今回は二日に分けて、二話ほど更新する予定です。
今回はアカネ視点でお送りします。
ジャスティスゴールド。
ジャスティスクルセイダーの新たな戦士であり、社長が変身した姿。
金を基調としたその姿は部分部分では私達のスーツと似ている部分はあるけれど、頭からつま先の全身を覆うタイプのスーツでどちらかというとカツミ君のプロトワンに近い見た目をしていた。
右腕をシュバッと翻すと無駄にキラキラしている金色の粒子のようなものが周りに飛び散り、周囲を彩っていく。
「自己顕示欲つっよ」
「えらいキラキラしとるやん」
「成金ゴールド」
「私の晴れ舞台くらい黙れんのかァ!!」
こちらに振り向き怒鳴ってくる社長。
ついいつものコントじみたやり取りをしてしま———、あっちのグリーンが社長に攻撃を仕掛けようとしてる!?
「社長! 後ろ!!」
「むっ」
「背中ががら空きだぜぇ!!」
振るわれる斧。
その攻撃に対し社長はその場から動かず、ひとりでに動いた金色の粒子が壁のようなものを作り、斧の一撃を防いでしまった。
「貴様の能力の原点は生命に実りをもたらすものだろう?」
「ッ、なんだこれ!」
「だが、力に溺れた貴様は命を腐らせる外道に堕ちた」
モータルグリーンに背を向けたままそう言葉にした社長がおもむろに手を掲げると宙を舞う金色の粒子が彼の手の中に集まり———見覚えのある片刃の剣へと形成し、纏わせた炎と共にグリーンに一撃を放つ。
「おぐっ!? そいつは白騎士の———」
「グリーン! どけ邪魔だ!!」
一撃を食らったグリーンと入れ替わるように斥力を纏わせた大剣を掲げたモータルレッドが社長に斬りかかる。
「社長! 後ろ!!」
「フッ、貴様らは暫し休んでいろ。なに心配するな——」
「貧弱なのにどうして前に出てくるんですか!!」
「社長フィジカルクソ雑魚ですやん!」
「序列60位代なのになぜイキれる……?」
「貴様ら後で覚えておけよ……!!」
いや、いくら新スーツでも社長自身のフィジカルが……!
彼の制止の声に困惑しているとレッドが振るう斥力の斬撃に対し、社長は金色の粒子で楕円形の壁のような形にさせ、その攻撃を受け流してしまう。
「真正面から受け流した!?」
「学ぶことは貴様らの十八番だろう? だが貴様らと違うのは———」
指揮を執るように指を軽く回すと、それに連動するように粒子が粒子の壁が枝分かれしモータルレッドを襲う。
猛烈な攻撃を斥力で防御するモータルレッドだが、粒子の壁を死角にして接近した社長が、手元に作り出したカツミ君の武器———ブレイクアローで切りつけた。
「この私が 天 才 だということだ!!」
「ッッッ! 戯言を!!」
ナルシストもここまで来れば最早怖い。
モータルレッドの次の動きを完全に読み、ブレイクアローから矢を放った社長は瞬時に武器を大剣———グラビティバスターへと変え、渾身の振り下ろしを刻みつける。
「チッ……」
自前の頭の良さで敵を追い詰め、多彩な武器とナノマシンで詰めに行く。
それがジャスティスゴールドの能力。
私達とは違う頭脳を武器にした戦い。
「はぁ、はぁ、ヴォェッ!! これが、我が頭脳による……戦いだぁ!!」
……当の本人は無理な運動のせいでグロッキーになっているけど。
斬撃を腕に受けながらも後ろへ下がったモータルレッドは苛立つようにモータルブルーに腕を直させた。
「ジャスティスゴールドの能力は精密無比なナノマシン操作!! 我がクリエイティブな発想とデンジャラスな想像力により———我が知啓となって形成される!!」
「いや、それカツミ君の武器ですよね」
「パクリやん」
「どこがクリエイティブ……?」
「おっとぉ、恋愛クソ雑魚戦隊ナインジャーズ共が囀っているようだなぁ!! かぁッー愉快愉快!!」
今この場で星界戦隊ごと社長をぶっとばしてやろうか。
……いや、落ち着こう。
今は戦闘中、そう簡単に心を乱してはいけな———、
「はっ、だがパワーは弱いぜ!!」
「当然だろう。私を後ろの地球のバグ共と一緒にするな」
やっぱりぶっ飛ばすべきかもしれない。
我ながら剣呑な気配を放っていると、モータルレッドが調子を整えるように深呼吸を繰り返しているのが見える。
「お前達のペースに乗ると碌なことにならない。ヒラルダ、もう戦えるだろう?」
「……。ええ、了解です!」
ヒラルダがベルトを出現させて変身する。
……厄介なやつが戦線に復帰しちゃったな。
ああいう搦め手大好きな輩は目を離しちゃいけないから本当に面倒だ。
