東方白望記   作:ジシェ

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暑くてもくっついてくる猫に抱き付きながら編集してます~熱中症には気を付けてね~


四十六話 ~教師と生徒~

戦うつもりはなかった。

しかし当の本人はやるつもりで、しかもかなりの成長を見せてくれた。

それを見たいと思わない師がいるだろうか。

 

(本気でやるつもりはないがな…)

 

依姫は火を纏った剣を横に薙ぐ。

俺はそれを素手でいなす。

なんてことはない剣士と拳の戦いだ。

その中でおかしいことは二つ。

周りには見えない速度でその動作を不規則に繰り返していること。

そしてもう一方は、神の火でさえ焼けることのない俺の体。

 

「……」

「ん?」

 

効果が薄いと判断した依姫は、その能力を以て他の神を降ろした。

 

「おお…もはや天災だなありゃ…」

 

炎のみならず雷を纏う刀身は、その姿を竜頭と変え襲いかかる。

嵐のように荒れる周囲を巻き込む一撃、並みの者なら即死級の技だ。

 

「はあぁぁ!」

 

気合いを込めた一撃、それが俺に届くことはなかった。

 

「……悪いな。」

 

俺の能力は創ることも、『消す』ことも出来る。

どれだけ強い能力であろうと、形あるものの消滅は難しくない。

なすすべなく消えるのが落ちだ。

そしてその力を使った依姫に、一瞬でも隙がないはずがないく、また俺が見逃すはずもない。

瞬間的に依姫の懐に入り、強烈な蹴りを繰り出す。

 

「あ」

 

完全にやり過ぎた。

依姫の攻撃、月の民の銃撃、それら全てを防ぐ俺の能力で囲われたこの空間。

正確には全て消しているため崩壊しないが、もし消せない『者』がぶつかったら。

ましてやそれが高速で激突したら。

 

『うわぁぁぁ!?』

『何なんだよー!?』

 

「……」

 

空間を突き破って、高速で吹き飛ぶのは当然だろう。

角度的に蹴り落とす形だったために、都にクレーターを作る結果になった。

幸い真下に人はいなかったが、衝撃で飛ばされた人が怒るのも無理はない。

 

「…お前ら。」

『ひ!?』

「大将連れて帰れ。納得いかない奴はかかってこい。当然…命懸けでな。」

 

殺気を放ちながら月の民に言った。

脅しは完璧だっただろう。

月のリーダー二人の片割れを倒したのだから。

それで俺が消耗したと思って挑むなら叩きのめす。

実際消耗はした…うん割りと四割位は…

とにもかくにも尻尾を巻いてという言葉が似合う敗走っぷりを見せてくれた。

 

(耐久も必要だなあれ…)

 

次は紫の結界でも教えてもらおう。

 

―――――

 

月の民は帰った。

都の被害も幾つかの民家と、数十人の命…相手が相手なだけに、かなり抑えられた方だろう。

 

「しかしまあ…俺も薄情だよなー…」

 

人の命が失われたことに対して、それほど何も思わない。

例えばこれから修復が始まるこの都でさえ、無償で手伝うつもりすら起きない。

世が世ならこうなっていたというのがよく分かる。

 

「その薄情さにさえ、救われた人がいるのよ。」

「……永琳…」

「久しぶりね…望。」

「……」

 

俺からすれば数十年。

永琳からすれば数千年。

やっと会えたというのに。何も言葉が出ない。

 

「……」

「…何でも屋は辞めたのかしら?町の修復作業、手伝わないの?」

「…生憎とここでは開業してなくてな。お前こそ、輝夜を連れ戻しに来たんだろ?行かないのか?」

「生憎と仕事じゃないのよ。」

『…ふふ…』

 

自然と笑みが溢れた。

何年も会っていなかったとはいえ、以前は夜と三人でいつまでも話していたのだ。

 

「少し話すか。」

「ええ。」

 

その時間は、とても長く感じた。

 

―――――

 

どうやら永琳と輝夜は月での関わりがあったようだ。

故に永琳は、月が輝夜を連れ戻そうとする中、たった一人それを阻止しようとしていた。

そのために蓬莱の薬を飲んでまでだ。

 

「それじゃお前も追放か!?」

「違うわ。私の場合追放ではなく、住民としての権利の削除…つまりは月に住めなくなっただけよ。」

「追放じゃね?」

「姫様…輝夜様の場合月への侵入でさえ不許可。私は住むのは無理でも、滞在や出入りは自由。」

「何だ。そこまでの罰ではないんだな…」

「そうね。まあそういうことだから、私は姫様と一緒に身を隠すわ。」

「…そうか…」

 

輝夜の居場所が割れていると、いつまた連れ戻しに来るか分からない。

月の技術は地上より遥かに上。

俺が輝夜の護衛モドキをしていないのにすぐ気付くだろう。

永琳がいれば、無理に挑む者もいないだろう。

 

「あ、そうだ。紫って妖怪に会ってくれないか?」

「妖怪に?」

「ああ。そいつが今、『人間と妖怪の共存』を掲げて孤軍奮闘してるところなんだよ。」

「…共存…」

「月読や天照も協力しててな…お前らも行ってやってくれ。今あいつらがどこいるかは知らないけど…神出鬼没の紫なら、その内会えるだろ。」

「そう…分かったわ。紫という妖怪については覚えておくことにしましょう。」

「ああ。」

 

きっとこいつらなら、あいつの力になってくれるはずだ。

あいつの世界に俺はいない。

なら、陰ながらでも協力しよう。

俺が出来る唯一のことは、その理想に邁進する仲間の勧誘だけなのだから。

 

「それじゃ、輝夜のとこ行ったら俺はまた旅出るかな…」

「…しばらく一緒に……いえ、何でもないわ。」

「…ああ。」

 

それでいい。

一緒に歩んじゃいけない。

でも望むなら…また笑い合える日を…

 

 




なんか打ちきりの最終回みたい…まだ序盤(?)だけど。幻想郷前か後か終わりは予想してないけど、全然終わらないです。最終回じゃないですよ?
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