世界最強のヴィランお兄ちゃん   作:揚げ物・鉄火

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皆様お久し振りです。
数話後に投稿する予定の第二次氷炎戦争編や卒論等を書いていたら滅茶苦茶遅れました。
死柄八斎會本部襲撃編の続きです。
次回で終わると思います。

では、どうぞごゆっくり!


第十一話

LORDこと冷気が死柄八斎會の本部に一人で特攻してから15分が経過した頃。

 

ドンッドンッドンッ!!

 

LORD一人の手によって構成員の約七割以上が殺されている。

端的に言うと死柄八斎會の本部が地獄絵図と化していた。

あちこちに構成員の肉片や血が飛び散り、幾度となく投げられた手榴弾や戦闘の余波で柱がいくつも折られ一部が倒壊していた。

 

「どこだ~?何処に隠れているだ~?」

後ろで銃を構えた構成員の頭をノールックで撃ち抜き射殺したLORDが適当な柱に手榴弾を巻き付け一本の糸をピンに通し、糸に引っかかると爆発する簡易な罠を作りながら屋敷内を練り歩く。

更に適当な柱や壁にプラスチック爆弾を貼り付け信管を取り付け、起爆装置を近くの手榴弾に接続した。

 

一方LORDの目的である死柄八斎會の組長と出産の報告に来ていた娘が生まれて間もない赤ん坊をその腕の中で必死に守りながら金庫のような隠し部屋に避難していた。

 

「お父さん…」

「大丈夫だ…安心しろ」

己の娘を安心させようと必死で抱き締めるがまったくと言っていいほど安心できない。

なにせ、この屋敷を襲撃したのが他ならない世界最強の(ヴィラン)であるLORDなのだ。

 

この世界に住む者であればLORDの恐ろしさと、その強さを知っている。

曰く、気紛れで歴史に残る大虐殺を行った。

曰く、『己の進路にあった』その理由だけで世界遺産にも残る古代遺跡を破壊した。

曰く、五ヵ国の連合艦隊をものの十秒で返り討ちにした。

曰く、戦闘の余波だけで活火山を氷山に変えた。

曰く、マリアナ海溝の底を凍らせた。

等々、上げて行けばキリがない。

 

気まぐれで世界に恐怖を与え、気まぐれで国を堕とす。

攻撃されれば持ちうる全ての力を使い復讐する。

まさに天災。常軌を逸した力の持ち主にのみ与えられた特権。

 

まさに天上天下唯我独尊。

 

その化け物が突如としてこの死柄八斎會本部を襲撃したのだ。

構成員が必死に対抗しているが悉く返り討ちにされている。

 

「おらぁああああああああ!!!!」

ドッドッドッドッドッドッド!!

巨漢の男がAA-12等の日本にほとんど流通していない強力な銃器で対抗するが殆ど意味を成さない。

 

「大きれりゃあ良いってもんじゃねぇぞ?」

ドンッドンッ!

 

「まっ、俺が言えた口ではないがな?」

LORDがデザートイーグルの銃口を相手に向けて発砲する。

そして弾切れを起こしたデザートイーグルのマガジンを交換しながら屋敷内を散策する。

 

「にしても何で指定(ヴィラン)団体如きがあんな大量の武器を持ってんだ?銃や刀だけならまだしもアサルトライフルとかショットガンやらワルサーなら分かるがAA-12なんて何処で手にしたんだ?調達だけで一ヶ月以上はかかるだろ…ああ、雷帝か。それなら納得いくわ。うわぁ、面倒な事になって来たな…」

ドンッ!

死柄八斎會の装備に少々疑問を覚えたLORDが死角から襲って来た男の額にコンバットナイフを突き刺し虫の息の男の頭を一発撃ってから考え事を始めたが、やがて答えを導き出して額に手を当てた。

 

「居ないな…一応、粗方の部屋を捜索し終えたし何処かに居るはずなんだがな。もしかして隠し部屋か?」

笑顔仮面に掛かった返り血をタンスから引っ張り出した高価な着物で乱暴に拭い、また罠を設置していく。

 

「上に居ないって事は、地下か…何処かに隠し扉でも無いかな?」

LORDが隠し扉を探すために一歩踏み出す。

 

「俺がそれを見過ごすと本気で思ってるのか?」

「いいや、思ってないさ…」

居間に飾られていた掛け軸を退かして隠し通路から黒いマスクで口元を覆った若い男が現れた。

 

「探したよ…治崎 廻。組長の下へと案内して貰おうか?」

「誰が貴様を親父の所に案内するか…冗談も休み休み言え」

軽口を叩くLORDに対して治崎が怒気を発しながら返して行く。

二人に間にバチバチと火花が飛び散り今にも殺し合いが始まりそうな一触即発の空気が流れていた。

 

「「……」」

治崎は既に蕁麻疹が起きる事も承知の上で手袋を脱ぎ捨てて臨戦態勢に入っている。

LORDもデザートイーグルを捨てて懐からH&K HK45とワルサーp99を取り出して安全装置を外している。

 

