世界最強のヴィランお兄ちゃん   作:揚げ物・鉄火

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お久し振りです。
今話で死柄八斎會本部襲撃編が終わりです。
次回は、日常回か何かを挟んでから第二次氷炎戦争編です…多分。

それでは、どうぞ。ごゆっくり!

原作で登場したアメリカのNo.1ヒーローの戦いを見て「え?ヤバ…煉獄の女王の方が何倍も強くね?てか、それと互角に渡り合ったLORDってヤバくね?…やべぇ、どうしよう?」ってなりました。
ウチの子の方が何倍も強いとかヤバくないですか?
この作品の設定上、全盛期オールマイトはLORDとか煉獄の女王と互角に渡り合えるんですよ。
今後の進め方に影響しまくるな…って感じです。


第十二話

死柄八斎會の組長とその娘さん。

更に生後数日の女の子の赤ちゃん。

 

その三人が死柄八斎會の誇る最強の金庫に避難していた。

それは、三つのロックを破り指紋認証と色彩認証に声帯認証などを突破した上で30t以上もある扉を開けなくてはならない鉄壁と呼ぶに相応しい金庫だ。

金庫の中には、様々な貴金属や土地の権利書に数々の名画と希少価値の高い壺などが保存されている。

突破不可能とされている世界最強の金庫(LORDも愛用している)の扉を前にLORDが考え込むような仕草をしてから金庫の扉に手を当てる。

 

「邪魔くさいな…壊れるかな?」

LORDが力を込めて少しずつ手を閉じて行くと甲高い音と共に金属が拉げ始め、ついには変形する。

 

メキッ…バキッバキッ…!

メシッ!メシャッ!

バキンッ!バキャッ!!

 

「おっ?壊れた」

金庫の扉が壊れたのを確認したLORDが更に力を入れて引っ張る。

 

「思ったよりも重いな…ってマジで重ッ!?」

金庫の扉を無理矢理外し、それを両腕で担ぎ上げ外へと投げ捨てた。

 

「どうもこんにちは…初めまして、そして死ね」

「クソッ!」

「ヒィッ!」

LORDの処刑宣言に死柄八斎會の組長が顔を顰め、その娘は小さく悲鳴を上げた。

 

「ん~?…居たぁ」

金庫の中を軽く見渡したLORDが今回の襲撃の目的である死柄八斎會の組長の孫娘を発見して笑顔仮面の奥で笑みを浮かべた。

 

「LORD貴様ッ!!ウチの組員達をどうした!?ウチの組の中でも特別戦闘力の高い連中が迎撃に向かったはずだ!そいつらをどうした!?」

「ああ、全員殺した」

死柄八斎會の組長の言葉にLORDがさも当たり前のように答えた。

 

「は?」

「え?」

LORDの言葉に組長とその娘が間の抜けた声を出す。

まるで脳が理解する事を拒否しているかのように、その言葉が頭を過ぎる。

何度も何度も頭の中でその言葉を理解しようとするが一向に理解出来ない。

二人共、組員が全員殺された事を認めたくない。

 

変わりゆく社会の中でも昔ながらの極道としての矜持を忘れずに付いて来てくれた者達。

喧嘩が絶えずとも仲も良く、時に協力し合う組員達。

荒くれ者の組員を纏め上げる若頭。

最近何かを思い詰めているような治崎。

そんな治崎に着いて行くと誓った一人の組員。

自分達が動きやすい様に裏で手を回してくれている組員。

一人で金策を進めて組の存続に奮闘している組員。

そんな彼等が皆殺しにされた。

組長は、それを受け入れられ無かった。

 

