世界最強のヴィランお兄ちゃん   作:揚げ物・鉄火

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日常回(?)です。
途中で戦闘が入るけど日常回です。

では、どうぞ。ごゆっくり!


第十三話

「ふん♪ふんふ~ん♪」

学校での授業が終わり冷気の買ったマンションに帰宅した転弧が出入り口の自動ドアの前に立つ。

 

「おい志村。本当にここがお前の家なのか?」

「母ちゃんが、このマンションは庶民が住める場所じゃないって言ってたぞ?」

「嘘だったらぶっ飛ばすからな!」

その後ろに着いて来た彼の友達である三人組が疑いの眼差しを向けて後ろでなんか言っている。

それでも転弧は、一切気にする事なく入り口の装置に部屋番号を入力し首から掛けているカードキーを装置にセットする。

電子音が鳴り厳重にロックされていた自動ドアが開き自動ドアの奥に居た管理人に声を掛けた。

 

「ただいま!管理人さん!兄さんは帰ってる?」

「おやおや、お帰りなさいませ坊ちゃん。そうですな、あの人は今朝の10時頃に『ちょっと買い物に行ってくる』と言った切り帰って来ていませんね」

「もう四時なのにまだ帰って来ないの?珍しいね」

兄のが未だに帰って来ない事に疑問を覚えた転弧が首を傾げるが管理人の男が声を掛けた事で思考を切り替えた。

 

「はい、一体どちらまで向かわれたのでしょう?それより坊ちゃん、どのお部屋に向かわれるので?」

「そうだなぁ…家は妹が居るし、兄さんの仕事の道具がある階は立ち入り禁止だし、87階の11号室にするよ!」

「来客用の部屋ですね。かしこまりました」

転弧の向かう部屋を聞いた管理人が目の前の機会を操作したかと思えば黒いカードキーを手渡した。

 

「では坊ちゃん。87階11号室のカードキーです。気を付けていってらっしゃいませ」

「うん!ありがとうね。さっ、みんなも行こ?」

管理人からカードキーを受け取った転弧が友達に声を掛けるが返事がない。

 

「あれ?みんなどうしたの?」

転弧が疑問に思い声を掛けるが全員呆けた様子でただポカーンとしている。

 

「俺…父ちゃんに『ここは大企業の社長クラスじゃないと住めない場所』って聞いた事がある」

「僕も母さんに『ここに住みたければ最低でも年収3000万クラスじゃないと無理』って言われた」

「そう言えばウチのクラスの『金持 金治』もここの30階に住んでるって自慢してたよな?」

「そう言えばそうだね。…何でもそれ以上は、一般人には手の出せない金額だとか何とか…」

「特に最上階がオーナー以外立ち入り禁止じゃなかったっけ?」

「オーナーとその家族以外だろ?…って事は?」

会話をしていた三人が何かに気付いたように転弧を見る。

 

「転弧ってガチの大金持ちなの?」

「そこはオーナーじゃない?」

「けど、さっき兄さんって言ってたから…転弧のお兄さんがオーナー?」

純粋無垢な顔をした転弧を見た三人が顔を青くした。

 

「みんな…どうしたの?本当に大丈夫?」

「今までナマ言ってすいませんでした!!」

「勝手に僕より格下だと思っててすいませんでした!!」

「あなたの下僕になりますのでどうか命だけは!!」

転弧が再び声を掛けると三人が同時に頭を下げた。

 

「ええっ!?みんなどうしたの!?」

三人の反応に転弧がひたすら困惑した。

 

 

 

 

居間に通された全員が荷物を置きテーブルに座る。

「アハハハハ!大丈夫だよ、兄さんはともかくとして僕はそんな事しないよ。普通に僕と友達で居てくれたら僕はそれでいいよ」

「そ、そうなの?」

「大丈夫なのか…」

「良かった…本当に良かった」

笑いながら心配ないと言った転弧の言葉に三人が安心した様子で溜め息を吐いた。

 

