鬱蒼と茂った森の中、俺は示された道を歩いていた。
手紙から十日、重い腰を上げ向かうことにした。
眼前にはただただ木が生い茂っており、景色は変わらず森の中。
手紙の主も現れなければ、一人で来たために退屈。
森には小動物も妖怪もいない。
なにせ空から見た範囲以上に俺は歩いているのだ。
更には範囲はあまり広くしていないが、探知用の霊力を広げている。
それを感じると、妖力は明らかにループしている。
同じような気配が複数箇所にある。
「この森…終わりないな。」
ならどうすればいいか。
決まっている。
「罠って分かったし…とっとと帰るか!」
地面へと拳を振り抜いた。
衝撃で木々が揺れる。
空間が歪もうが、破壊すれば関係ない。
十日の間に新しく考案した能力の使い方。
空間を操作する動作の終了、つまり消滅。
それを拳に纏って放つ衝撃波。
絵を描いた紙を白紙に戻すようなものだ。
出来ることは限られるが、指定したものを消滅させる衝撃波を放つことも出来る。
今回の指定は歪み。
本来の空間を歪めている能力そのもの。
ちなみに非常にコスパが悪いためあまり使いたくない。
「ん…抜けられたな。」
辿っていた妖力が一つの線になった。
犯人の居場所を見つけた。
あとは殴るだけだ。
―――――
まさかの森を抜け、更に二十分歩き続けている。
何もない平野を歩き続けているのだ。
探知しつつのためにダッシュも出来ない。
(面倒な……)
まだ歩かせる気かと少しイラついていたら、明らかに終わりのようなものが見えた。
戸…それも単体で。
「何だこれ?」
どうするか考えたが、開ける以外に選択肢はない。
鬼が出るか蛇が出るか…
戸を開けたその先には…
「ようこそいらっしゃいました。」
犯人が出迎えに来ていた。
―――――
「あの手紙なんなのか聞きたいから、親とっとと出してもらえるかな?」
少しイラついた口調で、目の前の少女に言う。
紫を基調としたスカート、色の綺麗な金髪は肩より下に垂れていて、身長は俺より三十㎝以上は小さい(百二十㎝程)。
まるで外国の子供だ。
そんな子供が、あんな手紙を出すとは思えない。
そう思って親を出すよう言ったが、自分が犯人だとこいつは言う。
「…まあ妖怪の年齢は見た目通りではないか…」
「まあまだ私は百年も生きていない若輩ですが。」
「……」
さすがに殴る気にならない。
児童虐待の趣味はない。
いや児童ではないのだが…見た目の問題だ。
まあ年齢だけ言うなら俺の十分の一も生きていないか。
「それで?何でここに呼んだ?」
「私の目的を手伝ってほしいのです。」
「目的?お前妖怪だろ?…人間抹殺とか…大和の乗っ取りとかか?」
「妖怪が全て人間を嫌うとは思わないでほしいですね。」
確かに鬼子母神は強ければ何でもいい感じだった。
………妖怪の中で知ってるのこいつだけだな。
「いまいち納得してませんね。」
「そりゃ妖怪に襲われることしかなかったんだから、当たり前だろ?」
「それもそうですね。では、目的を明確にしておきましょう。私の目的は…いえ…目標は、人間と妖怪の共存です。」
「……無理だな。」
「そこまで頭から否定しなくてもいいじゃないですか。…私だって、無理だと思います。でも…」
「……無理…かもしれないけど、絶対じゃない。」
「…はい。私は、諦めたくない…!」
「何があったか知らないけど、方法はないこともない。」
例えば交渉―俺の能力で別世界を創ることで、共存を考える妖怪、人間だけを強制的に隔離する。
例えば支配―実力を見せつけることで、力による支配をする。
例えば……殺戮。
方法はいくらかあるが、どれも無茶なものだ。
だからこそ、
「厳しいことになるのは覚悟の上だな?」
「当然です。」
鋭い顔つきで、きっぱりと肯定する彼女は、本気で共存を目指しているようだ。
「……そうか…」
「答えをお聞かせ願えますか?」
「…分かった。出来ることがあれば、いくらかは手伝うよ。」
「本当ですか!?」
彼女はとても嬉しそうに叫んだ。
理解者などいなかったのだろう。
とても荒唐無稽な話だ。
叶えることの不可能な夢。
しかし実現させようと足掻く哀れな少女。
周りからはどう呼ばれたのだろうか。
裏切り者、愚か者、どれだけ揶揄されてきたのだろう。
(せめて俺だけでも…味方であろう…)
共にいることを誓いながら、叶わなかったことがあった。
なら今回は叶えてやる。
こんな夢でなければ思わなかっただろう。
たとえ不可能でも、諦めないこの少女に再び誓おう。
俺の願い…『望み』を見つけるなら、他人の願いから叶えた方が見つかるかもしれない。
俺はまだ、自分のしたいことも分からないままだった。
この幼女は誰か皆分かるよね?いつ生まれたか特に分からなかったから諏訪位にしました。まだ幻想郷は出来ない…咲夜さんも出ない…(泣)