東方白望記   作:ジシェ

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一週間空いた…すみません。


二十一話 ~スローライフ(ニート)~

どうやら最初はお互い様子見らしい。

弾幕を撃ち合う簡素な戦い。

能力の使用もなければ、俺や過去戦った妖怪や鬼子母神のように殴り合うでもない。

まあ勿論弾幕の撃ち合いだけあって二人は飛び回ってはいる…結構早い。

 

(これじゃ埒が明かないな…)

 

若干退屈になってきたところで、二人に動きがあった。

正確には諏訪子が、弾幕の撃ち方を変え始めた。

ただ撃ち出すのではなく、遠近法を利用した別タイミングの弾幕。

当然前のを避けた神奈子の腕に、もう一つの弾幕がかする。

 

「今…」

「考え事してる余裕ないよ!」

 

今度は弾幕の回転を利用した貫通力高めの弾幕。

当たらなければどうということもないが、かするだけで抉れる威力はある。

回転による遠心力、伴う風、一つ一つが銃弾のようなものへと早変わり。

勿論俺が教えた。

 

「神奈子には効かんな。」

「…まあそうだよなぁ…」

 

そもそも格が違うのだ。

神の力は信仰、つまりは信者の数と、その信仰心の強さ。

その点において、二人はかなりの差が生まれる。

数においても、両国の人口総数から考えても明らかに少ない。

そして諏訪の信仰の大半は、ミシャグジによる恐怖心から成る。

信仰が強いというには無茶だろう。

言ってしまえば恐怖政治だ。

力の差は歴然。

 

「でもな…諦めるには早い。」

 

「そこだぁ!」

「!かっ…!」

 

地に関するあらゆるものを操る能力。

なら勿論、弾幕のような使用も不可能ではない。

砲台の形状、弾は鋭く針のように、撃ち出す速度は可能な限り最速。

つまりは弾幕の物理特化型上位互換。

それ程の高威力のものを、弾幕と同レベルの数。

更に不意撃ち、当然避ける暇はない。

その弾は、手や足を掠りながら、腹部の端を撃ち抜いた。

 

「―やってくれるね…!」

「これくらいじゃ死なないでしょ?」

 

諏訪子からすれば精一杯の虚勢。

体中血塗れでも、尚余裕はあり続ける。

 

「あ…」

「?どうした?」

「いや…諏訪子の負けだ…」

「む?何故分かる?」

(そうだった…あいつ戦闘経験皆無だった…)

 

諏訪子の戦闘経験は皆無。

対して相手は神同士の争いを生き抜く猛者。

諏訪子をベースに考えるなら、俺の考えに間違いはない。

だが相手からすれば、天を操る自分が、地を操る相手に勝つための必勝法がないわけがない。

 

「諏訪子!早く決着つけろ!」

 

「うん?何てー!?」

「もう遅いよ。」

 

声と同時に雨が降る。

それはもう親の仇のように豪雨が。

 

「わっ!?何!?」

「地の操作は大変だね…水の浸透だけで使えなくなるんだから。ほら、撃ってみなよ。さっきの奴。」

「?別にそれぐらい……あれ?」

 

今は目も開けられない程の豪雨。

俺は訓練のおかげで問題なく見えるが、月読や他は目も開いてない。

諏訪子も恐らく完璧には見えないだろう。

地面の操作が上手くいかない。

 

「あれ?上手く操作が…」

「隙ありだよ。」

「っ!……?」

 

きつい一撃が飛んでくると思った諏訪子は、思わず目を閉じる。

しかししばらく経っても衝撃が来ないことに疑問を持ち、目を開いた。

もう勝負はついていた。

 

「悪い諏訪子…負け確だ。」

「…はぇ?」

 

気乗の抜けた声で返事をした諏訪子は、意味が分からないと俺を見る。

 

「試しに地面から棒状に土を取ってみろ。」

「?まあそれくらい…」

 

言いながら造ろうとするが、すぐに崩れて落ちてゆく。

それに戸惑い、疑問を感じる諏訪子は、何で何でと聞き続ける。

 

「お前の能力で出来てるのは、浅い土の寄せ集めだ。水が浸透した土は、泥みたいにぐずぐずになる。」

「まあ土を大量に使ってでもなきゃ、普通みたいには出来ないってことだよ。」

「えっと…?」

「簡単に言うとな…土しか操作出来ないお前が、泥を初めて操作しようとしたってことだ。」

「…土と泥の違いがあんまり…」

「…重量で考えるか…土と泥、どっちが重い?」

「そりゃ泥だけど…」

「土と同じ感覚で使えると思うか?」

「……無理。」

 

試しながら言う。

雨により水分を含む土は、重量が倍以上になる。

そして土程、形状を自由に出来る程、泥は勝手がよくない。

諏訪子がやろうとしたのは、自由に形を変える土と、同じ形を泥で造るということ。

当然崩れる。

泥団子を土では造れないというのと同じこと。

地を操る能力である以上、訓練次第では出来るかもしれない。

しかし今はまだ、それほどの技量は、諏訪子にはない。

 

「それじゃあさ…泥で何か出来たら、攻撃とか出来るかな?」

「…しばらく練習しなきゃな。」

「とりあえずそちらの負けですね。」

「正直卑怯くさいけどねぇ…勝負は勝負だし…ただの弾幕の張り合いなら、負けたかもしれないしね。」

「教えなかった俺が悪い。」

 

非があるなら全面的に俺だろう。

こんなこと基礎なのだから。

ないと思って教えなかったのが間違いだった。

 

「とりあえず…終わり…でいいか…」

「何か疲れとるの?」

「ああ…これから説教でな…なぁ?」

 

天照を見る。

今にも逃げようとしているが逃げたら後が怖いと理解しているがやっぱり逃げいや…とかなりの迷いが見てとれる。

勿論逃がす気はない。

 

―――――

 

決闘から一週間が経った。

諏訪子の信仰も変わらなければ、大和に呑まれることもない。

変わらぬ平和。

一番の功労者はミシャグジだ。

あれから一切信仰がないことに気付いた神奈子が突撃してきたのは一昨日。

信仰の誘導の形式として、神の一柱として諏訪に神奈子の名が刻まれたのが昨日。

信仰の流れは、上手く誘導することが出来た。

諏訪の神として神奈子を立てることにより、諏訪子、神奈子の共同経営(?)にすることで、信仰は分割出来た。

民への説明は必要ない。

ただ一人、香苗さえ知っていれば問題ない。

 

「荒事が片付くと暇だな…」

「そうだねぇ…」

「お二人とも…凄く残念に見えます…」

 

絶賛ニート中の俺達を見て、香苗が呆れた顔で見る。

仕方がないだろう。

暇なものは暇なのだ。

今くらいこの平和な日常を享受しても許されるだろう。

諏訪子からしたら消滅の恐怖が消えたのだから。

俺は、今日も今日とて縁側で団子を頬張る。

ここしばらくの行動半分が団子かもしれない。

そるから更に一週間、俺は駄目人間ライフを過ごすのだった。

 




タイトルは最後だけ。ちなみに主人公の好物(もはや主食)は団子です。最悪食べなくても死なないし…
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