東方白望記   作:ジシェ

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速い…速いぞ…!更新が速いぞ…!


二十九話 ~心理戦~

早速聖徳太子の相談を行っているお堂へ来た。

そこには目を疑う光景が広がっていた。

とてつもない人の数、それこそ町のほとんどの人が来てると思う程の…おそらく百はくだらない。

 

「こんなん一日で終わるのかよ…」

 

そう思ったのも束の間、ものの一時間程度で、およそ五百近くの人間がその場を去った。

どうやら複数の人の声を聞く、というのも間違いないらしい。

しかし…神童と呼ばれる者であっても、人間の能力の限界は越えられないはず。

二つ以上の事柄、所謂『マルチタスク』と呼ばれる或いは能力と呼べることが出来る脳を持つ人もいる。

しかしそれは、実は『二つ以上』ではなく、『二つまで』のもの。

それ以上は脳自体に危険を及ぼす可能性があるのだ。

短時間だとして、よくて三つ、無理して四つ、そして聖徳太子なる人物は…少なくて十。

つまり彼女は、能力を用いてこれを行っているか、もしくは…人間ではないか。

 

「…ふむ…」

 

人でなければ、仙人として何百年か統治も出来るだろう。

しかし能力なら、失う損失は大きい。

 

「はぁ…面倒くさ…」

 

本人に聞く以外方法がないから、圧倒的面倒くささに悩まされる。

 

「答えてくれるか…?」

 

答えてくれることを切に願う。

 

―――――

 

『―――ま―な――ください!』

『太子様!是非私を門戸に…!』

『儂の腰は治るかいのう…』

 

等々、くだらないことや聞き取れないような声で様々喚く。

失礼とは思うが、正直半分近くは来る意味もないのでは。

近付くにつれ聞こえる言葉に、俺はどうしてもそう思う。

自分の番になり、何言おうと考えた俺は、ふと気になったことを軽く聞く。

 

『――!』

『――!』

「……聖徳太子は本当に馬小屋で生まれたのー?」

 

少し意地悪に、小さい声で言った。

俺は右端におり、回答は左端から行われる。

順に答えていく聖徳太子は、そのまま俺の問いに答える。

…思いがけない答えを。

 

「……その問いに答えるには、まず私の門戸になっていただきたいね。」

 

こんな簡単な問いで?

さっき門戸にしてくれとか言ってる奴、なんかすまん。

そう思いながら俺は応えた。

 

「断る。」

「……そうか。…そうだな…少し二人で話しがしたい。君、彼を屋敷に案内してくれ。私の屋敷に招待しよう。それならいいかい?」

「…分かった。話しくらいなら付き合おう。」

「感謝するよ。」

 

しかし初対面の俺が、いきなり屋敷に行くというのはどういうことなのだろうか。

 

―――――

 

「貴方が大使様のご招待を受けた方で相違ありませんか?」

「……ああ、うん、そう。」

 

団子食べてて忘れてた。

だって一時間経ってるし。

 

「ご案内します。こちらへ。」

 

言われるままに着いて行く。

途中にある家は歴史の教科書にいくらでも載ってそうな昔の家屋。

そして聖徳太子の屋敷も…これまた教科書に載ってそうな大きい屋敷。

 

「――」

『――どうぞ。』

 

門番さんに通してもらえた。

通されたのは畳の一室。

聖徳太子は…まさかの正座で待っていた。

お供は屈強な男一人。

 

「やあやあ待っていたよ。」

「…随分軽い…」

「向こうでは、少し気取った方が様になるからね。こっちが本来の私さ。さて…早速だが本題に入ろう。」

「何で呼んだ?初対面で何話すんだよ。」

「なに簡単なことさ。君だけ、とても異質な気配を感じた。」

 

直後に武器を構えた男が、俺に刃を向ける。

 

「可能性はいくつかある。仙人の類や、私のように特別な何か、もしくは…化生の者。」

「……何怪しんでるか何となく分かるけど…どれに近いかなら俺は…仙人かね?」

「仙人には、仙術なる異能があると聞く。見せていただけるかな?」

「…無意味もいいとこだな。妖怪も能力なんざ使える。それに妖怪は、そいつ一人じゃどうにもならない。」

「…これでもこの町の中では一番の兵だが…足りないと思うのだね?」

「そいつが十人いれば、一体程度なら狩れるんじゃないか?」

「……そうか。」

「それと、こっちも聞きたいことがある。」

「…ふっ…君に敵意がないことは分かった。聞きたいことがあるなら何でも言おう。」

「なら……お前の目的は?」

 

その一言で、聖徳太子は鳩が豆鉄砲食らったような顔になる。

記憶のための課題、もう直球に聞くしかない。

 

「…目的…とは?」

「悪いな。気になったもんで。」

「……すまない。君は席を外してくれるかい?」

「…分かりました。」

 

男が部屋から出ていく。

見送るやいなや、俺を問い詰める。

 

「目的の概要は?私が何をしようとしていると?民をも利用して、のしあがろうとしているとでも?一体、何を知っている?」

「…解脱。」

「…?」

「まだこの言葉は知らないのか…なら、輪廻からの脱却。」

「…!?」

「そうだな…輪廻から外れ、神の下へ向かう…ってとこか…いや、もしくは不老不死にでもなろうと?」

「……驚い…たね…何でも知っているようだ。」

 

本当に驚いたように、彼女は俺から身を引く。

どうやら当たりのようだ。

歴史の聖徳太子は、解脱の本を書いたという記述が確かあったはず。

その内容は読んだことないから知らんが、少なくとも聖徳太子が輪廻について調べた証拠ではある。

輪廻から外れ、救われること。

つまり生まれ変わることがなくなる。

何故望んだ?

生まれ変わることのない魂は一体どうなる?

ましてこの時代の人間が魂などという抽象的なものを信じるか?

違う。

死んだ後ではない。

生きている間を考えているんだ。

 

(さて…記憶のために協力してもらおうかね?)

 

 




………
???『御臨終です。w』
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