少し更新が遅れてしまいました。
今回は主人公視点となります。
コスモとの戦闘で怪我を負って入院していたが、目覚めてから一週間ほどで退院することができた。
なにやらシロのおかげで怪我も早く治るようになっていたらしく傷もほとんど完治させた俺は、ジャスティスクルセイダー本部のブリーフィングルームに呼び出されていた。
「なんか寒かったね、かっつん……」
「ああ。とても夏とは思えない肌寒さだ」
「私なんて上着着ることになっちゃったよ……」
ここまで来る間の道中は、夏とは思えないくらいに肌寒かった。
Tシャツでいられないこともないくらいだが、太陽が照っているとは思えないくらいに気温が低く、ニュースでも近年でも類を見ない寒波に見舞われているとのこと。
「あ、おはよっ! 皆!」
「今日は寒いなぁ。風邪とか大丈夫だった?」
「エアコンで、朝凍え死ぬかと思った」
同じタイミングでやってきたアカネ、きらら、葵に挨拶をしながら席へと座ると、その後にスタッフの皆さんとレイマがやってくる。
レイマの隣には灰色の髪色の大森さんと、いつもの黒髪の大森さんがいた。
恐らく、灰色の髪の大森さんが先日、俺達に正体を明かした星将序列を名乗ったグラトなのだろう。
「まずは皆に改めて紹介しよう。彼はグラト。元々は私と同じ星将序列持ちの宇宙人ではあるが、なんやかんやで我々に協力してくれることになった」
「はじめまして、になるのかな? グラトだ。よろしく頼む。好きなものは美味しいものだ」
灰色の髪の大森さん、グラトは、ぺこりと頭を下げて挨拶してくれる。
スタッフさん達はざわざわと驚きを露わにさせながら、どこか気まずそうに座っている本物の大森さんを見ている。
「彼はこれまで大森君の代わりに職場で働いていてな。皆も疑問に思っていたように、最近の大森君の変化については彼と彼女が入れ替わりながら仕事をしていたからだ」
「大森ェ……」
「道理でおかしいとおもったら……」
「ある意味でいつも通りの大森で安心した」
「いつもの大森すぎるだろ」
「お前達、私のことなんだと思ってるの!?」
皆の大森さんの認識よ。
その後、大森さんへのペナルティを課すという件はあったものの、グラトの存在は普通に? ……うん、普通にスタッフさん達に受け入れられ、話はまた別なものへと移り変わる。
「序列46位を名乗った侵略者、贄のヒラルダについてだ。彼女に関しては、グラトの証言によって凡その正体はつかめている」
モニターに映し出されたのは、コスモと戦う前に俺に接触してきた少女だ。
「ヒラルダの本体はルプスドライバーと似たバックルだ。それで地球人の身体を乗っ取り、自由に動き回っているという訳だが……」
レイマがヒラルダの映像と、もう一つ同じ顔をした学生服を着た少女の写真を映し出す。
「彼女は
ヒラルダに不意を突かれかけた時に聞こえた声は、風浦桃子さんのものだったのか……?
