藤原を門前で待って数分…刀を腰に携え、まるで侍のような様相で戻って来た。
「準備完了?」
「無論!」
「何でそんな力んで…まいいか。とっとと行こう。」
正直こいつの相手するのは面倒くさい。
しかも行くのは幽香の元。
口煩い姑と、狂暴な妖怪に挟まれる苦労は…二度と味わいたくない経験だろう。
それが分かっているのに行かなければならないなど、もはや拷問だ。
(そういえば顔見せんなって言われてたよな…)
ただ煩いだけで済めばいいのだが…
―――――
「……」
「いつ見ても凄ぇな…」
「…そうだな…」
今にも泣きそうな顔をして、藤原は花畑を見ている。
気付いた俺は、呆けている彼に声をかけた。
「どうした?」
「…いや。それより…件の妖怪は…」
『また人間?』
丁度良く幽香が姿を見せた。
というより、恐らく花畑全体を常に見ているのだろう。
「さっきぶりだな。」
「…他の人間まで連れて…そんなに私の恨みを買いたいの?」
「恨み買いたい奴なんていねぇよ。実は少し話があって来たんだ。」
「話?」
「ああ。はっきりしておかなきゃいけなくてな…」
都への攻撃、侵略、あらゆることを行わない。
俺が取り付けなきゃいけない約束だ。
これまでの輝夜との会話などは話さないが、その約束をしてもらいたいと話した。
「駄目か…?」
「…一つ、条件を呑むのなら、それを約束してもいい。」
「その条件って…」
「私は貴方に敗けたことが許せない。だから…いずれ、私とまた戦いなさい。」
彼女は敗北を知らなかった。
だから初めての敗北が、酷く悔しかったのだろう。
許せないのも、きっと敗けたことが悔しいから許せないわけではなく、俺に情けを掛けられる程、自分が弱いのが許せないのだろう。
ならこれぐらいの条件、呑まない選択肢はない。
「分かった。」
「二度と会わないことはあり得ないわよ。」
「は?」
「会わなければ約束も何もないもの。だから…絶対に逃がさないために、ある妖怪を頼った。」
まあ確かにあまり戦いたくはないけど…
「別に逃げる気はないぞ?」
「分かってる。貴方が逃げる理由はない…」
「…頼ったってのは?今いるのか?」
「いつでもいるわよ。あの能力から逃れることなんてそれこそ不可能よ。」
「ふーん…会うのは駄目なのか…」
「本人たっての希望でね。」
そういうの大体知り合いだろ。
そう思うと心当たりが一人だけあることに気付いた。
多分あいつだ。
(わざわざ言わんけど。)
「とりあえずそれならもう交渉成立でいいな?」
「ええ。」
「…そうだ。もし約束破ったらここの花畑更地になるからそのつもりでな。」
「……当然よ。」
こういうのを決めなければ藤原は納得しなかろう。輝夜でさえこいつが花を荒らされるのが一番怒ることを知っているのだ。
これなら殺すことなく納得させられるだろう。
―――――
「―――てことで問題ないか藤原?」
「……よかろう。妖怪に対しての損害が花畑程度なのは気に食わんが…」
「許せよ…あいつにとっては命みたいなもんなんだから…」
「よかろうと言っただろう?……此度のこと、気に食わぬ点がまだありはする。が、姫様に会うことは許可しよう。」
「おう。」
「ただし…」
まだ条件あるのか。
こいつ相当面倒いぞ。
てかここまでやって何があるって…輝夜と会うだけなんだよな。
「二人のみでの対話は禁止する。とは言え個人的会話はあるだろう。見張りは外にのみ配置する。」
「…まあいいよ。」
輝夜とのつながり。
幽香との対話の成功。
月への手掛かり。
この国に来てから問題はあれど悪くない生活が出来ている。
このままいけば、課題もどうにかなるだろう。