今回はハクア視点となります。
朝いちばんに起きる彼がいつもより遅い時間にリビングへやってきた時、彼の異変に気付いた。
見るからに顔色が悪く、どこか足取りがおぼつかない。
一応、医者としての知識を持っていた私が、彼が風邪を引いているという事実に気が付くことに、そう時間はかからなかった。
バイトに行こうとする彼を慌てて止めた私と姉さんは彼をベッドへと寝かし付け、社長とマスターに連絡するべく端末を手に取った。
「体調も落ち着いてきたけど、熱はまだまだ下がらないね」
体温計を確認し、静かな寝息を立てている彼の額に濡らしたタオルを置く。
彼の枕もとには、彼を心配するシロがおり、どれと視線を交わしつつ私は部屋を後にする。
「ハクア、カツミの様子は?」
「静かに眠ってる。今は寝かせてあげよう」
「……うん」
リビングのソファーには膝をかかえて座っている姉さんと、テーブルの上で充電されているプロト。
私も姉さんの隣に移動しながら、ぼんやりとしながらテレビへと視線を移す。
これといって面白い番組がやっているというわけではないけれど――、
【先日、環境に急激な変化を及ぼした異星人との戦闘についての新情報が公開されました】
「うん?」
新情報? もしかして凍土のアリスタとの戦闘の動画も公開されたのだろうか。
どうやらその通りらしく、テレビ画面には先日の戦闘の一部が切り取られた映像が映し出されていく。
『獣にすらなれないお前達に私達が負ける道理はない!!』
「が、ガギャ……!?」
『この時代に取り残された化石風情が!! ジャスティスシールド!!』
「野郎! ぶち破ってやる!!」
「ギ、ェェ!?」
「ねえ、アルファ、チャンネル変えていい?」
「い、いいよー」
こんな映像をお茶の間に流していいのか疑問でしかない。
少なくともここで五歳児以下の私達が見ることになってしまったんだけど。
てか、なんでよりによってレッドとかっつんがあらぶってる場面が抜き出されてるの!?
それから、ドラマの再放送を見ながらゆったりとした時間が過ぎる。
「姉さんはさ、どうやってかっつんと出会ったの?」
ふと、気になっていたことを聞いてみることにした。
アルファと呼ばれた少女と、黒騎士と呼ばれていたかっつんはどうやって出会ったのか。
そこらへんを私はよく知らないから聞いてみたいと思った。
「うーん、運命、かな?」
「……」
「や!? いや、違っ、だから掴みかかろうとしないで!? 別に茶化してないからぁっ!」
軽くイラっとした私が掴みかかろうとすると、姉さんは抵抗しながら焦ったような声を上げる。
違うとはどういうことなんだ。
「カツミと会った時、私って生まれたばかりみたいな状態だったからさ。一応、ハクアと同じように一般常識とかすぐに身に着けたわけだけど……ちょっと面倒な習性を持ってたんだよ」
「習性?」
「アルファの本能ってやつ? 自分のオメガを探そうとする本能のまま、ふらふらーっとね」
そんな散歩するみたいな言い方で……。
クローンに近い私とは違ってそういうこともあるんだ。
「だから、カツミを……黒騎士の姿の彼を見たときすぐに分かった。彼が私にとっての“オメガ”なんだって」
「それって、分かるものなの?」
「ハクアもそうでしょ?」
さも当然のように言ってくる姉さんに面を食らう。
そんな私におかしそうに笑った姉さんは、抱えた膝を解いて私を見る。
「貴女も少なからず私と同じ力を持っているんだからさ。……そうじゃなければ、カツミを自分の弟にしようとなんてしないし」
……それを蒸し返されるとなにも言えなくなる。
私は無意識にかっつんを自分のものにしようとしていたってことなの?