「じゃあみんな、なんか飲む?」

「俺は…コーラでお願い」

「僕はダージリンティーでお願い」

「俺は濃いめのカルピスで頼む…」

「分かった。おーい、カナさ~ん」

全員の注文を聞き終えた転弧がキッチンに向けて声を掛ける。

 

「ハイ。オ待タセイタシマシタ転弧様」

キッチンの方から現れたカテゴリー4のメイド型氷人形(アイスドール)の女性が頭を下げて注文された飲み物を持って来た。

 

「ガチのメイドさんだ…」

「本物のメイドさんなんて初めて見た!」

「す、スゲー綺麗な人だ」

「フフ、アリガトウゴザイマス」

褒められたカナが小さく笑って感謝の言葉を告げる。

テーブルに各人の飲み物を置いて行く。

 

「デハ、ゴユックリドウゾ」

全員に飲み物と茶菓子を渡し終えたカナが再び頭を下げて一礼してから下がる。

 

「じゃあみんな。宿題やろ?」

「お、おう」

「分かった。ちゃんと勉強するんだよ?」

「悪いけど誰かここ教えてくれる?」

すぐに適応した三人が転弧と一緒に学校の宿題を解き始めた。

 

 

 

 

一方の冷気はと言うと

 

「今日は…野菜炒め。いや…大根が安いから鮭と一緒に鮭大根にしようかな?それとも大根おろしにしてポン酢と一緒にさっぱりと鍋にするか。けど肉巻きおにぎりも捨てがたい」

「……そうだ、みぞれ鍋にしよう」

街の中で今晩のご飯を決めていた。

 

「何をぶつくさ喋っているんだLORD!!?」

プロヒーローと戦っている事を除けば普通の光景だっただろう。

だが残念。現在LORDは、タイマン最強のプロヒーロー.キングボクスと殴り合っていた。

 

「おらおらおらーっ!!」

「おっ…!」

キングボクスがLORDに対してラッシュを決める。

残像が残る程の速度で殴るキングボクスに対しLORDは、敢えて全ての攻撃を受ける。

 

「どりゃーっ!!」

「ごはぁっ!!?」

キングボクスのガードの隙を突いてLORDが拳を叩き込んだ。

その衝撃でキングボクスが20メートル吹き飛ぶ。

 

「がふっ!ゴフッ!ぜぇ…はぁ…なんて、バケモンだ!」

片腕で体を持ち上げたキングボクスが吐血して悪態を吐いた。

たった一発で今まで受けた事の無いダメージを一気に蓄積された事でキングボクスの目が焦点を失う。

 

「気は済んだか?」

「クソッ…!本気でやんねーとヤバいな」

ゆっくりと近づくLORDに対してキングボクスがボクシングの構えを取る。

 

「はぁ…面倒だな」

「申し訳ないが…本気でいかせて貰うぞ!!」

キングボクスとは逆に何の構えも取らないLORDが呆れた様子で溜め息を吐いた。

 

「喰らえLORD!!これが俺の最強の一撃!」

王者の拳(キングパンチ)!!」

キングボクスがLORDの笑顔仮面に向けて本気の一撃を叩き込む。

 

拳が当たった衝撃で突風が巻き起こり、轟音が鳴り響く。

しかし、LORDは微動だにしない。

まるで効いていないと言わんばかりにキングボクスの拳を退かした。

 

「ば、馬鹿な!?」

「まだ、やるかい?」

「クッ!」

心底驚いた様子で拳を引いたキングボクスにLORDが再び問い掛ける。

 

「キング!頑張れー!!」

「LORDに負けんじゃねぇ!!」

「本気でぶん殴れ!!」

周りのギャラリーがキングボクスを応援する。

 

「LORD!ぶっ倒れろ!!」

「さっさと死ね!!」

「キングボクスに倒されろ!」

一方のLORDは、周りのギャラリーに敵意を向けられて罵倒されている。

 

