東方白望記   作:ジシェ

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十一話 ~少年少女は何を目指す?~

初顔合わせから一月、彼らの実力はかなりの成長を見せた。

妖怪相手にも引けをとらない。

なんなら一般の部隊と比べかなりの差があるほどだ。

そんな彼らに今何をしているか。

能力の特訓、上手い使い方、霊力の操作、基礎体力向上、それら一月でさせたこととは違う全く別のこと。

『組み手』だ。

何故組み手なのか、疑問に思うのは当然だろう。

何故ならやることがないからだ。

先程の話しからして、色々教えたのは分かるだろう。

だが彼らは優秀、それも過ぎる程に。

たった一月で、教えられることが底をついた。

そもそも教師をしたことがないというのに指導者まがいのことをすることが間違いだったのだろうか。

もはや俺を倒せるようになるまで組み手を行うことしか思いつかない。

 

「はっ!」

 

彼女は剣を横薙ぎに振るった。

その剣は霊力を纏っており、通常当たらない距離を埋めるようにその身を伸ばしていた。

刀身を把握されても無意味なよう、振るう度に刀身を変えることを教えたことで、その攻撃の範囲は不規則だった。

それをかれこれ五分程いなし続け、そろそろ終わりにするということで……

 

「遅い。」

「!?」

 

それをかわしながら懐に潜り、手の爪先を喉に当てた。

 

「まだ霊力の放出に隙がある。懐に潜られたら刀身を消す。振る一瞬のみ刀身を伸ばす。まだまだ改善する点は多いな?」

「……参りました…」

 

この組み手をしていたのは依姫である。

彼女はこと霊力の扱いにおいて周りよりも多少時間がかかったとはいえ、扱えるようになれば誰よりも上手く使えるスロースターターだった。

そして剣の才能。

こと剣においては群を抜いて強い。

ただ欠点が一つ。

彼女の能力、『神霊の依代となる』という能力は、現状使用は不可能なこと。

月読の話しでは器が足りないとのことだが、二十歳も過ぎない子供が、神降ろしをするのは無茶なのは当然だ。

故に今の彼女は能力が使えない。

変わりに剣と霊力纏いの二つの技量は底が知れない。

 

「先生!早過ぎて見えないです!」

「そりゃ速度的に当然だろ。目もまだまだ慣らさなきゃな。次は目でも鍛えるか。」

「どうやってやるんですか?」

「…俺が適当に文字の書いたプレート持って走り回る。読み続ければ慣れんだろ。」

「無茶苦茶ですよ……」

「それ先生の方が大変じゃ…」

 

トレーニングメニューの見直しは必要だなと考えながら、結局考えているのは何でも屋の仕事だった。

つまり上の空なのだ、半分は真面目だが。

それなら当然こういうこともある。

 

「やー!」

「がっ!?」

 

背後から思いきり殴られた。

いや、殴られたように感じたのは霊弾だった。

 

「奇襲はやめろ!柚季!」

 

彼女も依姫と同じく…ではないが、能力がない。

しかし霊力の量だけなら目を見張るものがある。

ただ彼女にも問題があった。

剣も槍もただ霊力を纏うことすら出来ないのだ。

その上武器の才能もなく、多過ぎる霊力は細かな操作を受け付けない。

そんな彼女が唯一得意とすること、それは霊力の放出。

塊を放つだけの簡単で単純な攻撃。

だがその破壊力は過去訓練場の壁を破壊する程だった。

ただその放出が止めどなく放てるとはいえ、近接での戦闘を主とする組み手では相性が悪い。

……まあ弾幕の撃ち合いに落ち着くのだ、結局は。

霊力量は転生者の特典なのかやたら多い。

そのため彼女との撃ち合いは最終的に俺が勝つ。

この二人でなんとなく分かることだろう。

彼ら全員に能力的問題ありだ。

故に訓練の内容は個々に変わる。

最終目標は俺を倒すこと。

これが一月経って変わった訓練内容だった。

 

―――――

 

「つか何でお前がいる?まだ一時間あるぞ?」

 

訓練内容は変わるが結局は組み手。

時間を分けて一人ずつ行うことにしている。

休憩と指導をするのに人数が多いと後半の方は暇なのが出るからだ。

それでも一人は少ないって?…俺も休む。

 

「いや~せんせーを月読様が呼んでたから伝えに来たの。なんだか急いでたよ?」

「ん…?そうか…面倒事な気がするから行きたくないな~でも行かなきゃそれもそれで面倒だよなぁ~」

「行った方がいいと思いますよ。」

「給料なくなっちゃう?」

「別に金目当ての仕事じゃないんだが…まあいいや。」

 

俺は出口に歩いていく。

 

「そんじゃ何の用か知らんが行ってくる。三十分して戻らなかったら今日はこっから自習でな~」

「行ってらっしゃ~い。」

「お疲れ様です!」

 

―――――

 

「月読ー何の用だー?」

 

間延びした言い方で月読に問いかける。

部屋で仕事をしている月読は、すぐにこちらを見てはっとした。

尚、何かの報告と指示待ちしている兵隊達は少し驚いた顔でこちらを見ている。

 

「おお!来たか!?すまない!お主の力を貸してくれ!」

「何でそんな焦って……」

「妖怪の大群が攻めてきた!」

「……は?」

 

続いてほしい時間程、短く終わってしまうものだ。

 

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