以前は死んだ気分ではなかった。
天使の世界で口論してたら戻っていたから。
しかし今は、このまま死んでしまうのではないかと不安になる程真逆だ。
誰もいない。
音もない。
真っ暗で、感覚もない。
五感の機能が停止している。
これが死ぬということか。
俺は目を閉じた。
それすらも分からない空間だったがおそらく。
「……あれ?」
いつまで経っても景色が変わらない。
天使達との繋がりも断たれている。
復活に時間がかかるのか、はたまた本当に死んだのか。
このままでは流石に耐えられない。
『確かに人間には耐え難いですね。』
「!」
人の声。
こんな場所で?
『以外ですか?貴方のいるこの空間は黄泉へ続く入り口…管理者の一人いないはずがないでしょう。』
「…お前ら神やら天使やらは…人の心ぽんぽん読みやがって…まいいや。んでここ何処?あんた誰?」
『話が早くて助かりますね。ここは…そうですね…生と死の狭間というものですかね…ここから少し移動すれば、少し禍々しい扉が現れます。その先は冥府…所謂あの世です。』
「…俺不死にしてって言ったよな?」
『ええ。ですので貴方がここに来るはずがないのですが…私が貴方に興味があるのです。』
…あれこれそのまま死ぬ?
だとしたら中途半端に、しかもこっちに落ち度のない理不尽の殺害なんだけど…
『事情は聞いています…災難ですね。』
「それは煽りか?」
『哀れみです。』
やっぱり煽ってる。
『……貴方は死にません。私が許すまでは、死ぬことはあり得ないのです。』
「…あんたは冥府の神とかか?」
『はい。貴方の中にいる天使達の上司というところです。死を司る神…それが私です。貴方の不老不死も私のものなのですよ。』
「へぇ~…それで?興味があるから俺は帰れないと?まだ十年程時間潰すとはいえ、こんなところで十年も過ごす程忍耐力強くないぞ?」
『ご安心を。すぐに帰します。疑問は消えました。』
「興味失せたってこと?」
『いえ…興味はあります。そもそも神のミスで死ぬ人間など、そうあるものでもありません。ああ…もう一つ疑問に思ったことがありました。』
「何だ。まだ帰れないのか。」
『お付き合い感謝します。ところで聞いていますか?貴方の力が何故強いのか。』
「?天使の設定だろ?」
『前世で貴方を慕っている人達の数、そして今世で貴方を想っている人の数に比例して、貴方の力は強くなる。私の疑問はそれです。』
「…前世で何したか知らないけど、俺にとっては喜ぶことだな。今世では心当たりが多いけど…」
『貴方は何故人を助けるのですか?これを聞いて、人の心を利用するようなことをしますか?その力で…神へ昇る気はありますか?』
「………人を助ける理由…逆にさ…何で助けないんだ?」
『…ふふっ…本当に聖人のような心…不幸はその心のせいですね。』
「…俺は聖人じゃない。妖怪殺して何も思ってないくらいだ。助けるのだって、自分が見えないから…自分が分からないから、他人を知ろうとしてるに過ぎない。」
『その行動は、貴方を幸福にしてくれる。しかし、その度に貴方を苦しめる。後悔はないのですね?』
「ない。あと何だったか…利用?ないな。そんな器用じゃない。それと…神なんて、俺は興味がない。」
『…貴方は…つくづく私を愉しませてくれる…そんな貴方に二つ。お詫びとお礼です。』
「詫びは分かるけど…礼?」
『ええ…まず一つ。次の課題まで時間を進めましょう。時の神に話は通します。場所は蓬莱の薬のある場所。即ち、後の『かぐや姫』の昔話の舞台へ。』
「……まじ?めっちゃありがたい。」
『ふふっ…二つめは…冥界の管理者、その権限を一部解放します。』
「…え?…え?」
『…驚きは分かりますが…少し面白い行動はやめて下さい。私に付き合って下さった。お礼です。とは言え出来ることは限られます。それに…いつの日か、必要に駆られる時が来るかもしれません。』
「どうゆう…?」
『さて…そろそろ帰します。詳細は天使に。説明はしました。ああ…あとあの天使のことですが…どちらも悪い子ではないのです。あまり攻めてやらないで下さいね。』
「それについては安心しろ。殴るのは一人だ。」
『…では…これからの貴方の人生が、どうか幸福に満ちるよう、陰ながら祈っております。』
「色々ありがとな。」
暗い世界が晴れる。
まるで夜明けのように、目の前に光が満ちていく。
気が付いた時には、俺は平野に転がっていた。
セリフだらけでしょ?神とか天使だとこれが一番楽なんよ心読めるから。