東方白望記   作:ジシェ

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あけおめ!そしてことよろ!…やっぱ真面目に言います。明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!


三十七話 ~神と妖怪と人間~

「これは…」

 

私は紫様の話しを聞き、主の命を受けこの地へ来た。

そこにあった光景は悲惨なもの。

血に塗れた神妖、重なる屍の山。

これほどの被害が出ているというのに、何故戦を止めないのか。

 

「……しかし…何かおかしいですね…」

 

私の知る限り、神側から鬼に戦を仕掛けることなどありはしないだろう。

しかし鬼も、元より戦力に差があり、尚且つ主に打ちのめされた四天王の不参加。

勝ち目のない戦を発起させるわけもない。

とはいえ操られているわけでもなさそうだ。

他者の操作であそこまでの繊細な動きは不可能。

 

「お互いに事情があるとしか…」

 

天照様からの連絡が途絶えていることも気になる。

このような戦を、紫様から知るのが一番速いなどあり得ない。

 

「天照様…月読様…どうかご無事で…!」

 

この戦に割って入れる程、私は強くない。

祈ることしか出来ないことに、私は不甲斐ない思いだ。

 

―――――

 

「チィ…夢花!」

「望兄ぃ!」

 

思いの外長い空間。

その出口に到達する前に、俺は夢花を抱き抱えた。

 

「…とっ…」

「着いたの?」

「主様!お待ちしておりました!」

「紫の奴…お前を座標扱いしたな…?」

「それよりも…私の見た限りの報告を…――」

 

―――――

 

「うーん…よく分かんねぇ…俺も同感だしな…」

「あの…どこを見ても萃姉ぇも勇姉ぇもいないの…」

「そうか…実は月読や天照も見当たらないんだ。」

「私達の知る方々は…恐らくですが、誰も参加していないのでしょう。」

「となると…いくつか可能性が見えるな。」

 

下級に位置する連中の反乱。

お互いに絶対に勝たなければならない事情。

…鬼の四天王や、神々のまとめ役達の弔い合戦。

他にもあるだろうが、このようなことがなければ戦争なんて起きないだろう。

 

「……待てよ…?」

「!主…様……」

「どうした?」

「天照様との…契約が……」

「!?」

 

(…嘘…だろ…?何で…?そんな…それじゃあ…!)

 

「…天照様との契約が切れるのは…天照様が私を解放した時と…亡くなった時だけ…です…」

「…すぐに…あいつらのところへ…紫!」

「…ええ。」

 

―――――

 

「月読!諏訪子!天照は!?」

「望!?何故…」

「今はそれより天照だ!あいつはどこだ!?」

「……そうか…お主…天照はこっちじゃ。今は床に伏せっておる。」

「……何があった?」

 

天照の元へ向かうまでに、俺達は話を聞くことにした。

あまり長くない道程で、月読が端的に説明していく。

 

「…単純なことよ…妖怪による暗殺じゃ。未遂だがの。神と言えど、急所はある。首を切られれば即死。心臓を穿てば瀕死。毒を飲めば衰弱。人と変わらぬ。」

「天照……」

「ここじゃ。…望よ。どうか…助けてくれ。永琳の居らぬ今、お主以外に救えるものは…いや…可能性のあるものはいなかろう。」

「…外の戦争は、お前が首謀者か?」

「……」

 

月読は首を振る。

つまりこの戦争に、月読や諏訪子、神奈子達は関与していない。

 

「とにかく天照を見てくれ。話しは後にしよう。」

「…ああ。」

 

―――――

 

「天照の暗殺に来たのは、小型の人形神じゃ。」

「人形…神…?」

「それって…私が造った…」

「いや…夢花は俺達の近くにずっといた。妖怪が制作法を知ってるとも思えない。まさか…」

「その通り。真の敵は…『人間』じゃ。」

「人間が…」

「天照の胸から腹にかけて、大きく切り傷がある。確認してみよ。」

「いや、大体判ったからいい。小型の人形神の形態変化、一部の巨大化による串刺しってところか?」

「早くて助かるの。しかし足りん。現れたのは血の人形神じゃ。ただの傷なら、時間が経てば再生する。しかしその血は、妖怪の血じゃ。神にとっては毒の塊。どうにかそれさえ取り除けば…天照は生きる。」

「……妖力…か…やってみよう…!」

 

座標の指定、消滅する物の指定、白のキャンバスに描くのは…内臓。

存在の一部を…一つを消滅するなどまだ試していない。

それをやるには、まだ技術が足りない。

ならば、全てを消して再生する。

失敗すれば死、成功しても…しばらく安静だろう。

 

「…死ぬよりゃましだと思えよ…!」

 

『消滅』指定:切り傷の範囲全て

『創造』指定:消滅した箇所全て

 

―――――

 

戦争の始まりは天照の仮死。

毒によって倒れた天照の弔い合戦に他ならない。

天照が起きれば、戦争は終わる。

問題は…やったのが人間ということ。

 

「心当たりはないのか?」

「なくもない。妖怪を信仰する変わり者も…多くはないが少なからずおる。特定するだけ無駄じゃな。」

「だからと言って放置するわけには…」

「無駄じゃ。人間が一番欲深い。此度のことも、妖怪を信仰する余りの凶行か…はたまた神を蹴落とすという思想か…いずれにしろ永遠の問題じゃよ。今は戦争を止めることを考えてくれ。」

「天照が起きるまでの時間稼ぎか?」

「いかにも。妖怪側も、我々が攻撃を止めれば止まるだろうて。消耗は避けたいはずじゃ。」

「……主様よ。夢花の親…萃香殿の力を借りれば、妖怪を止めることも出来るのでは?」

「…そうだな。神側は天照が、妖怪側は鬼の四天王が、それぞれ止める。なら俺は交渉に行ってこよう。」

「待て!夢花や萃香とは何者じゃ?鬼のしたっぱなのか?」

「あー…お前らが煩いと思って連れてこなかったんだよ。今は紫と待ってる。鬼の子供だよ。萃香は四天王。」

「なんと!やはりお主は数奇な運命を持っておる…なら望。全てお主に任せる。三度我らを救ってくれ。」

「任された!なに…鬼子母神と戦うよりゃましだ。」

「頼んだぞ…」

 

 




白亜視点短かった~。人形神のことで少し補足。墓の土から造られる人形なので、土に毒を混ぜる製法も存在します。他を混ぜても造るのは難しくないでしょう。
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