「もう手加減もしない。いたぶる余地もなくお前達を始末する。星界戦隊の本気の力、見せてやるよ」
「本気の力か」
5人揃った星界戦隊を前にしても社長は不遜な態度のままだ。
いや、この場合余裕さえあると言ってもいい。
「ならばこちらもそろそろ本気を見せてもいいというわけだな!!」
「なっ!!?」
「強化装備を最初から装着してのこのこ出てくるような負けフラグを積み重ねる貴様らに本当の強化装備というものを見せてやるわ!! ジャスティスクルセイダー!!」
社長の声。
その意図を察した私達は同時にチェンジャーに手を添え、あるアイテムを手元に転送させる。
それはスマートフォン型の金色のデバイス。
「強化装備の使用を許可する!!」
「「「はい!!」」」
右手で持ったデバイス『ジャスティフォン』を起動させる。
独特の待機音を響かせながら、周囲に金色のエネルギーフィールドが形成される。
強化装備と聞いた星界戦隊が妨害のための攻撃を仕掛けてくるが、それら全てを社長の金色の粒子によって阻まれる。
「ヴェハハハァ!! このジャスティスゴールドの役割は脳筋共の司令塔を担う以外に、ジャスティスクルセイダーの強化装備の補助を担っている!! 貴様らのような変身途中で妨害してくるような空気の読めない輩から守るのも私の役割の仕事なのだよこぉのマァヌケがァ!!」
「ッ! うざったいなぁ!! あの人!!」
守ってくれるのはありがたいけど言動が敵側なんだよなぁ。
意気揚々と煽っている社長に呆れながらも、右手に握りしめたジャスティフォンを認証させるように———チェンジャーへとスライドさせる。
『Authentication:Code RED...』
『Authentication:Code BLUE...』
『Authentication:Code YELLOW...』
『———ここまで、練り上げたか』
頭の中に響く、女性の声。
数瞬の無音。
その瞬間を待ちわびたような高揚すらも感じながら、私達は最後の認証を口にする。
「「「変身!!」」」
『
認証の後にチェンジャーが変形し、新たにできた窪みにジャスティフォンを組み合わせる。
それにより強化プロセスを完了、私達のスーツに強化装備が装着されていく。
「そしてこの強化装備は今この時を以てして完成される!! 装着者の素質、能力により進化・適応する武装!! 名付けてジャスティスクルセイダー・ゴールドモードだ!!」
右肩、右前腕に金色の武者鎧を彷彿とさせる装甲が追加され手の中にいつも武器として使っている長剣とは異なる、大太刀が出現する。
鍔は金、濡れたような怪しい光を放つ刀身は、私の意思を反映するかのように赤く———灼熱のような色を帯びていた。
「———」
型にしっかりと嵌ったような感覚。
これまで強化前のスーツに不満なんて抱いてはいなかったが、今の強化装備を纏った状態こそが自分の力を最大まで解放できると認識させられた。
私と同じことを思っているのか、同様に強化装備を纏ったきららも葵もその変化を実感していた。
「これが強化装備。実によく馴染む」
掌ほどの大きさの六角形のリング—――ジャスティビット。
それらをパズルのように組み合わせシールドのように左肩に装着させた葵が、金の装飾が施された銃を手にしながら悦に浸っている。
「なんで私、かみなりさまみたいなん……?」
一方のきららは困惑するかのように、自身の背後で円形に並ぶようにして浮かぶ帯電する黄色のジャスティビットを見ている。
彼女自身のスーツも斧を持つ腕の装備が強化され、その背中にはブースターを思わせる鎧が追加されていた。
「あちゃぁ、これはマズそう。レッドさん、ちょっと足止めに使ってる星界怪人こっちに呼び寄せます!!」
「黒騎士が来るぞ!!」
「そうしている間にこっちの首と胴が分かれちゃうんですって!!」
ヒラルダが手元の装置のようなものを操作すると、周囲にまだ隠れていた星界怪人が私たちの周りに集まってきた。
「ハイジョ」
「遅い」
頭上から突っ込んできた星界怪人に軽く太刀を薙ぎ払う。
私にたどり着くことなくバラバラに砕け散る星界怪人を目にしながら、ヒラルダを睨む。
———ちょっと前までは多数相手は難しかったけど、今の姿なら星界怪人なんておそるるに値しない。
「ここは一斉攻撃でぱっぱと星界戦隊どもを始末したいところではあるが!! 今のお前らが自由に動き出せば街が崩壊しかねん!! まずは私の指示に従ってもらおう!!」
