俺じゃない誰かなら   作:あたまくら

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 だいぶ短めです。キリトさんのアバターの設定あります。


一話

 

 何もない、それこそ地平線がはっきり見えるほどに閑散とした、殺風景な荒野が目の前に広がっていた。

 ―――なんだろう、この世界では仮想空間にはもの置いちゃいけないみたいな法律でもあるんだろうか。

 

 次々世界をたらい回しにされていい加減疲れてきたのか、そんな益体もないことを考えはじめてしまう。

 

 「ん…、あれ?」

 

 そんな中、俺はふと視界の上にナニカが表示されていることに気がついた。

 真ん中のデジタル数字、そして左右にそれぞれ2本ずつ存在するバーを視界に収めた瞬間、俺は強烈な既視感に襲われた。

 とっさに背中に手をやると、交差させるように背負った二本の剣の柄に手が触れる。

 間違いない、古き良き対戦型格闘ゲームの画面構成だが、俺はこの表示を、この場所を知っている。

 無論、一般的なカクゲーのそれを知っているという意味ではなく、このフルダイブ対応の対戦ゲームをプレイした……、というよりは紛れ込んだといった方が正しいが、とにかくここに来たことがあるのだ。

 

 

 あれは確か、4ヶ月ほど前のことだ。今日―――厳密には二十年以上経っているのだが―――と同じようにアルバイトで比嘉さんのもとを訪れた俺は、《第四世代型フルダイブ実験機》……、STLのテストダイブを行った。

 しかし、俺は本来ダイブするはずのうららかな森ではなく、全く別のVRワールドに降り立った。

 そこで俺は《シルバー・クロウ》なる鳥人間――――鳥ロボットかもしれない――――と戦うことになったのだが、その時の対戦画面と表示が全く同じなのだ。

 要するに、この《Brain Burst2039》なるゲームこそが、あのとき俺と、かの銀翼の戦士が戦った舞台ということになる。

 

 と、まあ。

 

 こんなふうにのんびり状況分析をしていることからも解るだろうが、俺はすっかり忘れてしまっていた。

 

 「お、いたいた。お前が《スター・ロード》か? 完全な人型なんて随分珍しいアバターだな。」

 

 すなわち、今現在俺は絶賛対戦中であるということを。

 

 いきなり声をかけられたことには驚かなかった。

 それ以上に、目の前の全身緑色のロボットめいた見た目の何かが発した言葉に、俺はかなり露骨に反応してしまったからだ。

 慌てて視界上部を確認し、左側のバーの下に《Star Lord》なる文字列を認めた俺は、今度こそ驚愕の声を漏らした。

 

 《スター・ロード》、日本語に訳せば《星王》。

 かの世界、《アンダーワールド》で二百年の時を過ごした、もう一人の俺を指す言葉だ。

 実を言えば、俺自身はその星王とやらは自分とは別人だと思っているのだが、今はそんなことはどうでもいい。

 それより確か、前にこの世界に紛れ込んだとき、俺は間違いなくSAO時代の《Kirito》の姿だった。

 このゲームについて俺はほとんど何も知らないが、まさかダイブする度にアバターが変わるなどという謎仕様ではあるまい。

 色々と考えてはみるが、それらしい答えが出るはずもなく、俺は目の前の緑ロボに意見を求めようとした。

 ちらと視線を上にやり、名前を確認してから口を開く。

 

 「なあ、えっと、《グラス・ホッパー》さん―――

 

 このゲームのことについて教えてほしいんだが、という言葉を、俺は続けることは出来なかった。

 俺が二の句を継ぐより早く、先ほど名前が判明した緑ロボット改め《グラス・ホッパー》が、話し始めたからだ。

 

 「んー、名前の割にあんま強そうじゃないな……。なんか、女の子みたいだし。」

 「は?」

 

 ああ、だめだこれは。はっきり言ってだいぶカチンと来てしまった。

 頭の中でスイッチが切り替わる音が聞こえる。右手を背中に伸ばし、剣の柄を掴んだ。

 しゅらあん!という刀身の滑る音を響かせ、俺は夜空の剣を引き抜く。

 唇をつり上げ、俺は口を開いた。

 

 「試してみるか? 名前負けかどうか。」

 

 俺の挑発的な態度に、どうやら向こうもその気になったようだ。俺が剣を構えたと見るや、即座に十メートル以上も飛び退く。

 なるほど、《グラス・ホッパー》の名が示すとおり、彼の特徴は健脚によるずば抜けた跳躍力らしい。ならば、行ってくる攻撃は高機動を活かした蹴撃か。

 一瞬の均衡、それを崩したのは相手の方だった。バネのように縮めた足を解放し、凄まじいロケットスタートを切った彼は、その勢いのまま俺めがけて飛びかかり―――。

 

 (―――あれ?)

 

 俺は内心で、そんな拍子抜けたような声を上げた。いや、実際に拍子抜けたのだ。

 彼の攻撃。

 速度は、申し分ない。だが、技量があまりにもお粗末だ。無駄な力が入り過ぎているし、大振りすぎる。その上狙いがみえみえだ。躱すことなど造作も無い。

 軽く身体をかがめ、最小限の動きで回避……と同時に、《夜空の剣》を一閃。暗がりに紛れる漆黒の刀身を、彼は認識することすらできなかったようだ。

 

 直後、《グラス・ホッパー》の左腕が宙を舞った。それが地面に落ち、ゴトリという無機質な音を立ててようやく、彼は欠損を自覚したらしい。

 あたふたと間抜けな声を上げながら慌てふためく彼に忍びより、首筋に剣をあてがう。

 

 「俺の勝ち…だな。」

 

 一瞬びくり、と身を震わせ、《グラス・ホッパー》は「降参…」と呟いた。

 とどめを刺さなかったのは、情報を提供してもらうためだ。いくらなんでも分かっていないことが多すぎる。制限時間も充分残っているし、せめてゲームシステムくらいはきちんと教えてもらおう。

 

 「じゃ、俺の話、今度はちゃんと聞いてくれ。」

 

 未だ呆然と立ちすくむこの世界の戦士に、俺はそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その翌日、新たな王の誕生の報が、加速世界に駆け巡った。

 無論、それは()のもとにも……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 
 アバター名 《スター・ロード》 

 
 
 アビリティ

 《存在証明(キリト)》 初期アビリティ

 以下4つのアビリティを使用できる

 《愚カナ救世主(フール・メサイア)》 

 強化外装、装甲へのダメージボーナス。オートヒーリング。両方ともパッシブ。

 《鍍金ノ勇者(ギルト・ブレイバー)

 ごく短時間飛行可能。特殊攻撃の核が見えるようになる。後者はパッシブ。前者は任意のタイミングで発動。

 《罪深キ英雄(クリミナル・ヒーロー)

 飛び道具に対して予測線が見えるようになる。バレット・サークルが出現する。共にパッシブ

 《醜イ叛逆者(アグリー・リベル)

 ニアデス時に能力上昇かつ必殺技ゲージ常時フルチャージ。高位エネミーへのダメージボーナス。後者はパッシブ。前者は条件達成時自動発動。

 
 《孤独(ソロ・プレイヤー)

 一対一でのデュエルで得られるバーストポイント増加。必殺技ゲージチャージ速度アップ。


 ちなみに説明文は存在しないのでキリトさん自身はどんな効果か解っていません。つまり、ソロ・プレイヤーでバーストポイントの絶対量を意図的に増やす、ということは不可能です。

 《グラス・ホッパー》は適当に考えました。緑系であれば何でも良かったんですけど、なんとなく仮面ライダー思い出してしまって……。
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