「どうして…何で生きて…」
「おや?貴方様ならいくらか予想が付いているのでは?例えば…契約について…」
「!そうか…当主との契約…それが体の持ち主が変わった時点で消えたとしたら…吸血鬼の契約は魂の契約。監視はあれど『目』さえ潰せば自由も同然。」
「私は自由に動ける。ましてや…死んだ者のことを、誰が警戒しますか?」
彼は呑まれたように見せ、その実潜伏していたのだ。
時を止める能力は万能に程近い。
俺からの回避も、先の場所からの脱出も、文字通り瞬く間に終わる。
自分ではどうにもならないからこそ、機を見て助けるために、ずっと近くにいたのだ。
そしてそれは成功した。
ノーチェ、父親、そして俺達。
全員の生還は彼の存在なしでは不可能だった。
「老獪の策としては…少々粗末なものでしたかな?」
「はは…それを言うならそれ以上の歳の俺らはなんだよ…」
「はて…?お二人は未だ若く思えますが?」
「あら…老獪は誉めるのも上手ねぇ?」
「いえいえ…しかし…私にはこれが限界ですな。あくまで私達は逃げただけ…あの者を屠る…または封じるでもしなければ、この街は無事では済みません。」
「……紫。」
「恐らく考えてることは同じね。」
「多分な。執事。」
「はい?」
「今どの程度力は残ってるのかしら?」
「…七割…といったところでしょうか…」
「妹紅は?」
「…二割。」
「私はほとんど大丈夫ですよ!」
恐らく意図が分かるのは俺と紫だけだろう。
簡単なことだ。
力の境界を操れば、紫を経由して俺に力を注ぐのは難しくない。
三人の力を俺に、全て使えばあの場所一つ消すのは簡単だ。
「三人とも…最後の仕事を頼むぜ?」
「やるわよ望。三人とも、私の能力に抵抗しないように。今から三人の力の大半を望に注ぐわ。後は私達に任せて、力だけ渡しなさい。」
「どうぞ。この老体、まだ役に立てるのなら本望です。」
「私も大丈夫です。」
「きついけど…多分二割でも二人より強いよな…?」
「よーし覚悟よし。やるぞ紫!」
「ええ。直接消しなさいよ?」
「任せろよ。消滅は俺の得意分野だ。」
直後、体が熱くなり、満たされる感覚が来る。
三人…紫が少し入れてくれたから四人分と考えると、正直少ない。
だが、二割もあれば消滅は容易い。
座標を指定して消滅する力は残ってない。
だからこそ…喰らい呑み込む。
「紫!」
「ええ!」
紫も意図を察し、その場所までの境界を開いた。
消滅は紫の能力も消すだからその身ごと境界を潜り、奴の目の前に姿を現す。
未だ喰らうつもりの死に損ないは、愚直な突撃を俺にする。
「今度こそ…くたばれやぁ!」
漂う妖気ごと…その身体を、魂を、その全てを呑み込んだ。
厄介な吸血鬼の魂は、数々の人々の命を贄としたが、無事に終わりを迎えた。
―――――
「……ぐ…」
「!お父様!」
元凶の討伐は成功した。
この街も、吸血鬼という種についても、皆終わり。
力を使い切って休んでいる間に、父親が目を覚ました。
「やっと起きたか?」
「君は…そうか…本当に…」
「これからどうするつもりだ?予定は?」
「…受け入れてもらえるなら…街の者達に、償いの機会を貰いたい。そのためなら…」
「命でも差し出すってか?」
「はは…それは君が許さないな…」
「…お前が最初に謝るのは、俺や街の奴らじゃないだろ?」
「…ああ。」
彼は自分に泣きついているノーチェを優しく引き離し、正面へと見据えた。
「すまなかった。ノーチェ…私は…償い切れないことをした。例え自分じゃないとしても、この体がやったことに変わりはない。お前にも…」
「全部覚えてるんだね…」
「ああ。だが、もうこんなことはしない。絶対に…!もしまたあんな奴が来るなら、死んででも抗ってみせる。」
「死ぬのは許さねぇぞ。」
「…そうだったね…だが、私はそれほどの覚悟を決めた。それだけは…伝えておきたいんだ。」
「…うん…お父様…」
「……」
「…しんみりしてるとこ悪いけど…街の連中集めたわよ。」
そうこうしていると、紫が戻ってきた。
紫には今回の件の原因、真相、結果、それらを街の人に伝えることを頼んだ。
それを聞いた上で、ノーチェの父の処分を決めようということだ。
「……皆、集まってくれたこと、感謝する。それと同時に…すまなかった。この体は、他人に使われてたとはいえ、君達の家族を手にかけた。どんな償いが出来るかは分からない。望まれるのなら、私の命も…いや…」
「……」
「身勝手ですまないが…私は、死ぬことも許されないようだ…命を差し出すことは出来ない。代わりに…それ以上の苦しみでも、黙って受け入れよう。どうか…私に償いの機会を与えて欲しい。」
街の人々は、皆それを望んでいないようだった。
『昔…妖怪に襲われたのを助けてもらいました。』
『俺も子供の時怪我の治療してもらった!』
その後は口々に過去の行いを並べていった。
最後に、代表のように前に出た人が、皆の考えをまとめてくれた。
『我々は皆、貴方の苦しみを望んでいません。やったのはあくまでも、貴方に憑いた者のせい…貴方に罪はない。けれど…それでも償いたいと言うならば…これから先も我らを護っていただけませんか?』
「…それほど思ってくれていたとはな…約束しよう。私は、皆を護ろう。今度こそ…」
「…一件落着…かね?」
「そうね。」
「…紫の願いの完成形…こうゆうのかもな…」
「ええ…」
今更ながら妹紅以外は英語です。英語苦手なので書かない。妹紅と紫遭遇時は日本語。そこからは妹紅以外英語。そこからは紫が能力で調整して全員通じるようにしてます。書くの忘れてました。