文句はない。
カツミ君は器用に街を破壊しないように戦えるけれど、私たちはまだ強化装備を装着したばかり。
星界戦隊を倒すことも重要だが、街を破壊してしまっては元も子もない。
「まずは雑魚を片付ける!! イエロー!」
「了解!!」
社長の指示に従い、あざとい唸り声をあげるきらら。
彼女の意思に合わせ背中の黄色のジャスティビットが連鎖するように電撃を帯び、その輝きを増していく。
「はぁ!!」
あまりある磁力でその場を浮遊し、きららが空へと舞い上がる。
彼女が浮遊するだけで誘導された電撃が星界怪人を貫き、内側から焼き尽くす。
最もパワーがあり防御力もある彼女の新たな力は……ただ呆れるくらいにシンプルで強力無比なもの。
「うわぁ、ナメクジ怪人みたい」
「あんな電力の貯蓄量だけ優れた怪人と一緒にするな」
社長が私の呟きを強く否定する。
でも、あれってナメクジ怪人と同じ電撃系統だし……。
「あれはプロトワンの“オルクス”と同じ系統の能力。つまりは身体能力強化にあてがわれているエネルギーの余剰分が背中のジャスティビットから放出されているだけに過ぎん」
「……それってやばくないですか?」
「ああ。あのイエローは単純なパワーだけならプロトワンを上回る」
……こっわ。
余剰エネルギーだけで星界怪人を焼き尽くしてるのにそれが副産物とかこっわ。
殺意しかないじゃん。
「次! ブルー!!」
「大体分かった。任せて」
「お前の武装が一番複雑なんだが!?」
社長の指示を聞く前に葵がライフル型の武器を構える。
彼女の構えに合わせ、右肩付近に浮遊していた六角形型のジャスティビットがばらけ、四方へと飛ぶ。
「とりあえず撃てば分かる」
躊躇なく放たれたレーザー。
それは空間に浮遊するジャスティビットに直撃するとレーザーは六角形の穴に吸い込まれるように途切れ、代わりに近くに浮遊していたジャスティビットから、レーザーが飛び出してくる。
放射され続けたレーザーはジャスティビットの旋回軌道に合わせ、星界怪人の身体を真っ二つに溶断する。
「なーるほど、これがワープ射撃ってやつね」
「う、うむ。空間と空間を繋ぎ合わせる、それがお前の青のジャスティビットの力のようだな」
「試してやろう」
好奇心の塊か、と内心でツッコんでいると葵はさらにレーザーを放ち、それをジャスティビットを通して連続でワープさせる。
その先は強化装備の性能を目にし様子見に徹している星界戦隊。
咄嗟に前に出たイエローがバリアーでそれを防ぐ———が、そこで私が太刀による斬撃を飛ばしバリアを叩き割る。
「———なっ!? なにが……!?」
「イエロー、なにをしている!?」
バリアを破壊され防御を失った奴らにレーザーが照射される。
モータルイエローとレッドはレーザーを回避できたようだけど身動きのとれないブルーは胸に直撃を受け、グリーンは味方のはずのヒラルダの盾にされていた。
「ヒラルダッ、テメェ!!」
「守ってくれてありがとうございます!!」
腕を飛ばされながらも背後のヒラルダに敵意を向けるモータルグリーン。
こんな時に仲間割れをしている奴らに呆れていると、周囲に散らばっていたジャスティビットが一斉にヒラルダとモータルグリーンへと集まっていく。
「っ! 危なっ……」
ギリギリで気づいたヒラルダは避けたようだけど、モータルグリーンは胴体を拘束されるようにジャスティビットに取り付かれる。
「ッ、んだこれ!! さっさと腐らせ―――」
「
モータルグリーンを押さえつけるように密着した青のジャスティビット。
慌てて腐食させて逃げようとする奴に、葵は自身の持つ武器の銃口に一つのジャスティビットを添え、その引き金を引いた。
「が、ぼぼぼぼ!?!??」
「グリーン!?」
銃口のジャスティビットから密着したジャスティビットへのワープ射撃。
放射され続けたレーザーはグリーンを貫き、さらにジャスティビットを潜りまた別のグリーンに密接したジャスティビットの出口から飛び出し——それを一瞬のうちに何重も繰り返し、グリーンの身体はバラバラに弾けた。
「いや、無慈悲すぎでは?」
……こっわ。
ゼロ距離射撃の上に放射し続けて無限にレーザーくらわすとかこっわ。
殺意しかないじゃん。
「蘇るつもりだよね? 分かってるよ」
頭上の遥か先を見据えながら銃を構えた葵。
まさか、宇宙の……普通じゃ届かない射程にいる奴らの船を狙い撃つつもりなのだろうか?
