俺が降り立った直後、全員が手を止め視線を送る。
何者かが中心に急に現れれば、誰でもこうゆう反応を示すだろう。
まあそれも数秒。
人間側はこの一年俺が妖怪と何度も戦っていたことを知っている。
俺が援軍として来てくれたことを察してすぐに退いてくれた。
妖怪はその様子を見て少し退いていたが、所詮一人と、能力持ちが前に出た。
見た目は人の上半身、蜘蛛の下半身を持つ妖怪。
能力は…
「やっぱり重力か。」
俺の周りだけが重くなる。
まるで巨大な岩を持つような重さ。
「ま慣れてるけど。」
修行で慣れている。
あまり嘗めないでほしいな、俺の修行。
『…頭が高い!』
「…!重っ…」
しかし多少重くなっても程度が低い。
すぐさま踏み込み、懐に入る。
殺さない程度加減をしながら、腹に一撃を加え…ようとした。
「!?」
体を腕が貫通したのだ。
それも肉や骨ではなく、土のようなものを。
「あいつ…体が土だ。」
「
「いつの間に…で?人形神って何?」
「願いを込めて造る人形から生まれる…つくもがみのようなものですね。材料は墓の土。動く理由は亡霊、悪霊の類だとか…」
「なるほど…」
『お喋りはそこまでです。死になさい!』
待ってたというよりは力を溜めていた人形神は、これまでとは別格の重力を下に向けた。
白亜は立つのも耐えられずに倒れ伏す。
「残念だけどまだ軽いな~」
『な!?』
繰り返そう。
俺の修行を甘く嘗めないでほしい。
「それに亡霊なら加減はいらないな!」
能力『消滅』
存在する空間ごと消し去れば、どんな体でも関係ない。
あいつは慢心からか一歩も動いていない。
座標ごと指定するから多少時間はかかったが、これで終わりだ。
「さて…と。」
『ひっ!』
首を九十度曲げるように残党を見る。
逃げなければ殺す。
挑めば殺す。
そういった殺意を妖怪に向ける。
残党は全員逃げだし、その場には(白亜除き)人のみとなった。
『うおおぉぉ!』
自警団の雄叫びが響く。
それからは口々に俺に感謝して行き、何人か奢ることを約束してくれた。(よし!)
「…やはり敵いませんね。私では物理的に破壊することしか出来ませんでしたから。」
「能力でもなきゃ無理だよ。燃やしても効かなかっただろうしな。」
「しかし黒幕はどこにいるのか…聞く前に倒してしまいましたね。」
「いいよ。まだここに留まるし、気長に探す。」
「…それなら墓でも見張りますか?それなら、少なくとも人形神は現れません。」
「そうだな。そうしよう。」
それからの村防衛の話しを、自警団の何人かと話し合った。
結果…墓守を立て、しばらく俺が戦闘指南をすることになった。
―――――
指南始めて約三月。
村での俺の立場がよく分からなくなった。
と言っても呼び方は二つ、『仙人様』か『隊長』の二択。
時たま『狩人』とか言われる。
白亜は基本
何とも言えない呼び方に、不安はそこまでなかった。
俺も白亜も思いの外呼ばれ慣れていたのだ。
それから…人形神の制作者が分かった。
人形神は墓地の土から造られる…つまりは造り手が人間である必要はない。
案の定、造ったのは攻めて来た妖怪の一体だ。
訓練した墓守が捕縛を達成した。
人間の子供のような背丈と人型、違うのは角ぐらい。
そう…黒幕は鬼の子供だった。
―――――
「お前…なんでこんなとこにいるんだ?」
「………」
「…恐らくは迫害では?鬼という種族は、元々が人である場合も多く見られるらしいですよ。どう成っているかは知りませんが…」
「……」
「主様?」
「……お前さ…鬼子母神か、もしくは近い奴らに鬼にされたか?」
「!?……人間が…母様を軽々しく…」
「やっぱりな。あいつはやるよ。大方、ずたぼろで倒れたところを、鬼にしてもらって生き延びたってとこだな。あいつは人が好き…いや、嫌いじゃないからな。」
「会ったことが?」
「…俺が初めて負けて、初めて勝った相手だよ。簡素な殴り会いでも、頭使うよりよっぽど楽しかった…」
「……母様…」
「…行く場所ないなら、一緒に来いよ。人襲わなきゃ安全は約束してやる。どうする?」
「…………」
―――――
その鬼の子供は、二十年前の鬼の祭(?)の時から、俺をずっと追ってたらしい。
鬼になったのもどうやらその辺り。
鬼の大半に嫌われながらも、鬼の四天王である萃香に育てられていた。
それが祭の時、俺が秒殺していったのだ。
あれが四天王だということは勿論今知った。
その後修行のためあまり構ってもらえなくなり、遂には嫌っていた鬼に殺さないかわりにと追い出された。
そうなったのを俺のせいと考え、人の村に向かったらしい。
ただ俺があまりに方向音痴であらぬ方向へ向かっていたため、その日まで全く出会わなかった。
やっと見つけたが、俺には敵わないことが分かっていたから、人の時に知った願いを叶えるという術に頼った。
結果は見ての通り。
これが今回の騒動の原因だった。
ちなみに鬼子母神のことはほぼ毎日聞いてたらしい。
正直やったのあいつだと思ってた。
「ふーん…悪いの俺だな。」
と冷静に思ったのだった。
―――――
「望兄ぃ!お団子食べよ!」
「分かった分かった。引っ張んな。」
一月後、予想以上になつかれた。
この子は萃香としか聞いてません。呼び方は萃姉ぇ。
名前は元々なく、人の時から迫害を受けていました。
望が付けてあげた名前は『夢花(ゆめか)』です。
名前の由来は望=夢、(萃)香といえば花です。
これでも適当じゃなくて真面目ですよ?名付けは毎回意味のある名前にしてるんですよ?他のキャラの由来もその内書きます十人くらい。