しかして彼女らの戦闘を俺は知らない。
下手して周りを巻き込まれても困る。
任せきりにするのは得策じゃなさそうだ。
「手加減はしません!倒して…何故こんなことをしたのか白状させます!」
『やってみせろ…』
互いに弾幕を展開する。
その数なんと俺の最高数より上。
そしてこの戦いは、今までの加減した俺の戦いとは違い、実質的には殺し合い。
弾幕の数が恐ろしい上にそれぞれ他の能力を展開する。
水の鞭に大地の槍…見覚えあるもの以外にも、周囲の木を槌のように使ったりそれを炎の波で焼き付くしたり。
瞬間移動(多分)して肉弾戦も行う。
およそ想像つく能力の全てを使い戦っている。
そしてそれは、徐々に周りを巻き込み始める。
だからか他妖精達は森を守るために各々広がって立ち塞がっている。
「やりたい放題だな…」
本気で戦っても勝てると思えない。
正確には殺し切れないと思う。
それほどまでに過去類を見ない程に凄まじい。
そしてその戦いは遂に黙視できないように、二人を囲う嵐が吹き荒れた。
―――――
「貴女も同族なら!何故こんなことをしたんんですか!?確かに妖精は自然そのもの…謂わば自由の象徴です…ですが!それでも人を…同族を好き勝手していいはずありません!」
例えどれほど自由でも、他人を操り殺しもし、同族の恩人にすら手を出すことは許されない。
自由であるからこそ、自らを縛らなければならない。
それは妖精に生まれたなら当然のことだ。
「自由を盾に間違いを侵す貴女の行いは!到底許されることじゃない!」
『黙れ!何も知らないくせに…自分の常識を押し付けるな!妖精でありながら私の邪魔をする…それこそ裏切り!こちらこそ許さない!』
それからは会話などなかった。
ただ吹き荒れる嵐の中、ただ互いに争うのみ。
きっと話すためには、倒す以外に道はない。
―――――
「…そういえばあいつが何の妖精か聞いてなかったな…」
「あれ?聞いてないの~?」
近くにいた妖精がわざとらしくそう言う。
確かこいつは風の妖精だ。
「あの娘は普通の妖精じゃないよ。」
「普通じゃない?あれだけ妖精のことを思ってるのに実は妖精じゃないとかか?」
「あっはは!違う違う!…彼女は人の魂から出来た聖霊…それが形を成して、妖精として産まれ変わったのよ。」
「………」
?
「……どういうことだ?」
「聖霊ってのは神様やそれに近い者の魂が、形なくさ迷う状態なの。」
「…じゃああいつは神みたいなもんか?」
「ある種そう。しかもとんでもない聖人君子の魂。つまりあの娘は言うなら魂の妖精。元人間のね。」
抽象的な妖精はいたが、魂まで妖精化するのか。
「魂…ああ成る程…人にも妖精にも礼儀正しく思いやる理由はそれか。」
不思議に思っていたことが分かると同時に、激しい嵐が止み始めた。
どうやら決着が着いたらしい。
嵐の晴れる中、立っていたのは…
「やっぱりあの娘は最強ね。」
倒れた王と見下ろす神。
その光景は、ある種当然のものなのかもしれない。
―――――
「凄いな…」
『嘘でしょ…』
天使さえ予想外らしい。
まあ俺も勝てるとは思ってなかった。
嬉しい誤算とは正にこのことだな。
縛られた王はかなりご立腹のようだ。
「さあ…どうしてこんなことをしたのか教えてもらいますよ!」
『……』
「お前は…俺の何を聞いたんだ…?」
各地で色々やりながら旅している以上、何もしてないとは言わない。
もしそのどこかで彼女に何かしたのなら…俺はそれに謝罪する。
「何もなく襲われて、大人しく殺される奴はいない。俺が何かしたのか?それとも俺の話をきいて同族を心配したか?何でもいい。話さなきゃ分からないだろ?」
『……』
「お願いです…私だって…同族と戦って悲しかったんです…」
『……お前は…』
「!」
『お前は自分を知らない……』
「自分を…知らない?」
『お前の近しい者から聞いた…お前の存在はこの世界を揺るがす災い。必ず…』
【私が喰らう】
「!?それは…誰だ…まさか…」
記憶にある中自分を喰らおうとする者などただ一人。
前世の姉だけだ。
『私はお前を殺し、世界を正し平和にするため、ここに来た。お前の性格と不意を突いてな。しかしまさか…』
「もういい。」
「望さん…?」
「少なくとも俺がこの世界を脅かすことはないよ。今まで…なかったとは言い切らないけど…そんなことはしない。そう誓う。だからお前も…もう帰れ。」
縛っているロープを消す。
俺も誠意を見せよう。
『……その誓い…忘れるな…その誓い破りし時、今度こそお前を葬る。覚えておけ。』
「ああ。」
それだけ言って彼女は去った。
しかし…謎は謎のままだ…
台風は喘息特効持ちだ…