もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
そんな訳で、お久しぶりであります。仕事が忙しかったのと、なんかモチベが中々上がらずに苦戦しておりました。なんとか書けましたので、よろしくお願いします。
それでは、どうぞ。
天文部 部室
「急にわりぃな」
「別にいいよ」
まだ少し肌寒いある日の昼休み。京佳は龍珠に呼び止められて、彼女が所属する天文部の部室にいた。当初は白銀と一緒に屋上でご飯と思っていたのだが、龍珠がかなり真剣な表情で京佳に相談があると言われ、こうして来ている。
「それで、何があったんだ?」
あの龍珠からの相談。一体何だというのか。京佳はお昼ご飯である弁当を食べながら、龍珠に尋ねる。
「あー…」
しかし当の龍珠本人は、何やら言い淀む。
「えーっとだな…なんつーか…」
「うん」
「あー…そのな」
「うん」
「……やっぱり少しだけ待ってくれ。心の準備をするから」
「わかった」
この反応を見る限り、かなり言いづらい事のように見える。こういう時は、無理に聞き出してはいけない。相手が話せるようになるまで、しっかり待つ事が大事である。
なので京佳は、龍珠が準備を整えるまで待つ事にした。そして龍珠も、準備をしている間に購買で勝った菓子パンを食べる。
「こっちの相談する前に聞くけどさ、お前白銀とデートくらいしたのか?」
「そりゃね。新学期前の春休み中にしたよ」
「へー。やっぱり楽しいもんか?」
「うん。好きな人と一緒にいるだけで幸せだし、デートはその最たる例だろ?デート中、ずっと幸せだったよ」
「マジか。そんなにか」
「そんなにだよ。龍珠も好きな人が出来て、付き合いだしたらわかるさ」
「…………おう」
無言で食べるのもアレだったので、龍珠は京佳に白銀との事を聞く。ヤクザの組長の娘であっても、龍珠も年頃の女子高生。こういう話に興味があるようだ。
「つーか、この際だから聞くけど、お前もう白銀とヤったのか?」
「ぶふっ!?」
だからだろうか。そんな風に、ぶっこんだ事を聞いてきたのは。そしてそんな質問をされた京佳は、口に含んだご飯を吹き出しそうになった。でもなんとか根性で飲み込んで、事なきを得た。
「げほげほっ…!と、突然なんて事を聞いてくるんだ!?」
「いや、だって恋人だったら普通ヤるだろ?お前ら付き合ってもう3ヶ月以上経ってるし、最近は付き合って2週間とかでヤるカップルもいるっていうし。それならヤってない方がおかしいだろ」
一例だが、恋人というのは大体付き合って3ヶ月くらいでそういう事をする。その例に則って言えば、確かに京佳と白銀がまだしていない方が不自然まである。
「あー…それは…」
「あ、もういいわ。今の反応でわかったから」
「うぅ…」
「にしても、そっかそっか。お前も女になった訳だ」
「そういう言い方やめてくれ!!」
京佳が顔を赤くし、モジモジするのを見て龍珠は察する。これで察せない子は性知識が皆無なのか、ひたすらに鈍感かのどちらかであろう。
「なぁ、やっぱり痛いもんなのか?」
「……黙秘させてもらう」
流石にあの夜の事を言いたくは無いでの、京佳は黙秘権を行使。だって恥ずかしいもん。普通は言いたくなんて無い。
「ま、しゃーねーか。これ以上は今は聞かないでおいてやるよ」
「いや今後も聞かないでくれると助かるんだが?」
龍珠は一応引いてくれたが、この調子だと今後も聞いてくるだろう。でも当然、今後も言うつもりは無い。恥ずかしいから。
「あーもう!私の事はいいから!そっちの相談はどうなんだ!?」
ここで京佳、これ以上根掘り葉掘り聞かれる前に龍珠の相談の事を話題に出す。なんとか話題をそらしたい一心であったからだ。
