追記:10000UA突破ありがとうございます!書き忘れました。
足跡を辿り、館の中を練り歩く。
その先は明らかに地下であり、主がいるとも思えない。
先にノーチェから連れ出せということだろう。
「まあ地下にいるかもしれないけど…な!」
紙を捲るように扉を引き裂く。
地下への入り口が頑丈な鉄扉だったためだ。
間違いなく地下へ続く階段。
「姫の救出といくか~」
階段を下りきると、空けた部屋が一つ。
広さだけなら館の半分程はありそうだ。
残念なのはそこには一切の物がなく、正面に見える扉を護るように、伝承を模したような者達が仁王立ちしていることだ。
影のような姿の数十体の魑魅魍魎。
何故ノーチェをそこまで閉じ込めるのだろうか。
あるいはノーチェ以外を閉じ込めているのか。
何にせよまずはこいつらの片付けからだ。
「生物じゃなきゃ加減はいらねぇな?」
―――――
およそ戦闘とは呼べない虐殺を終え、扉に手をかける。
この扉は木の扉であり、大量の札が張られていた。
ある意味開けるのを躊躇われる…が、別に気にせず解放する。
この程度で警戒する段階はとうの昔に過ぎているのだ。
「ノーチェーいるかー?」
「―――」
「…下にいるのか。」
扉を開けるとまた階段、しかしその階段で終わりのようだ。
ちゃんといてくれて良かった。
声のする方には更に扉があり、しかし階段ではなく部屋に繋がっていた。
「…貴方が…望さん?」
「ああ。しかしこんなに深いとはな。てかあの門番なんだよ…」
「…ありがとうございます。迎えに来てくれて…」
「それより父親だ。お前ならどうにかならないか?」
「……無理です。」
自分には不可能だと断言した。
どうやら彼女は父の変化の原因を知っているようだ。
「父は…私達のために呪われたんです…私のこの部屋には、過去封じられた霊が存在していたんです。」
「…乗っ取られたと?なら何故お前はここに閉じ込められたんだ?封印を解いたんだ?」
「……私が閉じ込められたのは、私の体を次の依り代にするためです。私の体が成長するまで、病も傷もなくすため…封印を解いたのは……」
「…話辛いか?」
「…いえ…話さなきゃ…封印を解いたのは…母です…」
「そんな危険なの何で解いたんだ。」
「その霊が、この家の…一族の霊だったからです。その中に、私の妹も…」
「複数の人の総合霊か…出来もしないのに救おうとしたのか。」
「はい…母が取り込れる直前、父が前に出て身代わりになったんです。それでも結局母は取り込まれ、巻き込まれた私だけ護られました。」
「しかしそんなに霊が集まったら意識が混濁するはずだ。こんなことは考えつかないだろ?つまり統括している霊がいるはずだ。」
「…私達の祖先…吸血鬼の始祖…その意志が、取り込みながら操っています。」
「成る程?ならその魂を消し去れば、どうにかなるのか?」
「!出来るんですか!?」
「無理。でも宛てはある。力を借りられるかは分からないけど…まあ時間は稼ぐ。」
「それって…」
「そいつと俺は戦う。可能なら拘束する。解放もな。でも魂の消滅や剥離なんて出来るわけない。そこでお前にも手伝ってもらう。」
「何を…?」
「ちょっと待ってろ。」
こんなことの頼りなど紫しかいない。
しかし呼ぶことも会うことも難しい。
向こうも俺の居場所など分からないだろうから。
しかしあいつなら、死んだ俺を探しているだろう。
もしかしたらもう見つけているかもしれない。
例え探していなくても、賢い…というか悪どいあいつなら、力を全開で放出すれば、見つけてくれるのでは?
少なくとも、危険がないか確認には来るだろう。
工夫をすれば正確な場所まで分かる。
つまりやり方は簡単。
「軽く手紙を書いた。これを先日お前が話した奴に渡せ。それだけだ。」
「わ、分かりました!」
「外まで送る。ちゃんと渡してくれよ?」
「はい!」
その工夫のために、妹紅にも動いてもらおう。
―――――
「任せたぞ。」
「はい!絶対に渡します!」
ノーチェを送り出した俺は、振り返って言葉を発した。
「…随分と優しいな。」
「感謝しておりますよ。ノーチェ様を送り出してくれて。ですからどうか…死なないよう願います。」
彼は無防備に、素直に身を差し出すように、ナイフを落とした。
何故ノーチェもこの執事も、何も話すことがなかったのか。
何故ノーチェは俺が直接話を聞いた時に、話すことが出来たのか。
ノーチェに対する監視の目…館に入ってから見ていた蝙蝠達…
そのせいで、二人はまともに話せなかった。
この執事は、それを破壊して主の元へ戻った。
ノーチェを救うため、自ら犠牲になったのだ。
監視されたノーチェを館から出すため。
その目を全て、自分と俺に向けるため。
主は、裏切りに気付いたことだろう。
同時にしてやられたことにも気付いただろう。
もう彼に生きる道はない。
配下の執事が、吸血鬼との契約をしていないはずがない。
後はもう、殺されるだけ。
「…後は任せとけ。老兵はそろそろ退場の時間だ。」
「ありがとうございます。それでは…御武運を。」
飲み込むように消し去る。
苦しみは皆無だろう。
「…胸糞悪いな…」
殴る理由が増えたようだ。
なんかミカルゲみたいとか考えちゃった。