追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

114 / 184
お待たせしました。

要望がありましたので主人公のスーツについての紹介? のようなものを作成いたしました。
この話の後にすぐさま更新する予定です。



前半がレイマ視点
後半からアカネ視点でお送りします。


来襲、星界戦隊 3

 状況を簡潔に説明するならば現状は足止めと殲滅に徹していることだろう。

 カツミ君、グリーンは星界怪人という量産型エネミーを殲滅しつつ逃げ遅れた一般市民を守り、ジャスティスクルセイダーは強化装備を纏った星界戦隊を足止めする。

 カツミ君たちはともかく、現状のジャスティスクルセイダーではスペックでゴリ押してくる星界戦隊を倒すことは難しいだろう。

 かといって彼女たちがあっさり敗北するわけではない。

 今は市民の避難を終えるまで周囲への被害を抑えるように徹するように指示している段階にある。

 

「タリア、避難状況は!」

『周囲一帯に生体反応を確認したところ近辺にまだ逃げ遅れた市民がいるようです。向かわれますか?』

「当然だ! 白川君! 座標に向かってくれ!!」

「分かりました!!」

 

 戦闘機型大型ビークル、ホワイト5がビルの合間を縫うように加速する。

 未だに星界怪人が街中に溢れているが、奴らはカツミ君たちを目下の脅威とみなしているのかこちらに見向きもせずに彼らへと襲い掛かっている。

 

「星界怪人、か。怪人に近い細胞を持つ異形の怪物」

『サンプルを解析した結果、素体に用いられたのは地球外の生物の可能性が高いようです』

「序列にあぶれた者か、我々に排除された序列持ちの配下を“再利用”されたか……どちらにしても趣味が悪いことには変わりないな」

 

 意思なき兵隊、といえば使い勝手がいいように聞こえるがその実態は生命を踏みにじった悪辣な所業だ。

 なにより厄介なのが星界怪人はそこらの序列持ちよりも頑丈且つ高い攻撃力を有していることにある。

 

「だからこそのカツミ君とグリーンだ」

 

 スペック全振りのプロトワンと未来予知のグリーン。

 現状スペック不足のジャスティスクルセイダーでは星界怪人の殲滅は向いていないからな……。

 

「社長、到着したよ。今、ハッチを開くから誘導お願い!」

「うむ、任せておけ」

 

 思考に耽っている間に逃げ遅れた市民が隠れている屋上へと到着したようだ。

 護身用の装備で周囲の安全を確かめつつ、生体反応のある方向に声を投げかける。

 

「逃げ遅れた者がいるなら返事をしてくれ! 救助に来た者だ!!」

 

 一瞬の静寂。

 その数秒後に屋上の扉が開き、そこから5人の男女が姿を現す。

 老夫婦に若い女性に二人の子供だ。 

 少年と少女、幼い二人の子供を守るようにしている老夫婦の代わりに前に歩み出た女性が私に声を発する。

 

「た、助けにきてくれたんですか?」

「ああ! ここは危険だ!! 早く機内へ!!」

『こちらに接近する反応あり』

「ッ!」

 

 反応を察知し、装備していた銃をこちらに降り立とうとした星界怪人へと放つ。

 ッ、さすがに倒せはしないか。

 

『ハイジョ! ハイジョ!!』

「むぅ、致し方ない!! タリア!」

 

 懐から取り出したチェンジャーを腕に装着しようとしたその時、屋上に降り立とうとした星界怪人が赤い閃光に刺し貫かれた。

 一瞬の硬直。

 胴体に大穴を開け、大きく痙攣した星界怪人はそのまま空中で爆散し後からもれなく吹き飛んでしまった。

 

「カツミ君……!」

 

 目では追いきれないが彼が倒してくれたのだろう。

 ……よし!