葵の六角形のジャスティビットが銃口の前に直列に並んでいく。
「———もうコンティニューはさせない」
頭上から強化装備を纏ったモータルグリーンが光と共に降りてこようとする。
モータルグリーンではない、その先にいる“なにか”を見据えた葵は引き金を引く。
放たれたレーザーはジャスティビットを潜っていくごとにその威力を増し、ついには細く強力な閃光と化して地球の遥か外、それもここからでは決して見えない場所へと突き進んだ。
「ッ、が、あああああ!?」
変化はすぐにこちらの状況に現れた。
新たな肉体を得て、地球に降り立ったモータルグリーンが苦痛の叫び声をあげ、その場で膝をついた。
「本体を、直接撃ち抜かれたのか!? そんな、グリーン、お前まで……!!」
膝をついたまま動かなくなったグリーン。
かろうじて機能している兄と呼んでいたブルーを呆然と抱えているイエロー。
モータルレッドはもう二度と蘇ることのない仲間を目にし、取り乱しながら私たちに攻撃を仕掛けてきた。
「この悪魔どもが!!」
「ならお前たちは私たちの地球を土足で踏み荒らす癌だ」
侵略をしているのはお前達だ。
地球の平穏を脅かしているのはお前達だ。
なにを勝手に、そんな勝手なことを口にしている。
奴の作り出す斥力、引力も、なにもかもを一刀で断ち切る。
「ッッ!?」
「もう斬れるよ」
流れるように正眼に太刀を振り上げ、灼熱色の軌跡を描きながら振り下ろした一撃はモータルレッドの脳天から切り裂いた。
切断した断面から炎が溢れ出る。
次の瞬間、炎は一瞬にして爆炎へと姿を変え、モータルレッドの部品一つすらも地上に残さず消滅しつくした。
「えっ、こわぁ」
「下手にビット使わないで斬撃だけでぶった切るのこっわ」
「殺意しかないやん」
葵ときららよりはマシなつもりだ。
心の底からそう思う。
「まだ終わってないぞ」
「分かっています。葵、さっさと奴らの船を破壊して。私はヒラルダを無力化す———うん?」
上からなにかが降ってくる。
それを気取り、上を見上げれば先ほどまでは見えていなかった“五つ”の光がこちらへ向かってきていることに気づく。
スーツの望遠機能で見えたのは剣を模したような五隻の船。
それらは空中で変形し、組み合わされるように合体しながら———次第にその形を人型へと変形させながら私たちの前へと降り立ってきた。
『ジャスティスクルセイダァァァァァ!!』
人型の巨人の中心部分に位置する赤色の部分。
そこにはコードやパイプに繋がれた———機械の一部と化しているモータルレッドが怨嗟の声を私達へ向けていた。
『お前らも!! 力を寄越せ』
「ッ、レッド!? なにを———」
「あらあらー、とりこまれちゃいますー」
星界剣神と呼ばれる巨大ロボから触手のように伸びたコードがモータルイエローとヒラルダへと絡みつき、奴らを取り込もうとする。
ヒラルダを取り込まれるとこちらが手を出せなくなるので、斬撃を飛ばしコードを切断する。
『ああああ!! 何度も何度もお前たちはァァ!』
完全に我を失い暴れようとする巨大ロボットの攻撃を避ける。
さらに追撃しようとするところで、社長が金色の粒子を操りモータルレッドの視界を潰したことで私たちはロボットの全容を確認できる近くのビルまで移動する。
「斬る」
「粉砕してやる」
「穴あきチーズにしてやる」
「落ち着けバーサーカー共」
殺気立つ私達を止める社長。
「先ほど白川君と大森君からあの星界剣神とやらのデータが送られてきた。やつは今、星界エネルギーとかいう危険なエネルギーをオーバーロードさせながら動かしている」
「つまり?」
「ここで不用意に倒せば都市そのものが消滅する可能性がある」
「ではどうすれば?」
「フッ」
意味深に笑みを零す社長。
そのしぐさに軽くイラっとしていると私たちの頭上を白川ちゃんが操縦している白い戦闘機———ホワイト5が通り過ぎる。
さらに続くように
赤、青、黄、黒、そして金の新たなビークルの登場に社長はこちらを振り向いた。
「力を合わせればいい。それができる我々に敗北はない」
———星界戦隊との決着は近い。
それをおのずと悟った私は社長の言葉に頷きながらビークルに乗り込む準備を進める。
頭脳(物理)で戦う社長と、スーツが変身者スペックに追いついたジャスティスクルセイダーでした。
なお、三人が互いに「こいつやばぁ」と思っている模様。
本編の更新に合わせて『外伝 となりの黒騎士くん』の方も更新いたしました。
第十話「となりのホムラくん 3」
外伝登場キャラクターのハイル視点のお話となります。
次回の更新は明日の18時頃を予定しております。
星界戦隊編は次回で決着となります。