東方白望記   作:ジシェ

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今回飛ばしました。だって東方要素しばらく皆無とか話進まんのですよ。まあ今回は閑話みたいなもので…


二十六話 ~出会いと別れ~

あれから十年の月日が経った。

香苗はあれからとある青年を連れて来て、二年の交際の末結婚した。

それが六年前になる。

子供はいないが、既に妊娠八ヶ月を過ぎた。

じきに次代の守矢の巫女が生まれることだろう(女の子なら)。

青年はとても性格がいい。

神に対する礼儀正しさもあり、香苗の胸を見て興奮することもない。

諏訪子に対して恐怖心もなく、何より香苗以外の女性に目を向けることもない。

蓄えもあるし、この時代には少ないとはいえ酒や娯楽に傾倒し過ぎることもない。

そして清潔感もあり、まさに理想の男性像だろう。

男の俺から見ても希少に思える。

彼になら任せられる。

神共々そう思った。

 

―――――

 

「お願いします!」

「……」

 

彼が目の前でしていること、地面に膝を付き、蹲る形で頭を下げる。

世間一般で言うところの…所謂土下座だ。

何をそう必死に頼んでいるか。

『強くなりたいから稽古を衝けてほしい』だそうだ。

 

「死にたいの?止めないけど。」

「へ?いや死にたくはないですけど…」

「ちなみに霊力の操作は?能力はある?武器とか持ったことは?」

「………ありません。」

「だろ?その素人同然…いや素人以下で俺の特訓なんてしたら、一瞬で死ぬぞ?だから悪いけど…そこにいる注連縄から教わってくれ。」

 

(秘技丸投げ。これで殺さずに済みそうだ。

)

「面倒になったねあんた…」

「いや娘みたいに可愛がった香苗の婿殿を殺すわけにもいかんだろ…」

「本当に死ぬんですか…?」

 

諦め切れずに聞いてくる彼に断言する。

 

「死ぬ。間違いなく。まあ口頭であれこれ言う程度なら出来るが…やっぱり実戦も必要だからな…」

「……妖怪と戦うのは…」

「監督役は神奈子になるがそれでもいいか?」

「あたしかい?構わないけど…あんたは?」

「そうだな…色々作ってるよ。」

「ああ…」

 

能力の操作を十年あって学んでいないわけがない。

勿論色々出来るようになった。

例えば創造…あらゆる物を作ることが出来る。

例えば消滅…あらゆる物を消し去ることが出来る。

これだけでも十分過ぎるが、空間の創造まで出来るから万能だ。

ただし当然制限はある。

戦闘中に創造するのは正直不可能であり、相手を消滅するのも正直不可能だ。

消滅はその空間毎消す。

つまり場所を指定するのだ。

しかもかなり時間がかかる。

創造も同じく時間がかかる。

流石に戦闘中にそんな時間はないのだ。

解決する方法もあるにはあるしもう出来るが、あまり実用性はない。

触れた空間だけ能力を使うことだからだ。

つまり触れれば消滅出来る。

強いと思うが実際は無理だ。

弾幕が一番の攻撃方法だからまず近付けないし、諏訪子なんか戦闘開始と同時に土壁を造るようになったからより接近出来なくなった。

結局戦闘は今まで通りだ。

逸れたがとりあえず能力でトレーニンググッズでも作るという話だ。

 

「ということだから神奈子任せた。」

「まあいいけどね…」

「よ、よろしくお願いします!」

 

…彼は更に徳を積むつもりのようだ。

終生後は更に幸せでいてほしい。

 

―――――

 

さて、ここまで香苗やその彼のことにしか触れなかったが、それ以外はないのかと思うことだろう。

大和は、月読等月関連は、課題は、当然何もないわけではない。

まず大和だが…諏訪を除き大国の統一、つまり全国統一は失敗に終わった。

中途妖怪との激しい戦闘の末、主力が数名命を落とした。

更には妖怪により滅ぼされた国もあり、統一などとてもじゃないが不可能だ。

当然各国に現存する神々の抵抗も凄まじい。

結局大和は、一大国として普通に栄えている。

次に月だが、俺が月へ行く方法はなかった。

ロケットなど存在しない時代、能力もそういったものはない。

俺の能力も移動は出来ない。

最後に課題のことだが…

 

『神子の目的の達成』

 

…神子って何、もしくは誰。

少なくともここ二ヵ国にはいない。

年代的に生まれてないのか、もしくは既に死んでいるのか。

目的とは、居所は、容姿は、名前は、何も情報なく探せるわけがない。

ということで未達成、どころか進展なしだ。

天使達も教えないとのことだ。

そうそう、天使との連絡は簡単に取れるようになった。

真面目…ではないが、まともな方との会話が可能になった。

十年あればこれ程変わる。

それ当然のことなのだろう。

 

―――――

 

更に二十年の月日が経った。

香苗の子もそろそろ成人、香苗も既に四十を過ぎた。

見た目が変わらない自分を見る度に、違うことを実感する。

いずれ死んでいく。

だが俺に死はない。

神でさえある死という概念は、俺にはない。

どんどんと死んでいく。

やがて香苗が老人になってからは、昔を思い出し続けていた。

可愛らしい香苗似の孫を見ながらも、思うことは楽しかったという感情。

楽しかった思い出、それを語りながら、香苗は…命を引き取った。

 

「…おやすみ。香苗…」

「………」

 

涙する人々。

思い出に浸る神々。

その中で俺は、冥福を祈っていた。

徳を積んできた彼女が、幸せであれるように。

 

「誓いは…果たしたぜ…」

 

俺はひとり呟いた。

 




次は時系列的におおよそ百年後なので尸解仙まで飛び…ません!まあ既に察してると思いますがもう望は旅に出ます。なので次は旅の一幕です。尸解仙で誰か分かるのかな…
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