 

「さあ、いまのうちに乗るんだ!」

「は、はい!」

 

 後部ハッチから5人が入るのを確認しホワイト5を発進させる。

 タリアの感知範囲内に生命反応は我々を除いていないので、恐らく逃げ遅れた市民はこの5人で最後だろう。

 

「わっ、しろきしだぁ!!」

「すげぇ! 本物だ!!」

「あ、あはは。もう大丈夫だから大人しく座っていてね」

 

 安全な場所に入れて緊張が解けたのか、変身し操縦席にいる白川君を見て瞳を輝かせる少年と少女。

 そんな視線に後ろを振り向いた白川君は、安心させるように手を振る。

 

「くろきしじゃない……」

「女の人? ……別の人だ」

「こんなに挫けそうなことある……?」

 

 いかんッ!! メンタル一歳児の白川君の声が震えている!!

 確かに子供達から見ればポッと出の彼女に知名度がないのは分かるけれども!!

 とりあえずは皆を椅子に座らせ、安全のためのベルトを着用させる。

 

「あ、あの! ありがとうございます!」

「礼には及ばん。一般人を守るのも我々の義務だからな」

 

 手が震え、うまくベルトを接続できない女性を手伝った際に頬が若干赤らんだが、まあ、自分のようなナイスガイに近づかれればそのような反応をされるのも無理はな———、

 

『ゴールディ……?』

 

 悪寒察知!!

 タリアの不機嫌ゲージが上がったことを感覚的に察知し、隣の少年のベルトを確認する。

 

「おじさん、くろきしの仲間なの?」

「うむ。その通りだ。いつも彼には助けられていてな。……もう大丈夫だ、我々が君たちを安全な場所まで送り届ける」

「うん!」

 

 安心させるように声を投げかけながら操縦をしている白川君の方を見る。

 空へと飛びあがったホワイト5は安全地帯に向かおうとして、不意に停止する。

 

「白川君、どうした?」

「社長。敵がこっちを狙いだしたようです」

「……!」

 

 操縦席から前方を見れば、ビルの壁面にしがみついた星界怪人の群れがこちらに敵意を向けている光景が視界に映り込む。

 これは、少しまずいな。

 どういう訳か星界怪人が我々に意識を向けてきた。

 星界戦隊に命令を受けたか、それともそうするだけの自我・知識が目覚めたかは定かではないが、あれだけの数に一斉に襲われたら、いくらホワイト5でもひとたまりもないはずだ。

 

「社長」

「む?」

 

 不意に一心に前方を見つめている白川君が声をかけてくる。

 

「ちょっと運転が雑になります」

「え、ちょっとどういうこ———」

 

 次の瞬間、白川君がホワイトファイブの船体を上に向け急上昇を行う。

 急加速に伴い身体にちょっとしたGが襲い掛かり後ろへと倒れてしまう。

 

「あだぁ!? ちょ、ちょちょちょ白川くん!?」

「……」

 

 無言!?

 ホワイト5が動き出すと同時に複数の星界怪人が跳躍と共に襲い掛かってくる。

 中には背中から露出した排気口のような穴から青色の炎を噴き出し追いかけてくる個体もいる。

 

「ッ、白川君! 今、避難所に向かうな!!」

「分かっています。こちらで対応します」

 

 私は白川君をサポートすべく、タリアに声をかけホワイト5の武装を転送させることを試みる。

 

「タリア。“1番”“6番”パッケージ転送!!」

『かしこまりました。目にもの見せてやりましょう』

 

 1番が六連装ミサイル、6番が目標を自動照準のレーザー砲。

 即座にホワイト5の上部と両翼に転送されたボックスは開封と共にパージされ、中から武装が現れ———一斉にそれらを追尾してくる星界怪人へと殺到させた。

 視界内の窓から光が点滅し、爆発音が響いてくる。

 

「わ、わああ!?」

「わたしたち、死んじゃうの……?」

「し、心配はいらない! 運転が雑になるとは言っていたが機内には特殊な重力場を生成していてな! 我々にかかるGの9割はカットされているのだ!!」

『マスターこそ落ち着いてください。幼子相手では意味が通じないかと』

 

 確かにその通りだ! 事実、ベルトをしていない私が一番テンパっている!!

