七月七日、キリトとの波乱の邂逅から四日。
その日、七王会議が行われた。
会議が始まってから十分ほど。黒の王、《ブラック・ロータス》の付添いとして出席していた僕は、王たちの非難の視線にさらされていた。
縮こまる僕。気まずい雰囲気の中に、笑い声が響いた。
「はは、針のむしろだな、クロウ」
「あなたのせいじゃないですか!?」
この状況を作り出した元凶である、黒髪黒眼の少年、キリトに全力の抗議を申し立てる。
つい先程、どういうわけか彼が七王会議に乱入してきたのだ。おまけにご丁寧にも僕の名前を呼んだせいで、今の状況に至る、という訳だ。……言うんじゃなかった。
「貴様、なぜこの場に乱入した。ここが七王会議の場と知っての所業か?」
先程まで、最早怒りを通り越してまたお前か、という呆れの視線を向けていたコバルさんが、厳しい声音でそう問う。するとキリトは一切の感情の抜け落ちた能面のような表情のまま、しかしやや芝居がかった口調で話し始めた。
「ああ、剣士《スター・ロード》、この加速世界にて王たちの集う集会があると聞き、同じく王の名を持つものとして参加した次第だ」
その言葉に、場の空気が張りつめた。数人の『王』が眉を顰め、付き添いのハイランカー達が敵意を露わにする。先程とはまた違った威圧感に、かくはずもない冷や汗がボディににじむ錯覚を覚えた。
「はあ……。一つ教えてあげましょう、《スター・ロード》。この世界の王とは、レベル9erにして、七大レギオンの長、つまりは名実ともに頂点に立つ者のことを指すのです。あなたが王を名乗るなど、十年……、いえ、百年早い」
呆れたような溜息から紡ぎ出されたレディオのその言葉には、王たる者の矜持と、軽々しくそれを称したキリトへの憤りが滲んでいた。いけすかない人物ではあるが、それでも彼もまた『王』に一角を担う者なのだな……。少し見直した。
(ふむ、世界から王を名乗ることを許された者……ですか。おいお前、あの小戦士には気をつけなさい。おそらく只者ではないでしょう)
と、そこで唐突にメタトロンの声が伝わってきた。レディオとは全く逆の評価を下す彼女に、確かにそれもそうだなと頷きを返す。なぜなら彼は王たちに匹敵するほどの重圧を放って……、あれ?
(だから言っているのです、気をつけろ、と。あの者は巧妙に自らの力を押し隠しています。この私ですら計れぬほどに……)
僕の内心の動揺を見透かし、メタトロンがもう一度語りかけてきた。『王』達すら視界に入れない彼女がここまで言うのはよっぽどのことだろう。
自分の軽率な行動を反省しつつ、先輩に何て説明しようかなー、と前途多難なキリトのレギオン加入の件に思いを馳せる。
そこで、キリトが口を開いた。
「なるほど、失礼した。あなたたちはその名に誇りを持っているようだ。ならば、俺は口を出すべきでは無いな。それでは」
そう言って、彼は背を向けた。一体何をしに来たのか、何が目的だったのかはよく分からないが、とりあえずはこれで丸く収まりそうだ。
恐らくこの後色々と追求を受けることになるだろうから、言い訳を考えないと……
「最後に、一つ」
ゾッ、と肌が粟立った。押さえつけられていたものが開放され、洒落にならない重圧が場を支配する。
「この世界を、任せた」
誰も、返答できなかった。硬直する僕たちを尻目にキリトは姿を消し、沈黙だけが残された。
束の間の嵐は過ぎ去り、その後の会議でも、誰一人として彼の話題を出すことは無かった。
そして七王会議を終えたあと。僕の家に残ったニコにあいつは何者だと詰め寄られた。彼女曰く、彼の情報圧はオリジネーターたる緑や青の王すら凌駕していたそうだ