どうして俺にその声が聞こえたのかは分からないが、今もその人は泣いていて……助けを求めている。
「……葵、危うくこの子を撃つところだったね」
「そうだね。……でも、あの場で最も厄介な敵は彼女だと判断した」
アカネの言葉に葵は腕を組み深刻な面持ちでそう呟いた。
「彼女、多分、私達と同じくらい強い。序列46位ってところも疑わしい思う」
「確かか? ブルー」
「理系の名に懸けて」
「一気に信憑性がなくなったね……」
「あんた理系かぶれのオカルトマニアやん……」
「祟るよ?」
強敵ばかりだな……。
少なくともコスモ以上の敵がこれからも俺達の前に立ちはだかるかもしれない。
「そのためにも……シロ」
『ガウ!」
『
瞳を光らせたシロから、新たな装備『ミックスグリップ』が出現する。
「そのミックスグリップのデータも取らなくてはな」
「ですね。どんな力を持っているかは頭では理解できているんですけど、やっぱり実際に使ってみなくちゃ始まらないですし」
グラビティグリップより一回りほど大きなそれは、レバーのような持ち手が取り付けられており、それを引いて押すとルーレットのように二つの表示が変化し、赤、青、黄、黒の中からそれぞれ別の色を映し出す。
「……」
『MIX!』
『RED!』『YELLOW!!』
赤と黄の二つの色を表示させると、レバーの持ち手のボタンを押す。
『SWORD & AXE! MIX MUTCH!!』
認証をしたかのようにさらになる音声。
それに構わず、もう一度レバーを引いて押して、ルーレットを回す。
『MIX!』
『RED!』『BLACK!』
『MIX!』
『BLUE!』『YELLOW!』
「カツキ君、めっちゃボタン押してないか……?」
無言でグリップを回し、ルーレットを作動させている俺にレイマが訝し気に見てくる。
ハッと、我に返った俺はグリップから手を離す。
「いえ、なんというか……どんな組み合わせがあるのか個人的に調べていくうちに楽しくなっちゃって……」
「かっつんの部屋から聞こえてきてた音はそれだったんだ」
あれ、部屋から音が漏れちゃっていたのか。
しまったな……これからは不用意に鳴らさないように気をつけないと。
「……マナ。お前もいつもふと思いだしたように、しゃべるおもちゃを鳴らしていたな? あれと同じだろ」
「ナツ、私のプライベートを口にしないで!?」
グラトの言葉に大きな反応をする大森さん。
そんな声に驚きながら、ミックスグリップを消してもらおうとしていると、不意に葵が興味深そうに俺の手元を見ていることに気づく。
「カツキ君。私もそれで遊べる?」
「ん? 別にいいけど」
葵にミックスグリップを渡す。
すると、おっかなびっくりとした動きで葵はレバーを動かす。
『RED!』『BLACK!』
「あっ……」
「これはのーまっち」
「ちょっとどういうこと葵……?」
なにやらアカネが反応を示したが、それに構わずレバーを引く葵。
『BLUE!』『BLACK!』
『GUN & GRAVITY!! MIX MUTCH!!』
「フッ……これが本当のベストマッチ。ありがとう、満足した」
「お、おう……?」
なにが満足したのか分からないが、楽しんでくれて何よりだ。
相変わらず不思議なことをするなぁと思いながら、ミックスグリップを消す。
「さて、次はカツキ君のミックスグリップのデータ取りだ。全員、修練場へと……」
俺達を含めたスタッフにレイマが指示を出そうとしたその時、彼の持っている端末が音を鳴らす。
失礼、と口にしながら端末へと目を向けたレイマは、やや嫌そうな顔をしながら通話に出る。
「レイマだ。……なんだと、北太平洋沖に? それは確かか? ……今すぐ端末にデータを送ってくれ。こちらで対応に当たる」
ただならぬ雰囲気。
一瞬で空気が張り詰めるのを感じながら、俺は通話を切りPCを操作し始めたレイマの言葉を待つ。
彼は、深呼吸をした後に全員を見回し声を上げた。
「政府からの緊急要請が来やがったので対応に当たることになった」
「緊急要請!?」
PCを操作した彼はモニターに映像を作動させる。
そこには衛星写真と思われる上から取られた画像が映し出される。
なんだこれ? 白い渦に囲まれた……大きな、建物?
「北太平洋に正体不明の建造物が出現した」
「建造物……?」
「衛星に映し出された映像を解析した結果、あれは氷で作り出されたものだ。周囲をとてつもない冷気の壁で覆われ、船も入ることすら困難なことになっている」
北太平洋沖……!?
そんなところでなにが起こったんだ!?
まさか、今日の寒さも侵略者の仕業なのか!?
「社長。環境に影響を与えるタイプですか?」
「この寒さもそれのせいっぽいなぁ」
「惑星怪人アースっぽいやつだね」
毎回思うけど、アカネ達のこの慣れた雰囲気がものすごいベテラン感がある。
相手がとんでもない相手だと思えるが、それ以上にこの三人が頼もしく思えてしまう。
……でもその一方で、まずは相手の存在を明確にしなければ。
「周囲一帯の気温は氷点下を優に下回るほどだ。見たところ、冷気を下げているだけの力ではなく、この日本全土に影響を与えるほどのもの。……グラト、星将序列に思い当たる能力を持つ者はいるか?」
「私自身、全ての序列持ちの能力を知っている訳じゃないが……心当たりはある」
レイマに尋ねられたグラトが険しい面持ちで答える。
「星将序列32位“凍土のアリスタ”。自らの星すらも凍てつかせた厄介なやつだ。だけど、厄介なのは能力だけで本体はそれほど強くないはず」
「ありがとう。……相手の正体が分かったことは朗報だが、もう一つ問題がある」
もう一つの問題……?
