(ここは……学校…か…?)
「ぶっちゃけあんな美人が姉とかさ…凄ぇ恵まれてると思うよ?」
(あれは…俺?)
「でも女が怖いの姉のせいなんだろ?」
「いやそうなんだけどさぁー…」
(姉…確かにいた…気がする。)
「二次元だとさ、姉にいじめとかパシりとかに使われた弟が、姉以外の女に怯える、とかあるけど…」
「違うんだろ?話さねぇから知らねぇんだよ。」
(あの二人…名前が思い出せないけど…確か学校の友達…)
「いい加減教えてくれよー!気になるんだよー!」
「分かったよ…二人は口が硬いの知ってるし、もう二年の付き合いだもんな…」
「お!とうとう教えてくれる時が…」
(そういえば何か教えた気が…姉…?)
「今思えば、子供の幻覚にも思えるようなことなんだ…姉さんには、二つ人格があった。」
「人格が二つ?二重人格ってやつ?」
「違う。片方は普通なんだ。でも、もう片方はどこかおかしい。体に鱗が浮いたり、言葉が変になったり、俺のことも、分からないんだ。」
(…………)
「そんなん子供の白昼夢だろ。」
「なんかの病気ってこともあるかもしれないしさ。」
「でもそんなのが夜になったら俺を食いに来るんだぞ?子供には怖いさ。トラウマもんだよ。」
「あんな美人が夜に来るとか最高じゃねぇか!」
「大人しく食われろこのリア充。」
「お前らなぁ…」
その後三人は、普通に話したり、トランプをやったりと、休み時間をだらだら過ごしていた。
この記憶から一つだけ、何となく関連して思い出したことがある。
(姉さんのもう一つの人格は、ずっと何かを言い続けてた。間違いない。)
その疑問は残り続けた。
次に目を覚ます時まで、ずっと考える程に……
―――――
「――む?望?起きろー」
「ん…ううん…」
「何か悪い夢でも見たのかー?」
「う……」
俺は上体を起こし、周りを見た。
重さを感じると思ったら、諏訪子が俺の腹の上にいた。
どうやら朝飯で呼びに来たらしい。
「全部食べちゃうぞー!」
「ちょ、待て!香苗の飯上手いんだよ!」
走って食卓へ向かう諏訪子を追い、俺も向かう。
何を思い出したのか、少し薄れていた。
というより記憶を取り戻したのを忘れてしまった。
―――――
「そういえばこんなことしてる暇あんのか?」
「何で~?」
「大和の目標次はここなんだろ?」
「ありゃ、知ってたんだ。でも…正直諦めもついてるよ。」
大和の目的である全国統合。
ここが取り込まれれば、諏訪子の信仰が無くなる。
妖怪は人間の恐れから存在するように、神も人間の信仰から存在する。
信仰が無くなれば、神といえど消滅する。
故に諦めることとは、死を受け入れたも同然。
「死ぬのに諦めんのかよ。」
「香苗には悪いけどね…私にはどうにもならないのさ…相手は圧倒的力を持つ神々…有名処じゃ
「……勝てないのか?」
「戦いで無理矢理奪われる可能性もあるけど…確実に負ける。相手にもならない。」
「抵抗の余地なしか…」
「そういうこと。精々残り少ない余生を味わうとするよ。」
「………」
話していると、食器を片付けていた香苗が戻って来た。
「お二人共、今日は何かすることありますか?」
「?ないけど…何で?」
「……実はさっきの話を聞いていて…」
「!香苗!?」
「諏訪子様は私が子供の頃から一緒でした。だから私を悲しませないように、こんな手紙を…いえ、遺書を書いていたんですよね…?」
彼女は懐から一枚の紙を取り出した。
そしてそれを読み上げた。
『旅に出る。きっといつか戻るよ。香苗の先祖に会いにね。香苗と会えるのも最後になるかもしれなくて悲しいけど、元気に過ごしてね。今までありがとう。さよなら。』
「……あはは、見つけてたのかぁ…」
「はい…」
「……はぁ…」
俺は一つため息をついて、一つだけ、諏訪子に確認を取った。
「諏訪子。月読…
「月読?…よくは分からないけど、初めに国を創ったのは月読だから…一番上でなくとも、上から三人には入ると思うよ?実力も実績も、他者を導く能力も、どの神より一歩先を行ってるよ。」
「そうか…ならどうにかなるな。」
俺は確信した。
俺ならどうとでもなることを。
都市にいる時、月読と組み手を行うことはしばしばあった。
最初こそ負け続けていたが、後々負けることがない程に、俺と月読には差が出来ていた。