「あれだけの一撃を受けたのにどうして倒れない!?」

「あ゛?」

「大型トレーラーを粉々に粉砕する俺の必殺の一撃を受けて置いて何故立っていられる!?なぜ倒れない!?」

必殺の一撃を直撃させても尚、微動だにしないLORDにキングボクスが焦燥に駆られた様子で問い掛け拳を構える。

「シンプルに効いてないだけかな?」

その質問に対してLORDが困った様子で笑顔仮面の上から頬を掻き答える。

 

「なっ!?」

「いやいや、逆に聞くがあの程度で俺が倒れると思ってんのか?」

信じられない物を見たような目をしたキングボクスにLORDが当たり前のことを言うように聞き返す。

 

「まあ、いいや。俺の番だ、ガードしろよ?」

「ひぃっ!?」

説明が面倒になって拳を深く引いて力を込めるLORDに恐怖を覚えたキングボクスが両腕をクロスさせて守りの構えを取る。

 

「本物の王の拳を見せてやる…」

氷王の鉄拳(キング・パンチ)!!!」

LORDが拳を放った直後に腕が消えた。

常人の目に追えない速度で放たれた拳が人々の目には消えたように見える。

その速度で放たれた拳がキングボクスがクロスガードに使った腕に当たり、その両腕をへし折る。

両腕を折った拳が、そのままの勢いで胸に当たり肋骨を折り、その衝撃が背中までに伝わり背骨をも圧し折った。

 

「がっ…はっ………!!!?」

LORDの拳を受けたキングボクスが踏ん張る事も出来ず吹っ飛ばされて近くのオフィスビルの壁にめり込んだ。

 

「ふぅ…弱っ」

キングボクスを評価し買い物を済ませてさっさと帰ろうとしたLORDがコートを翻すと大地を揺らしながら新たなプロヒーローが現れる。

 

「ごっつあんです!」

「えぇ…相撲取り?」

「元・横綱.光の山!ヴィランLORD!貴方に立ち会いを申し込みます!」

新たに現れたのは、個性が一般的になってから更に過激化した角界の中で最上位に位置する横綱。

その中でも歴代最強とまで謳われた元・横綱.光の山がプロヒーローへと転職した姿。

プロヒーロー.相撲キングだった。

 

「はぁ…もういいや、ほら掛かって来な」

「うっす!胸をお借りします!!」

呆れたような声を出したLORに対し相撲キングが突っ込んだ。

地面が割れる程の踏み込みに重量200キロ越えの肉体が合わさり巨大重機となんら変わりない一撃としてLORDに突っ込んだ。

 

「なっ…!?」

「気は済んだか?」

元・横綱の本気のぶちかましを物ともせず、微動だにしないLORDに相撲キングが目を見開く。

 

「んじゃ、俺の番だな?突っ張りいくぞ!」

「っ!うっす!!」

LORDの宣言に打たれる覚悟を決めた相撲キングが踏ん張る。

 

直後、LORDの突っ張りが相撲キングを吹き飛ばす。

吹き飛ばされた相撲キングが駐車してあった大型トラックを横転させて近くのコンビニに突っ込んだ。

 

「やれやれ…やっと終わったか?」

LORDがやや疲れた様子で呟くと後方に筋肉隆々の男が着地する。

 

「HA-HAHAHAHAHA!!!!!私が来た!!」

「「「オールマイト!!!」」」

「オールマイト…」

新しく現れたのは、日本のNo.1ヒーロー.オールマイト。

彼が現れた瞬間、ギャラリーが沸き上がり相対的にLORDのテンションが下がった。

 

「LORD!!今日こそ貴様を捕らえるぞ!」

「断る。あと、ギャラリーがさっきから煩いからどっか行って貰え」

LORDが日本に入国してから何十回も行われたやり取りを行った両者の放つ気迫に押されて周りのギャラリーが一斉に居なくなる。

 