いやいや、まさかそんな……。
「私はずっと黒騎士として戦ってるカツミを見てきた」
「かっつんは、どうして戦ってたの?」
「本人もよく分かってなかったと思うよ? ただ悪いことがしたかったみたいだけど、彼の悪いことってそういうものじゃなかったし」
困ったように笑う姉さんに、私もつられて笑う。
彼の悪人の定義は、私もよく知っている。
怪人に襲われていたのもほとんど自分から襲い掛かったわけじゃなかったらしいから、単純に迎え撃っていただけだもんね。
「彼は私の“オメガ”だけど、その力はない……はず。でもあるとすれば、それは“共感”だと思う」
「共感?」
「人でない私達の心に共感してくれる。怒りも、悲しみも、寂しさも……ね」
そうであってほしい、と私はそう思った。
彼の持つ力が戦いばかりではなく、他者を理解することのできる優しい能力であってほしいと、心の底から思ってしまった。
『私が一番最初』
その時、充電されていたプロトがそんな一言を発する。
その音声に姉さんの笑みが凍り付く。
『アルファより、私の方が先に見つけてもらった』
「プ、プロト? 君と私では話が違うよね?」
『暗い研究室で、泣いてた私を見つけてくれた。カツミだけが私の気持ちを理解してくれた。ちゃんと使ってくれたの』
機械音声だからか息継ぎなしでそう語るプロトに姉さんが気圧される。
しかし、それにムッとした姉さんがプロトに言い返そうとした――その時、轟音と共に私達のいるマンションが大きく揺れた。
「「!?」」
音が聞こえてきた方向はかっつんのいた部屋だ!!
私とプロトを手に取った姉さんはすぐさまかっつんのいる部屋へと駆けだす。
「かっつん!」
「カツミ!」
部屋に入ると彼は未だに目を覚ましていないようだ。
しかし、彼の部屋の窓の外に青色のエネルギーフィールドが作り出されており、そのフィールドには長い鋭利な棘のような物体がいくつも絡みついていた。
耐衝撃用のエネルギーフィールド!?
あれが発動したってことは、今このマンションは攻撃を受けているということだ。
「プロト! 電磁ネットは!?」
『もう発動してる』
『ウオオオ!! なんだコリャァー!!』
外から聞こえる何者かの叫び声。
その声の聞こえる方を見下ろせば、電気を帯びた網目模様のロープになにかが雁字搦めに絡まっている光景が映し出された。
角の生えた馬の頭を持つ人型の生き物。
あれは間違いようもなく、侵略者という異形の存在であった。
「い、急いで連絡しなくちゃ……ッ」
再び轟音が響き、私達のいるかっつんの部屋の壁から、エネルギーフィールドを突き破った角が飛び出し、天井へと突き刺さる。
ドリル状にねじ曲がった角。
あんなもの当たったら、まず命はない……!!
『白騎士ィ!! お前はここにいるんだろう!! さっさと出てきやがれぇぇぇ!!』
「っ、あんな大声で……」
ここにかっつんが住んでいることが一般人にバレてしまう……!
電磁ネットの半分を角で引き千切りながら怒号を上げる馬面怪人。
そのまま再びこちらに角を射出しようとしたその時、かっつんの護衛のためにマンションで待機していたジャスティスクルセイダー本部に所属する構成員が、窓から身を乗り出し肩に抱えた銃型のガジェットを一斉に怪人へと放つ。
「彼に手を出させるな!! 電磁ネットガンで動きを止めろ!」
「トリモチエナジーバズーカァ!」
「我々は侵略には屈しはしない!」
「弱らせる!!」
特殊部隊さながらの射撃で馬面怪人に動きを止めることを主眼に置いたガジェットを浴びせ始める。
あ、あれなら時間を稼げるはずだ。
とりあえず、かっつんをベッドから廊下へと移動させながら、ジャスティスクルセイダーの到着を待つ。
「ハクア、姉さん……プロト、いったいどうした?」
「かっつん……」
これだけの騒ぎだ。
さすがに目を覚ましてしまった彼は、ボーっとした表情のまま私と姉さんを見てから、壁に穴をあけられ破壊された自分の部屋を見る。
いけない、と思いすぐさま自分の身体でかっつんの視界を遮る。
「だ、大丈夫。ちょっと姉さんがおかゆを盛大にこぼして部屋の掃除をしてただけだから、かっつんはそのまま寝てていいよ」
「うぇ!? あ、あぁ、うんそうだよ」
『雑魚が鬱陶しいんだよ! 白騎士! 白騎士はどこだァァ!!』
「……来たんだな、奴らが」
慌てて取り繕うとするが、馬面怪人の怒号ですぐにばれてしまう。
顔を赤く、どう見ても本調子からほど遠い彼がふらつきながらも立ち上がろうとするのを止める。
「そんな身体で戦えるはずがないじゃん!」
「大丈夫だ。アルファ、任せておけ」
「私はハクアだよ!? 私と姉さんの区別もついてないじゃん!」
「私とハクアを間違えるって相当だよ!?」
絶対ダメな感じじゃん!