 ……しかし逆を言えば九割緩和されているにも関わらずこれだけのGが襲い掛かってくるのは異常だ。

 それほどまでの速度で加速していることもそうだが、星界怪人の飛行速度も速いということになる。

 

「タリア! 照準の制御を私に回して!!」

『ハクア様。貴女は操縦を———』

「両方やる! 私だっていつまでも守ってばかりでいられないから!!」

 

 人が変わったように操縦桿を握りしめた彼女は、空いた右手でコンソールを叩きホワイト5に搭載された装備を展開させる。

 もう自らの手足のようにホワイト5を操っているな。その学習能力はまさに驚異的だ。

 操縦桿を思い切り引き上げ、ホワイト5を弧を描くように急旋回させ後方から迫る星界怪人を正面に定めた彼女は、そのまま操縦桿のトリガーを引く。

 

「食らえ!!」

 

 一斉に放たれたミサイルが星界怪人へと放たれる。

 爆炎から逃れた個体は放射し続けるレーザーカッターにより両断され、地へと堕ちていく。

 

「ハァ……ハァハァ……」

「し、白川君……? 大丈夫か?」

「はい。心配いりま———ッ、まだ来る!!」

「んん!?」

 

 何かを感じ取ったのかホワイト5を急加速させる白川君。

 またもや反動でしりもちをついてしまう私だが、その直後に衝撃がホワイト5を襲う。

 

「しつこい!」

 

 白川君は横に回転させながら操縦するという離れ業を行いながら舌打ちをする。

 機内にいる一般の方々はGの影響をほとんど受けていないが顔面蒼白である。

 い、いかん! ここは私が彼らを安心させなければ……!

 

「皆さん———」

「チッ、まだ落ちない!! さっさと! 落ちろ!! この!! 羽虫がァ!!

「白川君! 我々正義の味方!!?」

 

 過度なストレスでカツミ君出ちゃってる!?

 カツミ君とレッドはもう皆慣れているから何も言えんけど、君はそういう方向に行くのはやめてくれ!

 それともあれか!? 実年齢赤ちゃんだから影響されちゃう感じなのか!?

 

「社長! ホワイト5の強度は!!」

「えっ、確か……って、ちょっと待て、なぜ今その質問———」

『前面にエネルギーバリア展開。ハクア様、レディゴーです』

「ゴォォォォォ!!」

「白川君!? タリア!?」

 

 迷いもなく攻撃を仕掛けてくる星界怪人に体当たりを仕掛けた!?

 急加速からのエネルギーバリアに任せた体当たりは、星界怪人の身体を削り取るように吹き飛ばした。

 

「よし、この隙に離脱を———」

『ハイジョ』

『ハイジョ』

『ハイジョ』

「……ッッ」

 

 倒しても倒してもキリがない。

 いくら地に落としたとしても入れ替わるように地上から星界怪人が現れる。

 

「……諦めない」

 

 それでも尚、白川君の闘志は消えることはない。

 強く操縦桿を握りしめ、この状況を突破すべく彼女が動き出そうとしたその時———下方から伸びた赤い柱が、今まさに襲い掛かろうとした星界怪人を撃ち抜いた。

 視線を下に向けると地上から流星のように伸びた赤い軌跡がホワイト5の前で止まり———、

 

『テメェらに囮なんてことをする知能があるとはな』

 

 これ以上になく頼もしい怒声と共に深紅のマフラーをなびかせた戦士がその拳を連続で繰り出し、視界にいる半数の星界怪人をその赤い閃光を以て撃ち抜いた。

 

「かっつん!!」

『ハクア。よく頑張ったな』

「うん!」

 

 彼はそのままホワイト5の操縦席付近の装甲に手をかけた彼が、そのままこちらを伺っている星界怪人から視線をそらさずに声をかけてきた。

 

