人里で暮らし始めて半年。
普通の人と同じく暮らしてきた。
何でも屋として活動し、少女…『妹紅』は助手として働いている。
月の都の依頼は多岐に渡った。
しかし今のような古い時代程度だと、受ける依頼も限られる。
例えば店番や清掃、食材採取や…時々狩りにも出る。
妖怪なども少なく、退治依頼もとくにない。
基本金はちょっとした生活費程度だけ蓄え、あとは狩りや採取をして食材を得る。
衣類は買うが、住む場所は村の人に手伝ってもらい、外れに一軒立てた。
衣食住は完璧、金を蓄えてる分、他より少し裕福に暮らしている。
勿論戦いはあまりなくとも、妹紅を鍛えることは忘れていない。
自身もしっかり鍛えている。
しかし半年間特別な何かがあったかというとそこまではなかった。
精々生活を整え、日々鍛錬をし、名無しの少女に名が付いた程度だろう。
最後を除けば、ほとんどいつも通りなものだ。
「ほんと静かでいい日々だ…」
「さっきからぶつくさ何言ってるの?」
「何でも?平和を噛み締めてたとこさ。」
「……」
あと妹紅の口調が生前の時代の高校生くらいになっていたことだ。
そろそろいい頃合いだろう。
実を言うと…未だに蓬莱の薬を手元に置いてある。
それはつまり、記憶は未だ戻っていないということだ。
以前課題を終えた後、冥界の神が現れて、結果数十年経ってしまった。
そういった不測の事態がいつ来てもおかしくない。
一年過ごしたおかげで、この辺の人との関係も良好。
妖怪はいないために、危険だとしたら森の獣達のみ。
生きる術は既に叩き込んだ。
最悪以前のようなことがあっても、妹紅が倒れることも、村が危険に陥る事態も、確率は限りなく低いだろう。
「…それじゃ…妹紅。」
「ん?何?」
「これから少し俺は眠る…というと少しおかしい気もするけど…とにかく意識はなくなると思ってくれ。」
「何かするの?」
「まぁな。とはいえそう長くは眠らないと思う。前はちょっとした異変があって数十年意識はなかったけど…多分そっちのが稀だろ。」
「……もしそうなっても…また…会えるよね…?」
「当たり前だろ?もし十年百年千年眠ってようと、いずれ必ず会えるさ。俺達は不老不死だぞ?」
「…うん。」
俺と依姫がそうだったように。
生きてさえいれば、会えないことは絶対にないのだ。
「それじゃあ…」
―――――
場所を移動して蓬莱の薬を破棄する。
寝ることが記憶を戻すトリガーなのだ。
説明した後、破棄して帰る。
そういえば一時、破棄とは何を差す言葉だろうかと疑問を抱いたことがあった。
しかしその認識が間違っていた。
何を差すかではなく、俺がどう認識するかが重要なのだ。
過去の課題…薬の実験台、武器を持つ、不老不死にする、どれも曖昧だ。
実験台はともかく、持つだけなんて曖昧では、自分の所有物にするのか、ただ持つだけか、そんなの認識次第だろう。
なら破棄というなら…
「これでも大丈夫だろう。」
俺が思ったのだから。
薬は液状、永琳のことだから丸薬でもあるだろうが、今に限りは液状でよかった。
瓶ごと『破壊』すればいいのだから。
俺は瓶を叩きつけ、染み込んだ地表を…文字通り消し去った。
完全なる消滅。
綺麗さっぱりこの世から消えた。
「さてと…良い夢見れるかな…?」
―――――
「じゃあ妹紅、後は任せるぞ。」
「うん…」
「…心配すんなよ。そもそも俺が警戒してるだけで、一時間やちょっとで起きる可能性の方が高いんだしさ。」
「でも…可能性はあるんでしょ?」
「まあ…」
実際確率としてはかなりのものだろう。
冥界神のような奴でなければ、特に問題もあるまい。
敢えて可能性を示唆するなら…記憶の中よりも、現実で何かが起きることの方があり得る。
(心配し過ぎってだけならいいけど…)
それから少し話して、夜が更けた頃に、二人揃って眠りに付いた。
―――――
夢の始まりは日常だった。
子供の頃に通っていた小学校の記憶だ。
この記憶の思い出すのには決まった法則も、順番もないだろう。
そして記憶の中を歩む今のような夢。
それ以外の記憶も軽くなら思い出す。
なら何故夢の中に入るのか。
何か重要な情報なのかもしれない。
自分の死、姉の存在、ならば次に俺に関わる重要な情報が、きっと今分かる。
特別なことがある時は、非常に楽しみに思う。
そういうものだろう。
妹紅の名前は設定上でも自分で付けたらしいですね~調べて始めて知りました。ちなみに本名見つからなかった…