組長の娘もそうだった。

妊娠報告をした時にまるで自分の事のように喜んでくれたお母さん。

体を労わるように妊婦用の料理を作ってくれた若頭さん。

まだ性別も判明していない頃に手編みの赤ちゃん服を作ってくれた中島さん。

赤ちゃんの世話の仕方をご近所さんに聞いて回った向沢さん。

浮き足立っている組員達を纏め上げる死柄八斎會、唯一の子持ちの小鳥遊さん。

出産の日に全員で病院に押しかけ他の患者さんの迷惑になるからと追い出された組員達。

生まれた子の性別が女の子と判明した時、自分と旦那以上に喜び思わず笑ってしまった他の組の組長の皆さん。

病室の警護に着くと言って聞かず看護師長と大揉めした組員の皆さん。

退院した日の内に祝いの花や、祝い酒と祝いの席を用意してくれた商店街の皆さん。

そんな彼等が全員殺されたなど到底信じられなかった。

 

間抜け面を晒す両者を尻目にLORDが一歩近づく。

 

「何が目的だ!?LORD!ここには貴様の欲する物は無いはずだ!」

「あるんだよな~、それが」

組長の必死の言葉を馬鹿にするようにLORDが答える。

そのまま指をゆっくりと組長の娘さんの方に向けた。

 

「その子…赤ん坊の方な?そいつを貰いに来た。理由は聞かないで貰いたい。一応言っておくが拒否権は無いぞ?」

「なんだと…?」

一呼吸で言い切ったLORDに対して組長が再度疑問の声を漏らす。

死柄八斎會の組長は、まったく理解出来なかった。

何故、世界最強のヴィランたるLORDが自分の孫娘を欲するのか。

彼は、その気になれば世界中のどんな美女でもどんな大国であろうと己の手中に収める事が出来る。

なのに今回要求して来ているのは、自分の娘ではなく自分の孫娘(・・)なのだ。

故に思わず呟いた。

 

「貴様…もしやロリコンか?」

「………え?」

「………は?」

その言葉に組長の娘とLORDが同時に疑問の声を零した。

特にLORDなんて背中に宇宙を背負っている。

完全に宇宙猫状態だった。この場合は、スペースLORD(なんか強そう)なのだが。

まあ、それはともかくとして両者共に疑問の声を零しLORDに大きすぎる隙が出来た。

時間にして10秒もの空き時間。それだけ無防備な状態のLORDを殺そうと組長が傍にあった日本刀を手に取り一気に駆け出す。

 

(考えている時間は無い!何故LORDが我々を襲ったのか。何処で孫娘の誕生を知ったのか。なぜ娘ではなく孫娘を欲するのか。組員達は、本当に全員殺されたのか。知りたい事が多すぎるが考えている時間は無い!)

組長は、日本刀を居合の形で構えLORDの一歩手前で刀を抜いた。

 

「ここだ!」

「はっ!?」

宇宙猫状態から脱出したLORDがその声に気付き胸元に手を移動させた。

時間にして1秒以下の交差。

 

「……」

死柄八斎會の組長は、刀を上段に振り抜いた状態で動かない。

 

「…ふぅ」

一方のLORDは、日本刀を下段に構え、一つ息を吐いた。

 

「LORDよ…教えてくれ…なぜ我々を襲った?我々は、貴様に何もしていないはずだ…組員達にも貴様に手を出すなと…言って置いた。なのに…何故だ?」

組長は、指一本動かさないままLORDに質問した。

 

「…今のお前達に罪は無い。だが、お前達は未来に罪を犯す。だから先に裁く。悪く思って良いぞ?」

質問をされたLORDは、血振をしながら淡々と答えた。

 

「そうか…なんと…自分勝手…な…」

それを聞いた組長が途切れ途切れに納得の声を漏らし、体がズレ落ちた。

 

「お父さん!!」

「なんだ、まだ正気を保っていたのか?発狂していれば楽だったものを…愚かなり小娘」

悲鳴のような声を上げた組長の娘にLORDが近づき片膝を突く。

 

「取引と行こうか?」

「と、取引?」

何を言い出すかと身構えていた組長の娘がLORDの提案に首を傾げて思わず聞き返す。

 

「その通り、取引だ。取引内容は、お前の娘を貰う代わりにお前を見逃す事だ。どうだ?悪くないだろう?」

「ふざけないで!誰がアンタみたいな化物に娘をやるもんですか!どうしても欲しければ私を殺してからにしなさい!」

あまりにも一方的な取引内容を聞いた組長の娘が食って掛かる。

 

「そうか…じゃあ、そうする」

「え?」

パンッ!