それでも私達の制止を振り払い戦いに赴こうとするかっつん。
しかし、やはり体調が悪いのかそのままバランスを崩してしまう。
「やっぱり駄目だよ……」
「カツミ、今は大人しくしてよう? すぐにジャスティスクルセイダーが来てくれるから」
「いや、駄目だ。間に合わない」
彼の呟きと同時に、何かが破られる音が響く。
それがエネルギーフィールドが完全に破壊された音だと気付き、いよいよ私達は追い込まれたことを悟る。
「二度と……目の前で家族を失ってたまるか……」
「かっつん……?」
朦朧とした様子の彼がうわごとのように呟く。
まさか、封印された記憶が戻ってきている? いや、これは……違う。
彼自身自分の呟きを自覚した様子はない。
記憶の混濁……? どちらにしろ、こんな状態のかっつんを戦いに向かわせるわけにはいかない。
『ガウ……』
「シロ、かっつんを戦わせないで」
傍らでかっつんを心配そうに見上げているシロに話しかける。
かっつんのことを大事に思っているなら、シロは彼を危険にさせるようなことはしないはず。
彼と私の顔を、交互に見た機械仕掛けのオオカミは、何を思ったのかぴょんぴょん、と彼を支えている私の元までやってくる。
『ガウ!』
「え、どうしたの? シロ」
不意にシロの瞳が輝く。
瞬間、私のお腹あたりに銀色の光が巻き付き、ベルトの形へと形成される。
「へ?」
『ガウ!』
「シロ、お前……なにを……」
次に私の左手首に腕時計に似たデバイスも巻き付けられる。
それは奇しくも、アカネ達や黒騎士が用いるチェンジャーと似た見た目をしていたものであった。
『
「ちょ、な、なんで私にベルトとチェンジャーが!? シロ、どういうこと!?」
『ガァゥ!!』
「ハクア!? プロト! シロは何て言ってるの!?」
『お前も一応適合者だからいける! ……って、そうなのシロ!?』
いきなりベルトと腕時計を取り付けられ、困惑する私に向かって跳躍したシロがバックルへと変形する。
反射的に右手でシロを手に取ったその瞬間、私の頭にソレの使い方が流れ込む。
「———」
頭に思い浮かぶままにバックルをベルトへとはめ込む。
『
私の周りに白いエネルギーフィールドが形成される。
同時に、左手のシグマチェンジャーがフィールドに干渉し、独特の待機音声と幾何学的な文様を浮かび上がらせる。
『
エネルギーの波動に合わせ、左手のシグマチェンジャーを前に掲げた私はそのまま自身に引き寄せると同時に───側面のボタンを押し、変身を開始する。
「変身……!」
『
私の身体を特殊なスーツが身を包む。
『
『
かっつんと同じ白騎士としての姿。
細部に新たなアーマーを増設させながらも、最後に胸に“Σ”という文字が刻まれたことで、変身を完了させる。
『
白騎士のように装甲の隙間から煙を噴き出し変身を終え───私は我に返った。
「な、なんで私が変身してるの!?」
『ガウ!』
「わ、私に戦えっていうの!?」
生まれてこのかた喧嘩なんてしたことないんだけど!?
