彼のまにまに(旧題:スコーピオン万能説)   作:痔ーマン

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第1話 三守 遊児①

『近界民(ネイバー)』後にそう呼ばれる者達の存在が多くの人に現実の存在として認識されることになったその日、その少年もまた初めてソレを目撃した。

破壊された街、倒れ伏す人々、光る剣を持った男達。その中を少年は両親に手を引かれ、避難所へと進んでいた。

あの気持ち悪いモノは何だろう。あの光る剣は何だろう。何だろう。何だろう。何だろう。

少年がその日何よりも強く思ったのは、未知なる存在への興味であった。

 

『近界民(ネイバー)』

後にそう呼ばれる侵略者による侵攻とそれに伴う界境防衛機関「ボーダー」の表舞台への出現。

ボーダーによる防衛体制の確立とともに事態は急速に安定化の方向へと進んでいった。

『近界民(ネイバー)』に対する防衛機関としてのボーダーはその宣言通り幾度となく『近界民(ネイバー)』を迎撃、特殊なシステムによる出現地点の調節まで可能とし、市民の信頼を急速に強めていった。

 

 

そして近界民(ネイバー)侵攻から3年。ボーダー本部本部長の忍田は今期正隊員へと昇格するある隊員の書類を見て手を止めた。

 

 

『氏名: 三守 遊児(ミモリ ユウジ)

年齢:14歳

性別:男性

個人ポイント:4017(スコーピオン ※2012年1月30日現在)

地形踏破訓練:4位

隠密行動訓練:12位

探知追跡訓練:17位

戦闘訓練:1位 (3秒14)

特記事項:ボーダー史上最高値のトリオン能力値を測定。年齢を考慮するとさらに伸びる可能性高し。

射撃トリガーの扱いに関してはA級隊員より射手(シューター)型、銃手(ガンナー)型共に向いていないとの結果が出ており(※注1)…』

 

「なぁ忍田本部長、この隊員、三守だがどうにか射手(シューター)に出来んか」

 

同じ書類を手にしていた狸を彷彿とさせる肥満体形の男、ボーダーの開発室長である鬼怒田がどこか縋るような声色で忍田に声をかける。それに対して忍田は溜息を付いて「何度も説明したが」と呆れたように、けれども気持ちは分かるといった様子で何度となく繰り返した彼の、三守の評価について語る。

 

「確かに彼のトリオン量は膨大だ。私としても射手(シューター)、あるいは銃手(ガンナー)での運用をしたいとは思っていたが彼の訓練データを見たA級射手(シューター)、銃手(ガンナー)が揃ってお手上げだったんだ…」

 

曰く、トリオン兵1体倒すまでにその100倍建物壊しそう。

曰く、1万発撃って1発当たれば良い方。

曰く、動かない目標相手でもたまに外す。

曰く、射手(シューター)トリガーは弾の設定にやたら時間がかかる。

曰く、銃手(ガンナー)トリガーを使うと当たるまで撃ち続ける。

曰く、曰く、曰く…。

 

「分かった…分かった…忍田本部長。分かったよ諦めよう…」

 

「仮に“敵地”で戦う場合でもどこに要救助対象がいるか分からない状態で射手(シューター)として彼を使うのは不可能に近い…才能が無いとか向いてないとかそういうレベルではない、お祭りの射的なら良いカモ扱いされるとボーダートップクラスの射手(シューター)達が匙を投げたんだ。少なくとも遠征艇の“容量”を増やす意味では既に素晴らしい素質であることは分かり切っているし…」

 

「まぁ…そうだな…うん」

 

「射撃の才能はともかく、入隊1ヶ月で正隊員へ昇格するだけの攻撃手(アタッカー)としての才能と向上心は確かだ。まずは攻撃手(アタッカー)としての成長を期待する他ない」

 

「そうだな…そう言えば、メディア対策室の連中から聞いたが根付室長が彼を広告に使いたいとか言っていたそうだが…」

 

「はぁ…昇格前の隊員を…というより三守君はまだ中学生だぞ。嵐山隊の時も言ったが、未成年就労と思われるような事は避けていただきたいのだが…」

 

「まぁヤツのことだ。その辺りを認識した上での言葉だろうがな。メディア対策室としては有事に備えて少しでもボーダーへの印象を高めておきたい、ということだろう」

 

「ふぅ…やれやれ。今年も忙しくなりそうだ…」

 

ボーダー本部本部長、忍田真史。ノーマルトリガー最強の男。

ただ目の前の敵を斬るだけで良かった日々は既に過去の話で、今の彼は剣だけでは解決できないことに日々挑んでいた。

 

