俺達は村で休むことなく、村の外で野宿した。
残念なことに泊めてくれそう…というより会話が出来る時間帯でもなかったようだ。
夜になると本当に誰もいない。
「よっと…」
「便利だよね~それ。土だけど家出来るし、簡単だし。」
「創造は苦手だからな。丸に穴開ける程度が俺の限界だな。もっと上手ければ家とか出来るけど…」
「望と一緒なら、土の家でも楽しいよ。」
「そりゃありがと。」
でも戦闘に使える程便利でもない。
単純構造の物なら創れても、複雑なものは形だけだ。
精々空間を広げて剣やら斧やら打ち出すくらいだろう。
創造力を鍛えるなんてどうすればいいだろうか。
「まあいいか…」
「何が?」
「何でも。さ、もう寝よ。やることないし。」
「……ねぇ望…」
「何だ?」
「…寒いし…少しだけ…くっついて寝て…いい?」
「まあ布団もないしな…お前能力炎だよな?」
「…使ってないときはただの蓬莱人だよ。」
「まあいいけど。お休み。」
「お休み…」
地面はレンガ、壁は赤土、そんな場所で、妹紅に袖を捕まれている。
袖を掴むということは、寒いわけではないだろう。
俺はそんなに鈍感じゃない。
年を経て『好む』から『恋しい』に変わったのか、さっきの会話でも赤面顔だった。
なついた子供が赤面するか?
(…悪いな…)
色恋沙汰にうつつをぬかす暇はない。
何より…この子を、俺の行いに巻き込みたくない。
そのためには別れて旅に出る必要もある。
(いつかは…いや、この子のパートナーは俺じゃない。せめて…その時までは…)
妹紅と俺は、家族であろう。
―――――
「………」
俺は妹紅が目覚めるであろう時間よりも、遥かに早い時間に館へ向かった。
時間にして早朝三時程だろうか。
予定では五時に決めていた。
寝たのが十一時程と考えても、目覚めるまでまだ数時間あるだろう。
危険な目に会うのは俺だけでいい。
それが偽善的自己犠牲であろうと、俺がもつ確かな信念だ。
それに…
「さーて…吸血鬼狩りだ!」
人を捕らえ、娘を閉じ込め、尚人々を苦しめる…
「一発顔面ぶん殴る!」
―――――
「あ~あ。あいつの力はああやって強くなったんだ。納得納得…」
「もう取り返しつかない程ですよ…」
「そうね。まあいいんじゃない?」
「いいんじゃないって…あの人の人柄は確かです。しかし…強い力は人を変えるんですよ!?人間の心は…私達にさえ分からないんですから…」
「それで神に挑むのもまぁ…面白そうじゃない?」
「面白くありません!」
「まあ私達は見てるだけよ。彼が善で在るのか。それとも…」
―――――
俺が館に向かう途中、まだ日は出ていなかった。
日の出まではまだ一、二時間。
妹紅が目覚める時間を考えて、早めに出たのだ。
それに…正面からぶん殴ってやりたかったから。
「……」
黙って館の壁を消し、堂々と練り歩く。
その姿は普通に不法侵入者だった。
「客人とは珍しい…」
「誰だ?」
「主に仕える者でございます。そして…貴方が最後に目に移す存在でしょう。」
「そーかい。なら逆に地獄を見せてやるよ。」
「ふふ…もう終わっておりますよ?」
辺りを大量のナイフが埋め尽くす。
まるで俺に引き寄せられるように、そのナイフは四方八方から迫り来る。
「……これだけか?」
「!?」
辺りの空間を消滅…もちろんナイフも消え去った。
「ならこれはどうでしょう?」
ナイフがランダムに迫り来る。
先のように一斉ではなく、ランダムに次々と。
しかし関係ない。
消滅させ続ければいい。
「…なるほど。」
「?」
「周囲の消滅…おそらく持続性もあり…その気になればすぐにでも戦いを終わらせられるのでしょう。」
「…お前の方こそ…ナイフの扱いが単調だな。瞬間移動重力操作…もしくは…時間操作か?」
「…ふふ…お互いに能力が割れましたね…では私の行動は予測出来ましょう。…ならば望み通りに…」
目の前から執事風の老人は姿を消した。
勝てないことを悟って、能力を主に伝えに行ったのだろう。
(それだけじゃなさそうだな…)
まるで戦う気がなかった。
そうでなければ、更に情報を引き出すため、しばらく戦い続けるはずだ。
ナイフの出現から重力操作はない。
瞬間移動なら残像すら見えないとも思えない。
空間能力なら出現の瞬間は見えるはず。
弾幕なら霊力の気配が分散して感じるだろう。
他にも候補はあるが…一瞬で移動までするならば、時間の操作が濃厚だろう。
証拠に…わずかに歩いた跡がある。
「…辿れってか。」
間違いなくあの老人は、主の下に案内している。
彼もまた、ノーチェと同じ被害者なのだろう。
「お前も救いたいのか…分かったよ。」
館の主に仕える者…そんな奴に案内されるなら、行ってやろうじゃないか。
例えそれが罠であろうと、正面から叩き伏せる。
それが俺のやり方だ。
天使久々登場ですかね?飛ばすことが多かったし出す機会なかったし、これからも登場少ないかもなー…