東方白望記   作:ジシェ

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三十五話 ~村の守護者~

俺が降り立った直後、全員が手を止め視線を送る。

何者かが中心に急に現れれば、誰でもこうゆう反応を示すだろう。

まあそれも数秒。

人間側はこの一年俺が妖怪と何度も戦っていたことを知っている。

俺が援軍として来てくれたことを察してすぐに退いてくれた。

妖怪はその様子を見て少し退いていたが、所詮一人と、能力持ちが前に出た。

見た目は人の上半身、蜘蛛の下半身を持つ妖怪。

能力は…

 

「やっぱり重力か。」

 

俺の周りだけが重くなる。

まるで巨大な岩を持つような重さ。

 

「ま慣れてるけど。」

 

修行で慣れている。

あまり嘗めないでほしいな、俺の修行。

 

『…頭が高い!』

「…!重っ…」

 

しかし多少重くなっても程度が低い。

すぐさま踏み込み、懐に入る。

殺さない程度加減をしながら、腹に一撃を加え…ようとした。

 

「!?」

 

体を腕が貫通したのだ。

それも肉や骨ではなく、土のようなものを。

 

「あいつ…体が土だ。」

人形神(ひんながみ)ですね。土で造られた人形…ではあなたが黒幕ではないのですね。」

「いつの間に…で?人形神って何?」

「願いを込めて造る人形から生まれる…つくもがみのようなものですね。材料は墓の土。動く理由は亡霊、悪霊の類だとか…」

「なるほど…」

『お喋りはそこまでです。死になさい!』

 

待ってたというよりは力を溜めていた人形神は、これまでとは別格の重力を下に向けた。

白亜は立つのも耐えられずに倒れ伏す。

 

「残念だけどまだ軽いな~」

『な!?』

 

繰り返そう。

俺の修行を甘く嘗めないでほしい。

 

「それに亡霊なら加減はいらないな!」

 

能力『消滅』

存在する空間ごと消し去れば、どんな体でも関係ない。

あいつは慢心からか一歩も動いていない。

座標ごと指定するから多少時間はかかったが、これで終わりだ。

 

「さて…と。」

『ひっ!』

 

首を九十度曲げるように残党を見る。

逃げなければ殺す。

挑めば殺す。

そういった殺意を妖怪に向ける。

残党は全員逃げだし、その場には(白亜除き)人のみとなった。

 

『うおおぉぉ!』

 

自警団の雄叫びが響く。

それからは口々に俺に感謝して行き、何人か奢ることを約束してくれた。(よし!)

 

「…やはり敵いませんね。私では物理的に破壊することしか出来ませんでしたから。」

「能力でもなきゃ無理だよ。燃やしても効かなかっただろうしな。」

「しかし黒幕はどこにいるのか…聞く前に倒してしまいましたね。」

「いいよ。まだここに留まるし、気長に探す。」

「…それなら墓でも見張りますか?それなら、少なくとも人形神は現れません。」

「そうだな。そうしよう。」

 

それからの村防衛の話しを、自警団の何人かと話し合った。

結果…墓守を立て、しばらく俺が戦闘指南をすることになった。

 

―――――

 

指南始めて約三月。

村での俺の立場がよく分からなくなった。

と言っても呼び方は二つ、『仙人様』か『隊長』の二択。

時たま『狩人』とか言われる。

白亜は基本(ねえ)さんになってる。

何とも言えない呼び方に、不安はそこまでなかった。

俺も白亜も思いの外呼ばれ慣れていたのだ。

それから…人形神の制作者が分かった。

人形神は墓地の土から造られる…つまりは造り手が人間である必要はない。

案の定、造ったのは攻めて来た妖怪の一体だ。

訓練した墓守が捕縛を達成した。

人間の子供のような背丈と人型、違うのは角ぐらい。

そう…黒幕は鬼の子供だった。

 

―――――

 

「お前…なんでこんなとこにいるんだ?」

「………」

「…恐らくは迫害では?鬼という種族は、元々が人である場合も多く見られるらしいですよ。どう成っているかは知りませんが…」

「……」

「主様?」

「……お前さ…鬼子母神か、もしくは近い奴らに鬼にされたか?」

「!?……人間が…母様を軽々しく…」

「やっぱりな。あいつはやるよ。大方、ずたぼろで倒れたところを、鬼にしてもらって生き延びたってとこだな。あいつは人が好き…いや、嫌いじゃないからな。」

「会ったことが?」

「…俺が初めて負けて、初めて勝った相手だよ。簡素な殴り会いでも、頭使うよりよっぽど楽しかった…」

「……母様…」

「…行く場所ないなら、一緒に来いよ。人襲わなきゃ安全は約束してやる。どうする?」

「…………」

 

―――――

 

その鬼の子供は、二十年前の鬼の祭(?)の時から、俺をずっと追ってたらしい。

鬼になったのもどうやらその辺り。

鬼の大半に嫌われながらも、鬼の四天王である萃香に育てられていた。

それが祭の時、俺が秒殺していったのだ。

あれが四天王だということは勿論今知った。

その後修行のためあまり構ってもらえなくなり、遂には嫌っていた鬼に殺さないかわりにと追い出された。

そうなったのを俺のせいと考え、人の村に向かったらしい。

ただ俺があまりに方向音痴であらぬ方向へ向かっていたため、その日まで全く出会わなかった。

やっと見つけたが、俺には敵わないことが分かっていたから、人の時に知った願いを叶えるという術に頼った。

結果は見ての通り。

これが今回の騒動の原因だった。

ちなみに鬼子母神のことはほぼ毎日聞いてたらしい。

正直やったのあいつだと思ってた。

 

「ふーん…悪いの俺だな。」

 

と冷静に思ったのだった。

 

―――――

 

「望兄ぃ!お団子食べよ!」

「分かった分かった。引っ張んな。」

 

一月後、予想以上になつかれた。

 




この子は萃香としか聞いてません。呼び方は萃姉ぇ。
名前は元々なく、人の時から迫害を受けていました。
望が付けてあげた名前は『夢花(ゆめか)』です。
名前の由来は望=夢、(萃)香といえば花です。
これでも適当じゃなくて真面目ですよ?名付けは毎回意味のある名前にしてるんですよ?他のキャラの由来もその内書きます十人くらい。
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