世界最強のヴィランお兄ちゃん   作:揚げ物・鉄火

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第二十八話

オールマイトが闇の帝王と衝突した頃、LORDが煉獄の女王に起こされてギリギリで立っていた。

 

「イケる?」

「やるしかないだろ…」

今にも倒れ込みそうな体に鞭を入れ、震えそうな膝を気合で抑え込み、根性だけで背筋を伸ばした。

 

「ねえ…本当にアレ(・・)をやるの?一発で成功させないと私達全員死ぬ事になるわよ?」

「それ以外に勝つ手段が無い。それに死は避けられない…お前だって死ぬし、俺だって死ぬ。オールマイトもいずれ死ぬ、皆いつか死ぬ………だが今日じゃない」

純粋に心配した煉獄の女王の言葉に対してLORDがそう返す。

 

「~~~~~~~~~っっっ!!!!!だーっ、もう!!本当にアンタってヤツは!」

「?」

その言葉に煉獄の女王が頭を掻き乱し地団駄を踏む。

しかしLORDは、頭に疑問符を浮かべて視線を向けた。

 

「はぁ…本当にどうしてアンタなんか好きになってしまったんだろ…」

「仕方ないだろ?お前が俺に惚れた以上、こうなる事は確定していた。それに…」

「それに?」

煉獄の女王の言葉に応えていたLORDが途中で口ごもる。

それに続きを話すよう煉獄の女王が促すとLORDがそっぽを向いて口を開く。

 

「俺だって…惚れた女くらい守りたいさ…だから、命の一つや二つくらい賭けるよ…」

「はぇ?」

耳を真っ赤にしながら最後まで言い切ったLORDの言葉を聞いた煉獄の女王が変な声を出し顔が真っ赤に染まる。

その直後に闇を漏らした闇の帝王がゆっくりと立ち上がりオールマイトに説明を始める。

 

「と、取り敢えず行くぞ!」

「うぇっ!?え、ええ。そうね!」

その様子を見たLORDが切り替えて戦場に目を向ける。

煉獄の女王もそれに合わせて視線を向ける。

 

「じゃあ…」

「出力は…」

「「お前が/アンタが」」

顔の前で腕をクロスさせてエネルギーをじわじわと溜めて行く二人の声が重なる。

 

「俺に…/私に…」

「「合わせろ!!/合わせなさい!!」」

 

二人の声が重なり同時に残されていた全てのエネルギーを消費する勢いで気合いを入れた。

 

「「ハァァアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」」

残存エネルギーの全開放により巻き起こったエネルギーの奔流とエネルギーの衝突による突風が発生し足が震える。

一瞬でも気を抜けば倒れてしまう程のエネルギーの鬩ぎ合いによりLORDが目から血の涙を流し、煉獄の女王が鼻血を垂らして吐血する。

 

「「ハァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」」

それでも尚、限界を超えたエネルギーを開放する。

限界を超えたエネルギーの開放に大地が罅割れ、海が引き、天の雲が吹き飛ばされる。

 

「「ッ!ハァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」」

両者がエネルギーの限界開放値に到達したと同時に更に気合を入れて限界を突破する。

瞬間、煉獄の女王の真紅の髪が炎のように燃え盛り、LORDの青髪が全盛期のように白髪に戻った。

 

そして…

 

「「フュージョン!ハッ!!」」

 

オールマイトとの約束の一分に差し掛かった所で両者が絶妙にダサいポーズで合体し眩い光を漏らしながら一人になった(・・・・・・)

 

 

 

 

「はっ…?」

「何っ!?」

突如発された眩い光に闇の帝王とオールマイトが攻撃の手を止めて思わず、そちらに目を向けた。

両者が視線を向けた先では、眩い光が突如として神々しい光に変わり、まるで何かの誕生を祝福するように雪の結晶や鬼火が舞っていた。

 

「………」

光が収まり、それ(・・)が姿を現す。

 

それ(・・)は、男とも女とも取れる中性的な顔立ちをしていた。

それ(・・)は、男とも女とも取れる中性的な姿をしていた。

それ(・・)は、男とも女とも取れる中性的な手足をしていた。

それ(・・)は、白を基調に赤い線の入った鎧を身に纏っていた。

それ(・・)は、炎を放出する氷で出来た翼を持っていた。

それ(・・)は、水色の目と真紅の目のオッドアイだった。

それ(・・)は、縦に割れた瞳をしていた。

それ(・・)は、肩より少し長い程度の白髪に所々赤いメッシュが入っていた。

それ(・・)は、男とも女とも取れる中性的な声を発した。

それ(・・)は、右腕を軽く振るい周囲に舞っていた雪の結晶を掃った。

それ(・・)は、左腕を軽く振るい周囲に舞っていた鬼火を掃った。

 