ぺたぺたと白騎士? となった自分の身体を触りながらパニックに陥っていると、マスク内の視界に今、私達のいる場所に近づいてくる何かの反応に気付く。
「ち、近づいてる!?」
「ね、姉さん、今すぐ変身を解いてくれ……」
「か、かっつん……」
「姉さんを危険な目に遭わすわけにはいかな……い」
今にも気を失いそうなかっつんを見て我に返る。
……いつも彼が戦っていてばかりだ。
私はそんな彼を見送ることしかできないし、なにもしてあげてない。
「アルファ、かっつんを頼めるかな」
「ハクア? 貴女まさか……」
「ちょっと……時間稼いでくる……」
「後ろ向き!? あっ、ちょっと待っ――」
姉さんの返答を待たずに私は扉へと駆けだす。
スーツのおかげで体に力が満ちているから、今なら怪人程度の足止めもできるはずだ。
覚悟を決めながら扉を勢いよく開け放ち、外へと飛び出すと――、すぐ目と鼻の先の距離に、馬面の怪人の姿が映り込む。
「うわああああ!?」
「へぶっ!?」
咄嗟に振り回した張り手を頬に叩き込み、マンションの廊下から地上へと突き落とす。
悲鳴と共に落ちていく馬面怪人を目にしながら、私は早鐘を撃つ心臓を押さえる。
び、びっくりしたぁ……!? こ、こんな近くまで来てるなんて思いもしなかった……。
『ガウ!』
「え、ここから飛び降りろって!? た、高いし階段で降りようよ!」
『ガァゥ!!』
「あう!? わ、分かった、分かったよ!」
馬面怪人を追撃すべくここから飛び降りろと催促してくるシロに、思わず拒否すると私の身体にびりっとした静電気のようなものが流し込まれる。
思わず変な声を出して悶絶しながら観念した私は、意を決してマンションから飛び降りる。
「わあああ――ー!?」
十数メートルの高さからなんとか着地し、バランスを崩しかける。
あ、あの馬面はどこだ……?
道路に落ちたはずの馬面怪人を探して周囲を見回していると――、
「テメェが白騎士かァ! さっきはよくもやりやがったなぁ!!」
道路沿いの茂みから馬面の怪人が勢いよく姿を現した。
「で、出た!?」
「俺は星将序列83位!“一角のニコラ”!! 意外と元気そうじゃねーか、白騎士ィ!!」
こ、こいつかっつんの体調が悪いことを知ってて襲い掛かってきたのか……!!
性別そのものが変わっていることに気づいていない様子だけど……とにかくやるしかない。
「へへ、弱ったテメェをぶっ殺してよぉ。俺ァ、なりやがってやるぜぇ……!!」
「うわ、三下」
「ぶっ殺す!!」
「ひゃっ!?」
鋭利な頭の角をこちらに向けながら体当たりを仕掛けるニコラ。
その体当たりを転がりながら避けると、背後の壁に角が直撃し――爆発するように壁そのものが崩れ落ちる。
「……」
「避けたな、次は当てるぜ……!」
私は迷いなくその場から駆け出した。
少なくとも戦闘経験皆無の私じゃ、戦えるか分からない。
「あ、逃げるんじゃねぇ!!」
もうなんでいきなりこんな状況に陥っているんだろう!!
「な、なんで私が変身してるのぉ~!」
「待てやゴラァァ!! 白騎士ィィ!!」
「ンヒッ!? お、おおお追いかけてくるぅ!?」
で、でもこのまま逃げて時間を稼げばアカネ達がやってきてくれるはずだ。
そう思い後ろを確認すると、二コラは周りの建物を破壊しながら私を追ってきていることに気づく。
破壊されていく車と建物。
幸い、まだ人が集まって来てはいないけど……このままじゃ。
「ガウ!!」
「あう!? シロ、電気流さないで!? 戦う! 戦うからぁ!!」
シロにも電流を流され、戦う意思を決める。
仮面の戦士として戦うからには、周りを見て戦わなくちゃならない。
かっつんは、いつも周りのことを考えて戦っていたんだ。
なら、私だって……!!
『
「!」
バックルのシロから音声が流れると、左腕のチェンジャーから剣の柄のようなものが飛び出す。
それを握り、勢いよく引き抜くとカトラスのような歪曲した白色の剣が現れる。
柄部分には、ダイヤルのようなものが存在するその剣を握りしめた私は、もう一度覚悟を決めながら剣を握りしめる。
「これなら……!!」
使い方はもう理解した。
あとは、立ち向かうだけだ。
「わ、私が護るんだ! や、やるぞぉ!!」
かっつんを、そして彼が護っている人達を私が護る。
「ハッ、剣を使うのか! なら、俺も!!」
二コラが自身の頭の角を掴み、引き抜く。
角はそのまま再生し、引き抜かれた角は剣のような形状へと変わり、その切っ先が私へと向けられた。
———私に、戦いの経験はない。
だけど、彼の、彼女たちの戦いは見てきた。
右手で握りしめた剣を構え、軽く左手を添える。
「くたばれ、白騎士!!」
「ッ」
内から湧き上がる恐怖を押し殺し、縦に振るわれる剣を斜めに逸らす。
そのまま流すように二コラの腹部の位置に沿えた剣を、すれ違い様に振るう。
刃が火花を散らし、二コラが呻く。
相手は序列83位。
かっつんやジャスティスクルセイダーがこれまで戦ってきた敵と比べれば……!!
