「………?……んん!?」
疲弊しきった状態で、俺は村を見つけた。
正直予想外な位置…森の中にあった。
「やっと人のいる…」
「…ん?き、君!どうした!?何故そんなにぼろぼろなんだ!待ってろ!すぐに治療を…」
「あ、大丈夫。傷とかはないから。」
「……本当か?」
こんな森の中、突然現れた男を妖怪と疑わないのか?
そう思いながら、招かれるならと村に入る。
別段変わったところもなく、村にしては大きいくらい。
「服なら俺の古いのになるが、お前に合うやつもあるだろう。本当に怪我はないんだな?」
「ないって…(あ、敬語忘れてた…)…ないです。」
「ならいいが…あと今更遅いぞ。」
「…おう。」
しかし特に何かある村でもなく、特別な人物がいるでもない。
門番の男と話す内、その村に滞在することを決めた。
聞けばこの森には妖怪はいないらしい。
この村の変わった所はそこだろう。
村の守り神たる存在がいるようだ。
誰も見たことはないが、村の伝説によれば…
牛や山羊のような姿をしており、曖昧な容姿。
人四人分程の巨駆に複数生えた角。
自然の具現のような翡翠の瞳を複数。
それら特徴を持つ獣。
百年近くの時を護り続けてきた…護り神だ。
「あのお方のおかげで、俺達は平和に過ごせる。旅人には分からんだろうが…あのお方を馬鹿にするのは、この村の皆が許さん。この村に留まるなら…それだけは覚えておけよ。」
「……おう。」
盲信宗教は敵に回すと一番面倒くさい。
―――――
「~~♪」
人との会話がこんなに楽しいこと初めて知った。
失って知ることもあるというが、やはり得て知ることの方が多い。
「お、さっきぶりだな。」
「おー…門は?」
「当然交代制だ。」
それから門番の人と他愛もない話をしながら、食事処で夕食にした。
そこそこ獣はいるそうで、飯は肉だ。
何故妖怪がいないのかは…よく分からない。
神に類する者なら、妖怪だけ避ける方法があるが、実際どうなのだろうか。
「?」
「――――……?ああ、すまない。食事前には祈りをするのは癖でな。旅人には分からんだろうが…狩りが出来るのもあのお方のおかげだからな。」
「ほー俺には無理だな。」
神と喧嘩するし脅すし教えるし。
多分上位の奴らと関わり深いからな。
食事を終える頃にはすっかり日も落ちていて、人通りも減っていた。
「色々ありがとな。おかげで宿も取れたし、飯にもありつけた。」
「いんだよ。持ちつ持たれつだろ?次はお前が何かしてくれよ。」
「ああ。」
久しぶりの会話は楽しく、飯は旨く、布団で寝るのは暖かかった。
ゆっくり休み、翌日。
平和は短いと言うが…一日で終わるとは…
『おい!早く消せ!』
『馬鹿!溢すな!』
一軒焼けた。
それはもう凄い勢いで。
よりによって俺が村に来た直後に。
村人の目線は俺に注がれる。
それはそうだ。
俺が来たのは昨日、そして焼けたのは今朝。
「お前が…お前が…やったのか…?」
「門番さん…」
「何故だ…何の恨みがあって…」
完全に犯人扱いだ。
しかし村人全員がここまで焦るとは…特別な家だったのか?
その問いはすぐに解消された。
「ああ…白澤様がお怒りになる…」
(ああ…昨日言ってた奴関連のものが…)
気付いた時には、狼のような遠吠えが辺りに響いた。
家の壁が焼け落ち、中が見えるようになる。
食料や獣の骨、姿を型どった像。
勿論それも焼けていく。
『ウォオオオォーーン!』
「おお…白澤様…どうかお鎮まり下され…」
…確かに遠吠えは大きいが…怒りの感情は見られないような…
『……やはり…我が主が参ったか…』
「白澤様…?一体…」
『そこにおられる腰に扇を携えたお方よ…私は貴方に従います…』
「……あ俺か。どうゆうことだ?」
『天照様、及び月読様より、各地に霊獣が配置されているのです。貴方との連絡係として、共に行くために。』
「あいつら…それなら人間の方がよかろうに…」
『あの方々も貴方がいなくなることが不安なのでしょう。我々はあの方々に作られし存在。どのような雑事も、従うのみ。』
「じゃとりあえずまず一つ。あの家焼いた奴は誰だ?」
『私です。私を繋いでいるあの家が残っていると、私は自由に行動出来ません。』
「おう…」
「お、お待ち下さい!白澤様!どうか我らを見捨てないで下さい!白澤様がおられなければ、この村は…」
そう叫び歩いて来たのは、青く長髪の若い女性。
見捨てないよう願っているが、白澤は俺に従うと頑として動かない。
「…お前は俺に付いて来るつもりなのか?」
『霊獣は総じて、創造者、並び契約者との念話を可能とします。私が貴方に付いて行けば、天照様方に、貴方の生存を伝えることが出来る。なので付き従うことをお許し下さい。』
「むぅ…しかし村を見捨てるのは…」
『…では…お主に私の力を与えよう。その力を用いて、村を護るがよい。』
「え!?」
そう言い白澤は体から光を放ち、その女性を光に包んだ。
「!?」
『少し動くな。そうすれば、お主に私の力を与えることが出来る。』
「人間に与えて大丈夫なのか…?それ…」
『…種族が少し変わろう。半分は霊獣に…』
「は!?それまずいだろ!」
種族が違うことは、人間の畏怖や敵意の対象に成りかねない。
例え半分でも、人間からの虐待もあり得る。
しかし女性は構わないようだった。
「村を護るためなら…構いません!」
『そうか。ならば私の代わり、精々頑張るといい。お主からは…心良い気配を感じるのでな。期待している。』
親が子を見るように、白澤は彼女に優しい眼差しをむけた。
その日、そこに一人の守り神が生まれた。
鬼の角のような二本の角、それ以外はあまり変わりないが、人ではないと断言出来る者に。
後にその者は百年に渡り村の守り神となることを、その場にいる者は、当然知る由もなかった。
誰か分かりますね?白澤(ハクタク)ですからね?