『奴ら、変な知恵をつけてきている上に妙に動きがよくなってきている』

「確かか? カツミ君」

『見てみろ』

 

 カツミ君の声に空に浮かぶ星界怪人を見ると、彼らの鎧のような外殻に罅が入りパラパラと落ちていくのが見える。

 隙間から覗き込むのは無機質然とした鎧の怪人ではなく、生物的なもの……。

 

「カツミ君、あれは……」

『地球の怪人に似たなにか……ってところだな。個体差はあるが中々に厄介だ』

 

 だとすればこの場で星界怪人を逃すようなことがあれば———ッ!

 地球産怪人の再来となる可能性があるということか……!!

 

『あれの相手は俺とコスモに任せておけ。奴らは一匹残らず始末する』

「私達はどうすればいい?」

 

 彼は強化ガラス越しに機内の私達を一瞥する。

 避難させようとしている一般人を目にした彼は、

 

『避難場所まで俺が護る。まっすぐ……迷いなく進め』

「……うん。分かった! 任せて!」

『頼んだぞ、ハクア』

 

 ホワイト5から彼が飛び降り、空を駆けながら眼前の星界怪人の殲滅へと向かう。

 彼が護衛をしているうちに白川君はホワイト5を動かし、避難場所へと一直線に進む。

 黒騎士が……カツミ君が護るというのならもう大丈夫だろう。

 私は彼の強さを信じているからな。

 

「もう安心だ。黒騎士が護ってくれる」

「……うん」

 

 不安げに俯く少年の頭に手を置き、安心させる。

 彼らは無事に避難所に送ることはできるだろう。

 だが、それで安心するにはまだ早い。

 

「ここからが正念場だな」

 

 彼らを避難場所に送り届ければ周囲の被害を気にする必要もなく我々は戦える。

 生半可な相手であればジャスティスクルセイダーだけで事足りただろうが、奴らは強化装備というフワフワした兵器を使っている上に、まだ奥の手がある。

 というより、普通に予想するなら奴らの最終兵器は空に浮かぶアレだろう。

 だからこそ、場を整える必要があったわけだ。

 

「調子に乗ってられるのも今の内だぞ。星界戦隊」

 

 ここからジャスティスクルセイダーは、彼女たちは真の力を手にすることになる。

 

「白川君。彼らを避難させたらジャスティスクルセイダーの元へ向かってくれ」

「向かってどうするんですか?」

「無論、決まっている」

 

 首を傾げる白川君に俺は笑って見せる。

 カツミ君のような荒っぽい言葉になってしまうが……。

 

「あのいけ好かない侵略者に目にものを見せてやるのだよ」

 

 久しぶりの実戦で緊張している……緊張しているが、それ以上に高揚もしている。

 今までカツミ君達に戦わせてた私がようやく自分自身の力で戦うことができることに。

 


 

 強化装備とやらは思っていたよりも面倒な性能をしている。

 私が放つ斬撃を悉く無効化している上に、レッドの引力操作により強制的な引き寄せと、力に任せた重力波による薙ぎ払い。

 グリーンによる防御不可能の腐食攻撃。

 イエローの防御特化のエナジーバリア。

 ブルーの修復能力。

 認めるのも癪だが、奴らの持つ強化装備は能力的に噛み合っている。 

 互いが互いを助け、力を合わせて敵を打ち倒すことを目的としたものなんだ。

 それこそ、私達みたいに……。

 

「そらそら! 防戦一方だぞ!!」

「……」

 

 迫る重力波を正面から受けず、刃で斜めにずらすように逸らす。

 スペックの差は歴然。

 技術で補うにはあまりにも能力が足りていない。

 それでも負けるほど(・・・・・)じゃない。

 

「イエロー、合わせるよ」

「合点!」

 

