東方白望記   作:ジシェ

6 / 98
五話 ~秘密は存外ばれやすい~

あれから何日か経った。

具体的には十一日間。

霊弾の数を増やし、自由に操作出来るよう訓練し、霊弾以外にも形作ることが出来るようになった。

周囲に展開は出来ないが一点に集中、または一方向に意識を向けるのは出来る。

つまり最初、向いていないことに必死になっていたのだ。

 

「ふぅ…今日はこれくらいか…」

 

今俺は霊弾の数を増やしていた。

作り続け、弾けたり消えないよう集中して、二人に見せた時からおおよそ六百増え、計千百の霊弾を二十分継続していた。

 

「これだけあれば重量で潰せるよな?」

 

そう俺は思った。

 

―――――

 

能力の訓練を終わらせ、永琳(呼び捨てを許された)のところに来ていた。

この十日間夜達と普通に過ごしていて、課題を忘れていた。

達成の…記憶のためにここへ来た。

ちなみに能力を見せた後、夜と永琳の様子からそっとしておこうと思い、結局三日間会えず寂しかった。

 

「それで、私の試薬の実験台になってくれるのは本当?下手したら死ぬけれど。」

「いやめっちゃ怖いです。ただまぁ……必要なんですよ。」

「そう。なら、これを飲んで貰うわ。」

「これは?」

「聞かずに飲みなさい。効果を知っても、飲むことは変わらないんだから。」

「確かにそうだけど……まぁいいや。」

 

飲んだ。まずい。体の感覚がおかしい。

 

「どう?」

「…体の内側で何か…?」

「そう…やっぱり貴方は…」

「?」

「…貴方は、死なないのね。」

「!?」

 

どういうことだ?誰にも話してない、どころか俺自信死なないかまだ知らない。

 

「なんで…」

「その薬は、触れてから一分で、触れた場所から体が壊死するものよ。」

「な…!?殺す気か!?」

「死なないでしょ?あれを触れるどころか飲んで、それでも平気でいる。」

「……」

「私も偶然気付いたけど、周囲を消滅するあの霊力。周りだけでなく、体の一部すら消えていた。」

「!そんなはず…!気付かないわけ…」

「あれは成功してたのよ。貴方の体を守るのではなく、消滅することで守っていたのよ。」

「消滅することで……?」

「今の貴方に、痛覚はない。いえ、もしかしたら触覚が…能力で消えていた体の痛みがないのが証拠よ。それに今も…」

「!そうだ!体は…」

「守ると考えた場所、あの場合は体を守ることを考えた場所が、服の上からでも分かるように消滅した。不死だと考えたのはさっき、貴方の消滅した部位をふと見たとき、治っていた。不死と確信したのは、その薬を『飲んで』無事だったから。」

「まさかこの薬…」

「即死級の毒よ。実験はしていないから、本当はどうかは分からないけど、少なくとも、平気でいられるものではないわ。」

「そ、そんなものを……」

「悪いとは思うわ。だけど…私が研究しているのは、人々をどんな病からも救えるもの。それなら薬でなくても構わない。その完成形のようなものが、今目の前にいる。調べずにはいられなかった。」

「……それで、どうするんだ?それを知って、俺を解剖でもするのか?兵器の実験台にでも?それとも、殺す方法でも調べるか?」

「……どうもしないわ。私は自分でそこまでたどり着く。答えをすぐに知ったとしても、私には意味がない。誰にも話しもしないし脅す材料にするつもりもない。」

「……そうか…」

 

永琳のことは信用している。

たった数日でも、夜や永琳と過ごして危険に思ったことはない。

俺は信じてもいいのか迷ったが、今までの恩も返せてないのに、仇で返すのもおかしな話しだ。

 

「分かった。信じるよ。俺はこのことを知られていないし、永琳も知らない。」

「望……ありがとう、信じてくれて…」

「…じゃあ俺はもういくよ。」

「ええ、いってらっしゃい。」

「…最後に一つ、何で教えなかった?」

「夜の見る前で言うべきでもなかったでしょう?」

「…治すこと考えなかったのかよ…」

「痛みを感じてないように見えたから、大丈夫だと思って…」

(俺じゃなきゃ死んでるな…)

 

こんなに簡単にばれる秘密とは思ってなかった。

天使とやらを殴りたい、と考えながら、俺は研究室を後にした。

 

―――――

 

「しかし…あいつ(天使)の言う通りなら記憶が戻るはずじゃないのか…?」

 

即時でなくとも、五分十分程で戻るだろうに、一時間経っても戻らない。

代わりに何か起きてないかとも思うが何もない。

テレパシーみたいなのも来ないし、ポケットには新しい課題も来ない。

次の目的が何もなくなってしまった。

 

「…とりあえず妖怪探すか。」

 

―――――

一時間後

―――――

 

何もいない。

 

―――――

更に一時間後

―――――

 

兎が一匹。

 

―――――

またまた一時間後

―――――

 

重大なことに気付いた。

 

「わざわざ探すこともないんじゃ…」

 

村長の頼みは、『人を襲う妖怪』の退治。

わざわざ探さなくとも、向こうから来るのを待てばいい。

というか逆に妖怪が来る口実を作ってしまう可能性もある。

 

「見つける前に気付いてよかったかもな。」

 

俺は帰ることにした。

 

―――――

 

結局家に帰り、少し霊力の確認をし、眠ることにした。

明日は妖怪について番の人にでも聞きに行こう。

夜や永琳にも伝えて、村長に一応確認に行こう。

そう考えながら、俺は意識を失った。

 

「……!うぐ…ぅ…あぁぁ…!ぐぅ…!」

 

『これが記憶を戻すトリガーとも知らずに』

 




永琳頭いいのはまぁ当然ですね。不死の薬を禁忌と考えてない時の永琳と考えて、万病に効く薬を目指す永琳ということにしました。意味がないのは調べても無意味と悟ったからというのと、望に多大な迷惑をかけることによる報復を恐れて。そんなことしないと分かってても万が一を考える天才さんです。(この作の設定)
長くてすみません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。