東方白望記   作:ジシェ

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五十八話 ~館攻略は堂々と~

俺達は村で休むことなく、村の外で野宿した。

残念なことに泊めてくれそう…というより会話が出来る時間帯でもなかったようだ。

夜になると本当に誰もいない。

 

「よっと…」

「便利だよね~それ。土だけど家出来るし、簡単だし。」

「創造は苦手だからな。丸に穴開ける程度が俺の限界だな。もっと上手ければ家とか出来るけど…」

「望と一緒なら、土の家でも楽しいよ。」

「そりゃありがと。」

 

でも戦闘に使える程便利でもない。

単純構造の物なら創れても、複雑なものは形だけだ。

精々空間を広げて剣やら斧やら打ち出すくらいだろう。

創造力を鍛えるなんてどうすればいいだろうか。

 

「まあいいか…」

「何が?」

「何でも。さ、もう寝よ。やることないし。」

「……ねぇ望…」

「何だ?」

「…寒いし…少しだけ…くっついて寝て…いい?」

「まあ布団もないしな…お前能力炎だよな?」

「…使ってないときはただの蓬莱人だよ。」

「まあいいけど。お休み。」

「お休み…」

 

地面はレンガ、壁は赤土、そんな場所で、妹紅に袖を捕まれている。

袖を掴むということは、寒いわけではないだろう。

俺はそんなに鈍感じゃない。

年を経て『好む』から『恋しい』に変わったのか、さっきの会話でも赤面顔だった。

なついた子供が赤面するか?

 

(…悪いな…)

 

色恋沙汰にうつつをぬかす暇はない。

何より…この子を、俺の行いに巻き込みたくない。

そのためには別れて旅に出る必要もある。

 

(いつかは…いや、この子のパートナーは俺じゃない。せめて…その時までは…)

 

妹紅と俺は、家族であろう。

 

―――――

 

「………」

 

俺は妹紅が目覚めるであろう時間よりも、遥かに早い時間に館へ向かった。

時間にして早朝三時程だろうか。

予定では五時に決めていた。

寝たのが十一時程と考えても、目覚めるまでまだ数時間あるだろう。

危険な目に会うのは俺だけでいい。

それが偽善的自己犠牲であろうと、俺がもつ確かな信念だ。

それに…

 

「さーて…吸血鬼狩りだ!」

 

人を捕らえ、娘を閉じ込め、尚人々を苦しめる…

 

「一発顔面ぶん殴る!」

 

―――――

 

「あ~あ。あいつの力はああやって強くなったんだ。納得納得…」

「もう取り返しつかない程ですよ…」

「そうね。まあいいんじゃない?」

「いいんじゃないって…あの人の人柄は確かです。しかし…強い力は人を変えるんですよ!?人間の心は…私達にさえ分からないんですから…」

「それで神に挑むのもまぁ…面白そうじゃない?」

「面白くありません!」

「まあ私達は見てるだけよ。彼が善で在るのか。それとも…」

 

―――――

 

俺が館に向かう途中、まだ日は出ていなかった。

日の出まではまだ一、二時間。

妹紅が目覚める時間を考えて、早めに出たのだ。

それに…正面からぶん殴ってやりたかったから。

 

「……」

 

黙って館の壁を消し、堂々と練り歩く。

その姿は普通に不法侵入者だった。

 

「客人とは珍しい…」

「誰だ?」

「主に仕える者でございます。そして…貴方が最後に目に移す存在でしょう。」

「そーかい。なら逆に地獄を見せてやるよ。」

「ふふ…もう終わっておりますよ?」

 

辺りを大量のナイフが埋め尽くす。

まるで俺に引き寄せられるように、そのナイフは四方八方から迫り来る。

 

「……これだけか?」

「!?」

 

辺りの空間を消滅…もちろんナイフも消え去った。

 

「ならこれはどうでしょう?」

 

ナイフがランダムに迫り来る。

先のように一斉ではなく、ランダムに次々と。

しかし関係ない。

消滅させ続ければいい。

 

「…なるほど。」

「?」

「周囲の消滅…おそらく持続性もあり…その気になればすぐにでも戦いを終わらせられるのでしょう。」

「…お前の方こそ…ナイフの扱いが単調だな。瞬間移動重力操作…もしくは…時間操作か?」

「…ふふ…お互いに能力が割れましたね…では私の行動は予測出来ましょう。…ならば望み通りに…」

 

目の前から執事風の老人は姿を消した。

勝てないことを悟って、能力を主に伝えに行ったのだろう。

 

(それだけじゃなさそうだな…)

 

まるで戦う気がなかった。

そうでなければ、更に情報を引き出すため、しばらく戦い続けるはずだ。

ナイフの出現から重力操作はない。

瞬間移動なら残像すら見えないとも思えない。

空間能力なら出現の瞬間は見えるはず。

弾幕なら霊力の気配が分散して感じるだろう。

他にも候補はあるが…一瞬で移動までするならば、時間の操作が濃厚だろう。

証拠に…わずかに歩いた跡がある。

 

「…辿れってか。」

 

間違いなくあの老人は、主の下に案内している。

彼もまた、ノーチェと同じ被害者なのだろう。

 

「お前も救いたいのか…分かったよ。」

 

館の主に仕える者…そんな奴に案内されるなら、行ってやろうじゃないか。

例えそれが罠であろうと、正面から叩き伏せる。

それが俺のやり方だ。

 

 




天使久々登場ですかね?飛ばすことが多かったし出す機会なかったし、これからも登場少ないかもなー…
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