「…なあ紫…」
「何?」
「これから先に…大事な人が死ぬとしたら…お前ならどうする?」
「……そうね…」
「そいつが死ぬかもしれないのに、自分は何も出来ない…そんな時…どうすればいいんだろうな…」
「ふふ…何悩んでるかと思ったら…ふふふ…」
「何笑ってんだよ。」
「ごめんなさい…ふふ…だって…あまりに下らないじゃない?」
「下…らない?」
「貴方今まで何回その状況になってるのよ?」
「……あ…」
輝夜、妹紅、ノーチェ、その父親、神連中や海でも…そもそも都市の人達や鬼達だって…全部同じだ。
「今までどうしてたかしら?」
「…はは…そりゃ…下らないな……!」
いつもいつも…全部は知らなかった。
けれどそれは起きると知っていて…それを止めようと体張って、今まで全部助けてきた。
自己満足でも何でも、思い通りやってきた。
分かっている未来を、最低限の労力で、最も平和的に解決する?
それこそ自分勝手だ。
俺はそうじゃないだろ。
分かる未来を、分からないぐらいぐちゃぐちゃにして、最後に必ず解決させるんだ。
「ああ…そうだな…考えてみりゃ、俺が苦労しない道探すなんざ意味ねぇな。」
「…鬼のことを言ってるなら……もう終わった事でしょう?」
「違うさ。確かに俺は苦しむべきだ。そのことだけでも十分に…けどな…あいつは…あいつらは…そんなこと考えもしないだろうよ。でもな…」
「でも?」
「苦労してでも好き勝手するのが俺だろ?きっとその先に…『望んだ』未来があるはずだ。なのに…楽して解決だなんて…そんなものに意味ねえだろ?」
「らしくなったじゃない?もう一つ言えば…悩む姿も似合わないわよ?貴方は。」
「なら考えることから外れだな。紫、俺はこれから、萃香のとこに向かう。」
「送るっていうのは…野暮ってものかしら?」
「ああ。だからさ…夢花に伝える言葉、変えてくれるか?いや…萃香達に。」
「ええ。」
「これから俺は、迷うかもしれない。また何かに巻き込まれて立ち止まるかもしれない。だけど必ず…お前達は守る。」
「いつも通りね。いつもの貴方だわ。なら精々人助けしながら、私達の元まで来ることね…」
境界を出して紫は去ろうとする。
その紫を俺はすぐに呼び止めた。
「もう帰るのか?」
「ええ。妹紅達に挨拶は必要ないでしょう。ああでもこれだけ伝えてくれるかしら?」
「…理想郷か?」
「ご名答。興味があれば、いつでも歓迎するわ。まだ世界も完成してないけど、骨組みだけならあるから…」
「……なら妹紅は連れてってくれないか?」
「…ええっと…あんなになついて何でもやってくれそうな若くて可愛い娘を突き放すの?」
「お前その言い方悪意あるだろ…だけど違いない。あいつは蓬莱の薬を飲んだ不老不死だ。」
「…そう。続けて?」
「薬を飲んで、俺に着いて来て、大変な旅でも隣にいた。」
「…益々分からないわね…」
「俺に依存してるんだ。あの娘は他人に関わる能力も、一人で生きる術も、強くなるための才能も、全部持ってる凄い子だ。だけど…憎しみに囚われる弱い心だし、誰かに寄り添わないと耐えられない。だからこそ…俺がいちゃいけないんだ。」
「…今まで連れてたのはもしかして…一人にするのは貴方が心配だったから?」
「…正解。」
「呆れた…貴方も随分可愛がってたんじゃない。」
「そりゃ…な?」
「全く…まあいいわ。それで安心ならね。でもかなり食い下がると思うわよ?」
「……分かってる。けどもう決めたんだ。今しかない。」
「…分かったわ。でもねぇ…今から自分で言いに行きなさい。いいわね?」
「…おう。」
―――――
…とても気が重い。
今から俺がするのは別れ話…それも何年も一緒に過ごした娘同然の子との。
しかも未来を知る俺は、今紫に任せた妹紅が天敵の輝夜と出会うことも分かる。
つまりこのことも話さなければならない。
復讐を止め、真っ当な暮らしになれるかどうかの境目に、台無しにする行動をしなければならない。
はっきり言って面倒臭い。
しかしやらなければ、あの娘の未来を奪うのも俺だ。
俺といて、俺以外との関わりを…繋がりを薄くして、復讐や辛い過去から遠ざかる。
またはここで別れて、復讐相手と出会い、辛い過去や自分と向き合って、先の未来を『皆』と歩んで行く。
どちらがいいかは分からない。
結局はあの子次第だ。
そして向き合うのは…
「話って…何…?望…」
俺も同じだ。