首を傾げていると、レイマがさらに画像をズームさせる。
大きな氷で作り出された大地の上に、いくつか大きな何かが映り込んでいる。
あれは……なんだ? 建物、というには少しばかり生物的な形をしているけど……。
「敵は一体だけではないことだ。冷気の檻に包まれた空間内に、大型の侵略者の影を複数確認した」
「今回も複数の侵略者が相手ということですか……」
「そういうことになる。加えて氷で形作られた島は、生半可な装備では一瞬で凍てついてしまうほどの極限環境だ。ジャスティスクルセイダーでは、炎を司る能力を有するレッドのみが活動可能となっている」
そこまでの環境なのか……。
まるであの白い冷気の壁の内側だけが氷河期みたいになっているな。
これまでとは明らかに違う、個々人ではなく環境そのものに強い影響を及ぼす侵略者……どう戦うべきか。
「じゃあ、私が上空からの自由落下で単独潜入して、凍土のなんとかの首を断ち切ってきます」
あ、それ結構いい考え——、
「落ち着け。薩摩ブラッド」
「そーやよ。落ち着いて。アカネ」
「血に飢えるのはまだ早い」
同意しようかと思ったらレイマときららと葵に一斉に止められて閉口する。
「いや、落ち着いてますけど……?」
「その落ち着きが恐怖でしかないんじゃい……!! ……はぁ、お前ならできなくもないかもしれないが、不測の事態があってもおかしくないので、その案は却下だ」
「……ならどうするんですか?」
「カツキ君のブレイクレッドフォームならば、お前と同じく極寒の中でも行動できる」
今回の作戦の要は俺とアカネということか。
病み上がりではあるが、俺達の代わりはいないのでやるしかない。
「加えて、ビークル内ならば外の環境に影響されることはない。ジャスティスロボも改良を重ねて、三人で乗れるようにしているから、今回はその機能を使うことになる」
「レイマ、俺はどうします?」
「君は、シロが食べちゃったビークルが使える。シロとこの私で君専用に改良バージョンアップさせた強力なビークルではあるが、君ならば使いこなせるだろう」
俺もアカネ達みたいな大きな乗り物を操ることになるのか。
ちょっと子供心にワクワクしてしまうが、今はそんな弛んだ気持ちを抱いている訳にはいかないので、気を引き締めて事態に臨む。
「作戦の詳細については船で決めるとしよう! 既に船の手配はしてある!! 総員、ジャスティスマリーンへと乗船し、侵略者掃討作戦に出る!!」
「「「はい!」」」
レイマの声に合わせ俺達も返事をして、行動を始める。
……ジャスティスマリーンってのは確か、本部が所有している潜水艦のことだよな?
「かっつん」
「うん? どうしたんだ。姉さん?」
アカネ達についていこうとすると、不意に姉さんに呼び止められる。
どこか言い淀むように視線を俯かせた彼女は、そのまま絞り出すように声を発する。
「ちゃんと、帰って来てね……」
「……。ああ、分かってる。俺がハクア姉さんを一人にするわけないだろ?」
「……うん」
「じゃ、いってくる!」
俺には帰る場所があるのだ。
だからこそ、絶対に生きて帰らなければ姉さんを悲しませることになる。
それだけは絶対に嫌なので、さっさと侵略者を倒してこなければな……!
「アルファ、君も留守番じゃないの?」
「私もついていく。大丈夫、船にいるから」
『私もいるよー』
プロトを抱えたアルファ。
彼女がついてくることを少し危なっかしく思いながら、俺はジャスティスマリーンへと向かうべく通路を進んでいく。
相手は環境すらも変える力を持った敵と、たくさんの大型怪獣。
厳しい戦いになることを予感しているが、それでも俺達は絶対に負けられない。
次回で、本当はもっと早く出すはずだったビークルの登場となります。
ジャスティスマリーンも惑星怪人以来ですね。