「ふむ…中々悪く無いな。贅沢を言うのであれば…もっとエネルギーのある時にでも呼び出して欲しかったのだがな…」

それ(・・)が体を慣らすように少しずつ体を動かした。

指を鳴らし、腕を伸ばし、肩を回し、腰を捻り、足を上げ、足首を回し、最後に首も回した。

 

「だが、まぁ…贅沢も言ってられないか…仕方ない。5分でケリを着けるとしよう」

それ(・・)は、そう言ってから闇の帝王に向き直る。

 

「テメェ…何者だ?」

「ふむ…いい質問だ」

闇の帝王の問いにそれ(・・)が少し考え込むような仕草をしてから口を開き答える。

 

「我は、氷獄の王でも煉獄の女王でも無い。強いて言うなら貴様を倒す者だ。名は…氷炎の覇者、とでも名乗って置こう。別に覚えなくていいぞ?すぐに終わらせるからな」

氷炎の覇者と名乗ったそれ(・・)は、闇の帝王の下にゆっくりと歩みを進める。

 

「はんっ!覇者だか何だか知らねぇが、俺に殺される事に変わりは無いだろ!?」

「ぬおっ!?」

闇の帝王の発した高純度のエネルギーにオールマイトが少し飛ばされる。

が、すぐに足を地面に突き刺す事でそれ以上の後退を防いだ。

 

一方の闇の帝王は、両腕を頭上でクロスさせて両手にエネルギーを溜め、円を描くように腕をゆっくりと降ろし、胸の前でL字に組み右の掌を向ける。

 

『デスシウム光線!!』

 

赤い雷が迸る黒い極太の光線が氷炎の覇者に放たれる。

 

対する氷炎の覇者は、両手を頭上で組み、そのまま相手に向けた。

 

極光滅殺(オーロラアナイアレイト)!!』

 

氷炎の覇者の放った光線は、絶対零度を下回る極低温の一撃。

あらゆる生命を断絶する究極の光線技が放たれた。

 

両者の放った光線が衝突し相殺された。

 

「馬鹿な!?」

「おお…!」

闇の帝王が有り得ないモノを見たと驚愕の表情を浮かべたのに対して氷炎の覇者は、感心したような声を上げた。

 

「ならば…!」

「おや?」

己の一撃を防がれた闇の帝王は、両手を胸の前に持って来てエネルギーを溜めて行く。

 

胸の前で少しスペースを開けた状態の両手の中心部分に底知れぬ闇エネルギーが集中しバランスボールサイズの球体状に変化する。

オールマイトが慌てて止めに入ろうとするが氷炎の覇者が片手を翳して動きを制した。

 

「貴様…!」

「安心しろ、オールマイト。アレ(・・)くらいであれば簡単に止められる」

「何だと!?」

氷炎の覇者に一言文句を言おうとしたオールマイトだったがその言葉に思わず足を止めた。

 

「ほほう?簡単に止められるだと?なら、これでも喰らいやがれ!」

 

混沌の渦(カオスホール)!』

 

闇の帝王が放ったのは、LORDの虚無(ゼロ)と煉獄の女王の世界終焉(ラグナロク)を同時に相殺した一撃。

飲み込んだ全てを跡形も無く消す完全消滅の一撃必殺。

 

「ふん!」

それに対して氷炎の覇者は、闇の帝王と同じように両手を胸の前に動かしエネルギーを溜めた。

エネルギーを溜めるとバレーボール大の青白く燃え盛る太陽が形成される。

 

『ストナーサンシャイン!!!!』

 

氷炎の覇者が太陽の如き青白い火球を闇の帝王に向けて放つ。

 

 

両者の一撃が中間地点で正面衝突し、爆発を起こす事なく相殺される。

 

「ありえん!!?」

「実際に有り得ているんだ。認めろ」

己の持つ最高に一撃が相殺された事を信じられない闇の帝王が狼狽する。

それに対して氷炎の覇者が現実を見るように諭す。

 

「ふ、ふふふふ…」

「ふ?」

気が狂ったのか突如笑いだした闇の帝王の様子に氷炎の覇者が疑問に思い首を傾げた。

 

