まずは、皆さまに謝罪を。
作者の勝手な都合により、この作品を一時的に非公開にしました。
理由としては、余りにも自己責任的な問題なので詳しく説明出来ません。
ですが簡単に言うと、この方が都合が良かった。となります。
作者の勝手な都合でご迷惑をお掛けして大変申し訳ございません。
それでは、どうぞ。ごゆっくり!(定型文)
LORDと煉獄の女王が名馬.ランスロットに二人乗りで凍った海面を進んでいた。
「……」
「……」
お互いに言葉を交わさず前だけを見て無言を貫いている。
そんな状態が既に10分以上続いているが、どちらも一言も発言しない。
LORDが笑顔仮面を被った状態で手綱を握り、煉獄の女王がその上から手を重ねて背中を預けている。
傍から見ればかなり仲の良い男女の関係に見える。
だがこの二人、こう見えて今から約二時間後に大喧嘩をおっぱじるのだ。
それも国が亡びるかもしれない規模の戦争にも匹敵する大喧嘩。
しかし二人の衝突を止める手段は、もはやこの世界に存在しない。
世界はこの光景を固唾を飲んで見守ることしか許されない。
「見えて来たぞ…」
「ん…」
ランスロットが歩き始めてから数十分が経った頃、LORDが己の胸の内で微睡んでいた煉獄の女王を起こし、前方を指差した。
今にも眠ってしまいそうな様子で瞼を擦った煉獄の女王の視線の先には、巨大なキノコを思わせる建造物が建っていた。
真ん中を一本の太い柱を軸に大きな台のような物を乗せている。
会場を風から守るようにドーム状の屋根が覆っている
その横には、高さ80メートル級の超大型氷人形が二体立っていた。
「なにあれ?」
「会場…かな?」
思わずといった様子で煉獄の女王が疑問を零す。
それに対してLORDが自信なさげに答えた。
「ふ~ん。じゃあ、あの砂浜に居る無数の兵隊さん達は?」
「今回の…
「数と強さは?」
「カテゴリー5二体とカテゴリー3以上が20万以上だ」
それまでの移動中、一度もLORDに視線を向ける事の無かった煉獄の女王が初めて視線を向けた。
「たったそれっぽっち?」
「そう。たったそれっぽっちだ」
自分に対抗するための戦力を聞いて呆れたような表情をした。
「ずいぶんと嘗められたものね…」
軍事国家ですら裸足で逃げ出す戦力に対して、まるで期待外れだと言わんばかりの態度で溜め息を吐く。
圧倒的なまでの傲慢にして不遜な態度。
こんな態度を取られたら普通だったらLORDとてキレるだろう。
キレた上で相手が生まれて来た事を後悔する程に痛めつけるだろう。
しかし、この相手は違う。
かのLORDと第一次氷炎戦争において互角に渡り合った化け物。
正真正銘の世界最強の一角。
「まあ…色々とあってな」
故にLORDは、言葉を濁した。
言葉を濁し、そのまま黙り込んだ。
二人の会話が無いまま数分が経ちランスロットが足を止めた。
「ん?」
何故急に止まったのか?と煉獄の女王が一瞬だけ疑問に思ったが、すぐに答えを出した。
会場のすぐそばに待機していた超巨大氷人形が動き出す。
片手を伸ばしまるで掬い上げるようにLORDと煉獄の女王が乗ったランスロットを持ち上げた。
壊れ物を扱うかのように二人を掬い上げた氷人形が指の隙間から海水を流し、手を会場の上へと移動させた。
「まあ、せいぜい持成して頂戴」
まったく期待していない声音で煉獄の女王がそう言ってランスロットから降りた。
♦
「ようこそ。お待ちしておりました」
会場についてまず最初に声を掛けて来たのは、スーツを着こなした初老の男性。
片眼鏡を右目に着けて不快にならない程度に髭を生やした彼が軽くお辞儀をして煉獄の女王とLORDを出迎えた。
「長旅でお疲れでしょう。まずは、こちらのウェルカムドリンクをどうぞ」
「あら、ありがとう。気が利くのね?」
まったく恐れる事なく煉獄の女王にシャンパンの入ったグラスを手渡す。