 イエローが眼前に電撃を放ち、私が斬撃を飛ばす。

 即席の合体技はあちらのイエローとレッドのバリアと斥力により防がれるが、手は止めない。

 

「無駄だよ!」

「お前達は俺らには勝てねぇんだよ!!」

 

 だからどうした。

 たかが勝てないくらいで、攻撃が通じないくらいで私達が諦めると思ったら大間違いだ。

 そんなもの一年前に何度も……何度も何度も体験している。

 理不尽な能力を操る怪人。

 奴らは予想だにしない能力で私達を翻弄し追い詰めてきた。

 

「ブルー! 煙幕!!」

「あいよ」

 

 黒騎士がいるから大丈夫?

 彼がいてくれるから負けても心配ないだなんて考えたことはない。

 私達が負けたら、誰かが命を落とす。

 そうさせないために私達は諦めずに戦い続けるんだ。

 

「レッド、私の腕に!」

「うん」

 

 ブルーが煙幕を張ったと同時に、手を差し伸べてきたイエローの手を掴む。

 そのまま彼女はパワーに任せ、私の身体は上方へ放り投げられる。

 

「……」

 

 そのまま無音でモータルブルーの背後に着地、厄介な回復役を潰すべく刺突を繰り出す。

 

「ッ兄さん!」

 

 しかしそれはブルーの傍にいたモータルイエローのバリアにより防がれてしまうけど……兄さん?

 この動かない人形のような人はイエローの兄なの?

 咄嗟に出た声なのか、動揺を露わにしたモータルイエローの張ったバリアは脆く、徐々に亀裂が入っていく。

 

「あなた、達は……どうして折れないの……?」

「折れるだけの潔さがあるなら。私達はここにはいない」

「これだけの力の差が、あるのに……」

「だから? それが負けを認める理由になるの? 私達が護っているものを諦める理由になるの?」

 

 モータルイエローの肩が震える。

 こいつがどういう感情でこの場にいるのかは分からない。

 その後ろで何も言わずに佇んでいるモータルブルーがどうして意思を感じさせないのに、自分をガラクタ扱いしている仲間を癒しているのかすらも分からない。

 

「なんで、そんなに……」

「動揺したね?」

 

 精神に揺さぶりをかけたことでバリアは壊れ、剣の切っ先がモータルイエローの胸を貫こうとする。

 

「ッ、しま———」

 

 しかしその時、動かないはずのモータルブルーが倒れるようにモータルイエローを押しのけ、代わりに刃を受けた。

 

「———あっ」

「姑息な手を使ってくれるなぁ! レッド!!」

「……」

 

 突き刺さったのは肩。

 モータルイエローに気づかれてしまったので、突き刺したままの剣を離してその場を飛び去る。

 

「……本当に嫌な気分になるよ」

 

 こいつらと戦っていると、怪人の時とは別の胸糞悪い気持ちになってくる。

 少なくとモータルイエローとブルーは他とは違う、人らしさがある。

 モータルレッドと同じような悪辣さがあれば、遠慮なく斬れるのに……本当にやりにくいなぁ。

 

「レッド、大丈夫?」

「うん。問題ない。まだまだ粘れるよ」

「あとどれくらい時間を稼げばいいんだろね」

 

 少なくともカツミ君とコスモが周辺の星界怪人を掃討するか、社長が逃げ遅れた市民を避難させるまでだね。

 それまで私達がもっと頑張らなくちゃいけない。

 

「さて、もうちょっと頑張り———」

 

 新たな剣を取り出してから星界戦隊へ向かおうとしたその時、頭上に白川ちゃんが操縦しているホワイト5が飛んできた。

 空中で停滞するように急停止したホワイト5は背部のハッチを開くと———そこから白衣を纏った金髪の男が飛び降りてきた……って、ええ!?

