東方白望記   作:ジシェ

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十七話 ~諏訪来訪~

何も分からない扇子と刀を持った俺は、行く当てもなく都市跡の森をさ迷っていた。

まず必要になるのは拠点。

食料や安全の確保は最悪どうとでもなる。

しかし延々歩き回るわけにもいかない。

一先ず留まれる場所が必要だ。

とはいえ建築経験は皆無。

資材を集めるにも道具はない。

いっそ天使のいる空間で過ごせないのか。

 

「そういえば刀…あるよな…」

 

怪力で振れば木々を倒すのは可能なのでは?

月読が残したものがやわとも思えない。

まあ木を確保したところで建築技術なしで家が出来るとも考えられない。

四千年程の時間が経ったなら人間が新たに生まれていてもおかしくはないだろう。

拠点を自力で作るのを諦め、人のいるところを探し旅を始めた。

 

―――――

 

結論、人のいる場所は見つけた。

しかも村ではなく国だ。

四千あれば国も出来るのか。

人間の成長は恐ろしい。

まあ当然、何もなく入れるわけもなかった。

 

「この非常時に旅人か。」

「非常時?」

「近隣国である大和が全ての国を統合しようとしていることは知っているだろう?此度の標的はこの国だ。旅人が入ることは構わないが、最悪戦争も考えられる。被害が怖ければ帰ることを勧める。」

 

勿論そんなこと知りません。

しかしスパイとかの可能性は考えないのかな。

 

「まあいいよ。最悪自力でどうにかするさ。」

「…そうか…なら止めはしない。しかし何があろうと自己責任で頼むぞ。」

「あ、ついでに宿かなんかの場所教えてくんない?」

「………」

 

―――――

 

まあ何もなかったんだが。

入国(?)には特に問題なく、今は教えられた宿に向かって歩き回っていた。

広くて迷った。

こう迷っていると、自分が方向音痴なのだということが分かる。

考えると知っている場所以外基本案内がいたし、案内いないときもまともに目的地に着いた記憶がない。

 

「宿…どこだ…?」

「宿をお探しかい?」

 

背後から声がした…気がした。

しかし背後には誰もい…いた。

背丈は子供、この時代の日本に似つかわしくない金髪、よく分からない背後のオーラ……?

 

「え…?…?」

「どうかした?」

 

間違いなく背後に何か見える。

 

「あー…いや…金髪が珍しくてな…」

「!…な、何で…?」

「は?」

「認識阻害の術をかけてるのに…」

 

認識阻害となると、恐らく金髪ではなく黒髪にでも見えるのだろう。

わざわざそんなものをかける意味があるとすれば…

 

「君…人間?」

「そう言うお前は…?」

『……』

 

なんだか変な空気が流れた。

片や自らの変装を見破られ。

片やそこから予測して。

互いに普通ではないことを悟った。

 

「……大和からの密偵?なら容赦なく倒すけど?」

「いや別にそういうのじゃないんだが…」

「じゃあ何?妖怪?それに類す化生の者?」

「あー……なんて言うかな…どっちかと言うと…仙人とか?」

 

不死を明かすわけにもいかないとなれば、不老の理由付けでは仙人辺りが妥当だろう。

全くの嘘というわけでもあるまい。

 

「そんな感情豊かな仙人いてたまるか。しかも刀携え扇子を腰に挟み…ますます分かんないよ。」

 

まさかの即ばれ。

つか刀とか関係ないだろ。

 

「いや嘘ではない…と思う…よ?うん。」

「………」

 

やばい信じてない。

心なしか疑念の目が強くなってる気がする。

幼女に睨まれて興奮する変態じゃないんです俺。

そうこう悩んでいると、突然彼女は笑いだした。

 

「…ぷ、あははは!」

 

ここは往来の、ど真ん中とは言わないまでも、そこそこ人の目がある場だ。

そこで彼女は周りを気にせず大笑い。

どうしたのだろうか。

 

「どうした!?」

「いやー…なんかおかしくなってね。だって何考えてるか分かりやすいんだもん。顔がコロコロ変わってまるで百面相さ。」

「えー…そんなにかー…?」

「まあこんなのが密偵とかないね!妖怪なら分かるし。」

 

じゃあなんで妖怪か疑った。

とにかく誤解が解けたようで、すぐそこにあった団子屋で少し話すことにした。

 

―――――

 

「お金ないのに宿行こうとしてたの?」

「……忘れてたんだよ。」

 

考えると金なんて一切持っていなかった。

なんなら都市で使っていた金もない。

まさに無一文、ということが、団子屋前で発覚した。

というより思い出した。

 

「おかしな人間だなぁ。いいや、面白いし、家来る?」

「いいのか?」

 

こちらとしては有難い。

最悪雨風凌げる場所があればいいだけだし。

 

「別に構わないよ。香苗は分かんないけど。」

「香苗?巫女か?それとも世話係か?」

「なに世話係って…巫女だよ。私が神様なのもう気付いてるでしょ?」

「まあな。」

「ふっふっふ…崇めてくれてもいいのだよ?」

 