礼を言いながらグラスを受け取った煉獄の女王がさっそく一口飲む。
「うん、悪くないわ」
「ああ…美味いな」
いつの間にグラスを受け取っていたLORDも感想を告げる。
「ありがとうございます。早速ではございますが、お席の方へとご案内致します」
どうぞこちらへ、と男が会場の真ん中にある一つのテーブルへと二人を案内する。
「見晴らしの良い会場でクラシック音楽を聴きながら一流シェフの料理を食べる…私が昔貴方に話した理想の持て成しね。本当はディナーが良かったけど」
かつての自分の望みを全て叶えようとしたLORDの努力に対して煉獄の女王が何処か残念そうに呟く。
「望まれた事を…望まれたままに」
「なによそれ?」
「さあ、なんだろうな?」
変な事を言い出したLORDに対して疑問をぶつけた煉獄の女王だったが適当にはぐらかされた。
「こちらへおかけください」
「ありがとう」
席へと案内された煉獄の女王が椅子に座る。
「どうぞこちらへ」
「うん…」
同じように席に案内されたLORDもコートを預けてから席に着く。
ついでに席に着く時、足元の氷を操り太陽の光を反射させ上空で待機している雷帝に合図を送った。
こうして世界最強同士が向かい合った食事会が始まってしまった。
「本日の料理を任されおります、料理長の玄道と申します」
「早速ですが食前酒をお選び下さい」
頭を下げて二人に挨拶したのは、料理長の玄道 隆弘。
向かい合って座っている煉獄の女王とLORDに対して注文を聞いて行く。
「私は…白ワインを」
「俺はシャンパンを頼む」
「かしこまりました」
二人の一つ目の注文を聞いた料理長が頭を下げて了承の意を示し『個性』を使ってウェイターにそれぞれのボトルを持って来させる。
「ではまず…こちらロジャー・グラート カヴァ ゴールド ブリュットでございます。第一次氷炎戦争に巻き込まれ滅びたネデス地区で収穫される3種類のぶどうから最高品質のもののみを厳選して贅沢に使用した、心地よいフルーティさとやわらかな酸味の調和をお楽しみいただけます」
そう言いながら煉獄の女王側のシャンパングラスに注いでいく。
「続いてこちら、ブリュット アンペリアルでございます」
同じようにLORDのワイングラスにシャンパンが注がれていく。
「乾杯…」
「…乾杯」
注ぎ終えたの確認した両者が同時にワイングラスを掲げて乾杯の音頭を取る。
グラスを軽く鳴らしLORDが笑顔仮面を外す。
そしてそのままグラスの中身を仰いだ。
「「…ふぅ」」
両者が同時にため息をつく。
しかし未だに両者の間に重苦しい空気が流れている。
「お待たせいたしました。こちら
そんな二人の空気など知ったこっちゃない、と言わんばかりに
「…ふふっ」
「…ふはっ」
それを見た二人が小さく笑ってからナイフとフォークに手を付けて食事を始めた。
~~♬~♪
二人の所に料理が着いたのを見計らって、オーケストラの指揮者が指揮棒を振り奏者達が一斉に一つの物語を奏で始める。
「悪くないわね」
「そうだろう?」
食事の最中、デザートの『フルーツタルト』を味わっていると煉獄の女王が口を開いた。
それにLORDがすぐに反応し肯定の意を示す。
「貴方とこうして一緒に食事をするのは…一年以上前に一緒に作ったビーフシチューの時以来だったかしら?」
「そうだな…大体そのくらいだ」
どこか寂しそうに言う煉獄の女王に対してLORDが悲しそうに返す。
「それで?あの時の返事は決まったの?」
「ああ、決まったさ」
煉獄の女王がそんな空気を打ち破るようにテーマを変えた。
彼女が何を望むかを理解しているLORDがタルトの最後の一切れを口に放り込み咀嚼する。
「食後酒は、いかがなさいますか?」
「「コニャック ナポレオン」」
ウェイターの質問に二人が同時に答えた。
まるでその答えだけは昔から決まっていたかのように息ぴったりに答えた。
「…食事が始まってから約40分。貴方は時計を7回も気にしてた」