何より、今の諏訪子の反応から推測するに、月読は大和にいる。
俺に免じてこの国を標的にしないことを期待することも出来る。
俺が戦えば、この国を諏訪として存続させることも出来よう。
「善は急げ、だな。」
「大和に殴り込みにでも行く気かい?」
「だったら?」
「駄目です!危険です!心を読む神様だっています!諏訪子様との関係を読まれたら、きっと……!」
「……平気だよ。俺はただ……」
「ただ…?」
「昔の友達に会いに行くだけだ。」
―――――
「いやしかしこんなとこ連れて来られるとは…」
周りを見れば石の壁。
前方を見れば柱。
まあ簡単に檻と呼ぼうか。
まさか来国だけでスパイと疑われるとは。
そして疑いだけで檻に入れられるとは。
中々どうして警戒が強い。
『(まあ明らか怪しいからね。)』
(能力練してから来るべきだったか…)
天使と短い会話(?)をして、とりあえず脱獄をした。
二時間かけて。
破壊、ないし消滅とか、音でばれる。
そこで能力を使った。
初めて意図的に使うから上手くは使えなかったが、柱を消して脱走、檻を戻す、という動作はなんの苦労もなく出来た。
檻の柱がかなり歪なのは気にしてはいけない。
脱獄に成功した俺は、いつかやったように、霊力を薄く広げ、神の力、即ち神力を探った。
強い奴、月読クラスなら気付くだろうが、なるべく巨大な気配を探した。
一際大きいのを見つけた。
俺はその神力の元へと走りだした。
―――――
「先の霊力…貴方のものですか…」
「お前がここのトップか?」
「そのようなものですが…そういう貴方は人の子のようですね。人の子にして神力を見分けるなど、不可能…とまでは言いませんが、相当な鍛練が必要でしょう。」
「あー…まあ…」
この国のトップであろう女性を発見した。
俺のやったことが高度なことなのだろう。
見た目が若いから違和感を拭えていない。
しかも俺は普段力を表に出さない。
つまり彼女は、あまり力は感じないのに、高度な技術を持った怪しい人物と、俺を認定している。
「若くしてそれ程の技量、人の子としては素晴らしいものですね。」
「そりゃどーも。そろそろ本題に入っていいか?」
「これほど無理矢理会いに来ておいて、今更何を遠慮しますか?」
実をいうと、ここは公共の場ではない。
どう見たって月読のいたような専用の場所。
許可がなければ秘書さえ入ることを許されない場所だ。
どうやって来たか?
能力で一時間程かけて外から穴を開けた。
勿論修繕済みだ。
俺ではなくこの女性によってだが。
基本何でも出来るこの能力はやはりチートだろう。
結局使い手によるのは変わりないか。
「まあ本題に入ろう?…大和は諏訪から手を引け。」
「……それは余りに一方的、こちらには何の得もありませんね。統合の話を知っているでしょう?諏訪のみ逃す道理などないと思いますが?」
「…こっちとしても一日とはいえ、一緒に過ごした奴が消えるのは嫌なんだよ。」
「そうですか。しかし手を引くなどあり得ません。」
「そうか…なら一つ、そちらに得があることを教えよう。」
「得?この話において何が……」
「月読命…こいつはお前と並ぶ神というのは間違いないな?」
「そうですね。ただの実力という点においてはあまり変わりないでしょう。それが何か?」
「確信したよ。…俺なら一人で滅ぼせるってな。」
「!?」
俺は再び確信した。
この国に神が何柱いようと、トップがいなくなれば全国統合は進まない。
例え俺が死ぬことや、幽閉などになろうと、こいつを道ずれにすることは出来る。
つまり大和にとっての得とは…
「俺と戦わなくて済むことだ。」
「……貴方と戦ったところで、こちらの勝利は確実では?貴方からは、強力な気配を感じない。交渉にもなりえません。」
「そうか?少なくともお前には勝てるぞ?…月読と同等のお前なら…」
「先ほどもそうですが、月読に対し、貴方のそれはまるで友人。力を比べるも彼女基準。貴方は、月読の何ですか?」
俺は自信満々に言い放つ。
「かなり昔からの…友達だ。」
彼女の衝撃を受けた顔、俺は数年は忘れないだろう。
注意:この作品は主人公無双ではありません。というか弱点多過ぎて東方キャラでも対策ある人めっちゃいる。まあ弱点はその内分かりますよ多分…