「うおっ!」
攻撃体制なだけあって、容赦なく刃が飛ぶ。
その上複数の泥の触手から水の刃が生成され続け、全方位囲う弾幕となっている。
「数は多くても飛び方は単調だな。」
今のところ触手が直接攻撃はしない。
確実ではないが泥の水分が刃になる仕組み。
つまり泥はただその場で刃を造り続ける貯槽。
触手の直線上のみの刃なら、避けることは造作もない。
「……」
避けながら耳を澄まし、彼女らの姿に集中する。
傷だらけの体、虚ろな瞳、うめき声すら声が聞こえない程縫われた口、衣服すらない。
「まるでゾンビだな…」
姿は少女…性暴行でも受けたのだろう。
声が煩いと縫われたのだろう。
『物』に服などいらないと剥ぎ取られたのだろう。
その果てに…心が壊れたのだろう。
妖精は自然そのもの。
死んでもまた自然が生み出す。
だが心は創られない。
自然が生み出す肉体に、妖精の心が…魂が宿り形となる。
妖精にとっての『死』とは、心か自然が壊れること。
今の彼女らは…まさに生きる屍だ。
「…同じ人間として謝罪するよ…それと同時に…責任も取ろう。」
状態は把握した。
ならあとは…救うのみ。
妖精の肉体は壊せばまた生み出される。
あの二人の心を取り戻せれば、その後に肉体を破壊すれば、森にまた戻るだろう。
問題は…
「心なんてどう取り戻したもんかな!?」
とにかく捕縛。
これしかない。
今のところ攻撃は単調…その間に勝負を掛ける。
刃を避けながら瞬間的に背後に回る。
「流石に俺の速さにはついてこれまい!」
速度のブースト方法は、妹紅と編み出した。
まあ単純に足元爆破するだけ。
あとは刃のない直線を見つけ、爆破の速度で発射する。
瞬時に壁を作って着地する。
この点壁は少し厚くしなければ止まらない。
触手がこちらに飛ぶように動くが、追い付くことはない。
更に言えば触手の位置からして自分達を巻き込む形なら攻撃は…
「は!?」
したよ。
水の刃が飛んできた。
これが自爆特攻というやつだ。
しかもそれだけじゃない。
水の妖精は泥から刃を飛ばしていた。
だから水を自作は出来ないと考えていた。
そうじゃない。
作る必要がなかったのだ。
ただ作るか攻撃か、片方しか出来ないだけだった。
刃を二人に当たらないよう弾幕で相殺し、捕縛のためにロープを創ったが、捕らえる前に攻撃が止んだ。
その後すぐに、今度は水の触手が作られた。
水の触手…というより鞭のようにしなり攻撃してくる。
泥と違い水の速度は速かった。
泥は鞭のように攻撃するには重いのだろう。
そして沼の妖精は泥の操作が可能なのは先の戦闘で分かった。
水の鞭が這った地面…即ち土は、水に溶け泥となる。
それはつまり…
「やっべ…」
手数が増える。
地面からは泥の柱が不定期に、そして弾のように発射されることもある。
水の鞭は不規則に、おそらく水圧の高いこの鞭は、まるで高圧洗浄機のような威力で叩きつけられる。
複雑な動きはしないが単調でもない。
避けるのも限界はある。
まして攻撃ごとに手数が増える状況で逃げ続けるのは得策じゃない。
「……どうしよ…」
もうこうなるとロープで捕縛など出来ない。
考えると捕縛しても能力は使えるし意味もない。
「…あれしかないか…」
捕縛法を考えながら避けていたら、ふと思い出したことがあった。
能力を逆に展開する方法。
俺の能力は白いキャンパスのようなもの。
だから全て消して(またはそのまま)創りだす。
だが、その方向を逆にするなら?
内側を消す能力を、外側を消すようにすれば?
能力者を消すことなく、能力のみ消せる壁に出来る。
能力を遠隔で操作するには必ず霊力や妖力が届かなければならない。
俺の能力はそれも含め全てを消す。
二人の体を座標とし、その周囲を消す。
本人は無事に、能力は封じる。
問題は…やったことがないため彼女らを消しかねないこと。
そして成功しても、捕縛するのは俺が直接羽交い締めにでもするしかないこと。
なにせ能力封じるために周囲を消すとなると、檻でもロープでも二人の近くは消える。
更に言えば互いに近付けることも駄目。
弱点だらけのクソ技だ。
だが能力は封じれる。
「実験台にして悪いが…能力封じは今のとここれしか出来なくてな!」
さあ…賭けるとしよう。
殺すとどこで復活するか分からないから他が危ない。
何するか分からないから撤退も出来ない。
霊力切れは自然そのものに対して狙えない。
手足封じても能力使えるから捕縛は望めない。
傷付けても攻撃は止まらないから意味なし。
諦めるは望には無理。
能力封じて動きを止めるのが目標。
箇条書きして分かるクソゲー感。