 

 

 

迷路みたいな構造だ。

ボーダーに入隊して1ヶ月ほどになるが何度も迷いそうになる廊下をそう評し、三守遊児は進んでいた。

先日規定の4000ポイントを達成し、B級隊員への昇格が決まったため、今日彼はトリガー構成を考えるべく資料室へと向かっていたのだ。

 

「…ここはどこだ…」

 

迷った。そう判断した頃には既に現在地点の予想も出来ない状態だった。

毎日のように通う個人戦ブースはともかく入隊時のオリエンテーションで覗いた程度の資料室の場所など覚えていないためではあるが、少なくとも生まれてから14年間迷子になった経験が無い故にそのことに気が付くのに時間がかかったとも言える。

 

「(遥姉さんを呼ぶか…?いや、そもそもここがどこか分からないのにどう呼ぼう)」

 

あれこれと打開策を考えながら歩を進める。適当に何度か角を曲がった先でC級隊員と制服から判断するにオペレーターだろう、4人の集団を見つける。

 

「ほら、オレ3300ポイント!他の2人も3000越えてっからさ」

「昇格したら隊組むからオペレーターやってよ」

「シンコーを深めるためにこれから食事でも行かない?」

 

良い所に人がいた。状況はともかく今の彼にとってはその場に人がいることは好都合だった。

客観的に見れば男3人が女1人に言い寄っている状態であり、喜ぶべき状況では無いのだが己が迷子であると思いながらも14歳にもなって迷子になってたまるかという特に価値の無い意地が彼の目を曇らせている。

少なくとも彼が先程助けを求めようとした遥姉さんがその場にいたら間違いなくそれどころではないと突っ込んでいただろう。

ただ事実として、この時彼は1人であり、どれだけ自分で否定しようとも迷子であり、そして己の現状を打破すること以外に意識を向けていなかった。

まるで久しぶりに会う知人を見つけたような足取りで、三守は彼等の方へと進んでいった。無論、彼等の中に誰一人知った顔など無かったが。

 

 

 

 

志岐小夜子にとってその日は厄日となった。

極度の男性恐怖症であるため元々本部でも1人では極力移動しないようにしていたがタイミング悪く飲み物の備蓄が切れたので近くの自販機まで少し移動するだけだった。

時間にしてほんの数分間の距離であるが悪いことは重なると言うべきか、男性のC級隊員に声を掛けられた。

その場で逃げ出せば良かっただろうが突然のことに身が竦み、そのまま彼らの話を聞くことになる。

要するにB級への昇格が近いから今のうちにオペレーターを確保しておこうという魂胆らしい。

たかだか3000ちょっとのポイントで何を言っているのか。そもそも既に自分はB級部隊所属のオペレーターだと言ってやりたかったが言葉が出ない。出そうとする声は震えて言語の体を成さず、脚は恐怖に震えている。

気持ち悪い。怖い。絶望的な思考が小夜子の脳内をぐるぐると巡っていたその時、ズカズカという大きな足音が耳に入った。

絡んできたC級隊員と同じように視線を音のした方に向けるとまた別のC隊員がこちらに迫ってきていた。

あぁまた男の人だ、と顔色を更に悪くする小夜子のことなど興味が無いように迫ってきた彼は小夜子に絡んでいたC級隊員の内2人を力ずくで引き剥がした。

 

「ちょっといいか」

 

「は?」

 

三守に引き剥がされたC級隊員は数秒置いてやっと反応を示した。他の1名も三守を訝しむように睨んでいる。

実際その光景を目の前にした小夜子も意味が分からないのだ。いや、恐らく自分を助けてくれたのだろうがいかんせんフィジカルに訴えすぎでは無いだろうかと彼女は思った。

 

「いやいや、勘違いすんなよ?これはナンパじゃねーよ。そろそろB級になれるからオペレーターをスカウトしてんだよ」

 

「同じC級同士、穏便に行こーぜ。な?」

 

口々に文句を言う少年たちは三守が伸ばしているその手の甲を一瞥する。

刻まれた数字は『4017』。

その数字を見て男達はギョッとする。今のC級で最もB級に近いのは自分達だと何の確証もなく考えていたのだろう。

バツが悪そうに表情を歪めるが対する三守の表情は先程から一切変わらない。表情筋が機能を放棄しているかのような無表情ぶりと照明を反射して輝く瞳は彼が今どんな感情を抱いているのか確かめることの難易度を非常に高いものにしていた。

