執事を看取り、赤い館を歩く俺に、もはや主の加減はない。
利用出来る駒も、封じる場所も、監視する必要さえなくなった。
今や俺一人殺すためだけに、眷属たる獣達は総攻撃。
狼は吠え、蝙蝠は噛み付き、本体は出てくる気配もない。
じわじわいたぶるつもりなのだろう。
そう見えるよう体は傷だらけのままだから。
「…見えてるよな?どんなになろうとお前は殴る。だからそれまで…精々そうやってビビってろ!」
見ているであろう主にそう告げる。
この体は、どんなに傷付こうが辿り着くという意志の現れ…今の俺の、怒りの証明だ。
その宣言から、獣が少し散って行った。
その内の一匹の蝙蝠が近づき、なんと言葉を発したのだ。
おそらく伝達か何かだろう。
『貴様ごとき矮小な存在…我が敵にあらず…その怒りごとねじ伏せてくれよう…』
そう言い残し蝙蝠は破裂した。
小動物にしては血が多い…肉もないことから吸血鬼らしく、血液から作られた獣なのだろう。
奴は手札を一つ晒したのだ。
「雑魚扱いか…」
俺は笑みを浮かべ歩き始めた。
―――――
「…こいつは…」
獣を引いた理由はここにあったのだろう。
それと同時に、俺に絶望を与えるために。
最上級に向かう途中、仁王立ちの如く立ち塞がる一体の獣…いや化け物。
血液で作られた巨大な虎だ。
虎ってここいたのか…
「なんて場合じゃないかっと!」
素早い動きで爪を振るう。
その爪も牙も奴の血…触れればどうなるか分からない。
なら触れる必要はない。
弾幕で削り取る。
肩を、胴を、頭を、次々に撃ち抜く。
しかし撃ち抜かれた部分はすぐに再生され、止まることはない。
奴の体が血で出来ている以上、再生を止めるのは不可能だろう。
「俺には関係ないがな。」
人でない化け物なら加減はいらない。
命などない傀儡に、命を奪わない攻撃は必要ない。
ただ得意な消滅をするのみ。
「消すだけなら得意分野だ。次からは対策立てるんだな。」
その虎を抜ければ、いよいよ大ボスの登場だ。
「……」
「待っていたぞ。」
「そうか。俺も楽しみにしてたぞ。」
「貴様の力は見せてもらった。消滅に創造…人知を逸しているな…寄越せ…その力全て…」
「…何となく予想してたけど…お前…他人の能力奪えるのか?」
「知ってどうする…貴様はここで死ぬのだ…さあ…我が力にひれ伏せ…」
辺りに血が飛び散る。
戦闘の始まりのようだ。
―――――
無数に増え続ける血の軍勢…一体一体弱かろうと、こうも多いと煩わしい。
どれだけ消してもまた増える。
弾幕の嵐、血の軍勢、更には地面や壁から針が飛び出、風は刃となり斬りかかる。
一体いくつの能力を持っているのか。
真意は分からないが、まだまだ能力はあるようだ。
証拠に…今度は炎の球を打ち出してくる。
壁や床に当たる側から爆発する。
別々の能力の組み合わせだろう。
地面が鞭のようにしなり、血が付いたところは溶け、多過ぎる攻撃に舌を巻く。
「我が力は無限!貴様如き凡百の者に、抗える術はなし!大人しく身を捧げよ!」
「凡百か…俺をその他大勢に例えるには…少々難しいな…」
「何…?」
奴は動かない。
座った椅子から動くことはない。
余裕の現れからだろうが、それで勝てる程甘くはない。
奴の能力の全てを消滅、奴の前まで走り出す。
ただ一発…決めたことを遂げるために。
「貴様…!何!?」
走り込むのではない。
瞬間移動の如き速度で目の前に踏み込む。
「おらぁ!」
「ぐぁっ!」
横顔にめり込む程本気で殴打を決める。
「これで一発…あと二発だ…お前は絶対に殴る。」
「…ならば…貴様は八つ裂きだ!」
互いに宣言し戦いを再開する。
片方は相手の苦しみを望んで。
片方は怒りを携えて。
「永い夜を見せてくれよう!」
「楽しい夜にさせてもらう!」
第二ラウンドの開幕だ。
遅くなりましたがメリークリスマス!