東方白望記   作:ジシェ

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六話 ~記憶の夢を彼は見る~

ここはどこだろう。

家で寝たはずの俺は、形容し難い空間の中に浮いていた。

違う。

意識から外れた場所にいる。

ここは知っている。

そう思う。

 

―――――

 

「隣のクラスの――がまた問題起こしたらしいぜ。」

「まじかwあいつもこりないな。」

「本当なー」

 

(そうだ……あの時俺は…あいつと帰るところだった…でも…)

 

そう考えた俺の眼前には、青の信号を談笑しながら渡る二人を眺めていた。

その結末は知っている。

記憶通り、一台の車は信号を無視して突っ込んでくる。

そして二人を轢く…ことはなかった。

片方はもう一人を突飛ばし、目を閉じた。

その片方は…俺だ。

 

(俺は轢かれた…でもあいつは…)

 

「は……?お…い…?嘘…だろ…?」

 

彼は膝から崩れ落ちた。

友人が轢かれ、瀕死の重体となったことに対し、涙を流し叫び始める。

 

「おい…!起きろよ…!ゲームするんじゃなかったのかよ……!皆と遊ぶ約束だって…しただろ……!学校だって…まだ………なんで…どうして……」

 

周りの人は電話を取り出す。

その間も、彼は俺を抱えて泣き続けた。

泣き続ける彼に、俺は遺言を残した。

俺の最後の記憶。

最後の言葉。

 

「姉さんに……謝っといて…くれるか…」

「…!しっかりしろ!死ぬな!んなの自分で言え!もうすぐ救急車が……!」

「約束…守れ…なくて……」

 

そこで俺は死んだ。

完全に意識を失い、何も見えず、聞こえず、ただ泣く親友を救えたことだけが、残り続けた。

俺という存在は、こうして幕を閉じた。

だからだろう。

映像のように流れるこの光景は、その場で消えていった。

姉に何を約束したのかも、親友がそれからどうしたのかも分からず、記憶の再生は終了した。

 

―――――

 

「こうやって死んだのか……」

 

最後の少し、ほんの少しだが、いい記憶を思い出せたと思った。

親友を救うことが出来た。

それがとても嬉しかった。

これしか思い出せなくとも、そこに後悔はない。

俺はたった一人の家の布団で、嗚咽にも似た笑い声を上げた。

悲しみと喜び、その二つが混ざったような声を出しながら、俺は一人、笑い続けた。

 

―――――

 

「……寝れなかった。」

 

一晩中笑い続けていたわけではないが、記憶のことを考えると、上手く眠れなかった。

姉さんのことが気になったし、何故最後の記憶を思い出したのかも分からない。

何にしろ寝れなかった。

これだけが事実だ。

 

「…そういや…」

 

ふと課題のことを思い出し、ポケットを漁る。

すると、以前捨てたはずの課題の紙が、ポケットから出てきた。

どうやら次の課題のようだ。

時系列順に課題は設定されているらしいから、近い内に終わらせられるものなのだろう。

そう思い紙を開く。

 

[依姫と豊姫の武器を持て]

 

「……は?」

 

知らない名前が出た。

俺が来てから今まで聞いたこともない。

課題自体は武器を持つだけの簡単なものだが、知らない人物の武器を探すなど不可能だ。

 

「……永琳なら知ってるかな…」

 

本日の予定は捜索に決定。

 

―――――

 

「豊姫?」

「そう。何か知らないか?」

「………偶然だとは思うけど……最近生まれたばかりの赤子の名前よ。」

「赤子…?」

「ええ。」

「…とりあえずありがとう。」

「その子がどうかしたの?」

「いや……悪い…話せそうにない。」

「そう……ならいいわ。話したくなってからでいい。」

「本当悪いな。」

 

―――――

 

生まれたばかりの赤子が持つ武器を持つ。

わけが分からない。

 

(そもそも名前からして女の子が、武器なんて扱うことあるのか?)

 

ありえなくもない。

だけど比較的低い確率だろう。

ただ分かることは、おそらくだが課題は未来のことも含まれる。

今回は何十年も先のことだろう。

時系列順とは言っていたが、それが絶対とも限らない。

何年掛かるかも分からなければ、もう出来ないこともあるかもしれない。

簡単な課題でも達成不可能になったら…

 

(俺の記憶は戻らない……!)

 

こうして様々考察を重ね、最終的に俺が出した結論は、目先の課題をとりあえず達成すること。

それで不可能なものが出るのなら、またあの天使が来るだろう。

そうならないことを祈りながら、今日も散策を始めた。

 

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