 

「行こう。道はどっちだ」

 

そして三守は、彼等の声が届いていないように、いや実際に興味が無く聞いていないのだ。耳に入っても脳が必要な情報として処理していない。何故なら今、彼の頭の中を占めているのは一秒でも早く迷子と言う状況を解消することであったから。三守は2人の腕を掴んだまま再びズカズカと通路を進んでいく。

 

「は?道?」

 

「何言ってんだコイツってか力強えぇ!いてえよ!」

 

「いやほんと何なのお前…」

 

「え?…ぁ…あり…」

 

緊張が解けたからか呆けたような小夜子の声は未だに言語の体を成しておらず、そしてその言葉もまるで聞いていないように、聞くつもりもないように三守はズンズンと進みその場を去っていった。

あるで嵐、というより一種の災害のような人物であった。少なくとも小夜子に絡んできた3人にとっては。

志岐小夜子にとってその日は厄日であったが、悪くない出会いの日でもあった。

隊室に戻った小夜子は大きくため息をつきながら緊張で固まった体を解しながら自分を助けてくれたC級隊員の事を思い出す。

 

「…ん?道って…もしかして迷子?」

 

あんな迷いなく進むような人が迷子であったかも知れないと想像して1人隊室でゲラゲラと笑い続ける小夜子を見て熊谷が軽く引くのはこの数分後のことである。

 

 

 

 

「ここが資料室か」

 

三守は今度こそ地図通りに資料室へと辿り着いた。その事実が胸中に確かな達成感をもたらすが彼はそうではないとその感覚を否定する。元より辿り着いてからがスタートなのだ。しかし年頃の少年が一度感じた達成感を完全に御しきれるかと言えば答えは否だ。「ふふん」とどこか上機嫌な様子で鼻歌を口ずさみ、資料室へ入ろうとしたその時だった。

 

「あれ?遊君?」

 

彼にとっては非常に聞きなれた声である。半ば反射的にその方向にぐるりと顔を向ければ彼にとって非常に見慣れた人物が立っていた。

 

「やぁ遥姉さん。ごきげんよう」

 

嵐山隊オペレーター、綾辻遥その人である。

 

「何か機嫌良い?…あっ!B級昇格だもんね、おめでとう!」

 

今三守の機嫌が良いのは無事資料室に辿り着いたからではあるが、それを言ってしまえば先程まで自分が迷子だったことを説明する必要があるので特に否定はしなかった。

 

「ありがとう。っていうか何それ。紙いっぱいじゃん」

 

話の矛先を避ける意味もあるが、遥の持つ書類の束は彼女の腰の前あたりから首元まで積みあがっており、顎で抑えながら移動していたようだった。すでに束の形は歪み始め、そう遠くない未来に瓦解するのだろうということは未来を見通せない者でも十分予測可能だろう。

 

「ほら、ウチの隊って広報の仕事もあるからどうしてもね。まぁコレは私が欲張って一度に運ぼうとしたからなんだけど」

 

「手伝うよ。見ちゃダメな書類とかあれば教えて」

 

「いいよいいよ。遊君、資料室に来たんでしょ。別にこれくらい大したことないから」

 

「ふふん。資料室なんて俺ならいつでも来れる。…っていうか真ん中あたり結構ヤバそう」

 

資料室に来れる事に軽く胸を張る三守の様子に遥は内心首を傾げたがそれ以上に自分の持つ書類が彼の言葉通り崩れつつあることに気付くとバツが悪そうに小さく笑った。ボーダー内外に存在する彼女のファンが見たならば天にも昇る気持ちになるだろう。

 

「じゃあ手伝って貰おうかな。あ、閲覧制限付きのは無いから、上から取っちゃって」

 

「はいはい」

 

適当に書類を分けた2人はそのまま嵐山隊の隊室へと向かいながら他愛もない話をする。

今日の内容は主にボーダーに入隊して1ヶ月が経った三守についてで、「友達はできたか」とか「部隊はどうする」とか「食堂は使ってみたか」とか「今週のデザートメニューは」とか、そんな話ばかりだった。

 

「そう言えば、結局スコーピオンなんだね」

 

「…一番合ってる感じしたから。個人的に」

 

射撃センスについては先日幾重にもオブラートで包んだ言葉で「向いていない」と告げられたことはあえて伏せる。残念ながらそのトリオン量故に注目された三守のデータはA級部隊にはその運用の相談も兼ねて共有されているため遥も知ってはいるのだが。

 

「弧月じゃないんだ?」

 