「シッ!」

睨み合いが終わり先に動いたのは、LORDだった。

銃による攻撃ではなく右足による蹴りを放つ。

 

「ふん!」

対する治崎は、それを左腕と右手で受け止めて一気に破壊する。

 

「そらっ!」

「なっ!?ぐっ!」

体全てを破壊するつもりで個性を使ったにも関わらず破壊出来たのは右足の一部分だけだった。

その事に気付いた治崎がガードしようとするが踏ん張りが効かずそのまま吹き飛ばされる。

 

「すげー個性だ。オール・フォー・ワン辺りに高値売れそうだな」

「げほっ!ごほっ!誰の事は…一応知っているが俺の前で叶わぬ夢を口にする事は許せん」

「うっわ!めんどくさ!」

治崎の言葉に昔の恋人(仮)を思い出したLORDが思わずそう口にした。

 

「案内も出来ないクズ野郎なら死んでおけ。見ていて不快になる」

「ほう?他者を傷つける事でしか自己主張出来ない塵芥(ゴミクズ)が何か言ってやがる」

「フハハハハ、何時までも昔の理想に追い縋っている老害をトップにしている奴等が何を言うんだ?」

「おっと、それはそれは…自己紹介か?だったら完璧この上無いな。関心するよ」

「ハッハッハッハッハッハ!冗談が上手いんだな?」

「アハハハハハハ!お前ほどじゃないさ?」

「ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」

「アハハハハハハハハハハハ!」

売り言葉に買い言葉、からの大笑い。

両者の口喧嘩が終わる頃には、辺り一帯に途轍もない殺気が撒き散らされていた。

 

「「殺す!」」

突然笑い声が収まったかと思ったら両者が同時に動いた。

 

ダダンッ!!

 

治崎に向かって発砲された弾丸が空しく空を切り奥の壁にめり込む。

弾丸を躱した治崎が掌を向けてLORDに迫るが、その手を片足で弾き一歩後退する。

 

「なるほど…?そういう感じか」

治崎との戦闘方法を理解したLORDが武器を仕舞いコートを脱ぎ捨ててボクシングのファイティングポーズを取った。

 

「何のつもりだ…?」

それ対して治崎が警戒しながらも構える。

 

「……」

「……」

数瞬の睨み合いの後に再度接敵した。

 

触れれば死ぬであろう治崎の個性『オーバーホール』を警戒してその手を躱すようにLORDが立ち回る。

治崎の掌に絶対に当たらないように攻撃を躱し足で弾き、ひたすら殴る。

攻撃が来れば飛んで躱す、更に隙を見て再度攻撃を繰り返す。

治崎が本能的にもっとも嫌う戦い方をメインに対処している。

 

そもそも、なぜLORDが治崎を相手にこんなに優勢に立ち回れるか?

それは、単純に彼が世界最強である以前に原作知識を保有しているからに他ならない。

原作知識があり異常な戦闘力を持っているが故に余裕で相手出来る。

それに加えて現在の治崎は、原作初登場時の完璧な強さではなく若い頃のまだ成長していない頃の治崎なのだ。

対するLORDは、先の氷炎戦争で弱体化したとはいえ変わらず最強の力を保持している。

数年もすれば原作中でも屈指の実力を持つであろう治崎と現時点で世界最強の一角を担う両者には、努力や作戦などが意味を持たない絶対的な差が存在していた。

つまり闘う前から既に勝負は着いているのだ。

 

「クソッ!」

「クハハ!」

一度も攻撃が当たらずダメージと疲労だけが蓄積していく治崎が悪態を吐いて後ろに半歩下がる。

 

「一つ忠告だ。それ以上下がらない事を勧めるぞ?」

「ご丁寧にどうも!」

LORDの言葉に半ギレ状態で返した治崎が距離を一気に縮める。

 

「じゃーん!これ、な~んだ?」

「なっ!?」

治崎との距離があと少しまで迫った所でLORDが腰に着けていた円筒状の物を取り出す。

治崎がそれが何かを理解するより先にLORDがピンを抜いて安全バーを放した。

 

カッ!!!

ドォォオオオオオオオン!!!!!!

 

「ぐぉあっ!!!??」

「スタングレネード…って、知ってる?」

治崎がそれの存在に気付いた時には時すでに遅し。

スタングレネードの起爆と同時に170~180デシベルの爆発音と15メートルの範囲で100万カンデラ以上の閃光を放ち、治崎に突発的な目の眩み・難聴・耳鳴りを発生させる。

しかしスタングレネードが眼前で爆発した事により視力を失い聴力も失い、平衡感覚すらも失った。

爆音により脳を揺さぶられたせいで思考力が一時的に低下し、そのせいで部屋中をふらふらと歩き周り結果として後ろに数歩下がった。

 

「うおっ…うがあ、くそッ!ぬあっ!?」

「あーあ、だからそれ以上下がるなって言って置いたのに…」

治崎が後ろに下がるとLORDが予め罠として張って置いた鉄糸に引っ掛かり手榴弾のピンを引き抜いた。

 

ドンッ!ドンドンドンッ!!ドドドドドドドドドンッ!!!