「あー…飯食べ終えたら言うわ…」
「…わかった」
先ほどとは打って変わって。龍珠は少し気まずそうな顔をする。そして2人は、その後無言で食事を進めた。
「ごちそうさま」
ゆっくりと食べていた龍珠より先に、京佳がお昼ご飯を食べ終えた。その後、少し遅れて龍珠も食べ終える。昼休みは、まだ30分以上もある。これなら、全然相談する時間はあるだろう。
「あのさ…」
「うん」
そしてとうとう、心の準備を終えた龍珠が京佳に相談を初めた。
「今までずっと嫌いな奴を急に気になるのって、どうなのかな?」
「え?」
その相談内容を聞いて、京佳は鳩が豆鉄砲をくらったような顔をするのであった。
「いやさ、今まではずっと喧嘩したり、正直視界に入れるのもイヤだった奴がいるんだけど、最近何でかそいつの事をよく考えるようになってるんだ。これってなんだろうな?」
「……」
その相談は、かつて京佳が白銀を気になりだした時に龍珠にした内容とほぼ一緒。つまりは、そういう事である。でもまだ確定では無いので、もう少し細かく話を聞いておこう。
「因みに聞くが、どんな風に気になるんだ?」
「そうだな…例えば、休日に何してるんだろうかとか、毎朝あいさつしてくるのに、何で今日はしてこないのかとか、あいつの好きな食べ物ってなんだろうとか、かな?」
そう話す龍珠の顔は、ほのかに紅くなっている。その表情を、京佳はよく知っている。だって少し前まで、自分もそんな顔をしていたのだから。
「…他には、何か無いか?」
「あとは…何でか知らねーが、そいつが他のクラスの女子と話している姿みると、すっげー殺したくなるくらい腹が立つな」
今度は嫉妬に満ちた顔をする龍珠。そして、今の質問で京佳は確信した。今の龍珠が、一体どのような状態になっているのかを。
「恋だろ」
「……違う」
「いや恋だってそれ」
「絶対に違う」
「恋だって絶対に。だって以前の私と同じだし」
「違う!絶対に絶対にこれは恋なんかじゃねぇ!!」
京佳が指摘するが、龍珠はその事を頑なに認めようとはしない。しかし、今の龍珠の様子はどう見たって恋する乙女である。だって好きな人が出来たら、その人の事ばかりを考えてしまうし、その人が他の女の子と話しているのを見るともやっとするのだ。
実際、京佳はそれを経験している。だからこそわかるのだ。今龍珠が、恋をしている事が。
「そうかそうか。あれだけ彼と色々言い合っていたのに、いつの間にかそんな風に。成長したな龍珠」
「誰目線だお前ぇ!!つーか相手が誰がとか言ってねーだろ!!勝手に決めるな!!」
「え?小島だろ?」
「なっ!?」
「それくらい言わなくてもわかるよ。だって龍珠が他に誰かと言い合ってる姿、見たことないし」
龍珠は一言も言わなかったが、相手が誰かなんてすぐに分かる。ずっと龍珠と喧嘩していたと言えば、柔道部の小島だけなのだ。他の男子生徒は、基本龍珠を怖がって近づかない。近づいて態々龍珠と言い合う生徒なんて、小島以外にはいないのだ。
「きっかけはいつだ?やはり、修学旅行か?」
「いや…!確かにあいつが気になるようになったのは修学旅行以降ではあるけど…!別に好きとかじゃない!!ただ気になるってだけだ!!」
明らかに小島に恋をしているが、龍珠はその事を絶対に認めない。
そもそもの話し、龍珠と小島は相容れない宿敵のような関係である。方や反社会勢力であるヤクザの娘で、方や治安を守る警察組織総監の息子。
暴対法が施行される以前なら、ヤクザと警察もそれなりに仲良くしていたが、今は違う。今は普通に、敵対関係のような感じだ。そんな2人だからこそ、今までずっと目を合わせれば喧嘩をしてきたのである。
