あと、第三者視点を肝にしてます。
「おおお…キモ…」
現在、夜雪は大ムカデと対峙している。流石にこれを気持ち悪いと思わない人間はいないのでは無いだろうか。
夜雪は腰から引き抜いた片手剣でザクザクとその体を刺していく。このムカデは毒を持っていて噛み付いた相手にその毒を流し込むのだが、夜雪は回避に専念しているので、毒の入れようがない。
数十回刺してやっと倒すことが出来た。
「レベルは……上がらないか……」
夜雪はこの時点で引き返すか迷っていた。
しかし、奥へ奥へと進むうちにこの辺りで最も強力な魔物がいる所に迷い込んできてしまっていたのだ。
そして、その魔物は不幸なことにまさに今、夜雪の前に現れたのだ。
煩い羽音を立てて飛んでいる大きな蜂。
それが、夜雪に向かってくる。
……余談になるが、この数週間後に同じ目にとある少女が会う。何かシンパシーでもあるのだろうか。
「うわ……最悪だ……」
βテストの時を思い出したのか、その表情は暗い。
夜雪はその有り得ないくらい大きいお尻の針に恐怖を覚えて片手剣を構える。
しかし、一瞬で背後を取られて、首筋を刺され……
無かった。その持っているスキルとステータス、プレイヤースキルと呼ばれるものまで駆使して、全力で避けていた。
巨大蜂は何度も首筋を刺そうとする。
その度に避ける。避けつづける。
「はいっ! やっ! ほっ!」
総合的なAGIが巨大蜂よりも高かったようで、容易にとはいかずとも、避けることができていた。
巨大蜂はそれからも何度か刺そうと試みてはいたが無意味だと悟ったのか、毒液を噴射してきた。
「んっ……!?」
夜雪はこれまたギリギリで避けた。しかし効果範囲が広く、このままだといずれ攻撃を受けてしまいかねない。が、
「おっし! やるか!」
何故かやる気を出した。アホである。
普通なら戦略的撤退……つまり逃げるところだ。とある少女もこの場面は流石に逃げだそうとした。……まぁ結果的に【毒耐性】を取得して事なきを得たのだが。
そのまま数時間かけて巨大蜂の攻撃を全て避けつづけた。
「……っ。流石に、しんどくなってきた」
当たり前である。人間、体力的に問題なくても同じことを延々とするのは精神的な疲労がハンパない。というかまず無理だ。
『スキル【超回避】を取得しました』
途端、スピードが上昇した。
「お? 速くなった。あれかな、【回避】の上位版ってところなのかな」
そう言いながら、巨大蜂に攻撃を仕掛け、徐々にそのHPを削っていく。
数分かけてようやっと巨大蜂を討伐した。
巨大蜂はピクピクと震えた後、光となって消えていく。そしてその場にぽとっと銀色の指輪がドロップした。
「ふっ…勝利!」
『スキル【
夜雪は指輪を拾い上げると、今回手に入れたスキルと指輪を確認する。
フォレストクインビーの指輪【レア】
【VIT +6】
自動回復:10分で最大HPの一割回復。
「おおおお! これは凄い。HP自動回復! 運が良い!」
魔法を一つも取得していない夜雪にとってHP回復は貴重である。さらについでに付いている【VIT +6】が地味に大きい。これで防御もすこしは安心できる。
それを最初から着けていたグローブを外して付ける。グローブは装備品では無い唯のオシャレアイテムなので指輪の上から着け直す。
「後はスキルっと…」
【超回避】
敵性体が付近にいる場合、AGIを四倍にする。薬や装備品は効果範囲外。ステータスのみの強化。
取得条件
自身よりも強いモンスターの範囲攻撃を三十回回避する。攻撃を受ければ再カウント。
「四倍……やべぇ…」
実際、本当にやばい代物である。未だサービス開始から数時間ほどしか経っていない。それなのに、スキルで自身の速度を四倍に強化するなど、強さのバランスが崩壊する。現在のプレイヤーでは夜雪ほど速い者はまず居ないだろう。
「じゃあ次!」
【
HP、MP以外のステータスのうち四つ以上が戦闘相手よりも低い値の時にHP、MP以外のステータスが二倍になる。
取得条件
HP、MP以外のステータスのうち、四つ以上が戦闘相手であるモンスターの半分以下のプレイヤーが、単独で対象のモンスターを討伐すること。
「基本的にステータスは低いから……最初の方だけかな? 役に立つのは。……AGIだけ飛び抜けてるなぁ…十六倍って」
現在の夜雪のAGIの実数値は384だ。あの少女のVITには遠く及ばないが、それでも今で考えると驚異的な数字だ。
「……レベル10になってからログアウトするかな」
夜雪は帰り際にモンスターを倒し続け、レベルアップを果たしてから現実世界へと帰った。
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「よぅし! 今日も張り切っていくぞ!」
あの少女と同じような言葉でログインする。……似たもの同士だからこそ言葉も似るのだろうか。
「今日も森に行こっと。新しいスキルも欲しいし」
夜雪はレベル上げに熱を入れるようなタイプだが、新しいスキルが手に入った時のワクワクする感覚にも惹かれるものがあった。真っ白なキャンパスに様々な色を塗っていくような、一種の楽しみがあるのだ。
「なるべく色んなスキルを身につけなきゃ」
夜雪はスタスタと町の外へ向かって歩き出した。
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「どんなことを試そうかな………」
昨日と同じ森に夜雪は来ていた。
気配察知は昨日の内に既に取得していた。効率的にレベルアップするには必須のスキルだからだ。狩りの最中に意識して身につけた。
「剣術スキルを鍛えながら……気配希釈でもやってみるかな!」
そう言いながら、息を殺して、できるだけ自身の存在を消すように物音立てずに動く。そうして三時間。
『スキル【存在希釈】を取得しました』
全く別のスキルを取得した。
「あれ? 何か違うやつじゃん……」
そう。実際に夜雪は間違ったことをしていた。そもそも【気配希釈】の取得方法は掲示板に載っている。気配希釈はクエストをクリアしなければ取得できないのだ。……何処かの少女と同じような間違いをしていたのである。
【存在希釈】
使用すると、相手または自分の存在を薄くさせる。効果持続時間は三十分。消費MPなし。
【存在希釈】時には【気配希釈】等の敵に気付かれにくくなるスキルは使えない。
取得条件
息を殺してほとんどの音を消し去って、モンスターを十体以上討伐すること。その間、誰にも見られずに討伐すること。誰かに見られたら再カウント。
「……うん。まぁ、似たようなものだし。いっか」
実際は存在希釈の方が強力なのだが……それを知ることになるのは大分後の話だ。
『スキル【剣術 Ⅱ】が【剣術 Ⅲ】になりました。レベルが14になりました』
続いてスキルと自分のレベルアップだった。
「おー、一気に……ステータスの振り分けでもしよ」
夜雪
Lv14
HP 40/40
MP 12/12
【STR 34〈+18〉】
【VIT 34】
【AGI 34】
【DEX 34】
【INT 34】
装備
頭 【空欄】
体 【空欄】
右手 【初心者の片手剣】
左手 【空欄】
足 【空欄】
靴 【空欄】
装飾品 【フォレストクインビーの指輪】
【空欄】
【空欄】
スキル
【回避】【
夜雪は最後にステータスを確認すると満足気に頷いて、フォレストクインビーを倒し【毒耐性】を得て、レベル上げをしてからログアウトした。