「アレ、ある程度剣の才能?みたいのないと後が大変そう。あと鞘邪魔」

 

実際、トリガー選びについては個々の素質や感覚は非常に重要となる。

遥が例に挙げた弧月はボーダー最初期、正確にはボーダーの前身となる組織の頃から運用されてきた運用実績の確かな日本刀型のトリガーであり、攻撃力、耐久性に優れる人気のトリガーだがその分使用する者の技量がダイレクトに反映されるとも言えた。

 

「あー。まぁウチの隊の皆もスコーピオンだし、スタイル次第っていうのもあるか」

 

そう言う遥の脳裏によぎるのは個人総合1位、A級太刀川隊隊長、太刀川慶の姿であった。二刀の弧月を自在に操る姿を見れば同じ弧月だけで彼の領域に達することの難しさは容易に伝わるだろう。

逆に三守、そして嵐山隊の面々が使用するスコーピオンは攻撃手(アタッカー)用トリガーとしては最軽量、そして自由度の高さを最大の武器としていた。剣として手に持つ以外にも腕や脚からも生成できる奇襲性は、弧月とは全く異なるアプローチでの戦いを可能とする。嵐山隊では隊長の嵐山を始め、狙撃手の佐鳥を除く3名が銃型トリガーを用いる万能手ということもあり、連携をスムーズに、そして幅を広げる意味もあってこのスコーピオンを採用していた。

 

「まだ伸ばすくらいしかしてないんだけどね」

 

「スコーピオンなら佐鳥君以外使ってるし、空いてる時間なら教えられると思うよ?」

 

「今からこんな書類の山が運び込まれる隊の人の空き時間を貰うのは気が引けるなぁ」

 

「あはは…あ、ついた。空けるねー…隊員証…あ、上着の中だ」

 

「じゃあ残りの書類こっち乗せて」

 

「サンキュー」

 

そうして扉を開いた先では

 

「…え」

 

「木虎ちゃん?」

 

「…?」

 

嵐山隊エースとして活躍する隊員、木虎藍が、鏡に向かってポーズを取り、顔だけこちらを向けて硬直している姿だった。所謂モデル立ち、と呼ばれるような姿である。

 

「あ、あ、綾辻先輩…と」

 

「あ。こっちは三守遊児くん。この通り書類いっぱいだから運ぶの手伝って貰ったの」

 

「ども」

 

ワナワナと震えながらもポーズを解き腕を組んで深呼吸を繰り返すと、木虎はまるで先程のことなど無かったかのように髪を撫でてビシリと2人の方を向いた。

 

「木虎ちゃんさっきのは」

 

「何でもありません」

 

「え、でもなんか」

 

「何でもないんです」

 

そんな2人のやり取りを見つめるだけだった三守はハッと何かに気付いたように目を見開いた。

 

「成程…演武、ですね…!」

 

「「え?」」

 

「え?」

 

「………えぇ、そうよ!そうなの!よく分かったわね三守君。流石入隊1ヶ月でB級昇格の到達しただけのことはあるわ!」

 

「ありがとうございます」

 

「そうなのぉ…?」

 

ところで、と木虎は話の流れを変えるかのように大きな声をだすとビシリと三守に向けて指を差す。まるで何度も練習したかのようなその流麗な動きは、三守に演武の続きを連想させた。

 

「B級昇格は決まったとは言え、入って1ヶ月でしょう。そこまで親しくないのに変な期待持たせちゃうんじゃないですか?」

 

「あれ?言ってなかったっけ?遊君と私、幼馴染だよ」

 

「えぇ…聞いてないんですけど…?」

 

「あれ?」

 

「ねぇ遥姉さん、この書類どこ置けばいい?」

 

「奥に大きめの机あるからそこにおねがーい。あ、お茶飲む?木虎ちゃんも」

 

「え、あ、はい。いただきます」

 

「遥姉さん、どうせお菓子隠してるでしょ。ちょうだい」

 

「えぇ~…じゃあ部屋に隠してあるヤツのことお母さんに言わないでね」

 

「いいよ。…あの量絶対バレてると思うけど」

 

A級嵐山隊、広報部隊として日々メディア向けの業務をこなしながらもA級を維持する実力者の中でエースとして活躍する部隊最年少隊員、木虎藍はその実力を発揮したかしてないかは分からないがこの短いやりとりの中で確信していた。

 

「(この2人セットでいる時はもう何も考えず流れに身を任せよう…)」

 

