東方白望記   作:ジシェ

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………眠い


三十話 ~未来の約束~

「不老不死なんてロクなもんじゃない。永遠に生きて、他者を見送り、感情さえ薄れるその体に、一体何の意味がある?」

「…私は別に不死を望むわけではないよ。ただ人の生死を…自らが望むことが出来ない不自由さが、ただただ気に食わないだけさ。」

「何故人は死ぬのか。『死』を運命付けられているのか。それが許せないと?」

「或いはそうかもしれない。その疑問を解くために、時間を欲しているに過ぎない。『死』という苦しみからの解放を望むが故に、『生』という苦しみを感受している。それが私の生き様だ。」

 

彼女はただ死にたくないという安易な考えではなく、別の目的を持って不老不死を望んでいた。

俺はどう答えるべきだろうか。

彼女の望む不老不死は、既に目の前にいるというのに。

 

「……ずっと苦しいのって…辛くないか?」

「…そうだね。でも…そこに救いがあるのなら、苦しみもまた美談になろう。」

「そうか。」

 

俺は俺の疑問も大体解消したところで退散しようとしたのだが、太子に呼び止められた。

 

「時に一つ、気になったことがあるのだが…」

「ん、何だ?」

「どうして君からは欲が聞こえない?」

 

欲を聞く。

恐らくそれが彼女の能力。

複数の声を聞き取る聴覚?

違う。

平たく言ってしまえば、読心術が能力なのだろう。

他者の声、態度から心を読み、望む回答を行う。

まあ複数の声を聞くというのも、やはり能力の一つ…いや一部なのだろう。

 

「欲ね……ないよ、そんなの。」

「む?そんなはずはないだろう?人は欲深い生き物だ。何も望まず、得る物もなく、なあなあと生きるなど、傀儡と大差ない。君は…君からは、何の目的や野心も読めなければ、眠気や空腹といった浅い感情さえ読めない。君は人間ではないのか?」

「…人間…ね。」

 

不老不死は人間なのだろうか。

この体になってから…いや年を経る毎に、感情が薄れている。

それは確かだ。

しかしそれでも、団子を食べたい、などの簡単なことは考える。

何故感情が読めないか。

仮説があるとするならば…

 

「いや能力が効いてないだけじゃね?」

 

正直そう思った。

確かに感情は薄いが、人並みの欲求はある。

でなければ団子の爆食いなどしない。

 

「もしかしたら…霊力に差があると読めないのかもな。」

「…霊力?」

「いや、何でもない。まあ気にするな。さて…そろそろ帰るかな。」

「もう帰られるので?」

「ああ…そうだ!なぁお前神子って知らないか?」

 

そもそもの目的を忘れて帰るところだった。

ギリギリ聞くに至ったが、彼女の口からは以外な答えが返ってきた。

 

「…それが名であるなら…私のことだろう。名前は教えてなかったね。私は豊聡耳神子。君の探している神子というのは 、恐らく私のことだろう。無論違う可能性もあるが…」

「…まじか…」

 

思わぬ収穫とはまさにこのこと。

となれば目的の達成…不老不死?

 

(無理じゃね?)

 

はっきり思う、無理だろうと。

そもそも不老不死の存在など自分しか知らない上、俺は転生したのだ。

なら一回死ねばなれる…わけもない。

第一これは特典のようなもの。

自殺したって得られるものでもない。

 

「……」

「どうされた?」

「…いや…」

 

やはり無理だろう。

達成不可能だ。

俺は若干諦めていたが、これを設定した天使なら何か知らないかと問いかけてみた。

 

(なあ、どうすればいいんだこれ?不老不死とか絶望的だろ。俺は何考えてたんだ?)

『ああー…実際無理じゃないんだけど…不老不死に近い存在に彼女がなるのは、もっとずっと先ね…このまま課題進まないのもまずいし…課題の順を変えようかしら?』

(出来んのか?そんなこと…)

『誰が課題を選んだと思ってるの?書いたのは貴方だけど時系列にしたのは私よ?それがミスってたなら簡単に直せるわ。』

(……)

 

わりと何でも出来る存在が身近にいるものだ。

一応この世界の神相当なだけある。

 

(まあ改変は任せる。課題の紙もくれよ?)

『はいはい、分かった分かった。任せなさい。』

 

「…悪いな。ちょっと考え事してた。聞きたいこともとりあえず終わったし…そろそろ行くよ。」

「そうか…一つ、君にも伝えておこう。」

「あ?何を?」

「……私は近々いなくなるだろう。青娥という者から、道教という不老不死を研究する教えを聞いたのだ。」

「…別に消える理由にはならないんじゃ…」

「既に体が崩壊を始めているとしても、か?」

「…は?」

 

俺はすぐに肌の露出している部分を見渡すが、そんな様子はない。

となると内臓や脈がおかしいのか。

 

「すぐに消えるわけではないさ。しかし…私は不死を求め過ぎた。そのあまりに、様々なものを取り込み過ぎたのだ。」

「…死ぬのか?」

「…ふっ…私が死を嫌うのは今日分かったはずだ。…死ぬ気はない。それに青娥殿より延命の術も聞いている。私は尸解仙となろう。」

「尸解仙?」

「まあ簡単に仙人とでも考えるといい。細かい説明は意味を成さない。死ぬのではなく眠るのだ。いずれ私を求む者らが現れるまで…」

「……まあ好きにしろよ。俺にはそんな関係ないし。でも…いつかまた会えるだろうな。」

 

約束された再会。

課題を後回しに出来るなら、再び会うことは確実。

これは絶対の事柄なのだ。

だからこう言う。

 

「またな。」

「ああ。またいつの日か…」

 

俺は翌日、早々に旅に出た。

用が済んだのもあるが、神子と話す楽しみを先の方へとっておく。

嗤い歩く俺は、また一つやることを作るのだった。

 




夜書くと変なこと書いてる気になる…不安になるの…分かる人いるよね?
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