今回は主人公視点でお送りします。
俺の前に現れた敵、ヒラルダ。
こいつからはちぐはぐな感情が強く伝わってくる。
“私を殺して”
“私を助けて”
相反する思いを真っすぐに俺へと叩きつけてくる奴に俺は非常に面倒くさい輩に目をつけられたと悟った。
ルインもそうだが、こいつらは俺をなんだと思っていやがるんだ。
『
『『『
「はぁ……」
溜息をつきながら変身を終えた俺は手の中にワームホールを作り出しながら上機嫌な様子のヒラルダを睨む。
「場所を変えるぞ。ここじゃ、風浦さんが巻き込まれる」
今のヒラルダは非常に厄介な存在へと至っている。
こいつと戦闘しながら風浦さんを守りながら戦うのは無理だ。
……こいつも一応風浦さんに対して思い入れみたいな感情はあるようだから、戦いに巻き込むのは本意ではないはずだ。
「その必要はないよー」
「……あ?」
「怒らないでよぉ。君と戦う空間は私が用意してあげるからさっ」
そういうやいなやヒラルダがその掌に光を帯びた球体を作り出す。
それは徐々に巨大化し、奴自身と地面を呑み込みながら俺へと近づいてくる。
【ARENA→→№31243】
……空間を作り出す技か。
警戒しつつ球体に呑み込まれると俺の視界には、先ほどいた駐車場とは異なる光景が広がっていた。
草一つないむき出しの大地が広がる場所。
頭上には大空こそあるが周囲にはそり立った崖しかなく、まるでくりぬかれた大地の中に俺とヒラルダは立っていた。
「どう驚いたでしょー?」
「ルインの技とは違うな」
「……ちょっと、あんな時間の流れすらも超越する技と比較しないでよ」
この作り出された空間と外の時間が流れる時間は同じ。
壊そうと思えば壊せるが、相手がわざわざ風浦さんを巻き込まない場所に引きずり込んでくれたんだ。
「遠慮なくやらせてもらおうじゃねぇか……!!」
「今の私でどれだけできるか、試させてもらおうかな」
「そんな暇があればな!!」
地面を蹴り、あいさつ代わりの蹴りをヒラルダに叩きつける。
奴は避けることなく構えた腕で受け止め、不可視の壁のようなもので俺の攻撃を真っ向から受け止める。
「障壁……?」
「バリアだよ。星界エナジー由来の、ね!!」
腕を跳ね上げ、俺ごと空中へ弾いた奴が取り出した桃色の銃の銃口をこちらへ向けエネルギー弾を放ってくる。
「しゃらくせぇ!!」
この程度のエネルギー弾当たるかよ。
空中で腕を翻しながら召喚したリキッドシューターで連続で撃ち落とす。
「! あはは!!」
フレアカリバーを召喚し掴みとりながら奴へと斬りかかる。
腕のサソリの尾を模したような武装で剣を受け止めながらヒラルダは高揚とした声を漏らす。
「貴方と私って似てる」
「あぁ!?」
どこがだ!!
見た目も全部違うだろうが!!
さらにフレアカリバーを召喚、空いた手で掴み取り炎を纏わせる。
俺の武器による攻撃を両腕に纏わせた謎のバリアのようのもので防ぎながらヒラルダはさらに笑う。
「貴方が攻撃するだけで大地が割れ、風が嵐のように吹き荒れる!」
「うるせぇ! ポエムなら他所でやれ!!」
力の限りにフレアカリバーをぶん投げ、代わりにライトニングアックスを手に取り大きく掲げ電撃を纏わせる。
空間そのものを震わせる雷を纏わせたそれを眼前に叩きつけ、強烈な雷をヒラルダへと殺到させる。
「ッ、あ、はぁ!!」
『
バックルを叩いた?
なにかしてくるのか……?
レッド エナジー
RED ENERGY↴
『
数秒ほど両腕のバリアーで防いだものの一瞬で粉々に砕けるのを目にした奴はさらに笑いながら、逆にこちらへ突っ込んでくる。
不自然に加速してくるあたり、まだまだ能力があるようだな!!
『
こちらも高速移動形態へとフォームチェンジし、地面を蹴りヒラルダと攻撃を交わす。
奴の腕とこちらの斧が何度も激突し、稲光に似た光が弾けていく。
数度の激突の後に、再度互いの得物をぶつけるように静止した俺たちは鍔迫り合いをする。
「似ているところは他にもあるよ!」
「聞いてねぇ……!!」
「貴方は愛されていたんだよね」
「俺の話、聞こえているか! おい!!」
まったく俺の言葉が届いている気がしないんだが!?