ない胸反ってふんぞり返ってもな。

つかあの天使と違って心読めないのか。

これが神とか月読知ってる俺じゃなきゃ想像も出来んだろ。

人間は神をやたら神聖視するからな。

あれ知ってるとそんなの無理。

 

「既に国創るくらい崇められてんだろ。」

「むぅ…まいっかー私守矢諏訪子。この諏訪の神様だよ。」

「俺は筑城望。…特に紹介することないな。」

「そか。しかし少し嬉しいかなー香苗以外に神として認識してくれる人がいたの。」

「そうかい。」

 

二人して団子を頬張った。

端から見れば幼女に団子驕らせるクズか俺は。

 

―――――

 

「ただいま~」

「神なのに軽いな…邪魔するぞー」

「おかえりなさ……?」

 

神だから住まいは神社なのだろう。

まあ神社は隣で今いるのは普通の一軒家だが。

戸を開くと、緑髪の女性が諏訪子を出迎えに来た。

諏訪子が人を連れて来るのがよほど珍しいか、それとも初めてなのかとても驚いている。

 

「諏訪子様…諏訪子様が…」

「か、香苗…?」

「諏訪子様がお客様を連れて来たー!」

 

ハイテンションで騒ぎ始めた。

そのテンションは俺でさえ引いてしまう程だった。

スカートで跳びはね、長い髪は飛び上がり、わんぱく少年のようなはしゃぎよう。

諏訪子がやるなら似合うのだが、彼女がやると目のやりどころに困る。

 

「……なんか失礼な気配感じたんだけど?」

「……何のことかな?」

 

心読めなくても分かるのか。

いや、俺が分かりやすいだけなのか。

 

「いや~今夜はお赤飯でも炊きますか!?」

「そ、そこまですることないよ…?」

「これが素なのか…」

 

―――――

 

「取り乱して…失礼しました。私は諏訪子様を祀る神社の巫女、東風谷香苗です。」

「俺は筑城望だ。まあ…わけあって旅してる旅人…でいいのか?」

「何で自分で疑問に思ってるの…」

「よろしくお願いします。」

「こっちこそよろしく。」

 

普通の自己紹介。

考えると紹介すること俺ない。

 

(何か考えるべきか…)

(『別にいいと思うけどねぇ。』)

「!?」

「ど、どうかしましたか!?」

「い、いや…何でもない。」

 

天使の声が聞こえた。

間違いなくあの役立たず天使の声だ。

 

(『誰が役立たずか!』)

(『本当のことでしょうに…』)

(何で話せるんだ?そもそも何でお前もいる?)

(『暇だから。』)

(『…私には分かりませんが…元々話すことは出来るみたいですよ。心を読むのと同じことをしているので、残念ながら私には望さんが何を言っているかも分かりませんが…』)

(『本来この子はこの空間に住んでるから、通信みたいなこと出来るんだけどね、まだ無理なのよ。あんたが能力使いこなせてないから。』)

(『使いこなせていれば、こちらから話すことも、望さんから話すことも出来ます。私にはどうにも出来ません。望さん次第です。』)

(なら何でお前は出来るんだよ…)

(『与えたのは私なのよ?そもそも能力の調整とかしたの私だし、これぐらい出来るに決まってるじゃない。まあ心読んでるだけでそっちの声は聞こえてないけど。』)

(……)

 

―――――

香苗視点

―――――

 

望さんはいきなり何かに驚いた顔をして、すぐさま顔を反らした。

何があったのだろうか。

彼は未だに百面相をしている。

正直面白い。

顔がコロコロ変わるのは見ていて面白い。

何を考えているかはさすがに分からないが、いつまで待てばよいのだろう。

さすがに待てなくなったのか、諏訪子様が呼びかける。

 

「ああ…悪い。ちょっと色々あって…」

「大丈夫?」

 

色々とは何があったのだろうか。

そもそも私達と対面している中で何があるというのか。

私の中に生まれた認識は、とても変わった人だ。

 

―――――

視点戻し

―――――

 

(『とにかく、私がいる時は仲介役にはなるけど、早く能力試しなさい。多分すぐに出来るから。』)

(分かったよ。明日にでもやるよ。)

(『あら優しいことで……この子のこと考えるなんてお人好しね~♪』)

(うるさい。)

 

何もないとこで一人とか寂しそうだと思った。

それを読み取ったこいつの態度はとてもうざい。

 

(『ま、そーゆーわけだから、とっととしなさい。』)

(明日やるっつの。)

「私は夕食を作ってきますね。」

「赤飯はいらないからね。」

「冗談ですよ。」

「あ、俺もなんか手伝おう……」

「いえ、二人でお待ち下さい。」

 

本当は四人だけど。

その後夕食を食べながら、泊まることを説明した。

快く承諾してくれ、部屋に案内された。

その夜は静かで、月が輝いて見えた。

永琳達は元気だろうかと考えながら、俺は眠りについた。

その夜、頭痛に悩まされ、俺は記憶を取り戻した。

二つ目の課題は、いつの間にかクリアしていたらしい。

さぁ、次は一体、何を思い出すのだろうか……

 

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