それが、今では変わった。小島は龍珠に積極的にアプローチをしてくるし、龍珠も小島を気になりだしている。端から見れば、お互いがいる組織の事さえ考えなければ、微笑ましい光景だろう。最初いがみ合っていた2人が、いつしか想い会うなんて事、割とあるし。
でもその事を認めるのは、なんか癪なのだ。なんというか、負けた気分になる。言ってしまえば、初期のかぐやと白銀のような状態だ。だから認めない。これは絶対に、もっと別の何かだろうからと思いながら。
「じゃあ質問だが、もしも小島が他の女子と付き合いだしたらどんな気分になる?」
ここで京佳は、龍珠に質問をする。
「……」
そして龍珠は、妄想する。小島が他の女の子とデートしたり、手を繋いだり、キスをしている光景を。
「そんなのもう、殺すしかないだろ」
もしもそんな事になったら、もう許さない。あれだけ自分に色々アプローチしてきたくせに、今更他の女のところにいくとか、絶対に許さない。捕まえてボコボコにして、東京湾に沈めてやる。
「つまり、嫉妬しているって事だよな?やっぱり好きじゃないか」
「だから違う!これは私に散々近づいてきたくせに今更他の女のところに行った事に対する怒りだ!!嫉妬とかじゃねぇ!!」
誰がどう見ても明らかに嫉妬だが、やはり龍珠は認めない。なんとも強情な女である。
「じゃあ今度は、もしも小島にデートに誘われたらどうする?」
再び京佳は質問をする。
「……」
龍珠、再び考える。もしも小島にデートに誘われたらと。そう思うと、なんだか胸がポカポカする。有り体にいえば、嬉しいと思っている。
そして多分実際にデートをしたら、更に嬉しいと思うだろう。そういう確信が、今の龍珠にはあった。
「多分…嬉しいと、思う…」
「そんな苦悩の表情で答えなくでも…」
でも素直に嬉しそうには言いたくないので、すっごく苦しそうな顔で嫌そうに答える。だって素直に言ったら、認める事になるから。でも嬉しいとか言っている時点で、もうほぼ認めているようなものだろろう。
「それにしても、あれだけ喧嘩していたのに、あっけないな。まぁ私も、御行を好きになったきっかけなんてそんなもんだったけど」
「おい待てこらぁ!!人をまるでチョロイ女みたいな言い方すんじゃねぇ!!」
今まで散々喧嘩をしていたのに、相手が掌を返して好意を持って接してくると、龍珠もそれに心を打たれるように小島を意識し初めている。ぶっちゃけ、京佳が龍珠をチョロイと思うのも仕方がない。
でも当の龍珠はそんな風に思われてはたまらないので、京佳に反撃する。
「確かに他にも文化祭で可愛いとか言われて揺らいだけど、そんなんであいつを好きになるとかねぇ!!私はそんなチョロイ女じゃねぇ!!」
「……」
「あ」
龍珠、自滅。それを聞いた京佳は、ニマニマした目つきで龍珠を見つめる。
「やっぱり好きじゃないか。もう素直になりなって」
「だから違う!そんなんじゃない!!私は別に小島の事なんか、好きなんかじゃねぇ!!」
「認めれば楽になるぞ」
「違うっていってるだろ!!」
でもやはりいくら京佳が言っても、龍珠は否定を続ける。もう意味なんて無いだろうが、それでも否定する。だって認めてしまえば、自分の中の何かが大きく変化するかもしれないのだから。
生徒会室
「折角の昼休みにすまん、白銀」
「別に構わんぞ。それで、何があった?」
同時刻。昼休みの生徒会室では、ソファに座った白銀の正面に、同じようにソファに座った小島の2人がいた。白銀も小島に相談があるといわれ、こうして秘密裏に生徒会室で話しているのだ。
既に昼食は食べ終えており、あとはこのまま時間の許す限り相談をするだけ。そして小島は、意を決したような顔で白銀に相談を始める。
「どうすれば、龍珠と付き合えるかな?」
「え?」
そのあまりに想定外の相談に、白銀はしばしあっけに取られる。