こいつルインよりひでぇかもしれねぇぞ!!
だってあいつ話は聞かねぇが俺の言葉はちゃんと聞いていたし!!
「愛していた実の両親に裏切られた」
『
ヒラルダがバックルを叩きなんらかの技を発動させる。
グリーン エナジー
GREEN ENERGY↴
『
緑のエネルギーがバックルから手の銃型の武装へと流れ込み毒々しい光を放つ。
「ッ」
『
こちらも必殺技を発動し、炎を纏わせたフレアカリバーを下から上へと振り上げる。
壁のように放った炎がエネルギーの奔流とぶつかりあい相殺するが、炎の中を潜り抜けたヒラルダが俺へと突っ込んでくる。
「私も同じだよ! 愛する人に裏切られるって辛いよね? 悲しいよね? 殺したくなるくらいに憎くなるよね!?」
「テメェ、俺をわざと怒らせようとしてんな?」
俺の怒りを煽ってなにがしたいのか知らねぇが、お望みどおりに本気でぶっ飛ばしてやるわ。
『
バックルを叩きフォームチェンジを行う。
だがそれと同時にヒラルダがこちらに手の平を向け、俺と同じようにバックルを叩いた。
『
『
重力特化の形態、タイプブラックへの形態変化が強制的に止められる。
黒に変わりつつあった姿が無理やり白へと戻された瞬間に、ヒラルダの蹴りの直撃を受ける。
「ッ」
「だーめっ。そんな危ない姿にさせてあげなーい」
フォームチェンジが強制的に止められた!?
バックルを見ればシロが僅かにショートしており、なにかしらの異常が起こっているのが分かる。
「私の毒はあらゆるものを阻害する。それは古代のアルファも例外じゃないんだぁ」
「っ」
「まっ、さすがにすぐに対処されちゃうけど嫌がらせくらいにはなるよねぇ!!」
「だから貴方は私と同じ。だから分かるはず!! 愛していた人に裏切られる苦しさを!!」
『
『
奴がバックルを二度叩くと赤色のアンプルがエネルギーを再注入する。
レッド エナジー
RED ENERGY↴
『
注入されたエネルギーがバックルから腕のサソリの尾の刃へと流れ込み、先ほど同じ毒々しい光を発する。
「これは……!」
光は肥大化し、巨大なサソリの尾を形成———そのまま俺めがけて振り下ろされた。
即座に攻撃に対応すべくバックルを叩く。
『
『
「だーめ♡」
ッ、また妨害しやがった。
フォームチェンジを防がれそのまま赤い尾の一撃を正面から叩きつけられた俺は、そのまま地面に叩きつけられる。
「ぐっ、が!!」
大地を割り、遥か後方の山までに深い傷跡を刻み付けた一撃。
その一撃を受けながら防御に構えた腕を解きながら、立ち上がる。
「どう? 少しは堪えた?」
「……」
不覚をとったことは事実だが、ダメージ自体は大したことない。
だが、ここまで嘗めたことされて黙っているだなんて冗談じゃねぇ。
「———人が黙っていればぐだぐだと」
調子に乗るのも大概にしろよ。
人にされて嫌なことは他人にしちゃ駄目って教えられなかったのか?
だがよォ、俺はワルモノだから普通に嫌なことしてやるわ……!!