「何かあるでしょ?」
到着したグラスを片手で揺らしながら煉獄の女王がLORDに問うた。
「……」
LORDは、その質問に答えずコニャックを一口飲んでからグラスを置く。
表には出していないが内心焦っていた。
まさかそんなに仕草に出ていたとは思っていなかった。
既に雷帝に『インドラの矢』のチャージを始める為の合図を出してから47分が経っている。
近況報告程度の会話と昔を懐かしむような会話しか無かった。
食事中も大して盛り上がらず酒が入っても気分が高揚する事は無かった。
特に何もないまま食事が終盤を迎えてもチャージに必要なだけの時間を稼ぐ事は出来なかった。
「なあ…
故にLORDは、時間を稼ぐための最終手段に出た。
「何よ?」
突然自分を名前呼びして来たLORDに対して煉獄の女王、
「一曲…踊ってくれないか?」
「はぁ…?」
右手を差し出して彼女を誘うLORDに対して煉獄の女王が本気で困惑する。
それが時間稼ぎだと分かってはいても、それが自分を殺そうとしている男の誘いだとしても、彼女は断れない。
かつて、一度愛した相手だから。否、そうでなくても彼女は断れない。
かつて愛した、では無い。今も愛している。
一年前の氷炎戦争の切っ掛けともなった話だと分かっていても、彼女は断らない。
「……」
少しだけ思考してからLORDの手を取った。
「ありがとう。信じていたよ」
「御託は良いから…さっさと済ませるわよ」
彼の誘いを受けた煉獄の女王がLORDの肩に手を置き視線を向ける。
その視線に気付いたLORDが煉獄の女王の腰にもう一つの手を回し指揮者に視線を向ける。
「…」ゴクッ
LORDの指示を受けた生唾を飲み込み視線を前に戻した指揮者が再び指揮棒を振る。
~♪~~♬
再び音楽が流れる。
しかし今度の音楽は、先程までのとは少し違う。
『エリーゼのために』、『G線上のアリア』、『協奏曲第5番 運命』、『新世界より』そのどれでもない。
今、奏でられている曲の名は
「ボレロ?」
「そうだ…」
煉獄の女王がその名を言い当てた。
それと同時にLORDが彼女の腰を引いて踊り始めた。
氷炎戦争開戦までに残されたほんの数分を、最後の猶予を二人が楽しんでいた。
一年前のあの日々、第一次氷炎戦争が起こる前の日々を思い出して踊っていた。
まさに二人のための時間。世界から二人だけが切り抜かれたかのように踊った。
数分続くこの曲を聴きながら踊っていた二人だったが、曲が終わってしまった。
「未来火…許せ」
「分かってるわよ…それにしても」
曲が終わり未来火の腰から手を放した冷気が一つ謝罪する。
これから起こる事の予想が付いている未来火は、少し悲しそうな目をして冷気の青髪を撫でた。
「本当に青髪なんて似合わないわね。貴方は白髪の方が似合うわ」
「すまない…」
自分の髪を撫でる未来火の手を取ってからもう一度謝罪し、手の甲に軽く口づけをする。
己の創造主たる
もの凄く優秀な部下である。
「ふっ!」
部外者が全員退避したのを確認したLORDが煉獄の女王を蹴り飛ばす。
ほんの少し前まで一緒に食事をしていた会場が音を立てて崩れる。
案の定、煉獄の女王は海の上に綺麗に着地し…戦闘モードへと切り替えた。
シュタッ!
「……」
『『我が王!!』』
一方、砂浜に着地したLORDを二体のカテゴリー5の氷人形達が出迎えた。
『話し合いは…』
「何も無かった…当初の予定通りだ。全力でやるぞ!」
何があったかを聞こうとしたアイナだったがLORDによって遮られた。
『『イエッサー!!』』
その上で命令を下された。
彼等は、騎士と兵士だ。
ならば主たるLORDの命令を聞くのは当然のことである。
「総員!戦闘準備!!」
破壊不可能の笑顔仮面を被り戦闘モードに移行したLORDが氷獄の剣を地面に砂浜に突き立て全ての氷人形に命令を下した。
第二次氷炎戦争…開戦ッ!!