(マジかー…)
そして相談内容を理解し、驚愕した。
「質問に質問で返してしまうが、そういう事を言うって事は、小島は龍珠が好きなのか?」
「ああ、俺は龍珠が好きだ」
白銀の質問に、小島は真っ直ぐに返答する。
この2人の仲の悪さは、秀知院ではかなり有名だ。日頃から顔を合わせればメンチを切り合い、口を開けば罵詈雑言の言い合い。一部の生徒の目撃情報では、お互い胸ぐらを掴んで今にも殴り合いをしそうになっていたというものさえある。
まさに水と油とも言える小島と龍珠。そんな小島が、龍珠を好きになった。これは誰でも驚く。なので白銀は、もう少し細かく話しを聞いてみる事にした。
「その、きっかけはなんだ?」
「そうだな。文化祭の演劇だったよ」
「文化祭…あ、確か龍珠は主人公の灰被り役をしていたよな?」
「ああ。チョロイとか思われるかもしれないが、あの時の龍珠がすっごい可愛かったんだ。あの日以来、寝ても覚めてもずっとあいつの事ばかり考えてる」
恐らく、一目惚れになるのだろう。それまでずっと相容れない存在だったのに、そんな些細なきっかけで小島はすっかり龍珠にゾッコンである。今ではもう、彼女以外の女の子なんて目に入らない。
「で、なんとかこれまでの関係を改善したいと思って、最近はずっと龍珠に声をかけている。まぁ、殆ど無視されてるんだけどな」
「……」
「俺を笑うか白銀。今で散々喧嘩していたのに、こんな風に掌を返すような男だって」
「笑う訳ないだろ」
小島は自嘲気味で言うが、白銀は決して彼を笑う事なんてしない。
「そもそも、俺も似たようなものだったしな」
「え?そうなのか?」
「ああ。最初のあれは、間違いなく一目惚れだったな。それまで、金持ちの偉そうな子なんて偏見持っていたのに、ほんの些細なきっかけで完全に惚れちゃったし」
それは入学して間もない頃の、血溜沼での一件。あの時、白銀はかぐやに一目惚れをした。だからこそ、小島を笑ったりなんてしない。だって人が人を好きになるのは、いつだって突然なのだから。
「しかし、そうか。小島が龍珠をなぁ。どんなところが好きなんだ?」
「そうだな。あの物怖じしない性格とか、何だかんだで口だけで決して簡単に手は出さないところとか、笑うと可愛いところとか、鋭い目つきとか、母親をママ呼びしているギャップがあるところとか、ゲームして遊んでいる時は結構無防備なところとか、濡れ髪姿が超エロくて色気たっぷりでまるで女神みたいなところとか、実は甘い物が結構好きなところとか、あと純粋にあの顔とか、兎に角全部好きだ」
「そ、そうか…」
後半少し危ない感じもしたが、兎に角小島は龍珠にゾッコンだ。
「だから俺は、龍珠と付き合いたい。でも正直、今までそんな経験なくてな。だからこうして、恋愛マスターなんて呼ばれているお前に相談をしに来たんだ」
「あー、そのあだ名久しぶりに聞いたなぁ…」
久しぶりに聞いた恋愛マスターとかいう出自のわからないあだ名に、白銀は少し顔をしかめる。だって実際の彼は、これまで恋人なんて京佳1人だけなのだ。恋愛マスターなんて呼ばれる程、経験豊富なんかじゃない。
でもこうして、態々相談に来たのだ。ならば、生徒会長として小島を助けるとしよう。
「にしても、龍珠と付き合うか。普通に考えたら、正面から告白するのが1番だが」
「それは考えたんだが、どうも俺は未だに龍珠に嫌われているみたいでな。今普通に告白しても、フラれる可能性が高い」
「なるほど」
確かに、いくら小島が龍珠を好きになったとしても、龍珠も同じとは限らない。今告白をしても、あっけなくフラれる未来しか見えないだろう。