「シロ、バトンタッチだ」
『……ガウ』
「悪い、お前じゃあいつと相性が悪い」
「そう簡単にできるかなぁ!!」
当然、阻止しようとするヒラルダ……だが、そんなことは織り込み済み。
グラビティバスターを取り出し、さらにミックスグリップを装填しレバーを引く。
RED YELLOW BLUE BLACK RED YELLOW BLUE BLACK RED YELLOW BLUE BLACK RED YELLOW BLUE BLACK aaaXaaa RED YELLOW BLUE BLACK RED YELLOW BLUE BLACK RED YELLOW BLUE BLACK RED YELLOW BLUE BLACK |
二つのルーレットが回りだし、もう一度レバーを引き停止させる。
シロの解析能力によりこの状況で最も適した色を導き出される。
【
【
ルーレットが停止し、それぞれの属性を司る二色が表示。
グラビティバスターに青と黒のオーラが放出、銃口へと集約されたところで———ヒラルダのいる空間へ向けて引き金を引く。
『
『
ミックス チャージ
『MIX CHARGE!!』
「そんなもの、当たらな……ッ!?」
拡散・追尾するエネルギーの嵐。
銃口からいくつも飛び出したレーザーは回避するヒラルダを追尾し、直撃するごとに奴の身体を重力で縛り付けていく。
「攻撃じゃない!? ぐ、あぐ!?」
そもそも攻撃するためじゃなく足止めのためのもの。
重力の檻で拘束されたヒラルダを見据えながら一旦変身を解除した俺は、左手のプロトに声をかける。
「プロト、行けるか?」
『うん! アルファも無事に送り届けたしいけるよ!』
「やるぞ」
『
『
ルプスからプロトワンへ。
変身がまだ完了していないままに、光を放つ粒子を腕で薙ぎ払いながら重力の檻に囚われたヒラルダに拳を叩きこむ。
『
「勝手に俺を分かった気になって———」
『
「一緒にすんじゃねぇぞコラァ!!」
「ッ!!?」
重力の檻ごと粉砕させながらヒラルダを地上へ叩きつける。
地面にクレーターを作り出しながら激突した奴に、さらに追撃の蹴りを上から見舞う。
ギリギリで地面を転がるように回避したヒラルダが、結構な動揺を見せている。
「や、やっぱりこっちの貴方は苛烈すぎくらいだね……」
「変に対処する方が面倒だろ。特にお前相手はな」
こいつ相手に変に考えて戦う方が相性が悪い。
トゥルースフォームじゃ対策が取られんなら、プロト1でまっすぐ小細工なしで圧倒してぶん殴る方向でいけばいいだけだ。
全身に力を籠め、首の噴出口から赤いマントのようなエネルギーを放出させる。
そのまま力の限りに大地を蹴り———爆発するように勢いで、唖然としているヒラルダに拳を叩きつける。
「バリアが、一撃で!?」
「バリアを出す怪人なら地球にもいるんだよ!!」
だがヒラルダのソレは怪人以上ではあるが、砕けないほどではない。
拳に赤い光を纏わせて直接ぶん殴り、そのまま彼方まで殴り飛ばし———さらに先回りして上空へと蹴り上げる。
「ちょぉっとやばすぎるよね! 休憩させてよ!!」
吹き飛ばされながらヒラルダが掌をこちらに向ける。
また動きを阻害してこようとしているが、気合で我慢してぶん殴ってやる。
そう意気込むが、ヒラルダの妨害が発動しても俺のスーツに異変が起きることはない。
「なっ、もう一度!!」
JAMMING!!
『カツミに触れるな』
「ひっ」
プロトから発せられた声にヒラルダが自身の身体を抱きしめるように怯えた様子を見せる。
『もう同じ失態は繰り返さないと決めた。二度と私のせいでカツミを危険に晒さない』
セイヴァーズによる強制変身解除。
プロトにとってもあの時のことは強く印象に残っているのだろう。
———俺も同じだ。
「あの時と同じことにはならない!」
ヒラルダの放つ赤いオーラを拳で粉砕。
エネルギー弾諸共、突撃する勢いで相殺させながら奴に拳を放つ。
「ッ!」
「テメェの不幸を俺に重ねてんじゃねぇ!! 同情してほしいなら素直に言えや!! 別に悪いことじゃねえだろうが回りくどいんだよやり方がよォ!!」
「そんな、言い方……」
「お前、俺がそんな優しい気遣いできる奴に見えたのかァ!?」
「……」
小さく頷くなよ!!
ちょっと引き気味に頷いたヒラルダにマジかよと思う。
こいつはちぐはぐだ。
過去にいつまでも纏わりつかれて、前を見ることもできなくなっている。
「そもそも人の姿真似たままなのは嘗めてんのかお前はよぉ!!」
過去の辛い記憶を思い出すから本来の自分になりたくない?
それは結構!! だがそのまま俺の過去を煽って同情してくるのは違うんじゃねーのか!!
「好き勝手に……私のことも知らないで!!」
「知るかよ! 会ったのは3,4回目ぐらいだろうが!!」
その程度しか遭遇してねぇのに散々俺を煽ってきたお前に言われたくねぇわ!!
