東方白望記   作:ジシェ

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五十七話 ~謀略~

町までの案内をしてもらうため、俺達の実力を軽く見せた。

まあ軽く(地面粉砕)見せたことで納得してもらえた。

しかし何に教われたのかこの子は知らなかった。

どころか町の大人も、誰も妖怪の姿は見てないらしい。

気付いた時には気を失い、死んだ者もいたはずにも関わらず死体もない。

噂では死体すら喰っていると…

 

「でも気を失うなんて普通ある?人間何人いようと強い妖怪一人いれば十分なのに…」

「それに意識を奪いながら連れて行くのが限られるのもおかしいな。つまりそいつは、人間を何人も連れていく方法、もしくは理由がない。戦闘を避けている。何よりも人間を必要としている。」

「妖怪らしくないね。」

「うーん…定期的に人間を喰うために家畜扱いか…?いやそれなら自由にさせないな…」

{あそこです!}

 

少し高い坂を超えると、荒れていない町を見つけた。

繁栄こそしてないものの、家屋の崩れはなく、人々も普通に歩いている。

問題は光の少なさ、夜の危険は過去見たどの人里より上だろう。

しかしよく見たら家屋の最奥、門から真っ直ぐの場所に、やたら大きい洋館があった。

紅を基調に、正面最上に時計の付いた、窓のない館。

おそらくあれが妖怪の拠点だろう。

 

「早速乗り込むか。」

「え!?待って待って!いくら不死でも駄目だって!」

「冗談だよ。町民盾にされても困るし。」

「本当に…?」

 

失敬なそんなことしない。

例え前科があっても毎度することじゃない。

偵察は大事。

 

「まあとりあえず情報集めからだな。町の人から話聞いたり、可能なら外周だけでも館を調べよう。」

「じゃあ私は館に行ってみる。どうせ言葉分からないし…」

「流石に危険だぞ?」

「いざとなったら炎を空に打ち上げるよ。見たら来てくれれば大丈夫。」

「…絶対に警戒を解くなよ?それから内部には入るな。勝てないって分かったらすぐに逃げる。分かったな?」

「うん。」

「ならよし。」

 

俺達は別れて調査を始めた。

 

―――――

 

何人かに話を聞いた。

外出してる者が少ないが、たまに外れにいる人に話を聞けた。

一応夜以外はそこまで危険はないようだ。

夜以外に襲われた話はなく、他の妖怪などが来ることもない故に、夜を除けば安全な場所ではあるようだ。

どうやらあの館は半年前に突然現れたらしい。

館の主の姿は誰も知らず、何がいるか、どれだけいるか、どう館を建てたのか、何もかも情報はない。

しかし後の世を知る俺なら何となく予想出来る。

夜に活動、窓のない館、英語圏の存在、もはやゾンビか吸血鬼しかないだろう。

となれば話は早い。

日の出と同時に仕掛ける。

最悪は館を吹き飛ばす。

館毎倒してやる。

とにかく方向性は決まり、俺は妹紅を探しに館へ向かった。

 

「しかし赤いな…」

 

―――――

 

「妹紅!」

「あ、望…どうだった?」

「こっちは大収穫。多分種族も分かった。」

「そっか…」

「?何か気になることでもあったのか?」

「……多分…なんだけど…地下に閉じ込められてる人がいるみたい…」

「閉じ込められてる人?拐われた人間じゃなくて?」

「ううん。実はさっき―」

 

―――――

 

「これ…凄い大きい…遠目じゃ分からなかった…」

 

望に言われた通り、壁に沿って歩く。

一周したが何もなく、入り口も一ヶ所のみ。

窓もなく、見る限り隠し通路などもない。

 

(私のとこにもあったし…抜け穴とかあるかな?)

 

そう思って更にもう一周したが、特に変哲のない壁が続くのみだった。

 

「何もなさそう…望のとこに戻ろ…」

『待って!』

 

身を翻して帰ろうとするも、何者かに呼び止められる。

 

『突然ごめんなさい!でも…助けて欲しいの!』

「?もしかして拐われた人?良かった…すぐに…」

『違うの!』

「え…」

『私はノーチェ・スカーレット…この館の…主の娘…』

「!?」

 

館の主は村々を滅ぼした張本人。

その娘ならば、警戒するのは当然だろう。

 

「助けてって…あなた達が何をしたか…」

『分かってる!お父様が何をしたのか…全部…!』

「…なら…」

『でも助けて欲しいの!お父様は…数年前から変わった…とても優しくて、家族思いだった父は…』

 

彼女は震える声で、衝撃的な話を続けた。

 

『母を殺し、私を閉じ込め、人間を殺して回った!』

「!」

『あんなのがお父様とは思えない!数年前は、人間と友好的だったのに…そんな父を、皆慕ってたのに…』

「…何か変わった原因…もしくは別人の可能性は…」

『分からない…だけど…これ以上お父様が何かする前に、殺して欲しいの…』

「……助けて欲しいのは…この町の人間?」

『…そう…そして出来るなら…父を苦しまずに殺して…お願い…!』

 

―――――

 

「成る程…しかし嘘の可能性もあるしなぁ…」

「分からないけど…嘘じゃないと思う。」

「根拠は?」

「あの館の構造と、種族が吸血鬼ってこと、それから、町の人の捕らえられた場所、全部分かった。」

「おお…!大収穫じゃないか!でも…今更ながらどう会話したんだ?閉じ込められてるんじゃないのか?」

「分からない…はっきり聞こえたし…何かの能力とは思うけど…普段会話するときと同じ聞こえ方だし…」

「…まあ、探索する内にその子も助けて、その時聞けばいい。とにかくそこまで分かったのなら、日の出に館の主に直行しよう。」

「うん。あ、ねぇ望?」

「何だ?」

「あの…吸血鬼って…何?」

 

 




ノーチェ…スペイン語の『夜』
時期的にレミフラは生まれてないです。ただ思い付きで書きたくなっただけです。ちなみに本人達いないけど親先祖の話出てるのはこれで三人目…かな?
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