「ならば、先ずは2人でどこかに遊びに行くというのはどうだ?つまりはデートだな。福引で遊園地のチケットが当たったとか、懸賞で映画館のチケットが当たったとか理由を作って、龍珠を誘うんだ。そこでお互いの距離を縮めて、最後に告白をするというのは?」
「なるほど、デートか。確かに、いきなり告白するよりずっと堅実だな。わかった。早速準備をするよ」
「早いな」
「思い立ったら即行動するべきだろう?」
「それはそう」
電光石火の速さで、小島は龍珠をデートに誘う事にした。この即断即決の速さは、白銀も見習おうと思った。
「でも白銀、ひとつ問題があるんだ」
「問題?デートに誘えるかどうかか?」
「それもあるが、もっと根本的な問題だ。むしろ、こっちが本題の相談になる」
だが途端に、小島は暗い顔をする。根本的な問題とは、一体なんだろうか。
「仮に俺が龍珠と付き合えたとしても、俺は警視総監の息子で、あいつはヤクザの娘だろ?」
「あ」
「まぁ、つまりはそういう事だ」
その根本的な問題とは、お互いの家についてだった。小島は警察、龍珠はヤクザ。決して相容れない、対局の組織に身を置いている。そんな2人がもし付き合うなんて事になれば、絶対に問題が起こる。
「そんな事を考えるとさ、俺は龍珠と付き合えうべきじゃ無いんじゃないかって思っちゃうんだよ。勿論俺は、龍珠が好きだ。可能なら、正式にあいつと付き合いたい。でも、それぞれの家の問題があるから、付き合っても幸せになる事は無いんじゃねーかって、思っちまうんだ」
「……」
小島は暗い顔でそう言う。小島の、龍珠に対する気持ちは本気だ。しかし、周りの環境が邪魔をする。もしも2人がただの一般家庭の出身であれば、こんな風に悩まずにすんだだろう。
「それに俺は、卒業後は警察学校に行く。仮に龍珠と付き合えても、せいぜい残された高校生活は半年程度。警察学校に入れば、数年はほぼ会えない。そもそも、ヤクザの娘と付き合っているなんて知れれれば、多分警察学校を退学処分されるだろうしな」
現在の暴対法では、僅かでも暴力団と繋がりがあると、それだけで色々と処分されてしまう。だからもし龍珠と付き合えたとしても、せいぜい半年程度の時間しか無いのだ。龍珠と付き合ったまま警察学校に入ると、間違いなく処分されるだろうから。
無論、隠れて付き合うという手段もあるが、そんなの上手くいく訳ない。将来の事を考えると、警察学校に入る前に龍珠とは別れるべきだろう。
「俺は、どうすればいいのかな?この気持ちを、捨てた方がいいのかな?」
好きな気持ちはあるが、本当にこのままでいいのか小島は自問自答する。それも合わせても、白銀への相談だったのだ。
「そうだな…」
そして白銀が、真剣な顔で小島の相談に乗る。
「小島。俺はな、最初好きになった子とは、すっごく格差があった。あっちは超お金持ちで家柄も抜群、成績も凄い子だった。対して俺は、運良くこの学校に入学できたレベルの存在だった」
白銀が最初に好きになったのは、四宮かぐや。国内最大の財閥の令嬢で、文武両道の天才。方や自分は、一般家庭出身の平凡な男。どう考えても、釣り合わない。
「でもな、そこから俺は死ぬ気で努力をした。その子に相応しい相手になろうって思ってな。もし仮にその子の家の人から何か言われても、絶対に諦めないって覚悟を持ったよ」
しかし白銀は、諦めなかった。かぐやに相応しい男になるべく、文字通り死ぬ気で努力をしたのだ。
「何故なら、好きっていう気持ちを誤魔化す事が出来なかったからだ」
その理由は、かぐやが好きだったから。本気で彼女の事が好きだったからこそ、白銀は頑張れた。ただそれだけの気持ちで、人はどんな困難にでも立ち向かえるのだ。
まぁ、最終的にはかぐやでは無く京佳を選んだのだが。
「だからまぁ、無責任な発言になるかもだが、俺はその恋を諦めるべきじゃないと思う。確かにお前らの場合、色々と障害が多いだろう。でもな、自分の好きな気持ちをずっと誤魔化すのは、かなりキツイと思うぞ」