いつもよりも数段、そのほんわかとした雰囲気を増した遥と、そんな彼女と同レベルにマイペースな三守を見て木虎は諦観の念を強めつつソファに深く腰を落とした。

 

「これ美味しいですね。綾辻先輩」

 

「でしょ?ソファの裏に張り付けておいたの」

 

「そこまでして隠す必要あります?」

 

「ちなみにこの隠し方、おばさんにバレてるよ」

 

「うそぉ!?」

 

まぁ、それでも、何と言うか。

体面とかそう言うのを気にせずしょうもない話をただただ続けられるこの空気は悪くない。そう思った木虎であった。

 

「と、言うことで皆さんご存じ、トリオンいっぱいで私の幼馴染の遊君です」

 

「いっぱいらしいです。よろしくお願いします」

 

遥秘蔵の菓子類をつまんでいると、隊の面々が全員集まったためせっかくなら、ということで遥は自分の隣に三守を立たせて隊の面々に考え得る限りシンプル、というより雑な紹介をする。

 

「よろしく!隊長の嵐山だ…しかし綾辻の幼馴染という話は聞いてないような…」

 

「まぁプライベートな話ですから。あ、俺は時枝」

 

「オレ佐鳥ね!必殺のツインスナイプ!…知ってる?」

 

「初耳です」

 

「改めて、木虎藍よ。よろしく」

 

「オペレーターの綾辻遥です。よろしくね」

 

「はい」

 

集まった面々の簡単な自己紹介が終わった後、再び三守は菓子に手を伸ばすが「全員揃ったのでお客様用のを出します」と自分のお菓子が合計6名まで増えた部屋から避難させるためにパタンとその箱に蓋をした。

 

 

「そう言えば三守君は今度B級に上がるんだったな」

 

代わりに出されたお菓子、遥曰く「いいトコのどら焼き」を開封しながら嵐山が三守に顔を向ける。

 

「そうですね…誰が昇格とかも皆さん覚えるんですか?」

 

「キミだからってのはあるね。注目度高い訓練生のことはチェックしてる隊多いよ」

 

「そーそー。資料で映像見たけどすごいねーキミのトリオン量!」

 

誰がどう聞いても褒めているのだが三守はあまり嬉しい様子を見せない。というより明らかに落ち込んでいた。

テンションに明確な段階があるとすれば5だったソレが1くらいに落ちているレベルの落ち込みぶりである。

 

「はい…射撃が下手過ぎて防衛任務で使用NG食らったトリオンだけは多いヤツです、俺。はは…」

 

そう、完全に落ち込んでいた。まさか褒め言葉でダメージを受けると思わなかったのだろう言い出しっぺの佐鳥がなんとかフォローしようとする。

 

「で、でも別にトリオンが多い人全員が射手(シューター)ってわけじゃないから…」

 

確かに嘘ではない。トリオン量の大小は射撃用トリガー以外にもほぼ全ての隊員が使用するトリガーであるシールドの出力も左右する。トリオン量が多いほどシールドは強固な物となるため、前衛であってもトリオン量は多くて損は無いのだ。

ただしトリオン量に優れる隊員であれば大抵1つは射撃用のトリガーを使用している。

 

「そうそう!それにキミは少なくとも1ヶ月でB級に上がるくらい攻撃手(アタッカー)としてセンスがある!そのトリオン量をどう活かすかはこれから考えればいいさ!」

 

キラリという擬音が聞こえてきそうな嵐山スマイルである。ボーダー内外に存在する彼のファンにこの笑顔を向ければ黄色い歓声が響き渡るのは明白であろう。

 

「書類もいっぱい運んでもらったみたいだし、お礼と言ってはなんだけど少し見ようか?」

 

時枝の言葉に沈んでいた三守の表情に光が差す。表情の動きは少ないが割と思ってることが顔に出やすいタイプなのかも知れないと、同じく表情に動きが少ない時枝は感じた。

 

「いいんですか?遥姉さんから忙しいって聞いてますけど」

 

「今日はもうこれといった仕事は無いしな!善は急げだ、綾辻、設定よろしく」

 

「はーい」

 

隊の連携を確認するためにも慣れているのだろう。遥は三守が見たことがない程にテキパキと素早く設定を入力し、ランク戦でも使用される仮想戦闘空間を用意した。

 

「よし!それじゃあ皆、始めよう!トリガー・オン!」

 

「「「トリガー・オン!」」」

 

「(ハモった…これも練習してんのかな)トリガー・オン」

 




最新話読んでたら書きたくなったので。

原作1年前スタートです。

タイトルは何かカッコイイの思いついたら変更します
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