないんですけど……それより、一般的な宿って大体何円……じゃなくて何エリスくらいしますか?」

 

「えっと……五千エリスくらいじゃない? 急にどうしたの?」

 

「ちょっとゴタゴタしてまして……もう少しで終わります!」

 

「おっけー、じゃ待ってるねー」

 

ニコッと微笑むクリスさん。笑顔が綺麗です。そして優しい。別に待つ必要なんてない筈なのに律儀にボクの事を待ってくれています。優し過ぎて美人局なのかと勘繰ってしまいそうです。それともこの街の住民性というやつでしょうか。

 

なんにせよ、この世界の通貨の価値が大体分かった気がします。普通の宿が五千エリス、日本でもビジネスホテルは地方だと五千円くらいだった筈です。つまり大体一緒ですね!

 

……え? という事はフラワーマスターになれば毎月三十万円は貰えるって事ですか!? 三十万円あればキマワリの人形が百五十体は買えますよ!? めちゃくちゃ大金じゃないですか!?

 

毎月のお小遣いが三千円だったボクがいきなり三十万円になるだなんて……現実味がありません。かいけつゾ○リでゾ○リがレストランで偽札の一万円を高らかに掲げながら王様のように沢山の料理を頼んでいたのを思い出します。ボクもようやくアレが出来るような年齢になったのかと思うと感慨深いです。

 

受付のお姉さんのところへ戻りましょう。

 

「心は固まりましたか? 私個人の意見を言いますと、今後同じ職業が他の方に出ないとも限りませんし、前人未到の第一人者として、出来れば《フラワーマスター》を選んで頂きたいと思っています! 選べば冒険者兼公務員という特殊な形態となりますので気軽に職業、この場合は冒険者のクラスを変更する事は出来ませんが……如何致しますか?」

 

「……あの、もしフラワーマスターになったらお金って今すぐ貰えますか?」

 

「申し訳ありません。月末に振り込まれる仕組みとなっておりますので……」

 

「そ、そうですか……」

 

クリスさんにサッと返せるかと思いましたが、そううまくはいかないようです。

 

「公務員と兼業と言ってましたが、普通に冒険者をやるのと何が変わりますか?」

 

「特に変わりはありません。強いて言うなら先程伝えた情報提供と、給料が支払われる事。後は年に一度行われる税金徴収が免除される程度です」

 

「税金の支払いって年に一度なんですか?」

 

「ええ、そうです。とは言っても冒険者の方々にはあまり関係のない事ですが……」

 

日本のように色々な税金がある訳ではないみたいですね。国の財産はどうやって賄っているのでしょうか?

 

ともあれ、どの特典もボクにとって得するものばかりです。最初からフラワーマスターになるつもりではありましたが、改めてやる気になりました。

 

「フラワーマスターになります!」

 

「本当ですか! ありがとうございます! ではフラワーマスター……っと。冒険者ギルドへようこそユウ様! スタッフ一同、今後の活躍を期待しています!」

 

「受付のお姉さん……私、頑張ります!」

 

激励に心が燃えます。

 

冒険者カードをお姉さんから受け取ります。そこにはボクのステータスと職業であるフラワーマスターの字が記載されていました。

 

これでボクも冒険者です! なんだかとても時間がかかった気がしますが、結果上手いこと進んでいるのでヨシ! 早速クリスさんに報告しましょう!

 

「クリスさん! 終わりましたよー!」

 

「だいぶ時間かかったね。もう待ちくたびれちゃったよ!」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「う、うそうそ、冗談だってば! 本気で落ち込まないでよ! ……それでゴタゴタって一体なんだったのさ」

 

ボクはクリスさんに自分が選ばれしフラワーマスターだと説明しました。

 

「新しい職業? すごいじゃん! そんな事があるんだねぇ……」

 

ボクは冒険者カードをクリスさんに見せました。ちなみにこのカードにボクの性別は記載されていません。

 

「本当だ……フラワーマスターって書いてるね。どんなクラスなんだろう。花の主人っていうくらいだから花とか植物を動かしたりするのかな?」

 

「うーん、どうなのでしょうか……」

 

風見幽香の『花を操る程度の能力』は花を成長や退行、花の向きを変えたりする能力です。オマケのような能力だとwikiにも書かれており、ボクもそのつもりでこの能力を希望しました。

 

しかし、フラワーマスターになった事によって能力が昇華されるとしたら?

 

まだこの能力自体も貰ったばかりで満足に使ったことがないのでなんとも言えませんが、出来る事が増えたかもしれないと思うとワクワクします。向日葵がキマワリになる日も近いですね!

 

冒険者カードを返してもらうとボク達は晩ご飯を食べることにしました。ボクはお金を持っていないので遠慮しようと思ったのですが、クリスさんが

 

「新たな門出のお祝いさ!」

 

と言って奢ってくれました。本当にクリスさんには感謝しかありません。いつか、必ず恩返しをしなくては……!

 

 

 

……ところで、カエルってあんなに美味しい食べ物だったんですね。少し見る目が変わりました。

 

 

 

 




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