万能職を目指します。(異論は認めない)   作:神楽 光

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 ヤンデレ寸前。


七!第一回イベント結果!

 夜雪は疲れ果てていた。メイプルを狙うプレイヤー達をチマチマと攻撃して減らしていると、それに気づいたプレイヤー達が夜雪のところにも来たのだ。そして現在。

 正面から大所帯。その数何と五十人である。メイプルの方も同様だ。パーティーを組む者は何度か見かけたが、五十人は流石に見たことが無かった。因みに、メイプルの移動によって夜雪も移動しており、一本道の側にいた。……端から見れば協力しているように見えるが、メイプルのほうは夜雪に気づいていない。

 

 五十人のプレイヤーのその殆どが魔法使いのようで夜雪とメイプルを視認してすぐ杖を掲げ魔法を放ってくる。

 恐らくこうやって一本道で何度もプレイヤーを狩ってきたのだろう。

 その動きには淀みがなく慣れが感じられる。

 

「大魔法で、吹き飛ばす!」

 

 メイプルが叫ぶ。魔力結晶が溜まりすぎて黒の大盾が赤の大盾になってしまっているのだ。

 そして、それを聞いて全力でその場から離れる夜雪。メイプルは四十人近い魔法使いから放たれる魔法を素で受け止めた。

 相手の魔法が尽きた時。メイプルは腰の短刀を引き、抜ききる。最大威力の攻撃は刀身全てを見せて行うのである。

 刀身から紫色の魔法陣が展開される。

 

「【毒竜ヒドラ】!」

 

 三本の首を持ち全身劇毒で出来た毒竜が、大盾の魔力結晶全てと引き換えに前方三方向を毒の海に変えていく。

 巻き添えを食った人も合わせれば五百近くのプレイヤーが吹き飛んだ。

 

「(あっぶな~……)」

 

 残り時間は後一時間となっていた。後たった一時間で全ての順位が決定するのだ。そんな緊張状態の中。

 大音量でアナウンスが鳴り響いた。

 

「現在の一位はペインさん二位はドレッドさん三位はメイプルさんです! これから一時間上位三名を倒した際、得点の三割が譲渡されます! 三人の位置はマップに表示されています! それでは最後まで頑張って下さい!」

 

「どうにも簡単には終わらせてくれないようだ」

 

 危機感は感じていない様子のペイン。

 

「うぇーめんどくせーマジで?」

 

 露骨にだるそうなドレッド。

 

「やった! 私三位だ!」

 

 喜ぶメイプル。

 

「うわぁ……」

 

 引き攣った顔で嘆く夜雪。

 

 三者三様の反応を各地で見せる中、イベントはクライマックスへと向かっていく。三人の元へ我先にとその首を狙うプレイヤー達が走り出す。

 

「いたぞ! あいつだ!」

 

 わらわらと森から出て来るプレイヤー達。

 その中には当然AGIに多めに振っている者もいたりする。

 その速度についていけるわけもなく、うなじにナイフが振り下ろされる。寸前に夜雪が弓矢で射る。本来必要ないことではあるが、夜雪は自分の存在を示すために行った。

 

「グアッ⁉︎」

 

「え?」

 

 夜雪の助太刀に驚くメイプル。だが、そんなことをしている暇はない。その後もメイプルに数人が飛びかかっては何故か通らない刃に文句を言いつつ食われていった。

 

「う~ん? ま、いっか」

 

 メイプルは誰かに助けられたと考えたが、その人物を探す暇もないため後にすることにした。

 流石にそんな光景を何度も見ればプレイヤーの出方も慎重になるようでじりじりと距離を詰めてくる。特に一撃必殺の大盾を気にしている者が多い。

 しかし、メイプルの攻撃役は大盾では無く短刀だということをプレイヤー達は失念していた。

 

「【致死毒の息】」

 

 メイプルが新月を半分程度抜くと鞘から濃い紫の霧が溢れ出す。

 

「【パラライズシャウト】!」

 

 パタパタと倒れていくプレイヤー達が致死毒から逃げられる筈もなく。最前列から順に粒子に変わっていった。

 結局。プレイヤー達はメイプルと夜雪のポイントになっただけだった。

 

 そして、遂にその場に残るのが夜雪とメイプルのみになったとき。

 

「それじゃあ────やろうか、メイプル」

 

「────うん」

 

 夜雪は白夜の弓に()()()をつがえる。そして────、

 

「────うっ!?」

 

 ズドオオオオオン!!! 

 

 人と矢が当たった音とは思えない音が響く。

 

「うわぁ……固ぁ」

 

「イッタタ……あれ? でも……」

 

 何かに気づいたメイプルが何かを言う前に唐突に終わりが来た。

 

「終了! 結果、一位から三位の順位変動はありませんでした。それではこれから表彰式に移ります!」

 

 メイプルと夜雪の目の前が白く染まったかと思うとそこは最初の広場だった。

 一位から三位までが壇上に登るように言われてメイプルも登壇する。メイプルは真っ直ぐ前を向いて立っていたが余りの視線の量に恥ずかしくなったのか顔を赤くする。

 そして、メイプルにマイクが渡された。因みに夜雪はすぐに人混みに隠れた。最後の最後にメイプルを攻撃したので、出るのはまずいと考えたのだ。

 

「次は、メイプルさん! 一言どうぞ!」

 

 次はということは後の二人はもう言ったのだろうが、メイプルは緊張して全く聞いていない風だった。

 

「えっあっえっ? えっと、その、一杯耐えれてよかったでしゅ」

 

 メイプルが噛んだ。

 それはもう盛大に噛んだ。

 しかも何を話せばいいか分からなかったために言っていることが滅茶苦茶である。

 メイプルは、流石に恥ずかしすぎて前を向けなかったので、その様子が動画として多くのプレイヤーに記録されていることも分かっていなかった。

 記念品を受け取ると、そそくさと宿屋に帰るメイプルだった。

 その夜。掲示板はメイプル可愛すぎスレとメイプル強過ぎスレで大いに盛り上がった。.....ついでに最終兵器として夜雪も有名となった。因みに彼は五位である。




 タグも幾つか回収。

 メイプル!それに気づいてはいけない!

 メイプルの防御力を貫けたのは、鉄の矢の攻撃力加算とステータスと武器の攻撃力加算ですね。ただ、HPは少ししか削れてません。

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