下からの蹴り上げで上空へ打ち上げられたヒラルダを見据え、全身に力を籠める。
「自分を語らねぇ奴が他人に理解してもらおうだなんて思ってんじゃねぇ!」
全力で前へ身体を動かし、全身のエネルギーを変換させ推進力へと変える。
プロトゼロからプロトワンになってから、さらに思う存分にスーツを動かせるようになった。
だが、まだその先があることを俺は漠然と理解していた。
今この隔絶された空間の中なら———、
『スーツが赤く……! カツミ、もっといけるよ!!』
「おうよ!!」
各部から放出される赤いオーラがスーツを取り巻き、プロトワンの姿を真っ赤な色に染め上げる。
腕、足だけではなく胴体すらも黒から赤く変貌したことに内心で驚きながらも地面を蹴り、上空へと飛び出す。
「な、なに、その力っ……おかしい!」
大地が砕けるほどの衝撃を伴いながら瞬時にヒラルダの前に移動し止めの一撃を放とうとしたその時———周囲の空間がガラスのように砕け散った。
「ッ、プロト。どういうことだ!?」
『カツミの力に空間が耐えられなかったみたい』
脆すぎだろ。……いや、地球で絶対にやっちゃいけない類の力の出し方はしていたか……!!
疑似的な空間が消え去ったことで、俺とヒラルダは元居た位置、風浦さんが寝かされている駐車場へと戻る。
「どうやら命拾いしたね。私が」
「……」
赤く染まっていたスーツが熱が冷めるように黒色へと戻っていく。
いったいどういう原理か俺にはよく分からねぇが、この力はおいそれと地球では出せないことはよく分かった。
「いい経験になった。私はまだまだ力を扱いきれてない。それがよく分かった」
「いい加減に懲りろよ」
「懲りないよ。この戦いでよく分かった。私の目的は正しかったんだって、ね」
そう言葉にしたヒラルダは不気味に笑う。
全然懲りた様子がないし俺の言葉を分かった様子もない。
この場に風浦さんがいなかったら始末できたものを……。
「いい体験をさせてもらったついでに忠告してあげるよ」
「……なんだ?」
「私とルイン様以外に暗躍してる輩がいるってこと。もう動き出している頃なんじゃないかな?」
「……もっと役に立つ情報寄越せや」
「ふふっ、じゃーね」
なんの情報にもならない情報を吐き出したヒラルダは、煙を吹き出しその場から消えてしまった。
追跡もできるが、まずは風浦さんだな。
そう思い彼女を抱えながら移動しようとすると、頭上を高速で移動する赤いビークルが横切りそこから一人の戦士が降りてきた。
「———黒騎士くん、状況は?」
「アカネか。ヒラルダには逃げられたけど、風浦さんは確保した」
アカネは本部にいたから早くここに来れたのか。
彼女が来たことに一安心しながら、彼女のビークルに風浦さんを乗せる。
「戦闘の状況だけは聞いていたけど、強敵だったみたいだね」
「ああ。面倒な技を使ってきた」
今回は勝ちこそしたがトゥルースフォームとはかなり相性の悪い敵だった。
いや、プロトワンに防戦一方だったのは奴が自分の力を扱いきれていなかったからだ。
次戦った時は同じようにはいかないだろう。
「それはそうと、黒騎士くん」
「なんだ?」
不意にアカネがこちらを振り向き話しかけてくる。
……妙に面倒くさい雰囲気がするぞ。
「黒騎士くんのスーツが赤くなったのって……」
「は? なんか力んだら赤くなったんだよ」
……ん?
「いや、勘違いすんなよ?」
「え? ……ふーん、そーなんだー」
本当にそう思っていなかったようで、きょとんとした表情の後にニマニマとした笑みを浮かべるアカネにしまったと戦慄する。
しまった墓穴堀った。
つーかなんで赤くなったんだ?
俺も原理はよく分からんのだが。
「それより風浦さんは大丈夫そうか?」
「とりあえず本部で検査を受けさせた後に一般の病院に移動って感じだろうね。対応自体は怪人の時とそこまで変わらないと思う」
「……そうか」
まあ、身体的なことは大丈夫そうだ。
そこらへんはヒラルダの言葉を信じていいだろう。
「影で動き出している奴ら、ね」
ヒラルダのあの口ぶり、妙に引っかかるな。
なにか悪いことが起きなければいいんだけどな……。
傾き文字で色々な悪さができることを知りました。
今回、トゥルースフォームはヒラルダに対して相性が悪かった感じですね。
トゥルースフォームは万能型、プロトワンは殴り特化なので全体的には明確な差はありません。
今回の更新は以上です。