今回は流れるコメント+α回となります。
ジャスティスクルセイダーの本部に収容された俺は、外に出ることはできない。
まあ、俺は犯罪者なのだから当然の対応なのだが、それ以外のここでの俺の扱いに問題がありすぎた。
最初こそは俺が一人で住んでたボロアパートよりマシだなと思っていたんだ。
ここには、普通に冷蔵庫もあるしクーラーもあるし、なんだったら今まで自分で持つことのなかったパソコンまで置いてあるのだ。
最初の一日くらいは収監生活を満喫していたわけだが、それ以降はそんなこと思う余裕なんて欠片もなかった。
あのジャスティスどもがやってきたのだ。
『あっ、この部屋ちょっと味気ないからサボテン置くね』
勝手に人の独房にサボテンを置きやがったレッド。
『勉強に必要かなと思って教科書とかノートもってきたでー』
普通に文句もいえないようなもんを持ってきてくれたイエロー。
『ここ、本を置いていく。読んでもいいよ』
ちらちらと期待するように俺を見ながら空っぽの本棚に本を勝手に置いていくブルー。
そんなことを繰り返しているうちに、俺の収容部屋は、とても犯罪者が住むようには思えない生活様式に溢れたオサレ感漂うそれっぽい部屋にリフォームされてしまったのだ……!
俺の独房はお前らの暇つぶしの場所じゃないんだぞ!!
ふざけやがってぇ! あいつら、俺が怒ってもにこにこしているだけなんだぞ。
「……俺を嘗めやがってぇ……!」
昼間は奴らは来ない。
まあ、この時間も監視されているので下手な真似をせずに以前、レッドに教えてもらったニムニム動画を見る。
勿論、暇つぶしのためではなく、自分が世間でどのように見られているかのチェックである。
「酷い……酷すぎる……」
動画を見て数秒で心が折れかける。
恐らく一般人が撮ったであろう撮影だが、その内容はジャスティスクルセイダーが敵怪人の罠にはまり絶体絶命のピンチに陥っている場面である。
『レッド! こんな雑魚にいつまでも好き勝手にやられるんじゃねぇ!!』
『く、黒騎士くん……』
『ジャスティスクルセイダー。お前達を倒すのは、こんな奴らじゃない。ただ一人、この俺だぁ!!』
なんで俺こんなことしたんだろ。
後から見て、猛烈に死にたくなりながらも、それ以上に酷いコメントを見て絶望する。
「誰が主人公だぁ!?」
思わず両手で机を叩きそうになるが、なんとか堪えて深呼吸をする。
ジャスティスクルセイダーは結構ピンチになる。
三人が揃えば、かなりの強さを誇る彼女達だが、相手も俺ほどではないが並みの悪い奴らではない。
「……くっ」
絶対にあいつらの前では言わないが、ジャスティスクルセイダーとの戦いは俺にとっても中々に楽しかったのだ。
だからこそ、奴らの力を知っているし、それをうまく発揮できず本来倒せるような相手に負けてしまうあいつらがただただ不甲斐なく思えて仕方がなかった。
「くそぅ! でもライダー扱いされて嬉しく思う自分がいるのも悔しい!!」
駄目だ、こう思っているようではこの画面の先にいる連中と同じだ。
俺はワルモノだ。
一時の感情に流されてなんかいない。
俺は、俺の美学と流儀でこれまで活動してきたのだ。
「でも、客観的に自分の動きを見るのはいいな」
なんだかんだで主観的な戦闘しかしていなかったので、こういう感じに見れるのはまた違って面白い。
相手は幹部怪人っていったけど、超能力的なものが強いだけだったからなぁ。
それだけならいくらでもやりようはあった。
とりあえず超能力出す隙を与えないようにしながらひたすらに殴りまくった。
当然、相手も手下を呼んできたが、それを片手間に処理しながら距離を空けずに殴りまくる。
運がよかったということもあるのだろうが、結局は復帰したレッド達の加勢もあって、幹部怪人を倒すに至ったわけだ。
「さて……見ないようにしてたわけだが……」
動画の上にある文字の羅列に目を向ける。
そう、まだ動画とコメント以外に問題があるのである。
黒騎士くん百 ジャスティスクルセイダー百 みんなのおもちゃ 百
悪役ぶりたい年頃 ? ヴィラン界のベジータ ? 物理のやべーやつ ?
ハイパー無慈悲 ? 神回百 日刊日本の危機 ?
動画の内容も酷いが、その上もかなりやばかった。
心の中になにかが削られるような錯覚に陥りながら、なんとか文字の羅列を頭にいれる。
「なんだこれは……これは俺か、俺のことを言っているのか……!? い、いいい、意味が分からない」
タグというのは分かる。
動画のアピールポイントとかをアレするアレだろ?
タグが飽和しすぎて、ぎゅうぎゅう詰めじゃん……。
みんなのおもちゃってなんだよ……子供向けアニメとかそういうものなのか? 意味が分からな過ぎてすっげぇ困る。
「ん? 今、新しく追加された……?」
新しくタグが書き込まれたことに気付き、そちらを目で追ってみる。
4人目の正義の戦士 ?
「って、違うわァ!!」
思わずパソコン画面にツッコミをいれる。
誰が四人目の戦士だこの野郎!!
なった覚えもねぇし、なるつもりもないわぁ!!
「あぁ、もうどうしてこうなった……!」
思わず椅子の背もたれに体を預けよりかかる。
目元を押さえながら、これまでの自分の行いとか、諸々を思い返しますます疑問に考えてしまう。
「ねえ、起きてる?」
「うおおおおおおお!?」
突然、隣からの声に驚き椅子から転げ落ちる。
見上げると、なんともいえない表情で俺を見下ろしているブルーが立っていたではないか。
「お、おおおおま、お前ぇ! 無言で入ってくるな!!」
「無言じゃないよ。ちゃんと失礼しますっていって入ったよ」
「まずはノックをしろォ!! 常識ないのか!?」
しかも事後承諾じゃん。
いや、そりゃ俺はここに捕まっているから拒めるわけでもないんだが。
「お前、まだ学校じゃ……」
「終わったよ? ほら」
ブルーが指さした時計を見れば、既に17時を回っていた。
いつの間にかかなりの時間、パソコンを利用していたらしい。
「くっ、俺の自由時間が終わった」
「そうだね。私達の時間だね」
「本当に面の皮が厚いな、お前……」
「そう? ありがとう?」
嫌味も通じやしない。
これならイエローの方がまだ接しやすいまである。
だが、こいつはこいつで基本物静かなので、どっこいどっこいといったところか。
「なあ、ブルー」
「ん?」
いつの間にか部屋に設置されていたソファーに座り本を読み始めたブルーに話しかける。
「俺って世間じゃどう思われているんだ?」
その質問にブルーは、本を閉じて悩む素振りを見せる。
そこまで悩むほどのものか? と、逆に驚いていると、不意に彼女はこちらを振り向いた。
「優しくて、天然で……変な人」
「へ、変な、人……」
「うん」
本当に意味が分からない。
俺は、ワルモノとして戦ってきたはずだ。
その間に偶然、怪人に襲われ続けただけなんだ。
自分の認識と、周囲の食い違いに、混乱しながら俺はまた額に手を当て唸ることしかできなかった。
流れるコメント&タグ回でした。
タグは、フォントと枠線色と背景色などで作れます。
やり方によっては、もっと再現することもできるかもしれません(笑)