残念そうに、しかし分かっていたように呟いたLORDが懐からワルサーp99を取り出し銃口を額に当てた。

組長の娘が驚いた顔をして状況を理解する前に躊躇無く発砲して、その若い命を奪った。

 

「せっかく生きるチャンスをやったのに…どうしてチャンスを無碍にするかな?」

心底分からないような声を出したLORDが組長の娘の腕の中に居た赤ん坊を拾い上げる。

 

「赤ん坊の回収完了、目的達成!」

「…って、こんな状況でもまだスヤスヤ寝てんのかよ。こりゃあ、将来大物だな」

赤ん坊を抱き上げ笑顔仮面を取り外し適当な金庫の上に座る。

その時の動きで赤ん坊が目を覚ました。

目をぱちくりさせ、周りを見渡した赤ん坊がLORDに手を伸ばす。

 

「お前の名前は…原作では『理を壊す』、って意味で壊理だったな?なら俺がお前に妹として与える名前は、『理の恵みを授かる』事を意味して恵理だ。悪くないだろ?名付けには、結構自信あるんだ」

「きゃっきゃっ!」

「クハハハハハ!良いぞ!笑え笑え!」

LORDが小指を差し出しながら腕の中の赤子に名前を付ける。

それは、意味だけ聞けば幸せを願われている名だと誰もが思うだろう。しかし名付け親がLORDだと知れば皆、中々に面白い反応を示すかもしれない。

その数秒後に笑い出した妹を抱え直したLORDの顔は、ヴィランの顔ではなく完全に兄としての顔だった。

 

「クハハハハハハハ!!良いぞ良いぞ!!笑え笑え!」

「きゃっきゃっ!きゃふふ!」

実の母親の死体の転がる死柄八斎會本部の金庫の中でLORDの妹となった恵理は、心底楽しそうに笑った。

 

こうしてLORDの死柄八斎會に対する一方的な虐殺が幕を閉じた。

 

 

 

 

「おらーっ!転弧!妹だぞ!」

「お帰り兄さん!」

玄関扉を蹴破りながら家に帰って来た冷気を弟である転弧が嬉しそうに出迎える。

その顔には、満面の笑みを浮かべていた。

その顔を見た冷気が片膝を突き腕の中の赤子を見せる。

 

「ほら、お前の妹だ。ちゃんと可愛がれよ?」

「うわー、可愛い!ね、ねぇ触っても良い?」

「ゆっくりと優しくだぞ?」

「うん!」

兄の言葉に転弧が一つ頷いてからおずおずとスゥスゥ寝てる妹になった赤子、改め恵理の頬っぺたに触れる。

 

「や、柔らかい!マシュマロみたいに柔らかいよ!?」

「当たり前だろ?生後数日の赤ん坊なんだぞ?」

「ほあー、可愛い…」

尚も妹の頬っぺたに触り続ける転弧の手を取り居間へと向かう。

 

「さて…妹の為のミルクと今夜の晩飯を作るぞ」

「まだ3時だよ?出掛けたの10時くらいだったよね?もうご飯作るの?」

「今夜は角煮を作るからな。今からじゃないと間に合わないんだよ…圧力鍋があれば別だけど」

「買わないの?」

「スペースめっちゃ使うし、圧力鍋を使った料理はあんま作らないし、後片付けとか洗うのとかでめっちゃ苦労するし、で買う予定は無いかな?」

キッチンに立った冷気がヤカンに水を入れてコンロに火を点けながら転弧と会話をする。

兄の言葉を聞いて「ふーん」と答えた転弧が居間のソファーに座りテレビを点けた。

 