 

その結果、連鎖的な爆発が起こり柱が次々と倒壊し、死柄八斎會本部である日本家屋そのものが崩れ落ちる。

倒壊時の轟音と幾度も響いた銃の乾いた発砲音の連続で既に近所の人間は、警察とヒーローを呼んでいた。

何人かのヒーローが現場に到着したものの野次馬の対処で思うように避難誘導が上手く行かない。

そんな時に起こった爆発だ。

野次馬だけでなく近所の住民も我先にと逃げ出そうとし、現場がパニックになる。

 

ドォオン!!

 

それをなんとか落ち着かせようとヒーローと警察が奮闘するも更なる爆発音により再度パニックになる。

幾人ものヒーローが落ち着かせようとするが現場は混乱するばかりである。

 

一方の爆発の中心である倒壊した死柄八斎會本部の瓦礫の下から無傷で出て来たLORDがコートを引っ張り出し数回叩いてから羽織る。

 

「さ~てと、大爆発を起こしたあの阿呆はどこかな?」

手榴弾だけでなくプラスチック爆弾まで自分が設置したはずなのにそれすら相手の責任にしたLORDが瓦礫の上を歩きながら瓦礫の下に埋もれているであろう治崎を探す。

 

「おっ?居た居た、って瀕死じゃん…馬鹿だねぇ」

「ヒュー…コヒュー…コホッ!」

爆発により左腕が吹き飛ばされ右腕が変な方向に折れ曲がった治崎を見つけたLORDがその姿を憐れみ馬鹿にしながら屈んで顔を近付ける。

 

「お前は結構頑張った方だと思うぞ?並のヒーローや(ヴィラン)だったらお前に成す術無く殺されていただろうな。けど残念!俺が相手だとお前の長所は全て消える。…お前如きが俺に勝とうなんざ2000年早いんだよ」

「LORD貴様ッ!なぜ俺達を襲撃した!?俺達は、お前に一切関わっていない!それどころか会った事すらない!なのに何故だ!?答えろ!LORD!!」

LORDの馬鹿にしてくるような言葉に対して治崎が痛む体に鞭を打ちながら、その真意を問う。

 

「ふむ…」

その質問にLORDが少し考えてからゆっくりと口を開く。

 

「特に理由なんて無い」

「なんだと…?」

LORDの言葉に治崎が疑問の声を零した。

 

「いいか?この行為は、ただの自己満足だ。自慰行為にも等しい。だが俺がやりたいと思ったからやっただけだ。反省も後悔もしていない。これで満足か?」

「…ける…な」

「なんて?」

「ふざけるな!」

治崎は怒りのあまり叫んだ。

 

自分達が邪魔でそれを潰しに来たのであれば、まだ納得がいく。世界最強の障害になったとして名誉な死を遂げる事が出来る。

力試しや死柄八斎會の力を恐れての襲撃だった場合でも納得しよう。しかし違う。

この男は、特に理由も無く、自分がそう望んだから、ただそれだけの理由で組の構成員達を皆殺しにし、本部まで壊滅させた。

そして、よりにもよって組長(オヤジ)の初孫の誕生祝いの日に襲撃された。

全構成員と普段世話になっている他の組の組長や傘下の組織の人間までもがやって来るほどの宴会の場を襲撃された死柄八斎會は面子丸潰れだ。

自分達に大恥を掻かせ、ついでと言わんばかりに構成員を殺し尽くし、自分をこうして見下している。

治崎からすればこの上なく許せない事だった。

今すぐにでも殺したいが片腕を失い、もう片方の腕は折れ曲がり使い物にならない。

今にも死にそうな自分に対し襲撃者たるLORDは、全くの無傷。

 

「クッソ…が!」

力の差は歴然だった。それでも一矢報いようと治崎が体を動かす。

 

「さっさとアキラメロン」

LORDがふざけた事を言いながら懐に仕舞ってあった最後の手榴弾のピンを抜いて治崎の胸の上に乗せる。

 

「バイバ~イ!」

手榴弾のバーを放したLORDが別れの挨拶をして数メートル離れた所に避難した。

 

「L、LOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOORD!!!!!!!!!!!!!!」

治崎の雄叫びが響くと同時に手榴弾が爆発した。

 

 

「ヒュ~、汚ねぇ花火だ…」

近くまで飛んで来た臓物や血を避けながら死柄八斎會本部が崩れても無事だった金庫の向かって歩き出す。

 

「どうもこんにちは…初めまして、そして死ね」

厳重なはずの隠し部屋の金庫の扉を破壊したLORDが挨拶をする。

 

「クッ!」

「ヒッ!」

その金庫内には、死柄八斎會の組長とその娘。

そしてLORDのお目当てである未来の壊理ことLORDの妹になる運命を強制的に押し付けられた生後数日の女の子の赤ちゃんが居た。

 

「居たぁ…」

その光景を見たLOADが笑顔仮面の下で笑みを浮かべた。




やべーよ…どうしよう?
治崎が死んじゃったよ…
普通に好きな原作キャラなのに…どうしよう?

では、また次回!
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