「……」
自分の気持ちに嘘をつくのは、本当にしんどい。もしもそのまま嘘をつき続けると、最終的に精神が限界を迎えてしまう。誰かが言った。一生幸せになるには、常に自分に正直にいなさい、と。
「正直、今は何も思いつかない。もしかすると、本当に大変な事が起こるかもしれない。でも、俺はそのまま諦めずに進んだ方が良いと思う」
「……そうだな」
白銀に言われ、小島は付き物が落ちたような顔をする。確かにもしも龍珠と付き合った場合、お互いの家の事で何かあるかもしれない。なんせ警察とヤクザだ。何も問題が起こらない方が、不自然だろう。
「俺はやっぱり、この気持ちに嘘はつけん」
でもやっぱり、龍珠が好きだという気持ちを誤魔化せない。もしこのまま龍珠への気持ちをばっさりと封印しても、絶対に後悔する。多分、ずっと胸にぽっかりと穴が空いたような気持ちになるだろう。
だったらちゃんと素直になって、この恋を成就させよう。その方が、絶対に幸せにだれるだろうから。
「だから、俺はやっぱり龍珠と一緒になりたいから、色々とぶつかってみるよ。その後の問題は、その後に考える」
「ああ、わかった」
そして小島は、覚悟を決めた。今後後悔しない為、そしてこの恋を成就させる為に。色々と問題もあるだろうが、その問題も解決してみせよう。
尤も、先ずはちゃんと龍珠と付き合えないと意味のない話しなのだが。
「んじゃ先ずデート先なんだが、どこがいいかな?」
「そうだな…安牌なのは水族館かな?まぁ、龍珠がそういうの好きかどうかわからんが…」
「いや、龍珠は案外可愛いものが好きって話しを噂レベルで聞いた。多分行ける」
「そうか。じゃあとりあえず、さっき言ったみたいに龍珠を誘ってみるところから始めるか」
「わかった。早速後で水族館のチケットをネットで買っておく」
「あ、言っておくがデート中に用意してたプレゼント渡すとかはやめとけよ。1回目のデートになるし、多分相手が引く」
「わかってるよ」
そしてその後、昼休み中ずっと龍珠とのデートについて、あれこれ考えるのであった。
「だから!私は別にあいつの事なんて好きじゃねーって言ってるだろ!!ただ気になってるってだけだ!!いい加減にしないとぶっ殺すぞ!!」
「いや気になってるって事は、少なからず好意はあるって事だろ。素直になりなって」
「何が素直だ!!」
(四宮以上に強情だな…)
そしてその龍珠は、未だに頑なに認めないでいた。
放課後
「くそが!あのニヤつき顔のデカバカ眼帯め!!」
龍珠は、かなりイライラした様子で廊下を歩いていた。あの後も結局、龍珠は自分が小島を好きになっているという事実を認めなかった。認めると、何かが決定的に変わってしまう気がするから。
(絶対に違う…!私は、あいつの事なんて好きじゃない…!!ただなんか気になってるってだけだ!!これは絶対に、恋なんかじゃない…!!!)
これまで、禄に恋愛経験なんて無い龍珠。なので恋がどういう物なのか、よくわからない。一応客観的に他人の話しを聞いたらわかるのだが、自分の事になったらわからないのだ。だって経験が無いから。
(そもそも私のタイプはうちの若衆みたいな奴だし!腕っぷしが強くて、いざって時は守ってくれて、忠義に熱いような奴だ!断じて小島みたいな奴…じゃ…)
自分の好みを脳内に浮かべる龍珠だが、ここでふと気になった。
そう言えば小島は、修学旅行では自分の危機に参入してくれて、四宮家のボディーガードを危険を顧みず倒してくれて、おまけに自分の心配をしてくれた事を。
ぶっちゃけて言うと、龍珠の好み的に小島はセーフだったりするのだ。
(だから違う!!絶対に違う!!)