「じゃあ僕は『タイタニック』でも見て待ってるね?」

「おい、ちょっと待て。そこはもっと子供らしくアニメでも見ろよ。なぜ歴代の名作シリーズから選ぶんだよ?」

「じゃあ『初代ゴジラ』を見るね」

「じゃあ、で見る作品じゃねぇよ!あれは道徳の授業とかでも使われる名作だろうが!」

「う~ん、『スタンドバイミードラえもん』は?」

「やめろ。それは俺に効く」

「『ミュウツーの逆襲』はどう?」

「涙腺特攻を選ぶな。俺を殺す気か?」

「『ローマの休日』とかは?」

「心にグッと来るから見るんじゃねぇ」

「仕方ない…なら『鉄道員(ぽっぽや)』でも見るよ」

「何度俺の心を抉れば気が済むんだ?」

「じゃあ、『IT』とかは?」

「いきなりホラーをぶち込んで来るんじゃねぇよ。温度差で風邪引いちまうだろうが」

「それなら『火垂るの墓』か『最強の二人』にするよ」

「やめろ。俺の涙腺を殴り殺す気か?」

「『八日目の蝉』と『そして父になる』ならどう?」

「俺の心が死ぬ」

「じゃあ『モーレツオトナ帝国』にするね!」

「お前、俺になんか恨みでもあんのか?」

「お小遣い上げてくれない事かな?」

「月5万も渡してるぞ?」

「そんなの全然足りないよ!せめて10万くらい欲しいよ!」

「どこの金持ちの子供だよ!?月5万で我慢しろ!」

「推しの子に貢ぐんだよ!月5万じゃ足りないんだよ!」

「俺の金だろ!?」

何を見るかで始まった話しが、いつの間にか逸れて二人共肩で息をする結果になった。

 

「兄さん。一度腹を割って話し合う必要がありそうだね」

「下拵えを済ませるまで待て」

真剣な表情で席に着いた転弧に対して、そう答えた冷気が豚肉を切って味付けと下拵えを済ませてから席に着いた。

 

 

 

妹の恵理が目を覚ますまで続いた話し合いの結果、一度冷気も推しの子のライブを見に行って小遣いアップするかどうかを決める事で落ち着いた。

尚、それから3日ほど恵理の夜泣きで寝不足になった冷気が確認される事となった。

ちなみに小遣いはアップしなかった。

 

「ちくしょー!兄さんなんて大嫌いだ!!バーカ!」

そして冷気は、(心が)死んだ。




キャラ解説.

冷気 零.
ヴィラン名.LORD
今作の主人公にして世界最強のヴィラン。
後の死柄木 弔となる予定だった志村 転弧を救済し弟にした。
この度は、死柄八斎會編のキーキャラになるはずの壊理ちゃんを助け出し、うっかり死柄八斎會を潰してしまった(てへっ)。
三ヶ月後の第二次氷炎戦争に向けて準備中。

志村 転弧.
死柄木 弔になる運命を持っていた子供。
LORDに救われ彼の弟となった。
その結果、オール・フォー・ワンですら手出し出来なくなった。
何故か号泣必至の名作映画ばかり観てる。そして冷気が泣く。

恵理.
死柄八斎會編にて全ての始まりとなった超重要な原作キャラ。だったが、この度LORDの死柄八斎會本部襲撃によって死柄八斎會編そのものが消えた。
血液を利用した薬を作られる事も無いし、普通の女の子として生活する。
なんならLORDの保護下にある為、裏社会の誰もが手出し出来ない状態にある。
生後数日で冷気の妹となった。
出産届が出ていないので法律上、本当の妹である。

作者の心境.
ヤバいな…原作が…原作が徐々に壊れていってる。
お兄ちゃん暴れすぎだよ…自分で書いたとはいえ、流石にこれは…
ヒーロー側に勝ち目無いじゃん…アメリカのNo.1ヒーローが噛ませにならない事を祈るしか無いよ…かませ犬感が強いけど。
原作キャラを強化しないとヤバいんじゃね?
誰か助けて!(他力本願)

では、また次回!
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