「使い方なら、分かるよ!!」
振り向きざまに横薙ぎを一閃。
さらに二撃斬撃を見舞い、流すように構えたシグマサーベルのダイヤルを、左手で回すように弾く。
ダイヤルの表示が炎のマークへと変わり、刀身に炎が噴き出す。
『
「てぇい!!」
「グゥ!?」
振るわれた炎の剣は防御されるが、噴き出された火炎が二コラを焼き焦がす。
呻いたところで、さらに追撃をいれ、もう一度ダイヤルを弾く。
『
「痺れちゃえ!!」
切っ先から電撃が伸び、相手を痺れさせる。
シグマセイバーは一本で複数の属性を操ることのできる武器!!
さすがに倒すまではいかないけど……って、ん!?
「が、ぁぁぁ……」
「あ、あれ……? 弱くない……?」
……もしかして、ここまで来るのに相当消耗してる?
社長がかっつんのために用意した過剰なまでの防衛システムのおかげかもしれない。
「た、倒せるなら、倒す!!」
シグマサーベルのダイヤルに左手を添え、ダイヤルを一段階ずつ回転させていく。
『
『
『
『
『
『
「なにこれ、うっさ……!?」
喧しい音声を鳴らし始める剣を大きく構え、ニコラに止めを刺すべくシグマサーベルの柄の引き金を引く。
『
五つの色が交じり合ったエネルギーは、一つの斬撃へと変化。
そのまま呻くニコラへと振り下ろされ、その身体ごと奴の身体を飲み込んだ。
断末魔すら上げずに、やられた相手のことが気になったけど……さすがにもう大丈夫だろう。
「……こ、怖かったぁ……」
シロのサポートがなければきっと恐怖で足がすくんで動けなかったことだろう。
かっつんはいつもこんな状況で戦っているんだよね……。
『ハ、ハハハ!!』
「ッ」
爆発したはずのニコラがいる場所から聞こえる声。
その声に我に返りサーベルを構えると、必殺技を受けた奴はその身体を肥大化させながら、耳障りな笑い声をあげていた。
『俺の真の力は“超”巨大化! 元の姿はあくまで仮のものに過ぎない!!』
「巨大化……!?」
『ただの巨大化ではないぞ、その十倍の質量に増える俺を止められる者は誰も――ー』
瞬間、空から流星のように降り注いだ長剣がニコラの頭部へと突き刺さった。
『——あへ?』
思わず私すらも呆然とすると、音もなくニコラの頭に着地した赤い戦士が、長剣の柄を掴み取る。
そのまま言葉もなく長剣が消え失せ、いくつもの糸のような光が空中に走る。
『あ、がががが!?』
糸のように見えた何かは微かに見えた“斬撃”だと気付いたときには、ニコラの身体は血袋のように爆発していた。
周囲に夥しい赤色をまき散らし、ついでに私のスーツすらも赤色に染めた彼女――レッドは、再生する余地すらなくなったニコラを一瞥もせずに、こちらへ振り返った。
「大丈夫!? 白騎士ちゃん!?」
……。
……、……。
「ダ、ダイジョーブ」
「大変、震えてる……気持ちは分かるよ。初めての戦いだったもんね……大丈夫、アルファから話は聞いてるから」
私が怖いのは君だ。
とは、口が裂けても言えなかった。
今回の変身でかっつんの気持ちはよく分かったけれど、何気に一番よく理解できたのはレッドのえげつなさと怖さだったと私は思う。
シグマフォームの登場。
シグマフォームはベルトとチェンジャーの同時発動型。
第二部序盤の『戦いの終わりと、始まり』にて食べちゃったコアも合わせて使っているので、何気に高スペック。