でも認めない。認めてなんてなるものか。そもそも龍珠と小島は、いわば不倶戴天の敵。相容れる存在では無い。仮に何かの間違いで付き合ったとしても、長続きなんて絶対にしない。ていうかそもそも、別に好きじゃないのでそんな日は絶対に来ないだろうが。
(はぁ…もうつばめ先輩にでも相談しようかな…?でも先輩、大学が忙しいだろうしなぁ…)
こうなったら、知人の中で1番頼れるつばめに相談しようかと考える龍珠。
そんな時である。
「龍珠!!」
「げ」
今1番会いたくない奴、小島がやってきた。
「えっとだな!ちょっとだけいいか!?」
「良くない。帰れ」
「そうい言わずに!2分でいいから!」
「知らん。帰れ」
「30秒でいいから!」
「うるせぇ。ぶっ殺すぞ」
正直、昼休みに京佳に色々と言われたせいで、今龍珠は小島をかなり意識している。なので今は、会いたくないし話したくもない。なんか、ふとした瞬間にボロがでそうだから。
「じゃあ10秒!10秒でいい!俺の話しを聞いてくれ!!頼む!!」
龍珠がずっと突っぱねるが、それでも小島は折れない。頭を下げて、龍珠と話しをしようとする。
「……はぁ、いいぜ。でも絶対に10秒だけだ」
「っありがとう!」
流石に頭を下げられては、龍珠とて邪険に出来ない。なので10秒という短い時間を使って、小島の話しをさっさと終わらせる事にした。
「はい、スタート」
そして龍珠がスタートと言った瞬間、小島はスマホを取り出して龍珠にはっきりと言う。
「今度の日曜日、俺と水族館に行かないか!?」
「………………は?」
それはまさに、デートのお誘い。それも正面から堂々と、なんとも男らしい誘い方であった。最初こそ、白銀のアドバイス通りに懸賞云々で誘うとしたが、10秒では時間が全然足りない。なので小島は、直球で龍珠を誘うことにしたのだ。
(う、嘘だろこいつ…!マジで言ってるのか!?)
そして誘われた龍珠は、固まっていた。今までの小島は、どこか奥手な感じで龍珠との距離を縮めようとしていた。なのに今日は、こんな直球で来た。
(ふざけんな!それで私がなびくとでも思ってるのか!?断るに決まって……いや待てよ?)
こんなの断れば良いだけなのだが、ここで龍珠は考えた。京佳は、自分が小島を好きになっていると言っている。無論それは、京佳の勘違いだ。でも実際、これがなんなのか龍珠はわからない。
ならば、ここで小島の誘いをあえて受けて、実際にデートをしてみればこの気持ちの真相もわかるのではないのだろうか。
「……いいぜ」
「え?」
「だから、いいって言ったんだよ。行ってやるよ、水族館」
「マジでか!?」
そう考えた龍珠は、小島の誘いを受けた。これで実際にデートをしてみれば、この気持ちもはっきりとわかる筈だ。
「ありがとな!!」
「ただし!料金はお前が全額出せよ!!」
「勿論だ!俺から誘ったんだからな!!じゃあ詳しい事は、また明日連絡する!!」
「はいはい」
「じゃあな!!」
そう言うと小島は、ルンルン気分でスキップしながらその場から立ち去っていく。
(見極めるやるよ…私のこれが、ただの勘違いだってな…!)
残された龍珠は、1人ほくそ笑む。どうせデートしたところで、ただの勘違いで終わるだろう。
こうして、龍珠と小島の水族館デートが決まったのであった。小島は本気でデートに挑み、龍珠はただこの気になっている気持ちをただの勘違いだと証明する為に。
そんな訳で、龍珠回でした。2人のデート回は、その内メインで書くので、暫くお待ちを。
最近中々書けませんが、よほどのことが無い限り失踪することだけは無いので、そこだけはご安心を。
でもこの作品もかなり長くなっているので、いい加減物語畳まないといけないね。あまりにも長くダラダラってしていても、無駄になるだけだし。
それでは、また次回。じゃあね。