「これで心置きなくやれるな!」

「勘弁してくれよ…まあいいや。晩飯までには終わらせる」

拳を構えたオールマイトに合わせてLORDも拳を構える。

その数秒後に両者の拳が衝突し台風クラスの突風が巻き起こった。

 

 

 

 

夜6時頃

 

「よぉ、転弧…今帰ったぞ」

「あっ、兄さん!お帰…り……凄い疲れてるけど何かあったの?」

外出から帰って来た兄を出迎えた転弧が心配した様子で問い掛ける。

 

「おう…心配すんな。それよりも喜べ。今夜はみぞれ鍋だ」

「みぞれ鍋?って美味しいの?」

「食べた事ないから分からない。だから今日食べるんだよ」

買い物袋から大根や豚肉などを取り出してキッチンに立つと寝室から赤ん坊の泣き声が聞こえる。

 

「ふ、ふぇぇぇぇん!」

「おっと、恵理が起きたか。悪い転弧、ちょっと待ってろ」

「はーい…」

泣き出した妹の下へ早足で向かった兄の背中を眺めて、転弧がソファーに座りテレビで鉄道員(ぽっぽや)を見始めた。

 

 

「おー、よしよし。どうしましたか?おむつ…ではなさそうだし、お腹が空いたのかな?それとも何処か痛いのかい?眠いからって訳ではなさそうだし、怖い夢でも見たのかな?それとも気温が気に入らなかった?…駄目だ、全然分からない。赤ん坊相手じゃ世界最強のヴィランの称号なんてクソの役にも立たないし、兄として転弧の世話もしないといけないし、晩飯も作らないといけない…洗濯物を取り込んでまた洗濯機を回して服を干して服を畳んで…やる事が多すぎるな!?世の母親達って偉大なんだな…そりゃあ、育児ノイローゼにもなるわ」

「おぎゃぁぁあああ!!」

「おう、すまんすまん。びっくりしたよね?ごめんねー。いないいないばあ、とか通用するのか?」

腕の中で抱えた妹をあやしながら、やるべき事を一個ずつ思い出した冷気が世の母親の偉大さを痛感する。

 

「兄さ~ん!ご飯まだ~?」

「分かった!すぐ行く!」

「びぇぇぇぇええええん!!」

「ああ、ごめんねー。よーしよし、いい子いい子。いい子だから泣かないでねー」

あっちもこっちも大忙しになった冷気が最終手段として8体のカテゴリー3(戦闘力プロヒーロークラス)を生み出し家事を分担する事で何とか対処した。

 

 

「はぁ…はぁ…なあ、情報屋。知ってるか?」

『何をだ?』

「世の母親ってスゲー偉大なんだぜ?」

『うん、まぁ…知ってる。俺も一応二児の父親だからな…』

「そうか…お前もスゲーんだな」

『ああ、ありがとう。それよりも煉獄の女王に着いての新情報だ。何でか知らんが中国まで歩いていた煉獄の女王が突然立ち止まり、誰かと戦闘をおっぱじめたかと思えば方向転換しやがった。今度は、ロシアを通ってからヨーロッパ諸国を通り、アメリカを通ってから太平洋を渡って日本に上陸するつもりらしい。何を考えてるか分かんねぇな…』

「そうか…分かった、ありがとう。金は後で振り込んでお…く……よ…」

『おい、LORD?LORD!?どうした!?』

「ぐー…ぐー…」(-_-)zzz

『なんだ、寝てるだけか。育児疲れってヤツだな?まぁ、あれだ。暖かい飲み物でも飲んでゆっくり休め』

会話の最中に寝落ちしたLORDに対して情報屋の男が聞いているかも分からないアドバイスをしてから電話を切った。




何度でも言います。
これは、日常回です。
もう一度言います。これは、日常回です。

次回は、氷炎戦争の一歩手前の武器調達シーン&開戦前の会話です。多分…きっと…恐らく…。

では、また次回!
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