「……」
「……」
ふたりの間に会話はない。
歩く足音がその静かな空間に木霊する。
片や恐怖から言葉を発せず。
片や最近会話自体しなかった人見知り(?)。
会話があるはずもなく、森の出口に一直線。
「…ほら、ここが出口。ここから真っ直ぐ行けば人の村が見える…はず…です。」
「おう…」
それ以上の会話なく、二人は別れた。
もし鬼子母神の子らだと望が気付けば。
もし鬼達が、望を仇だと気付けたなら。
別れることはなかっただろう。
鬼と…妖怪と人の共存が、出来たのかもしれない。
しかしそれは、可能性の話しに過ぎなかったのだった。
―――――
鬼と別れた俺は、言われた通り真っ直ぐ進んでいた。
平野を既に十日程。
嘘吐いたのかとイラつき始めた頃、ようやく人工物を見つけた。
「お、やっと見えた…」
およそ十キロくらいの距離に、塀のようなもの。
ゆっくり行っても三十分くらいで済むだろう(望に限り)。
ということで…
「ふっ!」
超加速した。
単に歩くのが面倒になった。
というより団子が食べたくなった。
と言うのも、村々を旅する度に、絶対に買うのが団子だ。
保存している団子もそろそろ切れる。
つまりこれは…獲物を見つけた鳥の行動だ。
まあ歩きで三十分なら、走ればいくつか。
およそ二分で到着した。
当然門衛に止められたが。
「な、何者だ!?妖怪か!?」
「人間だ…ん?どうなんだろ…」
「……はぁ…それで…何なんだ君は?」
旅人だと簡潔に答え、村(町?)に入れないか聞いた。
門衛は通ることを許可してくれた。
町に入り、門衛から少し説明を受けた。
どうやら門を通ると妖怪だけを弾くようになっているらしい。
月の都では門以外だったものだ。
(となると…ここにも神が?)
自然な疑問だろう。
妖怪を弾く結界を、一介の人間が出来るものでもない。
「なぁ…ここってなんか…こう…特別?いや…不思議な力持った奴とか…いるのか?」
「不思議な…ああ、町の結界は旅の者が施して行った物だ。あの方を探していたのか?残念だがもう…」
「いや、そうじゃないんだが…」
どうやらそういうわけでもなさそうだ。
ならばいつも通りしばらく住み着いて…
「しかし不思議な力というだけならば…聖徳太子なるお方が住んでいるぞ。」
「……聖徳太子?」
「ああ。一度に複数人の言葉を聞き取れる方だ。他にも我々では理解出来ない知識の数々、どのような問題も解決してしまう高い叡智、まさしく神の子と呼ばれるお方だ。」
「余程心酔してるな…」
しかしそういった者がいるかつ広い町、神子のことについても聞けるかもしれない。
「日中ならいつでも相談が出来る。一度行ってみたらどうだ。
「……場所教えてくれ。」
「ああ。」
―――――
それからというもの、町の散策と団子買いだめ、聖徳太子についての聴取、色々行った。
結果というもの、聖徳太子に対する人々の信頼、その程度を知ることが出来た。
所謂崇拝、あるいは魅了、恐らく聖徳太子という人物は、人心掌握に長けている。
勿論悪事を働いているわけでもなく、妖怪との戦闘には前線に出、貧しい者には財を与える。
まさしく聖人君子足る人物らしい。
「なんか怖いな…この町。」
何故そう思うのかは何となくだが、もし聖徳太子がいなくなったらどうするのか。
この町の不安要素は、万能なだけに、一人だけで回るこの政治。
俺は、相談に託つけて、聖徳太子への進言に向かった。
ただのおっさんに優しくする?
聖徳太子は…まだ二十歳過ぎの女性らしい。
男ならともかく、女となれば心配になるのも仕方ない。
せめて頼れる部下の一人もいなければ、ここは終わる。
(まあ裏からの依頼だがな!)
団子の買いすぎで金欠の俺は、結局は金で動くのだった。
*望は何でも屋です
しかし本当に一月投稿みたいになって申し訳ない!早く…します…(何度目だっけ…)