「ふざけるな!!貴様が!!ぽっと出の貴様がこの俺!この裏社会の支配者たる闇の帝王よりも強いと認めろとでも言うのか!?」

「実際そうだしな…」

己の誇りを傷付けられた闇の帝王の蟀谷に血管が浮かび上がり両手に一気にエネルギーを溜めて行く。

 

「なら!これでも喰らって死に晒せ!!」

 

『ギャラクシアンエクスプロージョン!』

 

闇の帝王が溜めたエネルギーを一気に開放し氷炎の覇者に向けて放った。

 

「はぁ…学習のしない奴だ」

呆れたように一つ溜め息を吐いた氷炎の覇者が右手に夥しい量の氷のエネルギーを集中させ、左手に夥しい量の炎エネルギーを集中させる。

そして両手を近付け二つのエネルギーを融合させて一本の光の矢を作り出し、右手を引いて構えを取った。

 

極大消滅呪文(メドローア)ッ!!!』

 

氷炎の覇者の放った一撃が闇の帝王の攻撃を真正面から迎え撃ち再度相殺した。

 

「おのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれッ!!!この俺を…闇の帝王をコケにしやがって!!」

「はぁ…やれやれ。それにしても、これじゃちっとも面白くない。もっと本気でやって欲しいものだな。それとも、本気でやってこのザマだったかな?だったら失礼な事を言って悪かった。謝るよ」

「っっっっっ~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!」

 

己の持つあらゆる最高クラスの技がまったく持って通じない。

その事に闇の帝王が焦り始めた。

更に氷炎の覇者の煽りを受けて思考能力が鈍った。

故に気付けなかった(・・・・・・・)

氷炎の覇者が闇の帝王の技を全て相殺している(・・・・・・・・)と言う事に気付けていない。

 

事実、氷炎の覇者は、闇の帝王の放つ技を全て相殺している。

だが、一つも押し返したり、突破していない。

飽くまで相殺(・・)しかしていない。

否、相殺しか出来ていない(・・・・・・・・・・)のだ。

限界近くまでダメージを受けたLORDと煉獄の女王が限界突破して開放したエネルギーを維持した状態で合体し誕生した氷炎の覇者は、本来の力の半分程度しか出せていない。

もし100%の力を使えるのであれば既に闇の帝王を倒し終えていたであろう。

しかし今の氷炎の覇者には、闇の帝王を抑え込む力があろうとも、トドメを刺すだけの力が無い。

 

故に、

「オールマイト。協力してくれるか?」

救援要請を出すしかない。

氷炎の覇者は、息の上がっているオールマイトに右手を差し出す。

 

「……」

救援要請を受けたオールマイトは、疑いの眼差しを向けるが氷炎の覇者の目を見て少し考え込む。

やがて一つの答えを導き出したオールマイトが立ち上がりその手を握った。

 

「今回だけだ!」

「オーケー!」

この瞬間、正義(ヒーロー)(ヴィラン)による最強タッグが誕生した。

 

 

「クッソがぁあああああああああああ!!!!」

正義と悪が手を組む。

漫画やアニメなどの創作物でない限り有り得ない光景を前にして、闇の帝王が取った行動は…

 

「全制限解除!!今!ここで!世界を滅ぼす!!!」

己を縛る世界を滅ぼさない為の、ありとあらゆる制限を解除する事だった。

 

「グッ!?ぐごぁあああああ!!!?ぐがぁあああああ!!!」

闇の帝王の心臓が一つ大きく鼓動を打った直後、急に苦しみ出した。

 

「うぉああああああああ!!!?」

体内から作り替えられていく感覚に闇の帝王が苦痛の声を上げて悶える。

 

そして徐々に姿が変化していく。

黒く短かった髪が灰色に染まり、腰の近くまで伸びる。

爪が黒く変色し、全身に悪魔のような刺青が浮かび上がる。

白目が黒く染まり、瞳が赤色に変化する。

蟀谷から悪魔のような鋭利な角が生え、背中から蝙蝠のような真っ黒な翼が生える。

 

「ふしゅーっ!!」

変身を完了させた闇の帝王が荒く息を吐き、オールマイトと氷炎の覇者を睨む。

 

「ファイナルラウンドだ!全力で行くぞ!!」

「「掛かって来い!!」」

闇の帝王の宣言に両者が短く言葉を返す。

 

その一秒後に三者が衝突した。

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