 

「うおおおおおお!!」

 

 落下してきた男、社長こと金崎令馬はずでーん! という音を響かせながら、足から着地するように背中から転げ落ちる。

 なんとも締まらない着地を見せた彼は、痛そうに背中を押さえながら立ち上がる。

 

「ふ、ふふ。待たせたな!! お前達!!」

「カツミ君とチェンジでお願いします」

「待ってへんで。一ミリも」

「素直に帰って欲しい」

「そう言ってられるのも今のうちだからな!! 吠え面かいても知らんからなっ!!」

 

 こちらに指を突き付けた社長はそのまま腕を組みながら星界戦隊へと向き直る。

 

「……なんだい君は」

「かつて、ゴールディと呼ばれていた者だ。この地球では金崎令馬と名乗っている」

 

 なんで生身なのに自信に溢れているのこの人……?

 簡単なエネルギー弾でもあっさり吹き飛ばされそうなのに……。

 社長の登場に、今の今まで静観していたヒラルダが歩み出てくる。

 彼女もどこか呆れた様子だ。

 

「元星将序列60位台の貴方が今更出てきたことで状況が変わるとは思えないんだけど?」

「確かに私は弱い。むしろ古傷を負っている分、肉体的には全盛期よりも遥かに弱いだろう」

「それじゃあ、時間稼ぎのつもり?」

「違うに決まっているだろう。賢い様に見えて阿呆だな、ヒラルダ」

「は?」

 

 さらに挑発した社長は懐から金と黒の時計型の腕輪———『ジャスティスチェンジャー』を取り出し、左腕につける。

 それに気づいたヒラルダは、あろうことか社長が変身する前にその手に持った桃色の銃を放つ。

 

「ッ、社長!」

「心配無用!!」

 

 咄嗟に攻撃を防ごうとした瞬間、社長の周りに金色の粒子が現れそれらは壁のようなものを形作り、放たれたエネルギー弾を防いでしまう。

 

「私は弱い。弱いが、この頭脳においては最強だ!! なにせ、天才だからな!!」

UNIVERSE(ユニバース)!!!』

 

 社長がチャンジャーの側面のボタンを押した瞬間、私達とは違う声で音声が流れる。

 

「これまで私はスーツを作り! その扱い方を教え、ただ後ろで見守ることしかできなかった!!」

 

Loading(ローディング) N.()N.()N.()Now(ナウ) Loading(ローディング) → Loading(ローディング) N.()N.()N.()Now(ナウ) Loading(ローディング) →』

 

「だが今日この日、この時から違う!! 黒騎士もジャスティスクルセイダーも! この私が教え、導く!!」

 

 待機音を鳴り響かせながら、左腕を前に掲げるように構えた社長がもう一度側面のボタンを押し込む。

 

「サジタリウス!! 戦士達の道を切り開く力を、私に寄越せ!!」

 

Anywhere(あなたと) as long as(一緒なら) I am with you!!(どこまでも!!)

Flame(フレーム) GOLD(ゴールド)! Acceleration(アクセラレーション)!!!』

 

 タリアの、歓喜とも言える声が鳴り響く。

 それに伴い、金色の粒子が社長の周囲に溢れだし彼の身体を覆っていく。

 私達に近い、全身を覆う金色の戦士へと姿を変えた彼は、その身に纏う粒子をその手で薙ぎ払う。

 

CHANGE(チェンジ) → UP RIGING!!(アップ ライジング!!) SYSTEM OF(システム オブ) JUSTICE(ジャスティス) CRUSADE(クルセイド)……!!』

 

「私は、ジャスティスゴールド!! 貴様らに引導を渡す地球の戦士である!!」

 

 眩しいほどの派手な登場のまま、星界戦隊に指をつきつけた。

 

 




頑張るハクアとついに変身するレイマでした。
次回から反撃開始ですね。

本編の更新に合わせて「【外伝】となりの黒騎士くん」の方の更新もさせていただきました。

第九話【目標は遠く】
こちらはスーツを装着して間もないアカネ達と、本編に名前の出ていない怪人、『貯水怪人』が登場するお話となります。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。